2006年03月12日(日) |
練習試合 ヴァンフォーレ甲府サテライト戦 |
06年03月12日 (日) 14:00開始 韮崎市営総合運動場 練習試合 対 ヴァンフォーレ甲府サテライト ※45分ハーフ 天候:雨
▼試合展開 前日清水で韮崎高と練習試合を組み、翌日韮崎市に遠征するというのはどうかと思うが、プロの胸を借りる絶好の機会となった。相手は衝撃的な入替戦でJ1初昇格を果たしたヴァンフォーレ甲府のサテライト。J1では戦力的に厳しいクラブと見られているが、一方、自前で若手を育成しようとするJ1クラブと違い、中堅選手をしっかり補強してきた層の厚さは侮れないものがある。 事実、この日の先発メンバーは平均年齢26.1歳、通算出場J1/107試合、J2/843試合。清水にも在籍した鶴見・山崎 (途中出場で鶴田も)、札幌の堀井、横浜F・市原の井上、V川崎・大分の池端と、J1経験者も多い。他にもMr.甲府・藤田などがスタメンに並び、J出場経験がないのは大卒ルーキーの松田だけである。また、かなり背の高いチームで、165cmの山崎、167cmの藤田がいながら、平均身長は176.5cmもあった。 清水は先週の磐田戦に続き、山崎晃とU-19代表合宿を辞退した長沢が不在。先週は県U-16選抜に出場した前田、西澤の新1年生が合流し、3年生8人、2年生1人、1年生2人が先発する。DFは、Jrユース時代そのままの3年生ライン。LB起用に拘りを見せていたU-19代表・佐野克をCBで岩本と組ませたが、格上相手にはまず守備からという意図の表れか。ちなみにスタメンの平均年齢17.2歳、平均身長174.3cm。 会場の韮崎市営総合運動場は芝が枯れた状態で土が見えており、(春〜秋ならともかく) 一瞬小学校のグラウンドかと見間違えるようなものだったが、よく整備されているようで、イレギュラーバウンドすることはなかった。ただ、転倒するとさすがに痛いのか、体を投げ出すようなプレーはあまり多くなかった。
[前半] 清水エスパルスユース 控え:柴田、望月恭、鍋田、桑原尚、滝戸、佐野孝、藤牧 −−−−−−−−吉田−−−−−−−− − 桑原彬 −岩本− 佐野克−桑原卓 − −−−−−−神田−−西澤−−−−−− −−小泉−−−−−−−−−−前田−− −−−−− 山崎竜 −町田−−−−−− 交代:なし
−−大西−−−−鶴見−−−−堀井−− −−−−−藤田−−−−保坂−−−−− −−−−−−−−奈須−−−−−−−− −−井上−−秋本−−池端−−松田−− 32分:松下→鶴田 −−−−−−−−松下−−−−−−−− 33分:山崎→大西 ヴァンフォーレ甲府サテライト
試合は静かな立ち上がり。甲府はGKすらロングキックを使わずに自陣から細かく繋いでいくが、アタッキングサードで体を入れられ、シュートやクロスで終わることができない。清水は奪ってからの速攻、特にRH小泉がCB秋本の裏を狙い、3分にCB佐野克からFW町田のスルーパス、6分にCH神田のカットからFW山崎竜のスルーパスで裏に抜けたが、適時に前に出たGK松下に一つ目のトラップを取られてしまう。その間に甲府は、LH藤田が頻繁にボランチの位置まで下がってボールを捌き、起点になることで次第に支配権を確立していくが、清水もFW町田がLH前田の上がったスペースを忠実に埋めるなどして、隙を作らなかった。 15分、RB桑原彬のダイアゴナルフィードをカットしたRB松田が縦にクサビ、右に流れたCF鶴見が中盤の底に戻すと藤田が再び縦パス、中央でRH保坂がポストになり、そこへ藤田が駆け込んでミドル。威力あったが、GK吉田がキャッチ。ようやくオープニングシュートが生まれる。17分、RB井上がロングキック。繋げない時にはSBに回してロングフィード、というのが、いかにも大木監督のサッカーで懐かしい (笑)。CB岩本が跳ね返すが、クリアが弱くて混戦になり、こぼれ球をPA外で拾ったLW山崎がスピードでPA右まで持ち込んでシュート。しかしGK吉田が弾き返した。徐々に中盤の起点となる藤田が前線にも顔を出す運動量を発揮、右の保坂も前で絡む回数が増え、甲府が清水を押し込んでいく。
しかし24分、一瞬の隙。高い位置でパスをカットした神田から、町田を経由してLB桑原卓へ。斜めに内側へ持ち上がる桑原卓が左足でスルーパスを送ると、サイドに開いた前田が小さく、鋭く内に切り返して左45度からシュート。Jrユースなら十分に得点に値するコース、威力だったが、GK松下は落ち着いてファーに体を倒し、キャッチした。清水はこれが初シュート。対する甲府は32分、中盤に下がって守備をした町田のファウルで右75度30MからFK。藤田のキックは壁4枚の上を越えてニアサイドを狙うが、落ちきらずにバーを直撃した。 35分、清水はまたも神田が高い位置で秋本?のパスをカット、すぐさま前に叩いて山崎竜、更に左に町田もいたが、DFが下がった間隙をついてシュートは、枠の左上に外れる。圧倒的にボールを支配しながら、ゴール前で攻撃がもたつく甲府は38分、秋本のクサビを鶴見が右に流し、そこへオーバーラップした松田で速攻、しかし桑原卓に体を入れられ、右CKとなる。大西はショートコーナーを選択、堀井がダイレクトで入れた右クロスから混戦になり、最後は鶴見がボールを押し出すがGK吉田が触れて、今度は左CKに。藤田のキックは岩本がファーへクリア、これを池端が素早く追い掛けて右から折り返すと中央で保坂がフリー。ダイビングヘッドをドンピシャで合わせ、遂に甲府が先制する。0−1。 それから甲府は41分に池端を起点に保坂が鶴見とのワンツーで、清水は45分 (ロスタイム) に桑原卓のインターセプトから町田が中央を持ち上がり、桑原卓の攻撃参加を囮に山崎竜へのスルーパスで裏を狙ったが、それぞれ岩本、池端に体を入れられてシュートを撃てず。甲府の1点リードで折り返した。
甲府サテ 清水エスパルスユース 5(4) シュート 2(1) ○前田、×竜男 8(2) 右クロス 0(0) 4(0) 左クロス 0(0) 1(0) 右側CK 0(0) 1(0) 左側CK 0(0) 0(−) 犯OS 1(−) ・竜男 3(0) ファウル 2(1) ・西澤、×町田
[後半] 清水エスパルスユース (後半15〜29分) −−−−−−−−吉田−−−−−−−− − 桑原彬 −岩本− 佐野克−桑原卓 − −−−−−−−−西澤−−−−−−−− −−小泉−−−−町田−−− 佐野孝 − 15分:神田→佐野孝 (左図参照) −−−−− 山崎竜 −前田−−−−−− 29分:町田→鍋田 (鍋田CB、佐野克LB、桑原卓OH)
−−大西−−−−鶴見−−−−松田−− HT:藤田→田森 −−−−−田森−−−−保坂−−−−− 12分:堀井→津田 (津田RB、松田RW) −−−−−−−−千野−−−−−−−− 15分:鶴田→佐藤 −−奈須−−秋本−−池端−−津田−− 26分:井上→千野 (左図参照) −−−−−−−−佐藤−−−−−−−− 40分:大西→森田 ヴァンフォーレ甲府サテライト (後半26〜40分)
後半、甲府の藤田はお役ご免。前半はカンプ・ノウで戦うスペインの下位クラブ並みにボールを支配されていた清水だが、なんとか1:2ぐらいにまでポゼッションを持ち直す。ただ、逆に甲府が攻め込むスペースも生まれ、3分に井上の外をLH田森が回って左クロス、岩本がクリアするがスローインをすぐに再開して保坂がミドル (左外)、8分に井上→鶴見→LW大西と縦に繋いで左サイドを崩し、クロスを入れるがファーで桑原卓がクリア。前半のように甲府のWG・SH・SBと、清水のSB・CB・SHとがPA角の手前で密集することがなくなり、スムーズにボールが回るようになってきた。 清水の方も7分に、佐野克のクサビをDFがカットしたところを前田が拾ってスルーパス、13分に相手のクサビをカットした佐野克が持ち上がって左前に捌くと、前田が戻して山崎竜、一度奪われるが奪い返してスルーパス。後方6人 (GK含む) の平均身長が180cmを超える相手を崩すにはこれしかないだろうが、あと一歩繋がらない。そして13分、松田のドリブルを止めて甲府の右CK。大西のキックはニアで敵味方にぶつかり合ってタッチを割り、右からやり直し。再びニアに速いボールを入れると、飛び出したGK吉田が敵味方に重なって触れられず、ボールはファーへ。それをフリーの松田が余裕でボレーを決め、0−2。
2点のビハインドを負った清水は、神田を下げてボランチを1枚削り、LH佐野孝を入れて4-1-3-2に。この攻撃的な姿勢が実ったか17分、池端?のパスを一列前に上がったFW前田がカット。そのままCBの間を抜けてPA内に進入すると、上体を揺らすフェイントからゴール左へ低く突き刺した。1−2。その直後にも佐野孝が前でパスカットする場面もあったが20分、中盤で囲まれた鶴見が大きく山なりのサイドチェンジ。反応したのは、鶴見と入れ替わって中に絞っていた松田。PA外で追いつくと、対応した桑原彬とタッチラインの間へ強引に体を入れて速いクロス。PA内ファーで保坂がダイレクトボレーでゴール右に突き刺し、1−3。あっという間に、点差は2に戻った。 21分、佐野克のロングスルーパスが連動した山崎竜へ通るが、秋本が体を入れて右CKへ。山崎竜自らボールを拾ってリスタート、小泉がPA内に切れ込むが、ブロックされる。甲府は22分に左に開いた鶴見から保坂がスルーパスを出して田森が飛び出すが、シュートは枠を外す。26分、保坂の小泉へのファウルでハーフライン付近からFK。甲府に選手交代があり、奈須がLBに回ると佐野克がFKを再開、裏へ出る小泉の肩に奈須が軽く手を掛ける。小泉が楽に振り解き、右サイドに開いたところで笛。ファウルの判定、しかもPK。さすがに奈須も愚痴をこぼしていた。左を狙った町田のキックはGK佐藤に止められたが、中央に転がったのを自ら蹴り込み、2−3。
31分、秋本?のパスミスをまたも前田がカット、得意のドリブルで突き進むがGK佐藤の指示を受けた秋本の圧力で右に流され、シュートは枠右に外れる。34分、小泉のドリブルのクリアを拾った桑原彬が持ち上がり、田森が背後からファウル。右45度、ちょうどJユース杯F東京戦の決勝ゴールの位置でFKを得る。蹴るのは勿論、佐野克。同様にファーへインスイングで曲がるボールを岩本が軽くボレーでファーに合わせるが、DFにカバーされた。しかし、清水の追い上げもここまで。4-1-3-2にした影響もあるが、プロの運動量を受け身で応対してきた清水は、両SHをつかまえきれなくなる。Honda戦の桑原彬の選手寸評で「PA横を空けるのが気になった」と書いたが、この日も後半20分過ぎ以降、スペースが空くことが多かった。 43分、鶴見の高くバウンドしたサイドチェンジをLW森田が裏に流し、抜け出た奈須のクロスをゴール前で松田が合わせる決定機は、宇宙開発。45分、RB津田のアーリークロスをファーで鶴見が中央に頭で落とし、奈須が飛び込んだが、これも宇宙開発。そして、試合終了。スコアこそ2−3で接戦だが、内容は完敗。プロの力を思い知らされた。競り合いで藤田に吹っ飛ばされた西澤などは、今後3年間でどれだけプロへの距離を縮めなければいけないかを学ぶ、良い機会になったことだろう。
甲府サテ 清水エスパルスユース 10(3) シュート 5(4) ◎前田、○町田、◎町田、×前田、○岩本 6(2) 右クロス 0(0) 8(2) 左クロス 0(0) 3(2) 右側CK 1(0) △竜男 1(0) 左側CK 0(0) 1(−) 犯OS 1(−) ・孝洋 9(3) ファウル 4(1) ・神田、×岩本、・桑卓、・桑卓
▼試合結果 清水エスパルスユース 2−3 ヴァンフォーレ甲府サテライト 得点:前半38分:甲府・保坂 一成 (池端 陽介・右クロス) 後半13分:甲府・松田 勉 (大西 容平・右CK) 後半17分:清水・前田 陽平 ※相手パスミス 後半20分:甲府・田森 大己 (松田 勉 ・左クロス) 後半28分:清水・町田 朋弥 ※PKリバウンド 警告:後半23分:清水・佐野 孝洋 (遅延行為)
▼選手寸評 [私撰MVP] ●桑原 卓哉 (3年・LB→OH) 長身松田の突進に対して体を入れ、逆サイドからのクロスを空中戦で跳ね返し、時に自ら持ち上がって起点となる。それだけ疲弊する仕事をこなしながら、OHにポジションを変えても、最後までJ1上位の運動量を誇る甲府に走り負けなかった。
[私撰MIP] ●岩本 大 (3年・CB) しっかり体を入れてドリブルやスルーパスに対応し、正面からの攻撃は許さず。課題の空中戦はクリア精度に難があったが、競り合い自体はまずまず。甲府のフォアプレスは激しかったが、落ち着いてボールを回して、攻撃の起点にもなった。
●前田 陽平 (1年・LH→FW) 静岡U-16選抜でプレスの練習をしていたのが、ここで活きたようだ。体力的な問題か流動的な動きができず、消えている時間も長いが、機を見た時の最初の三歩は、攻守共に速い。得点場面以上に、前半のシュートからストライカーらしさを感じた。
甲府では、藤田が別格。機動性と運動量が両立する動きの質と量の高さは、圧倒的。前半限定でスタミナ配分を考慮する必要がなかったのかもしれないが、26歳が15〜17歳相手に全力で走り回ることは、なかなかできるものではない。正確なキックで、あちこちで起点に。奈須はボランチというよりもフォアリベロとして機能し、屈強な肉体で攻撃を押し潰した。捌きの仕事は藤田らが担当したが、奈須の受け手の動きにやや問題があり、CBからの繋ぎのパスが狙われることに。後半から登場の田森は藤田ほどではないが、前線と最終ラインを繋ぐ藤田役をこなそうとする意欲を見せた。
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