2003年12月14日(日) |
Jユース杯 決勝トーナメント ガンバ大阪戦 |
03年12月14日15:30開始 万博記念競技場 第11回Jユースカップ2003 Jリーグユース選手権大会 決勝トーナメント1回戦 対 ガンバ大阪ユース ※45分ハーフ 天候:晴
▼布陣 −−−−−−阿部− 篠田悠 −−−−−
− 鈴木真 −−−−−−−−−大瀧−−
−−−−− 山本真 −枝村−−−−−−
− 高野美 −高柳−−村越−−森安−−
−−−−−−− 山本海 −−−−−−−
控え:前田、石垣、篠田大、上埜、岡村、柴田、八木 交代:後半30分:鈴木真司 →柴田和也 (大瀧を左MF、柴田を右MFへ) 後半34分:篠田悠輔 →八木和秀 (そのままFWに) 後半35分:枝村匠馬 →岡村総一郎(大瀧をボランチ、岡村を左MFへ) 後半46分:阿部文一朗→上埜健太 (そのままFWに)
ガンバ大阪ユース:
−−−−−−江口−−三木−−−−−−
−−−−家長−−寺田−−松岡−−−−
−−−−−−−− 與 −−−−−−−−
−−森山−− 牧 −−丹羽−−河内−−
−−−−−−−−三橋−−−−−−−−
控え:東、野村、伊藤、安田、横谷、岡本、出口 交代:後半00分:牧→伊藤、後半09分:江口→出口、後半29分:松岡→横谷、後半34分:河内→安田
▼試合展開 [関西でのガンバユース(クラブユース三大大会+α)] 38戦34勝3分1敗、157得点30失点 03Jユース杯予選 ○2-1F東京、○2-0甲府、 ○3-0磐田 03関西プリンス ○1-0阪朝鮮、○3-2水口、 ○3-2滝川二、△1-1久御山、○5-0一条、 ○8-0海南、 ○3-2神戸 ○2-0京都、 ○7-1滝川二 03関西クラブ選手権 ○2-0C大阪、○2-0京都、 ○7-2神戸 02Jユース杯決勝 ○3-0愛知、 ○4-0F東京、○2-1市原、 ○5-0広島 02Jユース杯予選 ○4-2京都、 △1-1C大阪、○3-0名古屋、○6-0神戸 02関西クラブ選手権 ○2-1C大阪、○4-1京都、 ○7-0神戸 02U-18関西リーグ ○5-3C大阪、○4-1大谷、 ○7-0弘陵、 ○5-0海南、 ○1-0耳成、 ○8-1阪金光、○5-0守山北 01Jユース杯決勝 ○4-0船橋、 △3-3柏(PK負) 01Jユース杯予選 ●2-5大分、 ○2-1福岡 ○19-1鳥栖
以上が、ガンバユース、最近の「関西」での主な公式戦の成績である。J村でのクラブ選手権は、意外に脆さを見せるガンバだが、関西では強いとか強くないとかのレベルを超越している。ギャバンの魔空空間並みに、関西では能力3倍になってそうだ。なにしろ、最後に負けたのが2001年9月30日の大分戦。その後、12月23日の柏戦でPK負けしたが、そこから数えても721日間負けなし。寺田・家長・三木・丹羽など、著名なタレントを揃える実力チームを相手に、関西不敗の幻想をも打ち破ることが求められる。正直、3年生のラストゲームを見る覚悟で、大阪への遠征を決意したのであった。 ガンバは、ほぼ予想通りのスタメン。このところ、2年生の出口が起用されることが多かったが、江口→出口の途中交代は、ガンバの「お約束」なので、どちらが先発したとしても、大差ない。一方、清水は先日、学芸大への推薦合格が報道された高柳が、実に6試合振りに戦列復帰。村越・石垣は共に高い身体・運動能力を誇るDFだが、互いに前に出ての潰しを得手としており、特徴の重なるところが多かった。後方でのカバーリングに長ける高柳の存在は、想像以上に大きい。しかし、前線の6人の攻撃タレントを如何に配列するかという課題は、未解決のまま。この日は、今ひとつ機能しなかった予選最終戦の布陣のまま、レフティの大瀧を右MFに起用して、試合に臨むことになった。
(左から大瀧、海人、阿部、真希、村越、美臣、枝村、悠輔、真司、森安、高柳)
[前半] 試合は静かな立ち上がり。アウェイの清水は、天皇杯逆転勝利したガンバサポの名残が残るスタジアムで、右MFに配置されたレフティの大瀧、久々にスタメンに復帰した高柳が、感覚を取り戻そうかとするようにボールを回す。特に右サイドは、阿部・悠輔・森安が積極的に絡んでパスを受け、大瀧が左に持ち替えて攻撃を滞らせないように、との意図が見えた。一方、ガンバも強引な攻撃は少なく、0分に清水・大瀧が、9分にガンバは家長がFKからシュートを狙った程度で、時間だけが過ぎていく。ただ一つ、8分に家長がリスタートを邪魔して警告を受けたのは、頂けなかったが。 14分、右スローインから森安がクサビ、阿部がポスト、再び森安が20Mミドル(枠外)といった辺りから、試合は動き出す。15分、ガンバは寺田が、右サイドから足下にボールが吸い付くようなドリブルで、小さくターンしてチェックを振り切る。と、次の瞬間、スルーパス。阿吽のタイミングで抜け出した三木が、PA内右45度からシュートを放つが、GK海人の胸にすっぽりと納まり、彼を脅かすには至らない。今度は清水。枝村の30Mダイアゴナルフィードを、PA右角で大瀧が左足を振り上げて中央に叩き、丹羽より頭一つ高い阿部が後ろに戻す。上がってきた森安が前に送ると、PAの右角から回り込みながら阿部が抜け出し、ダイレクトでシュートを放つが、GK三橋が処理。ドリブルとショートパスが主体のガンバと、長短と緩急のパスを使い分ける清水との、対照的な攻撃だった。 18分に、ガンバは江口が強引にドリブルで振り向いてミドルを放つが、枠外。再び今度は清水の番。22分、中盤の底で奪った真希が、枝村との小さなワンツーでスピードに乗り、前に突っ掛けたかに思うと、一転、40Mの弾丸スルーパス。反応するのはエースの阿部、真希とボールの方(左)に気を取られた丹羽に対し、裏(右)からS字を描くように回り込んで抜け出す。一気に丹羽を置き去りにした阿部は、完成された得点パターンの自信のままに、冷静にファーに流し込む。1−0。清水が先制する。
追い掛けたいガンバだが、引き気味になった清水に対し、変わらぬショートパスとドリブルのサッカーを繰り返す。展開が遅い上に、フィールドの幅を使って清水の最終ラインを分散させる意図も少ないため、PA手前で2、3のパスを繋いでも、結局は人垣に絡め取られる場面が目立った。一方の清水は、得意のサイド攻撃よりも、縦に速く、少ない人数で「攻め切る」ことを志向する。清水の速い攻撃に、ガンバは焦りのためか、反則が増え、なかなか攻めに出ることができない。 34分、森安のクサビをPA右角の悠輔が中央に流して阿部のポストを、丹羽が後ろから押し倒し、清水のFK。悪質なファウルではなかったこともあり、リードを許す展開に堪忍袋の緒が切れ始めた会場からは、ブーイング。騒然とした中、大瀧?(真希?)のクイックリスタートに抜け出したのは、抜け目ない男、枝村。が、唯二反応したGK三橋が距離を詰め、無理矢理放ったシュートはゴール左ニアに外れる。 その前後にも、32分に大瀧のFKから真希のミドル、35分にFKを真希、36分に枝村の左CKと沸かせる場面を作った清水。40分には、中盤の底に絞った森安のロングフィードを大瀧が受け、切り返して戻すと、枝村がダイレクトで速いスルーパス。後ろ向きの阿部が前に向き直しながら、ダイレクトで合わせたが、ゴール右に外れる。阿部や悠輔が前線から厳しくプレスする清水を前に、パスの繋がらないガンバは、ますます個人技偏重の傾向。ロスタイムに寺田が枝村のチェックを掻い潜って25Mミドルを放ったのが、唯一の好機と言える程度で、それも左上に外れ、アウェイの清水がリードして折り返す。
G大阪 清水エスパルス 6(2) シュート 8(3) ○大瀧、×森安、○阿部、◎阿部、×真希、×枝村、×阿部、×枝村 2(0) 右クロス 7(0) ×阿部、×阿部、×阿部、×悠輔、×森安、×森安、×悠輔 2(0) 左クロス 3(0) ×真司、×真希、×真司 1(1) 右側CK 2(0) ×大瀧、×大瀧 0(0) 左側CK 2(0) ×枝村、×枝村 0(−) 犯OS 0(−) 10(2) ファウル 7(2) ・悠輔、・真司、×村越、・森安、×高柳、・森安、・阿部
シュート: ◎は得点、○は枠内、×は枠外。( )内は◎と○の総計 左右クロス:クロスとは45度以内の角度でサイドから送り込まれるパス。距離の短いものを除く。 ◎は得点に繋がったもの、○は味方に繋がったもの(但しPAの外に流れたものを除く) ( )内は◎と○の総計 左右CK: ◎は得点に繋がったもの、○は味方に繋がったもの(但しPAの外に流れたものを除く) ( )内は◎と○の総計 ファウル: ×はDFゾーン(フィールドの自陣側1/3)での反則、( )内は×の総計
[後半] 後半も、序盤は清水の潰しからノーリスクの攻撃が目立ち、清水的には、巧く時間を無駄遣いさせていた状況だった。だが、後半9分、江口→出口の交代を機に動きが出はじめ、10分には、家長の柔らかいロビングパスを、三木が高柳に競り勝って右に流す。すると、179cmの出口と170cmの美臣のミスマッチ。ポジショニングに優れ、丁寧なヘッドのできる美臣だが、その場ジャンプの競り合いでは如何ともし難く、出口がもう一つ右に落とすと、そこにいつの間にか與(あたえ)が走り込む。右45度から20Mミドルを放ったが、GK正面。ガンバは直後にも、スルーパスを受けた出口が、村越に体を寄せられながら強引にシュートを放ったが、やはりGK海人がキャッチ。三井寿@スラムダンクではないが、「ウチのGKは海人だぜ?」。流れの中で、左右の揺さぶりなしにゴールを許すGKではない。逆に清水は11分、中盤の底の枝村?の対角線フィードを受けて、大瀧がスルーパス、それに阿部が抜け出しながらダイレクトで合わせたが、GK三橋正面。2本のパスで好機を作る清水、実に対照的。 しかし、ガンバは12分、家長が軽くワンタッチしてから急加速するフェイントで、森安を抜き去る。この時は大瀧の素早いカバーリングで、左CKに逃れるが、その天才を示し始める。ガンバは松岡・家長をサイドに張らせた上で勝負させることで、清水DFの分断を図る。16分には、枝村のチェックを外した松岡の右クロスを、ファーで森安が対空迎撃するが、これを家長が拾って、高速クロス。今度は、GK海人の素早い横っ飛びが阻んだが、鋭さを増す。17分、そのキャッチしたボールを、海人が前方へロングキック。空中戦の競り合いから、中盤やや右に流れた枝村に収まった。枝村は暫し、タイミングを図ると、柔らかいスルーパス。計ったような飛距離のパスに、ゴールラインの寸前で追いついた大瀧。でも、「え、大瀧はレフティ…?」。が、大瀧の「右足」ダイレクトでのクロスは、魔法が掛かったように、DF・GKのクリアできない高さで、ふわりと軌跡を描く。ファーで待つ阿部は、Jrユースからの6年間、大瀧のパスを何百回もそうしてきたように、ただ頭で押し込むだけで良かった。2−0。
2点を追い掛けることになったガンバは21分、遂に速攻を志向する。自陣右から中盤中央へのミドルパスは、やや長かったが、寺田がダイレクトボレースルーパスの超美技。抜け出した家長は必死にカバーに戻った森安に対峙すると、左足アウトでちょこんとボールを動かし、体を沈めて急加速する。森安の反射より素早く突破した家長は、低く速いマイナスの左クロス。だが、高柳と村越の密着された三木・出口は、最後は足を投げ出すも届かず、ボールはファーに流れていく。それを見届けた家長は、ゴール横のペットボトルを蹴り上げた。天才故の儚さなのか、家長はこの後、急速に輝きを失っていく。 流れは変わり、再び清水の縦に速い攻撃ばかりが、目立つようになる。中盤の底から、枝村・真希が対角線フィードを主に右サイドに送り、キープ力のある大瀧が溜めを作って、戻したところを森安や真希がミドルで狙う展開。
(突破口としては望むべくもないが、卓越した技術で高い位置に攻撃の起点を作った大瀧。阿部と森安が、パスを受けに近寄る)
しかし、フォアプレスを繰り返してきた清水にも疲労が目立ち始め、28分に真司がピッチの外で治療すると、結局戻れずに30分に交代。それも束の間、今度は悠輔が足を攣って、自ら外に出る。そんな中で32分、PA内の混戦から仕切り直し、背を向けたまま下がってきた阿部が右に流す。すると、密集したPAから釣り出された左SBの森山を、柴田は切り返してスカッと抜き去って、マイナス45度に小さく折り返し。PA内で受けた枝村、ボレーで合わせると見せて、細かい切り返しでCB伊藤を突破するが、シュート体勢で丹羽?に引っ掛かる。が、そのこぼれ球を悠輔、落ち着いて押し込んで、3−0。いつの間にかピッチに復帰していた悠輔は、決定的な3点目を置き土産に、34分には八木と交代した。
試合の大勢は決まり、清水はもう攻撃はお休み。公式戦では滝川二高戦以来、8試合連続で逃している完封の達成に、焦点は移った。が、やはり清水の終盤は落ち着かない。38分、寺田とのワンツーで縦に抜けた家長が、森安をまたも“ちょこん&急加速”のフェイントで抜き去り、左クロス。だが、高柳に引っ掛かり、軌道のズレたパスを横谷がPA手前からミドルで狙ったが、これもGK海人を脅かすには至らない。39分、スッと最終ラインから下がった三木が、PA手前でロングフィードを頭を捻って裏に落とす、テクニカルなポストプレー。これがピタリと出口の足下に落ちるが、シュートを空振り。焦ったか、清水DFもクリアを空振ったが、すぐに2トップへ体を寄せ、最後はGK海人が落ち着いてボールをキャッチした。 その後、42分、森安との競り合いでファウルを採られた家長が、起き上がろうとする森安を後ろから押し倒して、当然警告、そして累積2枚目で退場。チームメイトより3分早く、03年シーズンを終えた。それでも44分、岡村のファウルから中央30M程のFK、與が直接狙ったシュートがゴールの左上を僅に外れる、危ない場面。ロスタイムにも、寺田がドリブルから同期の三木へ、ユースでの「ラストパス」。三木は果敢にゴールを狙ったが、枠上に外れ、試合終了。ガンバは結局、PA内で放ったシュートが2、3本しかなく、清水が2回戦に駒を進めた。
G大阪 清水エスパルス 6(3) シュート 7(4) ○阿部、◎阿部、○大瀧、×森安、×真希、◎悠輔、×大瀧 2(0) 右クロス 3(2) ◎大瀧、×大瀧、○柴田 5(0) 左クロス 0(0) 1(1) 右側CK 1(1) ○大瀧 2(0) 左側CK 0(0) 1(−) 犯OS 0(−) 7(2) ファウル 6(1) ・阿部、・真司、・森安、・村越、・阿部、×岡村
(見事な勝利を飾った選手達が、珍しく声出しのあったサポ集団に挨拶。むしろ静岡の試合だと見守ってるサポが多いのだけれど、昨年の埼玉での試合でも声出しがあったなあ)
次の対戦は、大分トリニータU-18と夏の再戦。
▼試合結果 清水エスパルスユース 3−0 ガンバ大阪ユース 得点:前半22分:清水 ・阿部文一朗(山本真希・スルーパス) 後半17分:清水 ・阿部文一朗(大瀧義史・右クロス) 後半32分:清水 ・篠田悠輔 (なし) 警告:前半08分:ガンバ・家長昭博 (遅延行為) 後半09分:ガンバ・河内 剛 (反スポーツ的行為) 後半42分:ガンバ・家長昭博 (反スポーツ的行為) 退場:後半42分:ガンバ・家長昭博 (警告2回)
▼選手寸評 [私撰MVP] ●高柳亮太 90分間出場 個人のパフォーマンスも悪くなかったが、高柳の存在価値を証明した試合。彼の堅実なカバーリングな支えられて、他の最終ライン、特に村越は溌剌、安心して前での潰しに専念できた。下がってのポストは許したが、三木との空中戦にも遅れを見せず、ガンバの中央突破をPAの手前で遮断した。
[私撰MIP] ●阿部文一朗 89分間出場:シュート5(枠内4、得点2)、クロス3(右3) 「得点」という役割を全う。先制した上にアウェイということで、拙速を尊ぶ展開が多かったが、厳しいパスを着実にシュートという結果に結びつけた。先制点は、須藤ジャパンの中核であった丹羽の裏を食わしたオフ・ザ・ボールの賜物であり、ブンのユース3年間の成長を象徴するものである。
●枝村匠馬 80分間出場:シュート2 真希との共同作業の成果と言うべきだが、なんだかんだで3得点に絡んだ枝村。守備も(枝村にしては)精力的で、攻撃の場面ではフィールドに広く、起点を作っている。得意の低く速い対角線フィードだけでなく、独特の柔らかさで急所を突いた。チームが引き気味だったこともあって、枝村度は70%程度。
[個人的好印象選手(相手方)] 寺田紳一(3年):巧い選手は多いが、局面を変化させるセンスを感じたのは寺田。ドリブルから次の展開が速い。 與貴行(2年):死にそうなぐらい走って「黄金の中盤」を一人で支えた選手。攻撃にも第三の動きで顔を出した。
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