2003年07月21日(月) |
クラブ選手権 全国大会 展望 |
ハードディスクの故障によって、半ば書き上げていた原稿が水の泡と消え、途中、激しくやる気を失っていたり。ま、なんとか仕上げられました。
清水エスパルスユース
東海地区代表[静岡県] 監督・築館範男
昨年度王者。だが、昨年のチームは夏に頂点に立った後、主将にて絶対的存在であった杉山浩太が静岡選抜、世代別代表、トップトーム、そして怪我などが理由で離脱しがちになったこと、更にトップ不振に伴う行徳→築館の緊急監督交代に伴い、調子を落としていたというのが正直なところだろう。そのチームを引き継いだ今年の3年生だが、Jrユース時代に高円宮杯を制したものの、「史上最強世代」の次ということで決して評価は高くなかった。更に今年の新入生は、篠田・高野一の2人がエスパニョール移籍で途中離脱したこともあり、「史上最弱」の声もあった学年だ。前途は多難に思われた。 実際に順風満帆で来られたわけでは、決してない。元々、清水は少数主義の関係で下級生が主力にならざるを得ず、彼らの慣れと伸びに伴って秋口から漸く本領を発揮するチームなのだ。だが、今年は2月から中日本スーパーリーグなどの試合を精力的にこなしながら、築館監督は意欲的に新戦力のテストやコンバートに取り組む。その結果、早々に1年生を計算できるようになった現在、層の厚さは過去最高と呼んでも過言ではないだろう。中日本と東海プリンスで3戦全敗だった名古屋に3−1で勝ってクラブ選手権本大会出場を決め、そのクラブ選手権予選で2戦全敗だった磐田に4−1で勝って高円宮杯出場をほぼ手中にするなど、結果も伴っている。その磐田戦後の各務原戦も4−0で勝って初代東海王者に輝き、クラブ選手権は岐阜工の高円宮杯出場を賭けて(笑)挑むことになった。
中心になるのは今年もセンターラインで、U-18日本代表トリオのGK山本海(3)、MF枝村(2)、FW阿部(3)が軸となる。だが、昨年と違い、今年は実力派3年生の主将・大瀧(3)や森安(3)をサイドに配することで、攻撃の幅が広がっている印象がある。布陣は去年と同じく、4−4−2。DFが最終ラインを離れて攻めることも多いが、今年は必ず2列目の選手が縦のポジションチェンジでカバーするようになっており、築館色が出ている。 昨年から森安を残して入れ替わった最終ライン。しかも、昨年はせいぜい篠田(3)が森安と代わって交代する程度で殆ど固定されていたが、あまり未成熟という印象はない。GK山本海のコーチングは常に怠ることなく、高柳(3)は身体能力こそ低いが判断力に秀で、渡邊の知性と勇気に溢れた高いラインコントロールを忠実に引き継いでいる。 中盤の司令塔は、枝村。今期序盤は共に攻撃に長のある大瀧とボランチを組んで、互いに互いを消し合っていた嫌いがあったが、ここにU-16日本代表の山本真(1)が台頭、中盤の潰しに奔走することで、枝村が捌いて大瀧の攻撃力を活かしながら、前線に絡めるようになってきた。彼らのパスを前線で待ち構えるのが、エースで昨年度大会MVPの阿部。大会通算12得点のストライカーは、ここにきて10試合連続得点と調子を上げてきた。前線の阿部、左の大瀧、中盤の底の枝村の三角形を埋めるセカンドストライカーは、今年のチームにおける課題の一つ。 予選の組み合わせは、恵まれたと言ってよいだろう。無論、底上げの著しいクラブユースにおいて油断できる相手などはいないが、何とか勝ち進んで勢いに乗りたい。闘将大瀧を中心に気持ちの強い選手が揃っており、例年のようなひ弱さはない。空回りには気をつけつつ、一戦一戦を大事に闘ってもらいたい。
■選手名簿 別記参照方。
■基本フォーメーション(名前の横は学年)
−−−−−−−鈴木2−−−阿部3−−−−−−− (獅子内3) −大瀧3−−−−−−−−−−−−−−−谷野1− (柴田1) −−−−−−−枝村2−− 山本真1 −−−−−−
−篠田3−−−高柳3−−−村越2−−−森安3− (岡村2) (石垣1) −−−−−−−−− 山本海3 −−−−−−−−−
ほぼ固定されていた昨年と違い、森安や大瀧がボランチも務めるなど、選手起用は多様を極める。ほかにも、GKに前田(1)、右SBに杉山(2)・小林(3)、左SBに高野(1)、右MFに上埜(2)、FWに八木(1)なども考えられる。
■チームプロフィール 平成4年、清水エスパルスの下部組織として発足。当初より一定の成果を上げていたが、Jrユース1年生から6年間一貫指導を受けた市川・平松の世代をトップに送り込むことで、育成の基本プログラムを完成したと言われる。故に、この学年はユース1期生と呼ばれており、今年の3年生は6期生となる。望月保次・現強化育成本部副本部長が「指導者の指導者」という立場にあり、練習前と後は指導者同士でミーティングを開くなど、監督の色は残しつつ、選手が常に一定の方向性で導かれように心掛けられている。 その指導方針は、監督が思案した様々な状況設定の中で、選手たちに自主的な工夫を求めるもの。ただし自主性とは言え、常に前向きに攻めること、即ち相手を抜く楽しさ・シュートを放つ喜び(或いはそれを阻む面白さ)を追求するのが前提で、試合中でも上級生から下級生に対して頻繁に「勝負!」という声が上がる。一方、決して放任主義ではなく、テクニック重視。中でも、一体感のあるボール扱い、独特の素早しっこさ・リズム、正確なボールインパクトなどが意識されている。最終的には、あらゆる状況の中で通用する「これだけは」という独自の武器を持たせることが狙い。それ故、選手がやれないのか、やらないのかを見極める必要があり、そのためには6年間一貫指導・少数主義が有意義なのである(以上、望月氏のインタビュー記事などを参考にした、筆者の私見)。
監督は昨年9月に就任した築舘範男氏、43歳。愛知県豊田市出身で、豊田西高校からトヨタ自動車に進み、引退後はトヨタ・ランパスで指導・強化を担当した後、日本文理大附属高校(大分)での監督を経て、清水ユース監督に就任した。前述の通り、大胆な抜擢・コンバートを躊躇しない勇気ある監督だが、戦術自体は極めてオードソックス。ポジションの流動性を前提に、スペースへの動き出しとカバーを意識するよう指導している。結果を求める姿勢が強く、試合中は独特の高い声で積極的に盛んにコーチングをしているが、選手の自主性を育てるという点ではマイナス面もあるだろうか。また、高校での監督歴のせいか、挨拶や整理整頓、身だしなみなどを躾る姿も見られる。息子の秀飛は四中工でポストプレーヤーを務めるが、ブンと同じ4月2日生の監督も、現役時代は同じプレースタイルだったのかもしれない。 コーチは小池良平氏、22歳。静岡学園から大分に入団した後、2年目の冬に移籍リスト掲載の憂き目に遭う。その後も現役続行に拘ったようだが、昨年7月に地元クラブであるキューズFCでコーチとして指導歴をスタートさせた。築館氏の意向もあるだろうが、アップの際に例年より盛んに指示を出す姿が見られる。GKコーチに中原幸司氏、32歳。選手としては203試合(18,818分)連続フル出場を達成した真田の前に殆ど出場機会を与えられることはなかったが、99年のステージ優勝を機に引退すると、GKコーチとして鶴田・浅山をトップに送り込み、山本・前田の世代別代表選手を育成するなど、高い貢献を果たしている。試合前のアップでは、冗談を交えた選手に近い目線ながら、プレーを厳しくチェックしている。
■主力選手 ●阿部文一朗 1985.04.02生 [182cm/75kg] U-18日本代表候補、二種登録。昨年度大会MVP。圧倒的な身体能力・運動能力を宿す生粋ストライカーだが、戻ってのポストからゴール前に入り直す動きが洗練され、厳しいマークも苦にしなくなった。裏に抜けながらのドリブルシュートに完成された形があり、ゴールを向かせたら終わりである。
●枝村匠馬 1986.11.16生 [175cm/67kg]↑ U-18日本代表候補、U-17日本代表、二種登録。Jrユース時代は中盤の底で自在に捌くことに没頭していたが、近年は前線の作ったスペースに飛び出す動きを常習し、高い決定力を発揮している。冷静に試合全体の機や壺を見極められる選手だが、身体能力自体は高く、競り合いに臆することはない。
●山本海人 1985.07.10生 [188cm/78kg] U-18日本代表。堅硬かつ柔軟なGKで、身長を活かしてハイボールには滅法強い一方、コースを狙えど巨躯を嫋やかに倒してゴールを防ぐ。ポカもあるが自信に満ちて安心感があり、コーチングでチームを統一。果敢な飛び出しと確かな足技でフィールドプレーヤーを翻弄する姿は、ふぁんたじー。
[WHO'S THE KEY] ●森安洋文 1985.04,23生 [177cm/68kg] 大瀧は黙ってても本分は果たすだろうということで。ボランチ以下、守備の6ポジション全てを標準以上でこなすユーティリティ。その理由は、高い身体能力と基礎技術を習得しているがため。特にキックは繊細かつ強力で、ミドルは高い決定力を誇る。
●山本真希 1987.08.24生 [175cm/68kg] U-16日本代表。今年は主にボランチとFWを担当するが、DF・サイドに関係なく、できないポジションはない。彼もまた、身体能力の高さを評価されるが、攻守の切替の速さが何よりの強み。それも自分のプレーだけでなく、周囲の状況に応じて切り替えられる。
[NEW COMER] ●村越大三 1986.05.15生 [177cm/67kg]↓ CBとしては小柄ながら、身体能力の高いDF。声とプレーで鼓舞できるところが、杉山・石垣に対して優位に立つ部分だろうか。その勇猛な姿に反して、フィードは実に優雅で正確なものがある。
●谷野由紘 1987.04.08生 [170cm/66kg] 今年度の外部参入組。粘りある突破が魅力の身体能力系だが、山本真同様に周囲の状況を視る目があり、攻守のバランスが良い。柴田・上埜とのポジション争いを勝ち抜けるか。
■出場までの軌跡 [県大会・成績/2位] 第1戦:1−2 ジュビロ磐田(静岡) 得点:阿部 第2戦:8−0 掛川JFC(静岡) 得点:阿部3、大瀧2、篠田、石垣、山本真 第3戦:3−0 本田FC(静岡) 得点:阿倍3
[東海大会・成績/2位] 1回戦:7−1 三好FC(愛知) 得点:獅子内3、谷野、枝村、阿部、村越 準決勝:3−1 名古屋グランパス(愛知) 得点:大瀧、阿部、枝村 決勝戦:1−2 ジュビロ磐田(静岡) 得点:阿部
[参考・プリンスリーグ東海] 9試合7勝1分1敗、得点33失点10(1位) 得点者:枝村7、森安6、大瀧6、阿部5、八木4、山本真2、岡村、石垣、鈴木 得点占有率:枝村287%、森安218%、阿部150%、大瀧97%、八木62%、山本真35%、鈴木25%、石垣17%、岡村10%
■出身現役Jリーガー 平松康平、市川大祐、池田昇平、太田圭輔、村松潤、鈴木隼人、高木純平、塩澤達也、杉山浩太(いずれも清水)和田雄三、鶴田達也(いずれも甲府)、野澤洋輔(新潟)
■試合日程 7月27日(日) グループリーグ第一戦 13:00 対 大分トリニータ 7月28日(月) グループリーグ第二戦 11:00 対 川崎フロンターレ
7月30日(水) グループリーグ第三戦 15:00 対 ベガルタ仙台 7月31日(木) 決勝トーナメント初戦 11:00/14:30
8月02日(土) 決勝トーナメント準決 14:00 8月03日(日) 決勝トーナメント決勝 14:00
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