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| 2007年01月12日(金) ■ |
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| カンテラ伯爵と25のチチュエーション |
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伯爵 in 12才
伯爵とCは犬に追われていた。 よくわからない。ふと後ろを向いたら犬がこっちに向かって走ってきていて伯爵もCも反射的に走った。 そしたら犬も追いかけてきた。 最初から、狙われていたらしい。
走った。 走った。 呼吸をするのも忘れて走った。
追いかけてきた。 追いかけてきた。 今になって思い返せば、あの時その犬は尻尾を振っていたが、僕らにはプレデターにしか見えなかった。
火事場の馬鹿力というのか、それとも手加減されていたのか。 伯爵達は犬よりも速く走った。 クラス内最鈍足の伯爵が、いつもかけっこでは1位のCと同じ速さ。 人間は命かかればなんとかなるものだなあ、と思いながら伯爵は道を右に曲がった。 Cは、まっすぐ走った。
あれ?
伯爵は一瞬、思考が止まった。 何故、右折したのだろう。 その時はとっさの判断だった。きっと、犬もまっすぐよりジグザグの方が追いにくいなどと考えたのではないだろうか。
そして結果として犬はまっすぐ走っていったCを追いかけた。 「Cくーん!」 「伯爵ー」
そして、犬を連れてCは見えなくなった。
僕は帰った。 帰った。 追いかけても、どうにもならない。 せめて、僕だけは帰ろうと。
次の日、Cは学校に来ていた。 機能のことは話さなかった。
どうやらCにとっては話す必要もないほどどうでもいいことらしかった。
けれど、カンテラ伯爵にとっては、人生に初めて本気で走った日であり、思い出すと今でも笑いがこみ上げる。
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