独り言
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2006年07月17日(月) テリーデイズというBandについて・その32

1991年3月31日
午後10:20頃

パーティーも佳境に差し掛かり最大の盛り上がりを見せていた最中オーウェンの扉を激しく押し開けて飛び込んできたのは蛇孔やスネークストリートの雰囲気とは無縁と思われる一人の地味な中年女性
誰しもが顔を見合わせ何事かと訝しく思っているとその女性に気付いた亜龍は即座に反応を示し何も言わずその女性と供にオーウェンを飛び出していった

これも後の調べで判明した事なのだがこの女性というのは亜龍の母であるミツコ・パークハイドのかつての仕事仲間でありその当時バンドの件で家に居る事が少なくなっていた亜龍の代わりにミツコの看病をしてくれていた張雲玲という人物でこの時彼女は亜龍にミツコが病院に緊急搬送された事を知らせに来てくれたのだった


ミツコの担当医師に話を聞くと
「安定していた病状が急激に悪化し心機能がかなり低下していました
それに伴って免疫能力がほぼ失われてしまい彼女は複数の合併症を患ってしまっていたんです
病院に搬送されてきた時には呼吸も正常に行えない位に衰弱していました」
という事でその病状はかつて無い程に緊迫した局面をむかえていた事になる

しかし不思議な事に亜龍が病院に到着するとそれを見計らった様にミツコの悪化した病状は一時的になりを潜め会話する事は出来なかったものの意識はあった様で集中治療室のガラス越しに見守る亜龍に対し手を招く様な素振りを何度も見せたという

その時現場に居合わせた張雲玲の話によると
「ユウちゃん(亜龍の日本語名)はただ黙ってじっとガラスの向こうのミッちゃんを見てたわ
…見てるっていうより睨んでるみたいに怖い顔してた
そんなユウちゃんの様子が気になって私が『あなた…今何を考えてるの?』って聞いたらユウちゃんはただ『呼んでるんだ』って言ってそのまま1時間近くその場所を離れようとしなかったの」
という事で総会の時に続き亜龍が呼んでいたものというのが何なのかは定かではないが間違いなく彼にはその対象が存在していたはずでそれとは彼が日記の中に産み出してしまったあの悪魔なのではないかというのが私の個人的な見解である


病院側は「全くもって不適切な処置だった」とその時の自分達の判断に非があった事を認めているが亜龍の強い希望があったとはいえ絶対安静にしていなければならなかったはずのミツコに対し翌日の明け方には退院の許可を出している

「何分全ての根源となっている心臓疾患の原因が全く不明だったもので病院側としても手の施しようが無かったんです
あのまま入院していたとしても満足な治療を施す事は…多分出来なかったと思います
息子さんもきっとそれを察知していたんじゃないでしょうか?
何が何でも家へ連れて帰るって言ってきかなかったんです
私どもとしましても苦汁の決断だったという事を何卒ご理解頂きたいと思います」
と担当医師は語ってくれた



この日亜龍の日記には約半年振りに悪魔が姿をあらわしている

しかしその内容は終始に渡り支離滅裂を極め全く理解不能なものである上に書かれた文字の大半は暗闇の中で書いたのかと思わせる程にいびつな姿をしており読解する事は極めて困難なものとなっている

辛うじて文章として成立している箇所を挙げるとするならば冒頭部分の
「悪魔が呼んでいる」
と中盤付近に何度も繰り返し書かれている
「頭が痛い」
という言葉位のものだろう


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