独り言
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2006年06月22日(木) テリーデイズというBandについて・その20

1990年9月

過去5度のライブを経てテリーデイズの音楽はごく限られた人達の中にだけだが確実に浸透しそしてその波は少しづつスネーク・ストリートという無法な街から外界へ溢れだそうとしていた


その手応えを誰よりも素早くそして力強く感じ取っていながらも亜龍の変質によって確実に膨れ上がり続けるテリーデイズというバンドの希薄な余命に責め立てられていたスージー・キューはここでもう一度サン・レコードのジャックと接触を試み彼女には似付かわしくない方法でレコーディングに関する指南を願い出た


誰の人目にもつかぬ様『ミューズ』のバックヤードにて行われたこの懇願の一部始終を偶然にも目撃してしまった女店員は
「姐さんが…誰かに頭を下げているのを見たのは多分世界で私一人じゃないかしら?」
と言いその時のジャックの様子については
「あのエロブタメガネブタの野郎…いつも偉そうにふんぞり返ってるくせに余りの姐さんの低姿勢振りを見て逆にビビッてたわ
…きっとズボンの中はビショビショだったんじゃない?」
と言っている

いつもは客として横柄に振る舞っていたジャックであったがスージー・キューの持つ『裏の影響力』は充分に理解していた様で彼は早急にテリーデイズの為にレコーディングスタジオとエンジニアを手配する事にした



1990年9月22日

この日テリーデイズは通算2度目となるレコーディングを行う

それはかつて「門前払いされる為に門に近づくことも許されない」と感じていたプロユースのスタジオに於いてプロのレコーディングエンジニアを迎えての作業となった


亜龍の精神状態も依然として安定を保っておりおおむね問題は無かったが録音方法に関して亜龍が
「絶対に歌も演奏も一緒に録音する」
と言ってきかなかった為最初現場は多少の混乱にみまわれた
そして何とかセッティングも済みいよいよ作業に取り掛かろうとする段になると今度は
「全曲1テイクしか演らない」
と宣言し実際にその通りにした


こうして録音された音源には歌詞や演奏のミステイクもそのまま残されており無理矢理の一発録りによって生じたであろうノイズも所々に紛れ込んでいた
しかしそれ等はロックミュージックには必要不可欠と思われる無軌道さや強烈な初期衝動を示すに充分な趣を兼ね備えており『生身の人間が奏でるものとしての音楽』を切実に表現した他に類を見ない唯一無二の音源となっている


前回のレコーディングでは出来上がった音源の余りの陳腐さに不満を爆発させマスターテープを叩き割ってしまった亜龍だったが今回のレコーディングには満足した様でそれを示すものとしてこんなエピソードが残っている

残念ながら音源には収録されていないが亜龍は全作業終了後に独りレコーディングブースに戻りスージー・キューのギターを借りてあの『焼売童子』のテーマソングを独自の方法に基づいてマイナー調に変換したものを弾き語りそれを録音させそしてどれ位振りかもわからない程に懐かしい笑顔を浮かべながらエンジニアが痺れを切らして注意するまで何度も何度も繰り返し聴いていたという



今回のレコーディングでは8曲録音されたが亜龍の
「真に迫り切れていない」
という意志によりカットされたものがあり残された曲としては前回同様の
「Like the elephant」
「Spri」
そして新たなものとして
「World Wide Disturbance」
「Chord Green」
「to N」
の3曲を加えた全5曲が挙げられこれ等がテリーデイズの初音源に収録される事になった


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