独り言
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2006年06月12日(月) |
テリーデイズというBandについて・その18 |
1990年7月12日〜7月23日
失敗に終わった初レコーディングが行われた日の翌日から亜龍は約11日間程北京近郊から姿を消している
亜龍の変質以降バンド内には『他人が見ても明らかにわかる程の溝』が生じておりそれはスージー・キュー曰く 「音を出すという行為以外の方法で亜龍とコミニケーションを取る為には限り無く不可能に近い可能性に賭けるしか無かった」 程に深刻な状況だった様で当然亜龍は誰にも何も告げず(そして当然亜龍には誰も何も聞かず)北京を離れていた
その11日間を知る為に亜龍の日記をめくってみると彼は過去4回のライブでギャランティーとしてスージー・キューから受け取った金をそれまでほとんど使わずプールしていた様でその貯めた金を使って何故か彼は『南アフリカ』に渡っていたらしい
亜龍の友人によると変質後亜龍は北京郊外にある非合法で入手された海外のカルト書籍やアダルト雑誌等を専門で扱う『フリーク・カンパニー』という店に頻繁に足を運んでおり亜龍の自宅の本棚はそこで購入したと思われる『悪魔信仰』に関する本で埋め尽くされていたという そしてその多くが南アフリカにおける悪魔信仰について記述した物だったとも記憶している
しかしその友人の話だと亜龍は決して悪魔を崇拝していた訳では無く「悪魔の正体を探る為」に本を読んでいると言っていたそうだ
ここで亜龍の日記に話を戻すとその11日間の記述はそれまでの散文的な手法によって書かれたものとは異なり「午前6:27 起床」の様にある事実をそのまま克明に記述していくという日記というより記録に近いものがメインとなっている
その足跡を辿ると亜龍は南アフリカに到着した2日後にカルト雑誌で読み最も興味をそそられていたらしい『D.I.H.』という宗教団体の門戸を叩いている (我々の調べによると日記の記述にあるこのD.I.H.という名の宗教団体は世界中の何処を探しても存在しない しかしその当時南アフリカのケープタウンを拠点としていた反政府組織に『Devil in Heven』というものがありその組織は資金調達の為に公の水面下で宗教団体を運営していたという噂がありD.I.H.とはこれの事を指しているのではないかと考えられるが真意の程は定かではない)
そしてそこの若者達と共に約一週間にわたる「暴力と屈折愛に満ちた限り無く天国に近い地獄」を体験しその共同生活の中で「神は全てを創造しそしてその罪深い行いを全て悪魔のせいにした」という独自の真理に到達し南アフリカを後にしている
帰国後亜龍は例の如く何事も無かった様にスタジオに現われるのだが今回は『目で見ても明らかにわかる奇怪な変貌』を遂げていた
亜龍はそれまで大切に伸ばしていた黒髪をバッサリと切り落とし代わりに頭にはまるでヨーロッパの童話に出てくる『天使』の様な金色のカツラをかぶって現われたのである
この行為に関して亜龍の日記には 「悪魔は今でも神を憎みその喉元に剣を突き刺す瞬間に恋い焦がれている だから俺は天使の振りをして奴等をおびき寄せ全てに終止符を打ってやる 何故なら俺自身が神のしでかした罪そのものであり罪そのものであるという事は即ち神そのものであるという事に他ならないのだから」 と書いてあり現実を生きる自分自身と虚構の存在である神とを重ね合わせその軋轢によって生じた歪みにそれまで抽象的な扱いであった悪魔を据え置く事によって自分自身の新たな存在意義を強引に決定づけてしまったある意味亜龍らしい何処までも不器用で屈折した心象風景を窺い知る事が出来る
しかしこんな亜龍であったが母であるミツコ・パークハイドの看病の為に病院へ行く時だけは 「母さんが驚くといけないから」 と言って金色のカツラを外しずっと以前の
「陽気でお茶目な誰からも愛される亜龍を必死で演じていた」
と古くからパークハイド家と親交があった知人は話してくれた
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