2002年01月18日(金)
「天上では今日はクリスマス・イブと呼びましてね…」
いつもの執務室、いつものお茶の時間。いつもの様に参謀であるサフィルスが優しい思い出話をしてくれていた。
「『神様』の誕生日の前日なんですよ。翌日がクリスマス。イブの夜にはね、『サンタクロース』という方が良い子にプレゼントを配って回ってくださるんです」
「さんたくろーす??」
アレクは物珍しそうに反芻して見せた。サフィルスはそれを聞いて微笑む。
「ええ。サンタさんと言う人もいます」 「それってね、俺もプレゼントくれるかな?」
ぱぁっと紅い瞳を輝かせて訊ねてきた。
「え…?そ、そうですね…もしかしたら…」 「マジ?やったぁ!♪」
弁明に苦しむサフィルスの言葉が終わらないうちにアレクは一人勝手に納得して執務室から飛び出して言った。その朗報を大好きな弟に報告しに行ったのだ。
「…架空の人物なんですけどね…」
その言葉を出すのはかなり遅かった。
るんるん気分で自分の執務室を出たアレクであったが、既に機嫌は斜めになっていた。 理由は簡単。先程入手した『サンタさん』情報を大好きな大好きな弟のプラチナに提供したところ、「非現実的すぎる。そんなヤツ存在するわけが無い」と一蹴されたからである。当然、「そうだよね〜」と言って引き下がるアレクではない。
「いる!絶対にいる!!そりゃぁ、奈落には来てもらえないかもしれないけど…そのうち天上と和解したらココにも来てくれる様になるよ!!」 「判らないヤツだな…よく考えてみろ。一軒一軒プレゼントを配り歩くのだろう?どれだけの労力が必要になると思うんだ?!たった一夜で一人の…たとえ天使でも、人間がそんな所業成し遂げられるわけがないだろう?」
まるで子供の喧嘩…いや、子供なのだが。
「いる!」 「いない!!」
言い合いは簡潔を極める。お互いの主張を言い合ってから数分、無言で睨み合いをした。 そして暫くして。
「もういい!!プラチナの分らず屋!!大ッ嫌いだ!」 「上等だ。明日の朝になって『やっぱりいなかった』なんて言っても赦してやらん!」
そしてまた睨み合い。 最後に『ふん』と鼻をならしてアレクはプラチナの執務室を離れた。
「あ〜あ、怒らせちゃいましたね…」
そこで初めて今まで静観していたプラチナの参謀のジェイドが口を開いた。
「知らん。俺も怒っている。」
ぶっきらぼうにそう言い放つプラチナを見てジェイドは言葉にせず『やれやれ』と言った感じに方を竦めて見せた。
「『サンタクロース』なら俺も書物で知っている。架空の人物だろう?」 「半分アタリ、ですよ」 「?」
意地悪そうな笑みを見せて言うジェイドにプラチナは表情で何のことか訊く。
「いるけどいません」
時々わからないことを言うとは知ってはいたが今回はプラチナにとってその言葉は本当に謎だった。
「つまり『みんなのサンタさん』ってのはいないんです。でも、個々に対する『サンタさん』はいて…それの正体は両親だったり恋人だったり様々なワケです」 「つまり『サンタ』というのは職業の固有名詞みたいなものか?」 「ま、おおっぴらにいえばそんなモンです。…プラチナ様がなってあげれば宜しいんですよ。『アレク様のサンタさん』に」 「しかし俺は何も用意してないぞ?のれに兄上が何が欲しいのか判らないし…」 「シナリオ通りなら今夜アレク様は枕もとに靴下を置いてその中に欲しいものを書いた紙を入れてるハズです。それを見て用意できそうなものなら用意してやればいいんですよ。無理なら翌日でもいい」
それを聞いてプラチナは目を見開いた。
「…時々、お前は良いなことを言うな…」 「プラチナ様は時々、一言多いですよね…」
―――――――――――その夜。 プラチナはジェイドの助言に従って寝静まったアレクの部屋に忍び込んだ。 こう言うとどこぞの泥棒さんみたいだが実際ハタから見るとその表現がぴたりと当てはまるのだから仕方がない。 明かりは当然消しているため部屋の中は暗い。静かにアレクの寝床に接近してあらかじめ用意していたカンテラで枕もとを照らす。
あった。プレゼントを入れる為の靴下だ。
物音を立てないように慎重に靴下の中身を探る。予測通り紙が入っていた。紙に書かれてある文字をカンテラで照らして読む。 一瞬、プラチナは固まってしまった。
『サンタさんへ。 今夜、お前は俺にプレゼントを届けに来てくれてるんだと思う。でも、他にお願いしたい事があるんだ。俺さ、今日…サンタさんのことでプラチナと喧嘩しちゃったんだ。本当はとっても大好きなのに頭に血が上って『大嫌い』なんて言っちゃった。プラチナはも凄く怒ってた。このままは嫌だ。だからサンタさん。プラチナと仲直りできるようにプラチナの機嫌を直してください!俺、明日になったらちゃんと謝るから!!…お願いします。 アレク』
…なんと言うか…自分がこの紙を見るというのが見透かされてしまっていたのだろうか?それとも本気で架空の人物である『サンタさん』にお願いするつもりでいたのだろうか? …どちらでもいい。 この兄は嬉しいことに本当に自分を好いてくれてるのが判ったのだ。そして自分もこの兄を同じくらい…いや、それ以上に愛しいと想う。
明日、自分の方から仲直りを申し出よう。以前淹れてやった桃のジャムが入ったお茶がいいか。あれをたいそう気に入っていたみたいだし。『クリスマスプレゼント』と称した最高のお茶を淹れてやるとしよう。アレクのためだけに。他のヤツは当たり前だが除外だ。
…なぜなら自分はアレクだけの、『サンタクロース』なのだから。
□□後書き□□
恋人はサンタクロース!背の高いサンタクロースッ!!(絶叫)はん!何だよ何だよ。俺はどうせイブも当日も家でちくちく布と睨めっこ、外ではしゃかしゃかとバイトだよぅ!!世界で一番大好きな人とも年明けまで会えないしねぇ!!しかもバイト先のマスターに帰るとき言われちゃったよ。『19歳の女子大生がクリスマスの日にバイトなんかに打ち込むなよ…』 じゃぁ休ませてくださいよバイト…(吐血)したら私だって世界で一番大好きな人と過ごせたかもしれないしさー。遠いんだよ、大阪と京都の距離はさ―――… あんまりにも悔しいので他に書きかけの小説ほったらかしてプラアレクリスマス小説書いてみました。本当はジェサフィ風味も加えたかったんだけどね。でもね、もうすぐで5時。朝の。日付は26日。 もうクリスマス終わってるっちゅーの!! …はぁ、もう寝ます…。虚しいけど。でも、久しぶりのラブ甘プラアレ書けてしゃーわせvv
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