2002年01月16日(水)
朝、起きたら………兎耳が生えてていた。
「…何だ、それは」
淡々と訊いてくる弟に逆ギレしそうになったが何とか堪えた。
「こっちが訊きたい!」
でも怒りを隠そうとする訳でもなく頬を膨らませて悪態をついた。 まだマシだ。コレを見たときの弟の反応は。紫紺の髪の自分の参謀や桃色の髪の遊び相手のアプラサスやその他の仲間たちは一様に声を揃えて第一声が「可愛い」だったから。 自分は男なのに可愛いと云われて全面的に嬉しくなる訳が無い。
「早く取れ」
ため息を漏らされた。…でも、取れと言われても…
「取れないよ。生えてるもん」
至極真面目に答えたし事実だった。なのに今自分の頭部から生えている問題の『兎耳』を取ろうと引っ張る。
「イッ…イタイイタイイタイタタ!!」 「…本当だな、体温まである…」 「う゛〜〜…当たり前だッ!!」
その愛らしい瞳にうっすらと涙を浮かべてアレクは力いっぱい弟を睨んだ。
「…ふぅ」
しばらくして、仕事が一段落したのか、プラチナは手を休めて溜息をついた。
「♪休憩?♪」
アレクは休憩のときに入れてくれるプラチナの紅茶がとても大好きだった。だから、今日も今か今かと待ち望んでいたのでらんらんと訊いた。 …その時に例の兎耳は無意識にぴょこんと直立し、ぴくぴくといかにも『嬉しい』と言う感情表現をしているように動いた。
「……ぶッツ!!」
普段は笑顔どころか微笑すら見せない弟が勢い良く吹いたのでアレクは『笑われた』と言うことに気がつかなかった。 「ど、どーしたんだよッ!!?」 駆け寄って顔を覗き込む。
「…ふ、ははは…兄上…耳が、…ははは」
そういわれてようやく耳のことで笑われていることに気付いてムッとする。
「み、耳が何だよ!?」
その時にもアレクに付いている兎耳は怒りを表すかのように左右に大きく揺れる。 そしてそれを見て更に噴出してしまう、プラチナ。
「…な、なんなんだよ―――――ッツ!??」
自分は何もおかしいことはしていないつもりなのに笑われるのはアレク以外にとっても不愉快極まりない。 しかも、最愛の弟に、だ。 そうして怒りを露にしていた顔も兎耳も終いにはしゅん、と垂れて『悲しみ』の表現に変わる。
「プラチナのばか…いっつも笑いかけてくれさえしないのに…なんでそーゆーときに笑うんだよぉ…」
いつもは楽しそうな紅い瞳には悲しげな雫が溜まっている。 涙に気付いてプラチナは笑い声を止めた。
「…す、すまない…」
謝罪のキスをしようと頬に優しく触れようとしたが「さわるなっばか!!」と伸ばした手を振り落とされた。
「プラチナなんかもうだいっきらいだぁぁぁぁ…」
涙が本格的に流れ始める。 一瞬、プラチナはどうしたものかと戸惑ったが謝るしか他、無い。
「…笑ってしまって…すまないその」 「やーだー!プラチナのばかばかばかきらいきらいきらい〜」 全く聞く耳持たない、とはこのことだ。 瞬間、プラチナは困って黙り込んでしまった。
「うぅ〜〜〜…ぷらちなのばかばかばかきらいきらいきらいぃ〜…っふぇ?!」
一瞬の隙をついてプラチナがアレクを抱き寄せる。
「は〜な〜せ〜」
腕の中にすっぽりと入ってしまったアレクは必死にもがくが力では体格差にハンデがあるので到底適わなかった。
「すまない、兄上」
とても真剣な声だった。
「…だが、俺は兄上が好きだ」
突然の告白にアレクの動きはぴたりと止まる。
『好き』
この言葉自体は聴き慣れている。 アレクも何度もプラチナに向かって使っている言葉だ。だが、プラチナは中々この言葉をくれない。 …恥ずかしいからといって。
「…だから、…『嫌い』と言われるのは辛いぞ…」
その声が本当に辛そうに発せられるものだから…ついには赦してしまった。
「…ほんと?」
それこそ小動物のように可愛らしく上目遣いでプラチナを見やる。 プラチナはすこし困った表情を浮かべてあぁ、と頷いた。
「笑ってすまなかった」 「ううん、違う」
プラチナの謝罪の言葉を力いっぱい首を振って否定する。
「プラチナ、俺のこと好き?俺にきらいって言われるのいや?」 「当たり前だ」
口をへの字に曲げて応える。
「じゃあさ!もっといっぱい俺のこと好きってゆって?」 「はぁ?」 「ゆってよ〜!!ゆってくれなきゃプラチナなんかもう嫌い!」
脅迫なんてしてみたりする。そうしたら珍しく弟の慌てた顔が見れた。
「…好きだ」 「もっと!」 「好きだ」 「もっともっと〜」 「…勘弁してくれ」
どうやら恥ずかしいらしい。顔を真っ赤にして困り果てた表情を隠すように右手で顔を抑えていた。
「何で?ヤなの?…本当は俺のこと嫌いなんだ…?」
意地悪にもちょっとわざとらしく訊く。
「違うと言っているだろうι」
今度はちょっと怒ったような顔をしてた。…あんまりからかっちゃ悪いな…。
「うん♪えへへ…ありがとうv」
するりと両腕をプラチナの首に回して抱きついて擦り寄った。…それこそ子ウサギのように。
「俺、このままでも別にいいかも♪」 「…何故だ?馬鹿にされる、と嫌がっていただろう?」 「だってプラチナに嫌われて無いならなんでもいいもん♪」 「…!!///(←照れて紅くなる)」 「大好きだよvプラチナ☆」 「俺も…好きだ、アレク。」
『ですが後日、幸か不幸かアレク王の兎耳はするりと消えてしまったそうです。それはプラチナ様がちょうど、1000回、アレク様に『好き』と言うことを伝えたときに起きた出来事だとか。』
□□後書き□□
あぁ…やっと終わりました。椿●パパンからの突発リクエスト。兎耳になったアレク。プラアレ。簡単なよーでちょっと難しい。イラストを描くぶんには楽しくっていーんですが、小説ではどーゆーはなしにするかが悩みどころ。…これでいいかしら?
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