2002年01月15日(火)
誰にでも意外な特技の一つや二つや三つほど所持しているものである。 そしてそれは意外な理由により習得されたものであったりするのでまたタチが悪い。
ここに一人の参謀がいる。彼もまた顔に似合わず意外な特技を所有している。…ザル。決して料理に使うアレではなくて一般的に『底なしの酒飲み』を意味する言葉である。 彼はソレであったが、今まで好んで酒を飲んでいる姿など見たものなんていない。いや、それどころか彼自身、『お酒』というものにはどちらかと言うと大した好意は抱いていないのだ。 そんな彼がなぜ、あのベリルを差し置いて『キング・オブ・ザル』(何だよ、それ…)なのであろうか…?
今宵、皆様にだけこっそりお教えして差し上げましょう…。
「飲み比べ、ですか?」
透き通った青い空を連想させるような瞳が疑問を投げかける。同僚の紫色の瞳に向かって。
「えぇ。どうせ暇なんでしょう?坊ちゃん」
そう言いながら同僚―ジェイドなのであるが―はメイドに持ってこさせたワインやらウォッカやら焼酎(?)やらをテーブルに移動させていく。
「確かに暇ですが…アナタとお酒を酌み交わすような気分にはなれません」
さらりと。女官達から「優しい男性No.1!」と叫ばれてる空色の瞳の彼―サフィルスである―はこのジェイドにだけは冷たい。ってゆーか、冷たすぎる。
「おやおや。もう少し気を使った物言いが出来ないんでしょうかねぇ?お坊ちゃんは」
酷い言われように少し傷ついた素振りを見せながら(本当はちっとも堪えちゃいないのだが)肩をすくませてみたりした。 そのしぐさを見てサフィルスは何とか抑えていた怒りが爆発しそうになるが、何とか堪えて引きつった笑みを顔に貼り付け、応える。
「いいでしょう?どうせ暇なんですし?!」
奈落王の後継者が誕生するまで。
「毎度のコトながらそのセリフは聞き飽きましたね」
ため息をつきながら応えるサフィルス。 ジェイドはそれににこりと笑顔で受け止める。
「だって事実でしょう?私達のオシゴトは奈落王の後継者の教育係り。肝心のそのお方が居ないんじゃ開店休業ですよ」
加えて自分たち以外のお城勤めの者たちは目が回るほど忙しい。 …悲しいことにお互いしか共に暇をつぶせる相手は存在しないのである。(まぁ、そこら辺はGet My LOVE?!参照っちゅーことで。)
「では、始めましょうか♪」
嬉々としてグラスを配るジェイドに慌てて静止の声をかける。
「ちょちょちょ、ちょっと!!」 「ハイ?」
何ですか?といわんばかりの応対に思わず長〜いため息が零れそうになる。
「私はまだ『やる』とは言ってませんよ?」
それどころか『やらない』ともいっていないし。
「あぁ!」
わざとらしくぽん、と手を打ってみたりなんかしたりするさまが殴りたくなってくる。 そして続く爆弾発言。
「アナタに選択権なんて元々存在してなかったんですよv」
死亡。
「ま、私に勝ったらゆー事なんでも聞いて上げますし」
…いつものパターンである。
「何でも?」
しかしそれに毎度の事ながら引っかかる彼もどうだろうか? キラキラと輝いた水色の瞳はもう、やる気満々、勝つ気満々である…。(つまり、懲りていない)
「わかってますよね?先に酔いつぶれたほうが負けです。…レディ・ゴー!!」
一体どこから持ってきたんだ、どこに入るんだ、税金の無駄使いだ!と言いたくなるような量の酒瓶、樽、ジョッキを前にして(もう勝敗の見えている)熱い闘いは始まった。
しかし、意外にも勝負は早くつきそうになる。
「…じぇ、じぇいろ(ジェイドと言っている。舌が回っていない)…あなたわたしのおさけになにかいれまひたね〜…??」
ウィスキー瓶2本目(それでも凄い)というところでサフィルスの体にはっきりと異常が出始めたのだ。
「えぇ。何か依存でも?」
さらりと悪気なく白状するあたり、この翠髪の同僚はある意味大物かもしれない。
「…ひ、ひきょ〜ものッ!!」
当たり前だが怒って抗議の声をあげるサフィルス。…ただし、既に出来上がっているので怖くも何とも無いが。
「卑怯ですか?私は元からこう言う人間だってアナタも知っていたでしょうに!?」 「わ、わかってはいましたけれろ〜…」
ろれつすら回っていない。相手に一発殴ろうとでも思ったのだろうか。サフィルスは立ち上がってジェイドに歩み寄ろうとしたがまっすぐ歩くことも適わずくたりと床に座り込んでしまった。
「…うッ…ひっく…じぇいろのばかぁぁぁぁぁ…」
…どうやらサフィルスは泣き上戸らしい。
「はいはい。すみませんねぇ」
この時を待ってましたと言わんばかりにジェイドはサフィルスを抱き起こし、頭を撫でてやる。
「じぇ、いろ…?」
いつもの睨むような視線とは打って変わって潤んだ瞳を投げかける紫紺色の人。 ジェイドがくすりと質の悪い笑みを零すけれどべろんべろんに出来上がってしまっているサフィルスがそれに気付くはずがない。
「遊んでしまって申し訳ありませんでしたね。お詫びに介抱してさしあげますから」
にっこりと(いかにも何か企んでいそうな)笑みを向ける。
「じぇいろ…!!やっぱりあなたはほんろうはいいひろです!!」
サフィルスは素直に感動してしまっていた。…全てはジェイドの思惑通りに進んでいると言うのに。
「さぁ、寝所へ行きましょうか…」
オヒメサマ抱きをしてサフィルスの寝所へと向かう。 …これから起こる事も知らずに酔っ払いサフィルスは抵抗もせず、すっかり信頼しきって体を預けていた。…夜は更けていく。ただ、月の光だけが優しく、優しく…。
―――――<余談>―――――
翌日、サフィルスの腰に謎の鈍痛が頻繁に起こることになったのは、言うまでも無い。(深く考えて下さい/死)
「つまり、要は『慣れ』です。何回もそう言うことが起きてたら嫌でもお酒に強くなりますよ」
ため息混じりに言う、自分の参謀。
「…何回もされてたの…?」
赤の王子は驚いたような、…少し、呆れたような眼差しを送って訊く。
「えぇ、まぁ…暇でしたからね」
きょとんと。どうやらまだ懲りていないらしい。 やれやれと思いつつ出されたお茶をすすりながらアレクは思った。
(サフィ…結局はジェイドのこと嫌いきれてないんだ…)
□□後書き□□
完成させるのに時間食っちゃってすみませんでした!!しかも、意味不明に終わるし(死) やっぱり私には文才は皆無です〜。リクエストしてくれた由梨果さん、本当にすみませんでした!!私とは違ってあなたは文才ありまくりなのに!!あぅあぅ。今度小説の書き方教えて下さいネ☆
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