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◇◇サイ・セイ◇◇
りえ



 しあわせなキス。

ゆうさんと、ホテルへ行った。



ほんとうはこの日、家族行事をするために
二人でわざわざ休みをとったのだけれど

ゆうさんの両親もこのイベントに参加してくださることになり
きゅうきょ、週末に変更となり

ぽっかりと、宙に浮いた一日を
わたしたちは こんなふうに使った。



外はまだ明るいのに
ホテルはけっこう混んでいて
岩盤浴のある部屋は、最後の一部屋。



時間を惜しみ、子どもみたいにはしゃいで
まとわりついて、見つめあって

だけれど、もう以前とは違う。



わたしたちはお互いに口には出さないけれど
大事な、抗いようのない清廉な
ただただわたし達を信じて無邪気に待つ子らの顔が
つねに頭のどこかにあるのを知っている。



親としての顔を、たまには忘れたいと思いながら
ほんとうに一瞬でも忘れていいと与えられたときほど
やっぱりやっぱり それは無理だ。



わたしはのぼりつめるのに時間がかかったし
ゆうさんは 大丈夫だよ と穏やかに笑った。
時間になるときれいさっぱりと部屋を後にし
彼がひとりで、子らのお迎えに行った。



かわいい彼等は
カスタードクリームのようになめらかなほっぺで
いつもキスを誘発する。



わたしはさっきまでのゆうさんとのキスを
すぐにしまいこむことができる。

どちらも大切なものだから。


2007年11月26日(月)
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