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◇◇サイ・セイ◇◇
りえ



 

彼はすぐに気持ちよさそうに寝息を立てはじめ
わたしはいつも 眠れない。



彼の長いまつげや、すっとのびた鼻筋を見つめていると
こんな間近に あのときもそばにいた 確かに同じ人がいて
不思議な気持ちになる。



頬にくちびるをくっつけてみる。
わたしの左手を握っていた彼の右手が
思い出したように トン トン と甲をたたいて
わたしを忘れない と主張する。



年をとって、おばあさんになっていくわたし。
もう裸で抱き合うことは ないのだろう。
かたわらに もうゆうさんはいないかもしれない。

だけどわたしは
ゆうさんとこんなふうに満ち足りた夜を
何度となく過ごしたことを
宝物のように大切に記憶していることだろう。



こんな毎日が、確かに存在したこと
こんなふうに穏やかな毎日のなかに
少しも色あせない恋慕の感情が
朝焼けみたいに こころの中心を彩るのを知ったこと。



わたしは、なんてしあわせなのだろう。

2006年07月17日(月)
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