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遠子(桜井都)

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 背中越しの少年(笛)(水野と郭)

 この関係は多分、背中合わせ。








 水野竜也と郭英士の仲は悪くはない。しかし良くもなかった。
 顔を合わせれば多少の話をすることはある。話題は常にサッカーだけだけれど、それほど険悪というわけでもない。
 ただ、他の話題が見つからないというのもあってか、偏り過ぎた会話はお互いの個人情報交換にはならない。
 知らないのだ、自分たちは。お互いを全然。
 日常どんなものが好きだとか、どんなものが嫌いだとか。
 兄弟はいるのかとか、両親はどんな人だとか。
 同じチームで同じポジションにいようとも、すれ違いのある人間はいるものだ。

「……………何か喋れよ」

 何故か訪れた二人きりという空間に先に耐えられなくなったのは水野のほうだった。
 その言葉に、郭は片眉をやや跳ね上げる。

「そっちが何か言えば」

 素っ気無い返事は、その怜悧過ぎる横顔に腹が立つほど似合っている。皮肉としてそう思ったはずだったが、水野はそれが自分の本心だったと思ってさらに不快になった。
 こいつ苦手だ、と内心で苦虫を噛み潰す。
 もっともシゲあたりに言わせれば、水野に苦手じゃない人間などごく一握りだと評するだろう。自分のペースが守れない相手を水野は一概に『苦手』と表現する。区分が随分と大雑把なのには本人だけが気付いていない。

「…あの、さ」
「なに」

 相変わらず郭の返答は素っ気無さ過ぎた。
 その返事の仕方が氷点下に感じられるのは自分の被害妄想だろうか。そう思って水野は次の言葉を見失った。
 話し掛けておきながらいつまで経っても続きを言わない水野に、今度は郭のほうが耐えかねた。

「黙ってないで何か言いなよ」
「あ、ああ」

 しかし何を言えばいいのか、と水野はやや逡巡した。郭は黙ってそれを見ている。郭と付き合いの長い人間ならそれが、ただぼんやりと相手の出方を待っているだけとすぐわかるが水野にそれをわかれというほうが難しい。水野は睨まれている気がしていた。

「わ、若菜たちと一緒じゃないんだな」

 ようやく水野が言えたのはそんな一言だった。
 郭としては何やらまるで三人一括りで一人前とでも言われている気がしないでもなかったが、選抜練習ではことさら三人でいることが多いので、選抜でしか会っていない水野がそう思っても仕方ないと解釈した。
 その間コンマ8秒。

「…結人と一馬なら、二人でジュース買いに行った」
「あ…そうか」

 なぜか水野が顔を変にひきつらせた。例によって付き合いの長い人間ならそれが単純に話題が見つからなくて困っているだろうのだとわかるが、郭にはわからない。
 そんな顔をするぐらい自分と話すのは嫌なのだろうか、と思っただけだった。

「…………………………………」
「…………………………………」

 そして続く沈黙。
 ぎこちないことこの上ない。


(…別にそんな嫌な顔しなくても)
(…そこまで嫌わなくても)


 お互いに嫌われているなあ、と同じ意味のためいきをついた。同時に。
 自然と、顔を見合わせる。


「…………………………………」
「…………………………………」


 顔を見合わせても、にこりと笑えないのは二人共通の性格だった。
 容姿の造作は申し分ないのに、彼ら二人に圧倒的に欠けているのは愛嬌と愛想だ。本人がそれをさほど必要に感じていないのも同じだったが、相互理解不足の二人はやはり気付いていない。
 ゆっくりと、お互いに不自然さを感じさせないように気を遣って交わった視線を外す。



((……早く現れてくれ、風祭))



 潤滑油の存在を少年たちは本気で渇望していた。
 正反対を向いた瞳は、お互いを見ていない。しかし背中の向こうの気配を鋭敏に感じ、意識は逸らさない。

 背中合わせの少年二人。
 明確で明朗なコミュニケーションは未だ遠い。







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 笛的好きキャラ1位と2位。次点で渋沢先輩。
 郭水でも水郭でもありません。この人たちはお互いを意識しあってピリピリとかドキドキとかして欲しいけど、あくまでもサッカーのみが共通項でいて欲しいのです。
 まあ共通点といえば友達関係絶対深く狭く、というタイプだと思います、二人とも。
 本人に友達を作る気持ちがないわけじゃないの。自分から周りを敬遠させるオーラを放ってることに気付いてなさそう、二人とも。要するにとっつきにくい。

 えーと、林さんが王子様の続き(前回のミスフルパラレルの元)描くらしいですよ皆さん!(そういう意味だよね?)(私信)
 わー気になるわ葵王子! どうやってあの子をお嫁さんにするのかしら!
 一方的読者として楽しみにしてますわーウフフ。

 ああピースメーカーは期待しないほうがいいよ(いきなり冷静)。
 どうでもいいがスクエニは合併したらゲーム業界のみならず、攻略系も独占かい。オマエんとこの出版部門ロクなの出さ(以下自主規制)。エンターブレイン頑張ってー!(ヒゲの社長頑張ってー)
 二週間以上前にスターオーシャン3を買ったけど未だに取り説をときどき眺めてるだけです。

2003年07月03日(木)



 嫁取り物語(多分私信)。

 あまり乗り気ではない結婚話に悩みながら、葵王子は城下へと行ってみました。
 折しも天気の良い初夏。城から街の大通りへと続く坂道を下るうちに、王子の首筋にもしっとりと汗が滲みます。

(…どうしよう…)

 綺麗に晴れた天気だというのに、葵王子の心は薄曇りの日のようでした。
 父王から勧められた縁談は一応丁重にお断りはしましたが、あの相手の様子ではそれ以降も他の話を持って来られそうです。

 しかも、今回お相手として立候補してきた隣国の明美姫といえば積極的な性格で有名です。たとえ葵王子にその気がなくとも、なしくずしに押し掛け見合いぐらい平気でセッティングしてくれそうな予感がします。

 参った。
 王子の気持ちはそれでした。
 どうせお嫁さんにするなら、噂の明美姫よりずっと華奢で可愛らしくかつ太陽のような明るさを持つ人がいいのです。
 そう、たとえば。

「こんにちはっ! お花どうですか?」

 街角で、にっこり笑って明るい色の花を差し出すこの子のような。
 ぼんやり考え事をしていた葵王子は、気付けば街で一番活気に満ちた市場通りに来ていたことにも気付いていませんでした。
 葵王子に、黄色いガーベラの花を差し出したのは背の低い花売りの子でした。


(見つけた)


 そんな感じで、葵王子は比乃と出会ったのでした。









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 人様に便乗ネタ。
 ごめんなさい。た、楽しかったから、つい…(遁走)(私信)。
 うーん、日記でイラスト見たときから「おお何つーか私好みだわ!」と拳握って設定ぐだぐだ考えてたんだけどね、ね?

 えーと、一応林さんとこの、ギャラリーページ、司馬くんコスプレ部屋王子バージョンにあったものの続きです(注:勝手に)。
 遅れたけど二周年おめでとー!! もうちょっとマシなお祝いのネタでおめでとうは言うべきだった…。
 人様のネタに便乗してなんていうかほんとすみません。朱音さんご、ごめ…ッ。
 …身内という言葉を免罪符に使う私はたぶん卑怯者です。

 うーん不破くんコスのGK司馬くんでも(書いて)楽しかったのかもしれませんが、GKって周囲のDFにすごく声張り上げて指示出すわけですよ。
 司馬きゅん、喋らせたくない。
 …というのが私の個人的な意見。
 まあ書くならピノをFWにして、司馬くんが相手のボールを止めたあとのフィード(前線にボールを戻すアレ)で、司馬→ピノのGKとFWの息のあった連携を書いても間違いなく楽しかったと思います。
 ミスフルにサッカーやらせるなら、牛尾部長はMFで司令塔がいいです! 10番だ!
 犬飼くんもMF。猿野はFW。普段いがみ合ってるけど、試合中の本当に大事なときにいきなりアイコンタクトで通じ合っちゃって試合終わったあとに喧嘩するんですよ。ええ私その二人のカップリングにぜんっぜん興味ないですけど。
 しかしピノがサッカーするなら野球以上に体格に問題あるよねえ。ポスト的には椎名くんですかね。じゃあ黒川くんみたいに負け試合のあと頭にタオル乗せて泣き顔隠してくれるのは司馬く(もういい)。

 あーコスプレネタって楽しいなあ(注:私の中でメイドはコスプレにもう入りません)。

2003年06月30日(月)



 閑話(笛)(アンダートリオ)

 それは郭英士の一言で始まった。








「結人、ドコモって何の略だか知ってる?」

 日曜日の午後12時半。冬のグラウンドの端で、ささやかな太陽と束の間の休憩時間を満喫していたのはいつもの三人組だった。
 郭英士、真田一馬、若菜結人。
 仲良し三人組は東京選抜でも大抵一緒だ。
 割り箸片手に突然持ち出された問い掛けに、結人は思いきり顔をしかめた。

「は? 何言ってんだよ英士」
「いやね、ちょっと人から聞いたものだから、これは是非結人に教えてあげなきゃなあって思って」

 にこりと英士は微笑んだ。常の彼らしくない愛想の良さで。
 それを見てびくりと身を竦めたのは弁当箱のコロッケを口に運ぼうとしていた一馬のほうだ。笑顔の行き先である結人は全く意に介していない。

「ドコモー? ドコモって、ドコモ?」
「そう。NTTドコモ」
「ドコモがドコモで何なんだよ」

 ドコモドコモと繰り返すその名は、日本最大手のモバイバル通信企業だ。そのぐらい一馬でもわかる。しかし、英士の言いたいことの意図がわからない。
 こういうときは黙っているに限る。
 これまで散々二人の間で痛い目に遭ってきた一馬は学習能力がついていた。
 ふっと英士が笑った。

「そのドコモ、何の略を取ってそう読んでるんだと思う?」
「え、ドコモってそれが会社名じゃねえの!?」

 食いついた。
 冷凍コロッケを口のなかで噛み砕きながら、一馬はまたしても英士の手口に乗った親友の片割れを、しみじみといい奴だと思った。
 結人は軽薄そうな印象とは裏腹に計算高いところがあるが、自分の知らない情報に弱いという欠点がある。ちょっと興味を惹かれることを出されると飛びつくのだ。

(それがまた、英士だから上手くいくんだよなあ…)

 赤の他人とは思えぬ精神的な繋がりを持つ自分たちにとって、互いの言葉というものはそのまま信用してしまう。
 それを使ってときどき結人をおちょくる英士も、何度やられても懲りない結人も一馬はすごいと日々痛感してきた。
 ちなみに一番引っかかりやすい一馬で英士が遊ばないのは、一馬では手応えがなさすぎるという英士自身の趣向の問題だった。
 英士はさっきの笑みをより深め、不敵そうな顔を作った。


「そう、ドコモって携帯電話関係がすごいところだよね。それで、携帯電話って文字通り携帯するために開発されたもので、初期の頃は高額だったり維持費が高かったりして、なかなか普通の人は買えなかったでしょ。でもやっぱり必要なときになかったら困ったり、逆のこともあったんだ。
 その点を踏まえて社名を決めるときに出されたキャッチフレーズがあって、その
 『どうしても
  困ったときに
  持っていけ』
 っていう宣伝文句の略なんだよ」

 どうしても 困ったときに 持っていけ

 『do』
 『co』
 『mo』


 英士は自信に満ちあふれていた。
 一馬は吹き出すのをこらえた。
 結人は一瞬で冷めた顔になった。

「…おい、英士」
「なにかな、結人」
「お前またウソついてんだろ!」
「ついてないついてない。今度は本当だよ。昨日学校の友人に教えてもらってね、あんまりに意外だったから結人たちにも教えようと思ったんだ」

 英士は心底から大真面目に言っているようだった。
 訝しげな顔をしている結人が、信頼と疑心の狭間で揺れ動いていた。
 それを見ている一馬も、英士がこれほど真剣に言っているのなら本当なのだろうかと信じかけていた。

「面白いでしょ? あの会社がこんなギャグみたいな方法で名前決めたなんて」

 畳みかける郭英士。嘘くさい微笑は消え、相手を説得させる真摯さが垣間見えた。

「…マジで?」
「本当だってば。気になるなら、そのあたりの…そうだな、上原とか桜庭とかにも言ってきてみれば? 知ってるかもよ? 案外風祭が物知りだから本当だって証明してくれるかもしれないし」

 第三者を出すことで、英士は結人にそこまでの自信があるのだと暗黙的に伝えた。
 一馬は最初から何も言えなかった。
 まんまと英士の語る情報に引っかかった結人は、とうとう納得してしまった。

「っへー、俺そんなん知らなかった!」
「でしょ? ちょっと意外で間抜けな企業裏話だよね」
「おもしれー! 後で他のヤツらにも教えてやろー」

 愉快な新情報を得た結人は機嫌よく笑っていた。
 それを見ている英士が、口許をほんのかすかに上げ、にやりとほくそ笑むのを一馬は見た。

「えええええええ英士?」
「ん? 何かな、一馬? 一馬は知ってたよね、『どうしても困ったときに持っていけ』って」

 にっこり。

「…………………」
「知ってたよね?」

 微笑の圧力。
 耐えきれなかった一馬がこくこくと頷くと英士は満足げな顔を見せた。







 数分後、若菜少年不在の場での郭少年の言。

「あんなの嘘に決まってるでしょ。
 どうしても困ったときに持っていけ? 非常時にしか使わない携帯電話作ったところで使う人すごく限られるって、ちょっと考えればすぐにわかるのにね。そもそも普通に考えてあんなのあるわけないでしょ。信じちゃう結人の将来が心配だよ。
 でも結人が言いふらせば、多分桜庭とか上原とかも信じるでしょ。風祭なんて素直だからそのまま鵜呑みにしそうだし、そこから小岩とかにも伝わって、面白いことになりそうだよね。
 一馬は人の話を全部鵜呑みにしちゃダメだよ。嘘つきが嘘つかないって言ってること自体が嘘なんだから。
 え? ドコモ? 確か日本語の「どこでも」をヒントにしたとかじゃなかったっけ?」



 友情とは時にひねくれた愛情表現になる。
 その日一馬が悟ったのは、構わずにはいられない英士の結人への愛だった。


 ちなみにその後、東京選抜内でドコモ名称の話が流れに流れ、飛葉中のキャプテンが「バカだよお前ら」と一笑に付し、武蔵野森のキャプテンが正解を伝えることで噂の沈静を得た。






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 きっと杉原くんは正解を知らずとも違うことぐらいは見抜き「でも面白いからほっとこう」と微笑みで知らない振りを、黒川くんと木田あたりが「…そんなわけない」と内心でツッコミを。
 藤代そのまま信じ、帰寮して笠井に報告。呆れられる。
 渋沢「こいつら素直で(ばかで)可愛いなあ」と杉原とは別の意味でチームメイトを微笑んで見守る。そろそろマズいと思った頃、友人三上にネットで調べてもらった正解を教える。
 椎名、最初からばかばかしいと無視。彼の携帯はきっとドコモ。
 噂の出元を知りつつも、嘘だとは言えない真田。
 自分のささやかな発言で思った以上の効果を得て至極ご満悦の首謀者。
 やっぱり嘘だったと知った瞬間「英士のばかやろうーッ!」と泣いて去った若菜少年。

 どうしても困ったときに持って行けなんて言い出したのはここの人ですよ
 今日そんな会話したの。

 今日は久々にMステを観たので、キンキネタでもいいかと思ったんですがうまいのが浮かびませんでした(注:決してキンキの二人を書こうとしたわけではない)。
 心に夢を君には愛を。
 司馬くんで書いてみたいなあ。
 いつも彼が聞いている洋楽系ではなく、ピノくんに「シバくんこれ僕のオススメだよ!」と言われて渡されるキンキキッズのCD。趣味の範疇でなくても聞いてみる司馬くん。相互理解に努める律儀者。
 なぜピノのオススメがキンキなのかは謎。モー娘。じゃあんまりだと思って(あまり変わらないよ桜井さん)。

 司馬くんたちに関しては林さんと以前約束した放課後ドキドキ☆デート話を書きますよ、そのうち(曖昧なこと言う前にさっさと書け)。

2003年06月20日(金)

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