妄想日記 

2003年10月16日(木) 『呼び方』(内ヒナ)


付き合い初めて数ヶ月。
ラブラブカップル状態である内と村上は、周囲も羨む関係になっている・・・・はずだ。
しかし、村上には一つ、気になることがあった。




「内、いい加減呼び方変えへん?」





両思いになって、色々あって。
かなり接近した二人だったけれども。



内の村上の呼び名は未だに「村上くん」だった。




普段も、二人きりのときも。
ましてやデートの最中でさえ。
「村上くん」
いくらなんでも、よそよそしいんちゃうか?
いい加減気になって、何回目かのデートである今日、内に問いかけたのだけど。
「え?」
驚いたように声をあげたきり、無言になってしまった内に。

(あかんかったか・・・・?)

ほんの少しだけ不安になった。
そんなに難しいことを要求したわけではないと思っていたけれど。何も答えないから、イヤなのかもしれないとか。
気にしてるのは自分だけだったかとか思って。
「別に無理してかえへんでもええよ」
慌てて伝えると、内はぶんぶんと勢いよく首を横に振った。
「無理ちゃいます!・・・ずっと、変えたい思ってたんやもん」
ほんの少し頬を赤らめて見つめてくる視線に、つられたように赤くなりながら。
「ほんなら、呼んで?」
なんて呼ぶんやろ・・・・・無難に信五、か?ほんの少しだけどきどきしながら内の言葉を待った。
すると、大きく深呼吸したあと、真っ直ぐに村上を見つめて。




「ヒナちゃん」




「え?」
予想してなかった呼び名に、反応かえせないでいると、内はわ〜!!と叫びながら照れたのを隠すようにじたばたとあばれていた。
「言っちゃった!!とうとう言っちゃった〜〜〜!」
なんて、顔を真っ赤にしながら笑ってる。
一方、いまだに浮上していない村上。
(ヒナちゃんて・・・・)





(あだ名やん)




まさしく、昔からいるJr内で呼ばれてる、村上のあだ名である。
名前でもなく、あだ名で呼ぶ恋人。しかも「ちゃん」って。

それって、なんか違うんちゃうか?

けれど内は嬉しそうに笑っていた。
目があうとにこ〜と笑い、「ヒナちゃん!ヒナちゃん!」とまるで壊れたおもちゃかのように呼び出す。なにが楽しいのかわからないが、ずっと連呼され続ける自分の『あだ名』
止めなければ、定着してしまいそうだ。


「・・・内」
呼びかけて、見つめると。
内が真っ直ぐに見つめ返してきた。
さきほどまで嬉しそうに笑顔を浮かべていたのに、それが引っ込んだかと思うと真剣な表情を浮かべた。
なんだろうと思った瞬間、ふわりと笑顔が浮かんで。





「ヒナちゃん」
宝物のように、大事そうに。とても大切そうに呟く内。
特別な言葉であるかのように。噛み締めるかのようにゆっくりと、名前を呼ばれた。
それはまるで、呼ばれた自分のことをも宝物のように大事に扱ってくれてるような気がして。自分のことを、大切に思ってくれてるような気がして。
嬉しいと、思った。



呼び名なんて関係ないって。思った。
スキな人が呼んでくれるんだったら。それだけで特別なものになるのだから。



「ヒロキ」
お返しに名前を呼ぶと、嬉しそうに笑いながらぎゅうっと抱きしめられた。









けれどやはり恥ずかしいので。
二人きりでいるときだけ、という約束をさせた。





2003年10月05日(日) 『夜』(チームの栄太(内)×村上?)

「愛とか好きとかって気持ち、よくわかんない」


彼が、しごくまっすぐな目を向けて、言ってきた。



ある事件がキッカケで、保護監察の立場になってる彼が自分がよく利用してる店に現れてから数週間たった。
だいたいの経緯は聞いていたから、本人を目の前にして動揺などといった感情はわいてこなかった。
その店はそーいう人を引き取るとこらしいので。そんな状態の人は今まで何人か見守ってきたしみな、まっとうに仕事をこなしていたし。
だから今回のやつも、どんなことをやらかしたのかまではわからないけれど。まあ、大丈夫、普通のやつと同じだろうなんて勝手に思っていた。





しかし、彼の『闇』を知ったとき。
今まであった誰よりも、かわいそうな子なのだろうと感じた。
いや、かわいそうなんてものではなく・・・・・悲しいと、思った。





人にとって最も大事かもしれない、好きや愛という感情をまったく持ち合わせていない。
好きな音楽や好きな食べ物というのはあっても、人を好きだと思う感情だけ欠落していた。
例えば、ある人の音楽は好きだと言うが、その人は好きかと聞くと「別に」と答える。
人に対する感情を持っていないのだ。
それに気付いたとき、彼のことが気になりだした。
どうしてそんな風に思うのか、そんな風になってしまったのか。
それは聞いても答えないだろうし、聞こうとも思わないけれど。


聞いたところで、彼の過去が変えられるわけでもないのだから。




俺に出来ることは一つ。
















彼のカラダをぎゅうっと抱きしめた。



「なに?」
彼が、不思議そうに見上げてくるのに構わず、さらに強く抱きしめる。



愛や恋を知らない彼に、それを教えたいなんて傲慢なことを考えたわけじゃないけれど。
せめて自分が今思った気持ちを伝えたいって、そう思った。
愛しいと、感じる気持ちを。少しでも伝わったらいいなと思った。
言葉で表すのは簡単で、だけど彼には伝わらないような気がした。
その言葉の意味を知らない彼だから、言っても意味がない気がした。
だからせめて、このぬくもりが伝わればいいと願った。



「あったかい」
言葉とともに、抱きしめ返される腕の強さを感じて。
ほんの少しでも、伝わったのかもしれないと思った。


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薫 [MAIL]

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