蛍桜

≪BACK TITLE LIST NEXT≫

Raining
毎日、憂鬱な雨に埋もれていた。一滴一滴が重くのしかかって耐えられないほどになった。僕はそうなることをずっと望んでいたのかもしれない。最後の一滴が大きくのしかかった梅雨明け宣言の日、僕は砂浜にいた。今頃、地球の反対側では太陽がジリジリと照りつけているだろう。だが、僕は二度とその太陽に会うことはないのだ。それがあまりに開放的なことに思えて笑いをこらえるのに必死だった。

「帰りたくない」
学校帰りに君が言った。おしゃべりに夢中になっていて、もう陽が暮れかけていた。学校は施錠の時間になり、二人肩を並べて歩いていた。闇に包まれそうで、それでも朱色が世界を支配しているこの時間が心地よかった。
「海でもいこうか」
そう思い立ち、自転車通学の僕は、君を後ろに乗せて海へ向かった。後ろから伝わるぬくもりを感じることができるこの瞬間も好きだった。寒い冬の日。体内から出される息は白くなるかならないかのところで思いとどまっていた。
ねぇ。
君は小さく呟いた。
もしも生まれ変わるなら、何になりたい?
まるで独り言のように静かな口調だった。
「なんだよ、いきなり」
笑ってはみたが、背中からは笑っている気配が伝わってこなかった。その代わり、君は僕をつかむ手に力を込めたね。その力があまりにもか弱くて、胸が苦しくなったのを覚えているよ。君はそのまま何も答えなかった。
海に辿りついたころには、もう闇が支配している世界だった。君は飛び降りるように自転車を降りると、僕を置いて、先に砂浜へ走っていったね。必死に自転車を停めて、早く闇に溶ける前に君を救わなきゃ、と思ったよ。
ふふ。
闇からの笑い声。どうしたの、と聞くのも忘れて君の手を取った。
「どうしたの?」
逆に君が尋ねてきて、驚いたよ。なんでもないよ、と笑い返すので精一杯だった。
「変なケンちゃん」
僕から言わせれば、そのときの君のほうがよっぽど変だったよ。
波の音が遠くから聞こえる。きっと、僕にもたれかかった君には、僕が必死に生きている音が聞こえていたんだろうね。そう思うと、少し、恥ずかしかった。でも、君もそのとき、必死に生きていたんだよね。僕は、それに気づけなかった。ごめん。
2006年07月30日(日)

もどかしいだけ

まるで作り物のように浮かび上げられた雲
偽者のように透き通った蒼
何もなかったかのように照りつける太陽

もう、そこは
私の知っている世界じゃなかった

熱く焼けたアスファルト
誰も飲まない冷蔵庫の奥にしまわれた缶
別世界のように空気が違う車の中
もう昔のことのように散りばめられた教科書
いつ見ていたかさえ分からない文章

いつも楽しみに見ているブログ
その世界観が好きだった
いつもチェックしている日記
たまに更新されているのがうれしかった

今はもう別世界
だからこそ見ると苦しくて
あんなにウキウキしていた気持ちが逆に
それを与えられない恐怖で縮こまっていく
戻りたい
でも
戻る必要はない
誰ももう待ってはいない
そこには何も残ってはいない
戻ってどうなる?
そのままどうする?
何も変えられないのに
ただただ私は昔を懐かしむことしか出来ない
誰1人としてついてきてはくれないのに
私は自分の存在意義をどこで確かめていたんだっけ
頭のどこかで思っていたんだろうね
うぬぼれてたんだろうね
きっと誰か1人くらいは
私がいなくなったら悲しいだろう、って

うぬぼれほどむなしいものはないのね
悲しい
悲しい
心が締め付けられてて
何してたんだっけ
何してるんだっけ
これで、何が変わるんだっけ

自分の気持ちの整理がつく?
誰かの中から自分を消すことで満足?

もともと誰の中にもいなかったさ
消すなんてことしなくてもよかったさ
さぁ、今からが本番だ、って思っても
することがなかったさ
これがどんだけむなしかったか分かる?

ねぇ、昔からどうしてこんなに不器用なんだろう
ついてきてほしければついてきてといえばいいのに
1人が嫌なら一緒にいてといえばいいのに
裏切られた気分になったら歩み寄ればいいのに
どうして何も出来ないまま
いつも誰にも相談しないまま
引退です、なんてことになっちゃうのかなぁ
誰か1人でもいいから全てを話せる人がいればいいのに
なんだかなぁ誰も信じられなくなってて
いつ裏切られるか いつ裏切るか
もう気が気でなくて

所詮さぁみんな人間なんだからさぁ
一番大切な人が私になる確率なんて0に近いのにさぁ
心のどこかでさぁ
出会ったみんなが私のことを好きになってくれるなんて思ってさぁ
それはもう願いに近くてさぁ
傷つきたくないし 傷つけたくないし
とにかく、なんでもいいから、私を大切にしてほしくて


時間が過ぎるのが怖いんだよ
全部忘れてしまいそうで
全部忘れられそうで
あんなに踏ん張ってあんなに頑張ったのに
何も残らなかったなんて悔しすぎて
あの時間の意味が分からなくて 怖いんだよ
永遠なんてないの分かってるけど
今までずっと分かってきたけど
それでも毎回毎回同じカベにぶち当たりながら
乗り越えない私が居てさ
迂回するしかないのにずっとそこで立ち止まって
こわいなぁ こわいなぁ
かなしいなぁ かなしいなぁ
ってつぶやいてんの
誰も助けてくれないの分かってるのに
もしかしたら、なんて思って

私はもう他力本願で出来ているみたい

もしさぁ違うところに行くって言ったら
誰かついてきてくれるかな?

こんなに自己中な私じゃ無理なの分かってるけど
誰のことも考えてあげれないけど
そんな私でもいいって誰かいってくれないかな
ああ、また願いだ

叶えられない願いが多すぎるね
高望みしすぎだね



知らない風が吹く
私をすり抜けていく
ふと懐かしい香りがする
振り返っても誰もいない

鈴の音も聞こえなければ
猫の鳴き声も聞こえない
しゃぼん玉も飛んでいなければ
龍は夢のまた夢
一番近くにいる影さえ
もう手が届かないところへ行こうとしている
つかむことは出来ないからもどかしいだけ

もどかしいだけ




そういえば、もどかしいって言葉は
彼女が私に教えてくれた言葉だった







2006年07月27日(木)

なにもなかった

それでもまだ笑ってる
何もなかったかのように

そうきっと全ては夢だったんだ

消えてしまえばいいと願った
そうすることが唯一できることだった
それでも何も変わらなかった
それはいつもの物語のお話



とりあえずはこのままでいいやって
いい加減に歩いてた
頭の中ではいくつか考えていても
心の中ではひとっつも分かっちゃいない

そのときになればないてよろこんで
わーって楽しいーって叫んでればいい
そのときが終われば何もないだけなのに

何もなかった
思い出に残るモノも
残らないモノも


2006年07月24日(月)

なんとかかんとかっていう

片思いしているときはすごくツライ
それは恋愛ならば
うれしいことだってついてくるかもしれない
でも人間関係で
自分だけが相手のこと考えているような気がして
相手は何も考えてくれていないような気がして
片思いってツライって思う

つまりはその人の目には
たくさんの人が写っていて
きっと私なんてその片隅にしかいないっていうことが
悲しいなあって思うだけ

1人でもいいから
私だけを見ているっていう人がいてくれたら、って思って
毎日毎日探しては見るのだけど
相変わらず居なくて
なんかよくわからんなぁ

ずっと一緒に居てくれるんだ
って思ったら少し機嫌を損ねてしまったり
今は他の人といるから、なんて断られたり
なんていうか空振りしてる自分が悲しい
誰にも相手されない薄汚い自分が嫌い

たった一人の人になりたいのに
みんなと同じように笑うしか出来なくて
たった一人の人になりたくて
一歩前に出ても冷たい目で見られるだけで
空振りしか出来ないまま
一歩下がってまた回りを見渡せば
これでは出遅れている、と危機感を覚えるのに
また一歩踏み出す勇気がないまま
ずっと眺めてて
タイミングを見計らって前に出ようとはするものの
もうみんなの目に私は写りさえしないようになってて
空振りってこれほどにまでつらいことなんだなぁって
改めて思って 改めて挫折して
おもいっきりなきつくことも嫌われそうで出来ない
おもいっきりあまえることも嫌われそうで出来ない
何もしないでずっと引きこもってれば
誰にも嫌われないですむかもしれない
でも誰の心の中にも私がいなくなってしまいそうでコワい

自分のことしか考えてないのは十分に分かってる
そして誰もが自分のことばかり考えているのも分かってる
だからこそ、誰かの特別な存在になりたい
誰かが「自分以外の誰か」を思う日がくるとき
それが私であってほしいと願うの
おかしい?笑ってもいいよ
私も笑いたいくらいだから

恋愛はある意味終わりや通過点があるけれど
人間関係は何か証というものはないのかな

いっそ全部なくなってしまえばいいのに

楽しい
ツライ
悲しい
ツライ

それなのに人は絶えない

いっそのこと雲隠れできたらいいのに
霧みたいに細かくなって
誰にも見えなくなって
誰かの頬をぬらすだけの存在になれればいいの

何も望まない
望んでも叶わない
叶ってもうまくいかない
うまくいっても飽きる
飽きなくても終わりは来る
終わりは来なくても




終わらせるときはくる


2006年07月17日(月)

夢は夢で夢なのに

近くにいるのに私からは姿が見えない
私の声は届くのにあなたの声が聞こえない
機械を通して返事をくれるけれど
虚しさだけが残る

部屋には複製された3人の人が台所にいる
みんな私を見えているのか分からない
でも呼びかけると、みんなそれぞれのタイミングで
「なぁに?」とか「どした?」とか言ってくる
中身は一緒なのに

本物は透明になって私の周りを纏っているのだろう

でもぬくもりを感じることができなくて
姿を確認することもできなくて悲しい

複製された3人にココロがないようでもっと悲しい

確かに想ってくれているのに語り合えなく
姿さえ見えなく
言葉を交わすことが出来ても
それは機械の中で活字として残るだけ

家は湖に囲まれて橋が架かっていて寂しげで

私以外にも何人かが訪れるけれど
そこに何の意味があるのかは見出せない




そんな夢だった
きっと何もないよ、と言いたいに違いない



2006年07月12日(水)

もう君だけを離したりしない

自分はありえないほど惨めだと思う
自分で自分の首を絞めて
何をそんなに喜んでいるのだろうか


新しくダウンロードした着うたで
設定していた目覚ましが鳴った
通常の起きる時間より30分早く目覚ましをかける私は
その音楽を6回聞くことになる

その30分間
この曲のせいか
とても、惨めで、苦しい夢を見た

あの時あの場所あの声で君は笑う
かっこつけて照れ隠しで少し言葉遣いが乱暴になる
現実と違うのは駆けつけれる距離ではなかったということ

起きたとき 夢を呪った

心が病んでいるのか
たまにこんな夢を見る

穴が開いているのか
いや 開けたのは自分だったはずなのに

夢の中はあの頃のままだった

夢から覚めてしばらくは
まだ繋がっているのだと信じていた

完全に目が覚めた時
ああ もういなんだと実感した

携帯のメモリがない

今までにこれほど憎んだことはないかもしれないくらい
憎んで悲しかった

救ってくれたのはあなただった
うつむいてた私を笑顔に変えてくれたのはあなただった
すごく大切だったのに

もういない

夢が教えてくれたのか
もともとわかっていたのに気づこうとしなかったのか

いまさら気づいてもどうにもならないことわかっていたのか

なんかもう
何もわからない

大切なものに順番がつけれるほど
うまく物事を判断できる力がない
そんなに、大人じゃない

夢の中だけで笑う人々が
決して隣で笑うことがなかったように
所詮夢は夢だと、泣くしかできない

あの頃は夜が好きだった
太陽なんていらないほどだった

でも、今は、夜が怖い



初めてあの音楽を聞いたとき
誰のことも思わずに
ただいいな、と思った
力強くて 決意に満ちて

でも歌詞を読み返すと
ただの弱い、女の子
自分を奮い立たせている女の子

寂しいね
悲しいね

これから
この曲を聴くたびあなたを思う
決して掴めないしゃぼん玉を思いながら



2006年07月05日(水)

≪BACK TITLE LIST NEXT≫

 

My追加メール

My追加

enpitu skin:[e;skn]

 

Copyright (C) 蛍桜, All rights reserved.