思うこと
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2005年04月01日(金) ジャイアニズム

アメリカが本気でイラつきはじめているようである。狂牛病発覚に伴って米国産牛肉の輸入が全面禁止されてからまる一年。輸入再開交渉が遅々として進まないことに対してである。
報道によると、日本国内での世論は、「全頭検査維持」を求める声が多数であり、「全頭検査しないんだったら米国産牛肉の輸入禁止継続はやむをえない」と考えている人が多いようである。
したがって、本来であれば、日本政府としては、「国民の大多数の声も、左記のとおりでございますので、全頭検査しないというのなら、輸入再開はしません」と、筋を通すべきである。
 しかし、しかしである。相手は「世界のジャイアン」アメリカなのである。
アメリカという国の行動パターンを一言で表すと、「お前のものは俺のもの、俺のものは俺のもの」である。一見理不尽な要求でも、アメリカが本気になって要求していることに対して逆らうと、恐ろしい結末が待っている。恐ろしい結末とは、「スーパー301条」の名で知られる報復関税で日本製品を米国市場から締め出すことであり、最悪の場合戦争である。

 で、実際、かつての太平洋戦争の遠因のひとつに、「アメリカのごり押しに日本が応じなかったこと」がある。
それは、日露戦争後の満州。当時の列強(英仏独露、そして日本)は、みんな中国大陸に利権を持っていた。持っていなかったのはアメリカだけ。しかし広大な中国大陸のすべてが、すでにいずれかの列強の勢力下に置かれており、アメリカが新たに割り込める土地はすでに残っていなかった。当時まだ「唯一の超大国」ではなかったが、新興「列強」の一員として頭角を現しつつあったアメリカが目をつけたのは、満州。日本とロシアが激しい勢力争いをした末に、ようやく日本の勢力下になった土地である。アメリカは「満州鉄道を日米共同経営、満州を共同開発しよう」と持ちかけてきた。このときの掛け声は「門戸開放、機会平等」である。要するに、独り占めしないで、俺にも分け前をくれという意味である。日本国内では、「日露戦争という血を流してようやく手に入れたのに、やすやすと応じられるか」という軍人の意見で、日本独自経営・開発という方針を貫き、アメリカの市場参入を認めなかった。要求が通らぬと悟るとアメリカは、日本を仮想敵国とみなし、敵の敵は味方とばかりに、中国に軍事援助したり、日本への石油やくず鉄などの資源の輸出を禁止したりと、あらゆる報復措置を講じてきた。報復と対立の末が日米開戦につながった


 話が長くなった。要するに、逆らうには、それ相応の犠牲を伴う覚悟が必要である。また、それだけの犠牲を払って筋を通すだけの価値または意義があるかどうかの検討も重要である。
 今回、輸入を再開しても、それにより利益を回復する吉野家などの業界はいても、深刻な被害を受ける業界はなさそうであるし、アメリカのごり押しに今度は応じてやるほうが、筋を通し続けた場合の相手の報復と天秤にかけると、よりよいように思う。


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