Deckard's Movie Diary
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『ブラインドネス』 『シティ・オブ・ゴッド』『ナイロビの蜂』で監督としての世界的地位を築き上げたフェルナンド・メイレレスの新作『ブラインドネス』。またまた、その演出力に脱帽させられます!とにかく、映画が始まってからイライラさせられます!目に(目と言うか視覚かな?もっと厳密に言うと、視覚を感知する脳の部分かな?)ゴミが入ったかと錯覚させられるような感じでこの映画世界に力づくで引き込まれます。導入は素晴らしく、先の展開が否応無く期待させられます。ところが、中盤のストーリー展開から気持ちが離れてしまいました。“オイラが王様!”エピソードは全くリアリティがなく、メチャクチャ退屈でした。間違いなく有り得ないと思います。幾らなんでも、あんなんなるまでほっとかないでしょ!原作に忠実と言われているストーリーですが、だとしたら、原作はちょっといただけませんね。言いたいことは分かりますが、ぶっちゃけ!なんだかなぁ・・・というのが素直な感想です。その後の展開も悪くないですし、前半、後半はOKなので、真ん中が返す返すも残念です!個人的にはこのラストが好きなだけに惜しまれます。
2008年11月26日(水) |
トロピック・サンダー/史上最低の作戦 |
『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』 初めて予告編を観た時から期待していたんですが、まさに期待を裏切らない出来です!『リアリティ・バイツ』『ケーブルガイ』『ズーランダー』に続くベン・ステイラーの監督・主演作ですが、コメディとしては前作の『ズーランダー』に続いて2作目になります。『ズーランダー』もかなり好みだったんですが、今回はさらに上を行く仕上がりでしょ!と、絶賛しながら一言だけ断っておきますと、ハンパなくグロいですし、下品ですし、ブラックジョークだらけで、挙句の果てにエロは皆無です(笑)。だけんどもしかし!基本は戦争映画?ですから、情けなくなるほどバカバカしい内容でも気合入りまくりでお金をタップリ使っているところが嬉しいですねぇ。で、ただオバカな内容か?と言うと、そうでもないんですよ。業界風刺やレッテルを貼られた役者の心情なんぞも垣間見せて、これが意外と奥深い!さらに!文化の違いや所変われば価値変わる!みたいなコネタも散りばめらていて中々見応えがあります。根っからのコメディ・ファンには「そんな奥深さなんていらねーんだよ!」とか突っ込まれそうそうですが、個人的にはかなり好感触でした。多彩なカメオ出演や使用音楽も楽しい一品!ただ、あのシーンは予告編で見せちゃダメでしょ!あそこは先が読めてしまって興醒めでした。因みに、マコノヒーは全く違和感がありませんでした。
2008年11月22日(土) |
ジョージアの日記/ゆーうつでキラキラな毎日 |
『ジョージアの日記/ゆーうつでキラキラな毎日』 ツカミはOK!です。いやぁ、思いっきり可愛いですよ!ガラモンの彼女かと思いました。アレはオリーブに赤ピーマンだったんですね(笑)。映画は実にまともなデートムーヴィーです!ハリウッドのティーンエイジャー物ってちょっとバタ臭過ぎる時があるんですが、その点、UK発は安心して観てられます。この手の映画の楽しみの一つに、その土地のティーンエイジャーの生活や感覚が伺えるってのがあります。オイラは外国に行くとスーパーマーケットに行くのが大好きなんですが、そういう感覚にちょっと近いです。例えば濃いイケメンはジョジクルとか、ニュージーランドはホビットの国だとかって、かなりリアルなセリフだと思うんですよ。他にもキスの勉強をする為に、プレイボーイ(この表現って、古いなぁ・・・)に教えてもらったりとか、罰としてゴミ拾いをさせられるシーンとか、その国の生活が垣間見えて個人的には面白いんです。また、普段はノーメイクなんですが、いざという時にはバッチリメイクしてドレスアップしたりする・・・それがもの凄く魅力的だったりする!そういうのって、日本ではあんまり無いですね。オフもオンも関係なく、メイクは濃いか薄いかだけじゃないですか?昔の上流階級ではあったのかもしれませんが・・・なんか話しが逸れています。映画はご都合主義ですが、とても良く出来ています。最後に一言だけ・・・リンジーをあそこまでボロクソに描く必要は無いと思うんですけど・・・ちょっと引きました。それと、なんだかんだ言いながら、ジョージアってけっこうもててるんですよ。それは、コンプレックスをエネルギーに変えているからなんでしょうね。
監督は『ベッカムに恋して』のグリンダ・チャーダ。今回もインド人が出てくるので調べたら、彼自身がインド人両親の間に生まれ、ロンドンのインド人街であるサウスオールで育ったんだそうです。そういうことだったんですね。また、ジャス役のエレノア・トムリンソン・・・何処かで観たような気がして、調べたら『幻影師アイゼンハイム』で若き日のソフィーを演じていた、儚げなあの娘でした!
『ハッピーフライト』 『秘密の花園』『ウォーターボーイズ』『スウィングガールズ』、間に『歌謡曲だよ、人生は』の短編を挟んでの矢口史靖監督の新作です(『パルコ・フィクション』は\(^-^\) (/^-^)/ソレハコッチニオイトイテ…)。心が踊るような躍動感は無いですが、間違いなく腕は上がってます!つまり完成度は今までで一番高いのですが、その分、全てにバランス良く収まっていて、観終わった後の充実感が今一歩足りません。それでも、TVドラマからの映画化ばかりのドタバタコメディしか作ってない最近の邦画の中では傑出した作品であるのは間違いないです。ANAが全面協力なので、それなりに規制があったとは思いますが、まともなコメディ映画として怖いくらいにまとまっています。ベタな展開もありますが、関係者の仕事ぶりは素晴らしく、個人的には田畑智子扮するグランドスタッフの姿が良かったです!ああいう行動って良く見かけます(笑)。その田畑智子を始めとして、時任三郎、田辺誠一、寺島しのぶ、吹石一恵、それぞれが演じるキャラクターは反発しながらも素晴らしい仕事っぷりで魅力タップリです。また、いつもは無表情の綾瀬はるかも驚くほど生き生きしており、まさに!コメディのなせる業なんでしょうね。十分面白い内容ですが、所詮は大企業のバックアップあっての作品です(つまり、大仕掛けの企業PR映画ってこってす)。登場人物が全てステレオタイプですし、当然の如く“毒”はありません!それでも、それぞれのエピソードのまとめ方が上手いので最後まで楽しめます。矢口史靖氏は次回作が待ち遠しくなる数少ない日本の監督の一人なのは間違いありません!
『ブタがいた教室』 豚はペットか?家畜か?という問いは『ベイブ』に任せといて・・・ポカッ(._+ )☆\(-.-メ) ォィォィ。観てきました。意外と良かったですね。実際は3年近く飼育していますが、映画の中では1年弱になっています。映画はかなり理想的な流れになっていますが、許せる範囲でしょう。当時の生徒は現在25歳?くらいになっており、この授業がきっかけで教員になった方もいらっしゃるそうです。
結局のところ、豚をどうするのか?小学6年生の討論がなかなか見せます!近頃の小学生も捨てたもんじゃありません。ほぼ、事実に則した予定通りの進行なんですが、ちょっとだけ膨らましてあります。オイラはこの部分がけっこう良かったですね。“最後は皆で食べる!”という決まりで飼いだしているので、普段はペットのように接していても心の片隅に“殺して食べる”というイメージがこびりついています。それ故、普通のペットを飼っている時よりも、その生き物に対して親や他の先生も巻き込み、クラス全員の心が一つになっているんですね。それは、どういう事かというと“苛め”とかが無くなるんですよ。命を考えるということは、そういうことでもあるんですよね。って、かなり短絡的だったかな(苦笑)。どちらにしろ、最近は責任を放棄する親や、役人が後を絶ちませんが、ここに登場する小学生は立派ですわ!
『小森生活向上クラブ』 “まわりに不幸をまき散らすクズどもに制裁を!小市民サラリーマンの身勝手な正義が暴走する、究極のストレス解消ムービー!!!”ってヘッドコピーがあったんで、ちょっと面白いかなぁ・・・って思っちゃったんですよ。確かに設定は面白かったんですが・・・結局は邦画にありがちな稚拙な映画でした。こういう邦画って観ていて恥かしくなるし、ハッキリ言って寒いです。それでも良いところが多少はあるんですけど、簡単に言ってしまえば力不足なんですよ。余計なことをしないでしっかり作ればもっと良くなったと思うんですけどねぇ・・・ダメだなぁ・・・まぁ、価値観の違いなんでしょうけどね。それにしても美術が木村威夫なんだよなぁ・・・よくワカランなぁ。
2008年11月11日(火) |
レッドクリフ ブロードウェイ♪ブロードウェイ/コーラスラインにかける夢 |
『レッドクリフ』 始まっていきなり日本語の説明があったので面食らいました。一瞬「あれ、この回は吹き替えだったっけ?」と勘違いしてしまいました。でも、親切なサービスだと思いますよ。で、映画が始まるとメインのキャラクターが登場する度に“誰それ”というスーパーが入っていて、ホントに至れり尽くせり!お馬鹿なオイラでも十分把握出来ました。途中で中弛みしますが、それでも観る価値十分でしょ!だって、お金かかってるし、ウー監督はやる気満々ですし、まぁ、大目に見ましょうよ。そう言えば『蒼天航路』の最後ってどうなったんだっけ?あの漫画では曹操がヒーローに描かれてたんだよなぁ・・・。
さて、先日面白い記事を見つけました!漫画アクションのコラムに大西祥平氏が書いています。要は『レッドクリフ』はコーエーのゲーム『真・三国無双』からかなり触発されているんじゃないか?って、話しなんですよ。決定的な証拠として挙げているのがヴィッキー・チャオ演じる“孫尚香”なんですが、彼女は映画の原点となっている『正史三国志』や『三国志演義』では名前すらなく、“孫夫人(孫家の奥さんの意味)”や“弓腰姫(弓を腰に下げていた)”としか呼ばれてないそうです。完全なる“その他キャラ”ってワケです。あの横山光輝の『三国志』でも“弓腰姫”となっているそうです。このキャラクターをフューチャーしたのが『真・三国無双』だ!と言ってるんですね。『真・三国無双』サイドが京劇版三国志でマイナーキャラだった“孫尚香”を美少女キャラに仕上げたところ、一気に人気爆発したそうなんですよ。で、『レッドクリフ』では、この孫尚香が初陣で軍を率いて魏軍へ弓を放つシーンがあるのですが、これは『真・三国無双5』で“孫尚香伝”でしか有り得ないシーンなんだそうです。で、要するに大西氏はジョン・ウーはこのコーエーの『真・三国無双』をプレイしているんじゃないか?と言ってるんですね。なるほどねぇ・・・やってるんでしょうね。まぁ、別に面白い映画が観られるんならなんでもいいです!
『ブロードウェイ♪ブロードウェイ/コーラスラインにかける夢』 ミュージカル嫌いのオイラは当然舞台を観ていませんし、映画も観ていません。知識としてあるのは“ブロードウェイを夢見るダンサーもの”ってだけです。つまり、今作はリアル・コーラスラインってことなんですね。そうなると俄然興味が出てきちゃうんですよ。つくづくオイラは“祭り”より“祭りの準備”や“後の祭り”が好きなんだなぁ(苦笑)。映画は普通に面白いです。♪OVER NIGHT SUCCESS 面白くならないワケがないでしょ。でも、それ以上では無いですね。っつーか、この映画って最初から真剣に映画にするつもりだったんですかねぇ?あまりに画質が悪いんですよ。最初から映画にする気があったのなら、いくらなんでもこんなレベルの機材で撮影しないと思うんですよね?ぶっちゃけ、ホームビデオ以下です。
仕事柄“オーディション”って日本でも海外でも散々行ってきましたが、一つ言えるのは、オーディションにかける意気込みは外国の方が圧倒的に上ですね。それだけ競争が激しいし、上昇志向が強いんです。それはトップスターを目指している人たちの割合が多いからに他なりません。つまり、日本人の場合はそこまでの目標を持っている人ってほとんどいません。日本人の場合はそういう上昇志向が見受けられるのはミュージカルくらいですかね。今作には本家“コーラスライン”の原案、振付、演出のマイケル・ベネットの貴重なインタビューテープが初公開されていますが、オイラにはその凄さが良く分かりませんでしたポリポリ f  ̄. ̄*) ただ、“コーラスライン”ってこうやって出来たのかぁ!って、コトは分かりました。なるほどね、そりゃ、面白いわ!要は祭りの準備でしょ!
しかし、ミュージカルのオーディションってのは難しいなぁ・・・一次審査はダンスなんですが、ダンスがイマイチだけど歌と演技はまかせとけ!って連中は当たり前ですが、全員ここで落ちちゃうワケですよ。当然、ダンスは上手いけど歌はイマイチ、演技は問題外!なんてのがザクザク残っていて(さすがにブロードウェイはそんなに酷くないですけどね)、やっぱり、天賦の才が無いとなぁ・・・。片田舎から出てきた人間が一夜にして成功を手にするのも分かるような気もします。そんなことは万に一つくらしかないでしょうけど、それがアメリカン・ドリームってことなんですね。そんなコトをぼんやり考えながら観ていました。はい、普通に面白いです。
『イーグル・アイズ』 ネタ元は映画史に残る40年前の名作。あの時の反乱は閉ざされた空間でしたが、現代ではフルオープンってことですね。まぁ、手垢の付いたストーリーですが、硬いこと抜きでそれなりに楽しめます。だって、スピルバーグが作りたかったんでしょ!無邪気だよなぁ・・・(苦笑)しかし、ダイアン・レインをヘチャにしたミッシェル・モナハン(けっこう好き)・・・売れてきましたね。個人的には『エネミー・オブ・アメリカ』かな?とボンヤリと思っていたのですが、グーグルアースやストリートビューの時代にこれは無いな(/・_・\)アチャ-・・
『ICHI』
ネタバレです。
最初に言っておきますが、ボンカレーの広告姫だった松山恵子の『めくらのお市』の海外版ではありません(知ってるよ!)。というワケで、オキニの綾瀬はるか主演の『座頭市』の女性版です。\(^-^\) (/^-^)/ソレハコッチニオイトイテ…監督は『ピンポン』以来の実写映画監督作になる曽利文彦。つくづく宮藤官九郎は天才だと思いますね。今季のドラマ『流星の絆』を観ていても、そのセンスの良さに圧倒されますが、やはり『ピンポン』も『GO』と同じく脚本の力だったんですねぇ。まぁ、ある程度は分かっていましたから、いいんですけどね。\(^-^\) (/^-^)/ソレハコッチニオイトイテ…(←またかよ!)ストーリーは別に悪くは無いですけど、細部がねぇ・・・。まず、大沢たかおですが、ホントに存在感が無いですね。大して上手くなくても窪塚洋介の方が断然オーラがあります。登場キャラクターや衣装のセンスは手垢が付きすぎていて全く新鮮味がありません。だいたい、真剣が抜けなければ木刀で戦えばいいじゃん!思うに、大沢が演じていた役は窪塚がやって、真剣なんか抜かなくても雑魚なんか木刀でOK!でしょ!みたいな(虚勢を張っている)キャラにして、大沢は情けない跡取り息子にしたら良かったんですよ。\(^-^\) (/^-^)/ソレハコッチニオイトイテ…(三度目です!)曽利監督は動く映像を魅せるのは上手いので殺陣の見せ方は悪くないです。『あずみ』なんかよりは十分魅力的ですが、それだけじゃねぇ〜。ラストシーンのロケ場所もそこでいいのかよ!とツッコミを入れてしまいました。さて、主演の綾瀬はるかですが、『僕の彼女はサイボーグ』に続いて無表情役です。っつーか、それしか出来ないのかな?まぁ、それでもいいんですが、もっと汚して欲しかったですね。汚い方が色っぽくなるってのは、樋口真嗣もそうですけど、オタクには理解出来ないんですかね?だいたい、もっと慰み者になっちゃってた方がいいと思うんだけどなぁ・・・キョロ(T_T ))(( T_T)キョロ。そういう設定に出来ない辺りが今の邦画の限界なんだよなぁ・・・昔はそんなコト無かったのになぁ・・・・・・・・( ̄。 ̄ )ボソ…で、最後はやっぱりICHIが切らなきゃダメでしょ!まぁ、仕方ないか・・・。
2008年11月04日(火) |
ボーダータウン/報道されない殺人者 |
『ボーダータウン/報道されない殺人者』 先日観た『リダクテッド』に続いて、これまた後味の悪い映画でした。しかし!世の中にこんなデタラメが野放しになっている世界がまだまだあるんですね。このような事実があることを恥ずかしながら全く知りませんでした。『女工哀歌』どころか『女工地獄』のような内容で、あまりに悲惨な状況に呆然としてしまいました。ジェニファー・ロペス(熱演!)演じる新聞記者・ローレンがキャリアアップの為に向かった場所はメキシコとアメリカの国境の街ファレス。搾取し、騙され、追い出され、何もかもを剥ぎ取られ、行く当てもなく未来への希望もない女達。この世の中で女性ってのは、つくづく不利な生き物なんだと痛感させられます。前半部のローレンの様変わりの描き方がイマイチ不十分なのが珠に瑕ですが、それでも観る価値のある映画です。この手の内容の映画だと、ラストが御都合主義になりがちなんですが、そこのところも上手に着地していて好感が持てました。
小生は“ボーダー”と聞くとエルトン・ジョンの初期の名曲『ボーダーソング/人生の壁』を思い浮かべてしまいます。あの曲は戦場での敵国兵士との遭遇を描いた歌だそうですが、“彼こそが私の兄弟。どうぞ我等に平和を与え給え”と、最後は前向きな姿勢が綴られています。しかし、戦争で敵国と対峙する以上の地獄がファレスで起こっているワケです。この映画の女性達に救いはありません。何故なら、このストーリーに登場する女工たちの敵は人間ではなく悪魔だからです!15年で5000人もの女性を毒牙にかけた悪魔!こんな悪魔が今日もまた首切り鎌を持って夜な夜な現われていると思うと胸が痛みます。我がまま代名詞になっているようなジェニファー・ロペス主演作ですが、良い映画ですよ。
2008年11月01日(土) |
リダクテッド/真実の価値 |
『リダクテッド/真実の価値』 イラクで実際に起きた事件を元にしたブライアン・デ・パルマの新作です。こう書くと、同監督のベトナム戦争で実際に起きた事件を元にした『カジュアリティーズ』が思い出されますが、完成度はこちらの方が数段上だと思います。『カジュアリティーズ』と一番違う点はタイトルからも分かるように単に事実をドラマ化するだけでなく、様々な観点から真実をあぶりだそうとしている点です。兵士のビデオカメラ、ニュース映像、軍による取調べ映像、ユーチューブ等、限りなくドキュメンタリーに近づけようと姿勢は高く評価出来ますし、ヴェネチア映画祭で監督賞を受賞するのも頷けます。妊婦までも射殺しなければならない極度の緊張の中で過ごす日々(ヘンデルの“サラバンド”がしつこいくらいにBGMとして使われています)。爆弾テロに対する怒りと恐怖の充満。一触即発の状況が生んだ悲劇。刑務所か戦地しか選べないような連中がアメリカの富裕層を守っているという現実。この作品は見応え十分の擬似ドキュメンタリーに仕上がっています。多少、ダルい部分もありますが・・・。デ・パルマという監督は決してテクニックのある監督ではありませんが、今作での力技は見るべきものがあります!ラストに流れるのはプッチーニの『トスカ』より“星は光りぬく”。『トスカ』は登場人物のほとんどが死んでしまうオペラだったと思うのですが、戦争なんて生き残ったとしても“絶望のうちに私は死んでいく”のと同じなのでしょう。ただ、これだけの様々な映像を駆使しても、そこにはデ・パルマの思惑が入っているわけですから、この映画自体が再編集されたものでしかありません。つまり、私たちが普段目にしているニュースに代表される映像も編集されたもの(アングル等も含めて)でしかありません。結局は何が真実で、何が真実でないのか?それを見分ける力を持たないといけないということなんでしょう。まぁ、日々を生きている私たちには編集された現実なんてモノはあり得ないわけですから、いずれ消去する?される?その日まで、一生懸命生きるしかないってこってすね。
ラスト近く、見張っていただけの兵士が帰国して恋人や友人に懺悔のような告白をするシーンがあるのですが、とても複雑な印象が残りました。そのシーンで辛い告白をした彼に対してその場に居た周りの客から拍手が起きるんですが、なんか胡散臭かったです。ただ、そのシーンが心に引っかかったのも確かなんですね。自分の中ではこのシーンが消化しきれていません。彼がその行為に加担したのは確かなことですから、彼にも罪があるわけです。もちろん、無理からぬ状況だとも理解出来ます。自分だって、彼と同じ行動をしたと思います。拍手は彼が懺悔したことに対してなんでしょうけど、拍手は必要なんですかね?多分、オイラがその場に居たら拍手はしないと思います。店を出る時に彼の肩を叩くくらいです。拍手は逆に軽過ぎるような気がしてしまいます。戦争なんてのは、そんなとこで拍手するようなことじゃないだろ!って感じです。もっと突っ込んで解釈すると、デ・パルマはそこまで計算しているような気もします。どうなんでしょうか?
それにしても、何故に、アメリカ人は帰還兵から戦争のコトを聞きたがるんでしょうね?やたらと映画の中にそういうシーンが出てきますが、そこが良く分からない・・・。そんな話を聞いたって楽しいワケないじゃん!
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