Deckard's Movie Diary
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2007年06月28日(木)  プレステージ 300

『フォロウィング』で注目され、『メメント』でブレイクし、『インソムニア』でメジャーシーンにデビューし、『バットマン・ビギンズ』でプログラムピクチャーをも手がけたクリストファー・ノーランの新作『プレステージ』。やっぱり好きだなぁ・・・(苦笑)。この人のフィルムって、スマートと言うか知性が感じられるんですよ。決して天才肌ではないですけど、シーンとシーンの繋ぎになるような映像にも緊張感が溢れ、卒の無い手腕を見せてくれます。まぁ、オイラの勝手な思い込みですけどね。で、今作です。最初は「なんて、分かり辛い演出なんだ!」思っていたのですが、ストーリーが進むにつれ、それさえも周到な計算に見えて来て、エンディング近く、普通は「こんなストーリー展開はどうなん?」と、なるところなのに、そう感じさせない計算されつくした脚本が「上手いなぁ・・・」と感嘆させられてしまいました(文章長いよ!)。現実とファンタジーの融合というか、まさに映画的なマジックを見せられた気分です。荒唐無稽な展開でも、人にとって唯一確実な出来事を配すことによって、ストーリーに映画的な真実味を与えることに成功しています。この映画の評で「監督が結末は誰にも言わないで下さい!と言ってる割には、途中でオチが分かるし、期待したほどじゃないじゃん!」とか言う言葉を見聞きしますが、そんなことはどうでもいいじゃないですか!っつーか、トリックに映画の魅力を見ようとするのはオカシイんじゃないですか? アンジャー(ヒュー・ジャックマン)とボーデン(クリスチャン・ベール)の確執と復讐を描いているからこそ映画だと思うんですよ。トリックの種明かしが望みなら、別に映画にする必要も無いし、そんなことが分かってしまったらボーデンのカミサンが言っていたように「意外と詰まらないのね」ってコトになるのが分からないんですかね?オイラはそんなことはナ〜ンも気になりませんでした。でも最高評価にならないのは、ノーランの映画はスマートなんですけど、言い方を変えればそれだけにしか感じられないんですね(それでも十分OK!なんですけどね(6 ̄  ̄)ポリポリ)。個人的な好みを言わせていただければ、もっとノーランの個性が観たいですね。毎回、パワーバランスの形が綺麗過ぎて物足りない印象が残ります。とにかく、今回も満足しました。次回作も期待したいと思います!


『300』予告編を観た時に想像した通りの映画でした。っつーか、あまりにそのまんまのイメージ通りだったので、これでいいのかなぁ?と心配したりして(苦笑)。友人は「血糊が・・・」とダメ出ししていましたが、いきなり血糊だけリアルでもねぇ・・・( ̄o ̄;)ボソッ 主演のレオニダスを演じるジェラルド・バトラーですが、今後彼をスクリーンで見る度に「ワシラ、スパルタじゃけん!」という台詞が頭に浮かびそうで怖いわ(苦笑)。それにしてもペルシア人の王が黒人ってのはどうなの?


2007年06月08日(金)  しゃべれども しゃべれども

邦画のメジャーシーンを歩む平山秀幸の新作『しゃべれども しゃべれども』です。巷の評判は圧倒的に良いのですが、個人的には普通でした。そんなに面白いですかね?確かに国分太一の落語シーンは天晴れですが・・・。オイラが気になったのは、国分太一扮する今昔亭三つ葉に落語を習う3人の人物です。飛びきりの美人なのに会話が苦手な戸河五月、元野球選手で解説下手な湯河原太一、関西弁の為に苛めにあっている小学生・村林優。この3人のそれぞれのキャラクター構築がヌルいんですよ。そりゃ、口下手な人ってのは居ますから、そこに理由なんか無いんでしょうけど、どうにも曖昧な存在感の人間という印象が残りました。森永悠希扮する小学生の村林は多少なりとも納得は出来ますが(でも、なんで落語なんや?)、松重豊扮する湯河原とか、香里奈扮する戸河とか、嘘くさいです。極端過ぎるんですよ!全く想像できないキャラではないですが、ここまで極端ならば、そうなったバックボーンが無ければ説得力がありません。個人的にはもっと普通の口下手な人でも十分だったと思います。唐突ですがフジTVの『あいのり』に出ている“さんちゃん”なんて、良い例でしょ!彼を見てれば分かるけど、日本人の口下手な人って愛想笑いばかりしちゃうんですよ。話は逸れましたが、とにかくしっくり来ない作品でした。それでも、落語の面白さを再認識させられるし、悪い作品ではありません。自分を変えたい・・・悪いところは分かってる・・・でも、なかなか上手くいかない・・・頑張れ!さんちゃん!(って、そっちかよ)

それにしても、重要な役どころになる香里奈の演技は酷いです。ズーっと怒っている顔をしているだけで、演技になっていません。涙を流しただけでOK!なんですかね?完全にミスキャストでしょ!また、森永悠希の演技を絶賛する方も多いのですが、そんなに上手いかなぁ?目は不安定だし、台詞も板についてませんよ。そりゃ、下手ではないですけど、絶賛っつーのもどうなんでしょ?オイラは普通でしたね。代わりと言っては森永悠希にはあんまりだし、大女優には失礼ですが、八千草薫は上手いっすよ。さすがで御座いますm(_ _)m

ところで、最後のエピソードって要るんですか?演出も演技もメチャクチャ中途半端な印象がしたんですが・・・。


2007年06月05日(火)  大日本人 あるスキャンダルの覚書き

松本人志は「何の映画にも毒されていませんし、誰からも影響を受けていません!」と豪語していましたが、確かにその言葉は納得出来る作品でした。個人的には松本人志という人間が持っているセンスは好きですし、彼が様々なメディアで発表して来た作品やパフォーマンスには少なからず接して来ました。そんなオイラですから、映画が始まってからは、例によって松本レトリックが展開され、クスクス、ニヤニヤの連続だったのですが、それでもやっぱりダメでした(苦笑)。元々『オジンガーZ』『ゴレンジャイ』『エキセントリック少年ボーイ』等、ヒーローをモチーフにしたコントが多い松本人志ですので、その延長線上の作品なのは間違いありません。また『頭頭(トウズ)』というビデオ作品があるのですが、その辺りも被っています。ストーリーはとても興味深く、その発想はさすが!と思わせてくれますが、結局はバラエティ番組での大掛かりなコントの域を出ていません。まぁ、風刺劇とも取れますが、ラストはもうちょっとキチンと作って欲しかったなぁ・・・そうすれば、かなりのカルト・ムービーになったような気もします。あのラストの前まではけっこう評価高かったんですけどねぇ・・・。オイラのような松本人志大好き人間が観て、この程度の反応なんですから、そうじゃない人が観たら怒るんじゃないでしょうか。とりあえず、人には勧めません(苦笑)。



ジュディ・デンチとケイト・ブランシェットが凄いです(当ったり前の感想ですね)。火花散らす演技合戦とか言うんじゃなくて、それぞれの役柄を存在感タップリに演じてみせてます。ジュディは顔に深く刻まれた皺の一本一本までを“醜女の行かず後家”として晒して見せますし、ケイトはいつまでも可愛く美しい女を魅力タップリに披露してくれます。ちょっとした眉や唇の動き、時に輝き、くすみ、怯え、そして希望を湛えた瞳。二人の立ち振る舞いの全て、その一挙手一投足が観客を魅了します。ジュディの独白から始まり、ジュディの誘い文句で終わるコンパクトにまとまった92分!それはまるで『あるスキャンダルの覚え書き』というアトラクション内をゆるやかに走るコースターに乗った気分です。心の奥底に潜む、決して口に出してはいけない台詞の数々は胸を鷲づかみにしますし、例えフィリップ・リフレインが叫んでる・グラスの音楽の音量が大き過ぎたとしても、彼の作り出したいつもの旋律が観る者の不安をかき立て、この映画の世界に強引に引っ張り込んでいるのは間違いありません。

というワケで、とてもシンプルにまとまった佳作です。が、それ以上ではありません。観て損はありませんし、女優二人の演技も見応え十分ですが、何処か物足りない印象が残ります。理由は・・・秀才が計算通りに作った作品というか、平均80点以上の答案用紙ばかり並んでいて、良い意味での破綻がありません。5教科で80×5=400点を取った奴より、3教科で300点、2教科で100点で計400点を取った奴の方が魅力的なのと同じです(本当かよ!)。なんだか誉めているんだか、貶しているんだか分からない感想になりましたが、個人的には好きな作品です。


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