Deckard's Movie Diary
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2004年09月29日(水)  アラモ

鳴り物入りで全米公開され大コケした『アラモ』です。なんと言いましょうか、歴史的な背景や登場人物達のバックボーンがほとんど描かれていないので、どうにも感情移入出来ない映画でした。アラモ砦の攻防、ディヴィ・クロケット、ジム・ボウイ、サム・ヒューストン等、歴史上有名な登場人物達の物語だからと言ってあまりにも穴だらけの脚本です。メキシコの独裁者サンタ・アナの圧制に反乱を起こしたテキサス独立の義勇軍・・・程度のストーリーくらいはキチンと描いてないとチンプンカンプンです。言い方を変えればな〜んの背景も描かれていない忠臣蔵みたいな映画です。どれだけ背景を知っていても、それはツマラナイと思うんですけど・・・。合戦シーンの他にも魅力的な部分もあるのに・・・なんとも情け無い駄作でした。どうせ観るならやっぱりジョン・ウェインの『アラモ』ですね!って当たり前か(笑)。


2004年09月27日(月)  僕はラジオ

スポーツ・イラストレイテッドで紹介されて話題となった実話の映画化『僕はラジオ』。とにかくオチまでがステレオ・タイプの映画でした(苦笑)。知的障害者(キューバ・グッディングJr)の青年に高校のアメフト・コーチ(エド・ハリス)が「マネジャーにならないか?」と声をかけたコトから始まるストーリーですが、予告編を観て想像した通りに全てが進みます。それでもキューバ・グッディングJrとエド・ハリス(かっこ良過ぎ!(苦笑))の存在感でこの映画は“映画”としての体裁は整っています。何故にコーチが彼に執着するのか?ほとんど描かれません。まぁ、見方によっては「なんじゃ、こりゃ!」みたいな方もいらっしゃるでしょうが、押し付けがましくなくて良い!という意見もあります(笑)。人がイイコトしたくなる時って、別にガンに侵されなくてもあるでしょう?まぁ、ヌルい映画ではありますが、実話なんだし「ああ、いい話だなぁ・・・・」で、イイじゃん!


2004年09月24日(金)  インファナル・アフェア/無間序曲

昨年のベストの1本だった『インファナル・アフェア/無間道』のラウとヤンの若き日が描かれている『インファナル・アフェア/無間序曲』。今回の主役は警察側のウォン(アンソニー・ウォン)とマフィア側のサム(エリック・ツァン)でした。ベテラン二人の存在感はさすがですが、さらに!サムの親分ハウを演じるフランシス・ンの凄みも素晴らしいですし、カリーナ・ラウ演じるサムの女・マリーも前作の女性の描き方に比べたら格段にハマっています。映画は二人を囲む人間達のストーリーをキチンと描くことによって、その人物達との関係から若き日のラウとヤンの性格づけをしていくという、かなり複雑に入り組んだストーリーです。そんな複雑な人間関係なのに“語り”としての演出が下手なのでちょっと戸惑います(苦笑)。それでも前作よりノワール感を増した雰囲気は悪くないですし、底無し沼に沈んでいくように抜け出せなくなるラウとヤンの状況も切ないです。また二人の女性関係もさり気なく触れられており、後付の脚本としては本当に良く出来ています。それは、今作を観ると再び『インファナル・アフェア/無間道』を観ずには居られなくなるというコトでも十分分かります。オイラも常々“善人になりたい”とは思ってるんですけどねぇ・・・ボソ。


2004年09月22日(水)  草の乱 アイ,ロボット

『草の乱』って“秩父事件”を描いた映画だったんですねぇ(苦笑)。全然知りませんでした。幕末辺りの、ドコゾの戦いかと思ってました。まぁ、そんなコトはどーでもイイんですが、内容は相変わらずの神山征二郎節とでも言いましょうか、悪くないけど盛り上がらない(苦笑)本当に毎回同じなんですよねぇ・・・ボソ。今回もまた登場人物は多いし、どんどん時間が進むし、ダイジェスト版を観ているような錯覚を覚えます。真面目な人なんでしょうねぇ・・・もっと、絞り込めば良いと思うんですけどねぇ・・・まぁ、歴史の勉強にはなりますけどね。で、緒形直人ですけど、まだまだ固いですけど今後良い役者になる可能性を感じさせてくれました。



ウィル・スミス初主演?の『アイ,ロボット』です。オープニングの追いかけっこ以外は脚本の細部はそんなに悪くは無かったので、途中からちょっと期待しちゃったんですよねぇ・・・で、結局はそういうオチかい〜!っつーコトでガックリ来ました。まぁ、ある程度予測していた結末とはいえ、やっぱりなぁ・・・今どき、こんなオチではオイラは満足で出来ません(笑)。で、この映画を観ていて思ったんですが、最近のマニュアル人間って、まさにロボットですよねぇ・・・融通利かないし(苦笑)。


2004年09月21日(火)  父、帰る

『父帰る』は菊地寛ですが、『乳帰る』は横田順彌でもあり、AV女優沢口みきの復帰作だったりもします。また“乳離れ・乳帰る”は小池栄子のデビュー当時のネタだったりもしますし、ブラジャーを胸で一回りさせて「これが本当の乳帰る!」とかいうアホくさいギャグもありました(笑)。というワケでこちらはベネチア映画祭グランプリにして新人監督賞を受賞した『父、帰る』。抜けるような青空さえ寒々しく切り取ってしまう映像は素晴らしく、ロシアに一度も行った事が無くても「ああ、これがロシアの風景なんだ・・・」と納得させるのに十分な説得力を持っています。写真でしか知らない父親が12年ぶりに帰って来て、父と息子二人の旅が始まる。父と兄弟、父と長男、父と次男、長男と次男・・・その全ての関係が新人監督とは思えない巧みな演出で鮮やかに浮き彫りにされます。またそれぞれを演じる役者たちの演技は紛れもなく一流で、特に次男役のイワン・ドブロスラヴォフは卓越した存在感を発揮します。観て損の無い映画であるのは間違いありません。しかし、この映画は好きになれません。この親父には納得出来ません。おそらく、この映画は宗教的だったり神話的だったりする話なんでしょうから、オイラが納得出来ない理由なんて卑小なコトなんだと思います。それでも個人的には好きではありません。遠い昔に『男は黙ってサッポロビール』なんて広告がありましたが、この手の映画が絶賛されると、失われた父性とか、父親復権みたいコトを言うトンチンカンな輩が出て来そうな気もして、さらに嫌です(苦笑)。この映画が絶賛されても不思議は無いと思いますが、こんな親父は嫌いです!


2004年09月17日(金)  バイオハザード供織▲櫂リプス

ジル・バレンタインがようやく出てきました。映画の元になっているゲーム版“バイオ・ハザード”のヒロインは誰が何と言ってもジル・バレンタインでしょ(笑)。ミラ・ジョヴォビッチが演じるアリスというキャラは映画の創作なんですけど、ちょっと強すぎる印象です。まぁ、映画にするならこのくらいマッチョなキャラじゃないと作り辛いとは思いますけどね。というワケで『バイオ・ハザード/アポカリプス』です。今回、ストーリーの元になっているのはゲーム版で言えば『3』の“ラスト・ステージ”って奴です。例のモンスターが出てきますからね。まぁ、このモンスターはちょっとどうかと思いますけどね・・・(苦笑)。それ以外は前作に比べて演出の切れ味は上がっていますし、二人のヒロインもカッコいいですし、十分楽しめる出来になっています。個人的には前作より好きかも・・・ボソ。ゲームからとは言え、モンスターは要らないんですけどね(苦笑)。


2004年09月15日(水)  CODE46

『24アワー・パーティ・ピープル』『イン・ディス・ワールド』と立て続けに作品を発表しているマイケル・ウインターボトムの新作は初のSF作品『CODE46』。どうもこの人の作品は肌に合わないんです(じゃ、観るなよ(苦笑))。でも、今回は肌に合う合わない以前の問題で全然ダメでした。つまり、近未来の話だからって、物語に都合良いモノだけ進歩させてもらっては困ります。こういうSFが一番ダメなんですよ。あまりに高度な医療技術や、幾らでも犯罪に使われそうなクスリ等、デタラメです。だいたい、そんなに医学が進歩しているのなら妊娠くらい幾らでも制御しているだろうに(苦笑)。まぁ、そういうコトを全部横に置いといても、何故ウィリアム(ティム・ロビンス)がマリア(サマンサ・モートン)に惹かれたのかさっぱり分かりませんでした。っつーか、そういう(惹かれあう)シーンが全くありません(オイラが見逃したのかなぁ・・・)。だから、その後の二人の行動がチンプンカンプン(苦笑)。何故、そういう流れになったのかは後に説明されるんですが、別にそこまで“一瞬の相思相愛”になる説得力は無いと思うんですけどねぇ・・・(笑)まぁ、実際には誰にもわかりませんけどね。物語の骨子は興味深いので、こんなストーリーにしなきゃ、もっと面白くなっただろうに・・・どんなに美しく物語を繕ったところで、歪なモノは歪です。


2004年09月13日(月)  スウィングガールズ ヴィレッジ 河内山宗俊

『ウォーターボーイズ』で一躍メジャー・シーンに躍り出た矢口史靖最新作『スウィングガールズ』。想像していた通りの楽しい映画でした。ただ、悲しいかな、想像は越えないんですよ。矢口監督には、もうひとつ上の輝きを目指して欲しいんですけどねぇ・・・。矢口史靖という人の持ち味は良くも悪くもアマチュア風な匂いがあるところで、毎回手作りっぽい親しみやすさを感じるのですが、同じように全体に風通しが良過ぎるって言うか、ヌルい部分も感じます。ストーリーのアイデアやセンスは申し分ないので、監督としての“巧さ”を観につけたら素晴らしい娯楽映画作家になると思うんですけどねぇ。今回もかなりお粗末なところで演技にOKを出しているのも気になりますし、ギャグの間合いで全体のテンポがズレるところもあって、ところどころでブレーキがかかります。前半の泣きのシーンや後半の全員集合シーンなんてもう少し脚本を煮詰めて欲しいんだけどなぁ・・・。まぁ、全体に軽〜いノリのコメディを狙ったんでしょうけど、それにしては切れ味が今一歩です。この辺りは先日の山中貞雄『丹下左膳餘話・百萬両の壷』なんか参考にして欲しいモンです。それでも、大好きな作品に変わりはありません。全て吹き替え無しの演奏・・・よくぞここまで出来るようになりましたわ!巷では「上手くなるまでの描写がほとんど無いのが不満!」というのがありますが、そんなに気にならなかったなぁ・・・。どうせ上手くなるんだから、あんまりそういうシーンをダラダラ描かれても鬱陶しいだけなような気もします。上手くなる過程に具体的な面白さがあれば気にならないんでしょうけど・・・。


『シックスセンス』以降は『アンブレイカブル』『サイン』とお笑いミステリー路線を歩んでる(オイオイ…( ;・_・)ッ( ゚ー゚)ウキ…)M.ナイト・シャマランの『ヴィレッジ』。また今回も期待に違わず似たような塩梅です(苦笑)。相変わらず発想(話の骨格)は面白いんですけど、ストーリー展開がねぇ・・・気持ちは分かるけど、そりゃ無理矢理過ぎるだろ!って言いたくなるんですよ。今回は前2作ほどのスケールもありませんので、魅力にも乏しいですし大して笑えもしません(トホホ)。ただね、「マジかよ〜!そりゃ、ないだろ!(爆)」ってオチじゃない分、もっと上手く描けば面白い映画になったような気もします。だいたい、ハラハラドキドキとか戦慄のストーリーとか、怖がらせるコトに気をとられ過ぎなんですよ。そんなモン、怖がらせるモノがバレちゃったらソレまでですからね。それよりもヴィレッジの在り方とその周囲の関係をテーマにキチンと作ったほうが良い映画になったような気がします。というワケで映画はともかく、ヒロイン演じるブライス・ダラス・ハワードです。親父は言わずと知れたロン・ハワードですが、彼女の表情を見ていると『アメリカン・グラフィティ』に出ていた頃の親父の面影を彷彿させてくれて、ちょっと懐かしかったです。


『丹下左膳餘話・百萬両の壷』は91分、『人情紙風船』は86分、そしてこの『河内山宗俊』も82分と全て長いとは言えない尺です。オイラが言いたいことは、見終わった後の印象は確実に2時間はあるように感じる!ってことです。それは登場人物のキャラクターが端的にしっかりと描かれており、ストーリーに無駄が無く、短時間の間に中身が濃く詰まっているからなんだと思うんですよ。今回が初めて観た『河内山宗俊』でしたが、これもまた見応えのある作品でした。老兵は次世代に道を譲って、ただ消え去るのみ!切れ味の良いラストの描き方は特筆モノです!これが“粋”っつー奴なんでしょう!完成度は冒頭の2作品には劣りますが、それでも昨今の邦画に比べたら映画の面白さは十二分に堪能出来ます。今作品の見所のひとつはデビュー間も無い16歳の原節子です。素行の悪い弟を抱えて健気に頑張る可憐な少女役を演じているのですが、これは良いですねぇ(笑)。原節子という女優は何処か骨太っぽい印象があって、個人的にはあんまり好みの女優では無いのですが、今回ばかりはやられました(苦笑)。この映画の中では薄幸そうな素朴な女の子という佇まいで、河内山宗俊や金子市之丞が彼女の幸せを願って止まない気持ちが手に取るように分かります。今現在山中貞雄の作品は前記の3本しか現存しませんが、その3本のレベルの高さを知ったら残りの23本の作品が観られないのが本当に残念で仕方ありません!


2004年09月10日(金)  風音

スルーにしようと思っていたのですが、モントリオール映画祭でイノベーション賞(“詩的で、現代的な、非常に美しい革新的映画のための賞”・・・わかんねぇ〜(苦笑))を受賞したので最終日に観てきました。東陽一監督作品『風音』。沖縄の美しい海を臨む崖の中腹に鎮座するこめかみに穴が開いた頭蓋骨。“風音”とは、その穴を風が通る時に鳴る音のことで、“泣き御頭(なきうんかみ)”と呼ばれるその頭蓋骨を巡って3つの話が交差します。DVから逃げ故郷・沖縄に戻ってきた母と子。戦争で行方不明になった初恋の人を毎年沖縄へ捜しに来ている老婆。子供の頃に島に流れ着いた特攻隊員を埋葬したことのある漁師。もちろん、それぞれは微妙に絡んでいるのですが、3つの話が作品としての大きな塊になっているとは思えませんでした。少しずつジグソーパズルのピースがズレている印象です。無理やりハメていると言うよりも、スカスカな感じでしょうか。面白い展開の脚本だとは思うんですけどねぇ・・・もう少し上手にまとめて欲しかったです。おそらく東陽一向きじゃなかったんでしょう。基本的には群像劇ですからねぇ・・・。それにしても何故に背景に流れる音楽がジプシー音楽なんですかねぇ?特にハマっているとは思いませんでした。場違い!とも感じませんでしたけどね(苦笑)。


2004年09月09日(木)  コウノトリの歌

『コウノトリの歌』はベトナム人が作ったベトナム戦争をモチーフにした映画です。ベトナム映画と言えば『青いパパイヤの香り』『夏至』等で有名なトラン・アン・ユン監督作品が有名ですが、ベトナム戦争を扱った映画は初めて観ました。他にも74年(ベトナム戦争終わってないじゃん)に作られた『ハノイの少女』とか97年『サイゴンからの旅人』00年『朝よ、来ないで』03年『ハノイの12日間』とかあるそうですが、全く知りません。この映画はベトナム軍(当時は“ベトコン”って呼んでました)に帯同していた元従軍カメラマンの証言を元にしたドラマ部分と現在の彼を捉えるドキュメンタリー部分の二つのパートから成り立っています。完成度は高くありませんが(二つのパートの絡みがチグハグですし・・・)、興味深い作品ではありました。つまり、当然のコトなんですが、全てのエピソードはベトコン側から描いています。それが、どうにも新鮮に感じてしまいました(大汗)。内容は戦争映画では良く描かれるストーリーで、もっと“勝利”を意識した部分があるのかなぁ・・・と思っていたので、それも良い意味で肩透かしでした。結局、戦争なんて勝っても負けても人々の苦しみは同じなんですよ。この映画に触れたコトでベトナム側から描いたベトナム戦争映画をもっと観たくなりましたね。特に『ハノイの12日間』ってのは観てみたいです。


2004年09月08日(水)  ミラーを拭く男

♪よ〜く考えよう〜 お金は大事だよ〜 あ、失礼しました。
『ミラーを拭く男』・・・定年直前のサラリーマン・皆川勤(緒形拳)は交通事故を起こしコトがキッカケで、いつのまにか家族に内緒で仕事を辞め、全国のカーブミラーを拭く旅に出る・・・要約すると以上のような話なんですが、全く分かりませんでした(苦笑)。旅に出た後の展開はそれなりに惹かれる部分もあるのですが、ナンと言ってもこの話の発端、つまり皆川がミラーを拭くようになる原因の部分が全く理解出来ませんでした。何故に、莫大な退職金(一流企業の課長職らしい)を捨て、家族に内緒にしてまで全国のカーブミラーを拭く旅に出るのか?それまでの皆川の人生や夫婦の在り方はそれなりに推測出来るのですが、だからと言ってコレだけの無謀な行為に取りつかれる皆川の心模様が全く分かりませんでした。また、皆川が起こした交通事故シーンのモンタージュが稚拙で、分かり辛いです。というワケで、この映画の根幹の部分で疑問を感じてしまったので、観賞中はその不信感から抜け出せず、トホホな印象のままエンドマークを向えてしまいました(笑)。ほとんど台詞の無い緒形拳は表情だけで驚異的な演技を見せるのですが、最後のほうでは「アンタねぇ!いい加減、ハッキリしろよ〜!」と心の中で叫んでましたよ(苦笑)。映画は全編ハイビジョンで撮影されているので自然を背景にしたロケは本当に美しいのですが、セット撮影のライティングにはもう少し慣れが必要かもしれません。グラデュエーションが綺麗に写る分、全体的に妙に明るくなってしまっています。一番可愛そうだったのは14年ぶりの映画出演だった栗原小巻です。もちろん、魅力的に見えるシーンもあるのですが、女優の皺をそんなに鮮明に映さなくてもいいだろ!と言いたくなりました。ハイビジョンは鮮明なのが長所でもあり短所でもありますからねぇ・・・。まぁ、往年のコマキスト(古いよ)が観たら卒倒するんじゃないでしょうか(苦笑)。


2004年09月07日(火)  誰も知らない 丹下左膳餘話・百萬両の壷

<ネタバレしています>
カンヌ映画祭で主演の柳楽優弥が史上最年少で主演男優賞を獲得して話題になった『誰も知らない』。監督は自分のスタイルを模索しながら映画作りをしてきたTVドキュメンタリー出身の是枝裕和。デビュー作『幻の光』を脚本通りに撮り上げた時に、予定調和として完成する映画文法に疑問を感じ、『ワンダフルライフ』では予測不可能な素人のインタビューを挿入し、『ディスタンス』では、役者には役柄と大雑把な流れだけを与え、細かい台詞はほとんど想定せず、その場の空気感から役者が自然と発した言葉・アドリブだけで映画を作った。おそらく、是枝監督の目指しているモノは“映画”というメディアで描かれるフィクションが何処までリアルなモノとしてスクリーンに映し出す事が出来るのか?観客がリアルに感じる事が出来れば出来るほど、観ている人間により多くの影響を与えるはず!という信念に基づいているのだと思います。そして『ディスタンス』では現実の事件であったオウム真理教を、今回は“巣鴨子供置き去り事件”をモチーフにリアルなドラマとして再構築したのでしょう。

カンヌで受賞する以前に何も知らずに予告編と遭遇した時に感じたのは、「是枝の新作は子供かぁ・・・でも、コレって、何年か前にあった置き去り事件?でもあの事件って、けっこう悲惨だったような気がしたけど・・・でも、そんな感じじゃないなぁ・・・母親がYOUだしなぁ(笑)・・・けっこう良い雰囲気じゃん!こりゃ、楽しみだ・・・子供だったら元々“素”だしなぁ・・・いよいよ今までの試行錯誤が実ったかなぁ・・・」というような期待に胸が膨らんだモノでした。

さて本編です。多くの皆さんが指摘しているように驚異的な演出力です。ここまで自然な子供の表情を引き出し、それをカメラに収めた手腕は驚くべきモノがあります。子供の演出って体力が要るんですよねぇ・・・(苦笑)。髪の毛の伸び具合や顔つき、体つきなど、現象としての変化でキッチリと時間の経過を表現し、また“スライス・オブ・置き去り!”とでも呼ぶのでしょうか(笑)、塵や埃、疵や滲みのどれひとつとして無駄にしない細かな描写も的確で、明らかに“傑作!”と呼ぶに相応しい作品でした・・・中盤までは。

胸をワクワクさせながら自分の心の内に芽生えた不安・・・それは、このような映画でありがちな結末、つまり「誰か死ぬんじゃないか?」という安易とも言える結末。『GO』でも『まぶだち』でも描かれてきた「誰かが死ねば、それなりに決着する・・・」というストーリー、嫌いです。そして、映画が終わって・・・悪い予感が当たってしまった結末にはガッカリ!即、友人に「ラストでどっちらけ!」という携帯メールを入れ、嫌な気分のまま皆さんの感想を読んで、同じように感じた方もいらっしゃったので、「そうだよなぁ!冗談じゃねーよ!」と怒りに任せて、友人のHPに書き込みしたりもしました(苦笑)。

ところが、『丹下左膳餘話・百萬両の壷』を観る為に渋谷のユーロ・スペースへ向かっている時に、ゆっくりとぼんやりと映画を反芻していたら、自分の“怒り”は本当に二女のゆきが死んだからなんだろうか?と疑問を感じ始めていたのです。あの状況でゆきが死ぬ可能性は十分考えられた・・・では、明(柳楽優弥)の行動なのかな?父親、母親、そして以前に接した福祉関係の人々、また“紗希”という女子中学生が大人の顔を見せた時の拒否反応等・・・明の大人に対する不信感はゆきを放置するには十分な背景だったのかもしれない・・・だから、誰にも届け出なかった・・・明にとって、あの部屋は彼が統治した世界であり、国であり、城でもあった。あの部屋に自分が許した人間以外のよそ者(大人)を招待する気はなかった。そしてそれはある意味、それまで自分が彼ら(長女・京子、二男・茂、二女・ゆき)を守ってきたという明のプライドだったのかもしれない。このコミューンのリーダーとしての判断が二女のゆきを放置させた・・・という解釈をして、ゆきが事故で亡くなったところまでは意外と簡単に納得出来たのです。

では、何故に自分はアレだけ不愉快な気分になったのだろう・・・?それまでに描かれた世界が自分にとってはあまりにもリアルでした。完全に『誰も知らない』の世界に埋没していて、自分もあの商店街で暮らしている人間になったような感じでした。それは是枝監督が目指していた“観客がリアルに感じる事が出来れば出来るほど、観ている人間により多くの影響を与えるはず!”という狙いが完璧に演出されていたのだと思います。作品としても彼の思惑通りに完成しつつあったんじゃないでしょうか。ところが!それまで、彼の狙い通りに完成しつつあった映画が最後の最後で破綻したような気がします。二女のゆきが死んだ、トランクに入れて約束だった飛行機を見せる為に羽田まで運んだ。ここまでは上手く進んでいたと思います・・・そして、二人(明と紗希)で“掘って埋める”・・・このシーンが自分にとっては問題でした!このシーンだけに異常に違和感を覚えます。映画の全編を通してこのシーンだけが事前に用意された脚本通りに演じるように柳楽優弥と紗希役の韓英恵に要求しているようにしか見えませんでした。例えば万引きシーン等はこの年代では十分考えられる場面ですし、鉢植え遊びとかは子供が自然に遊んでいるように見えれば問題無いと思います。しかし、地面を掘って土をトランクにかけて埋める・・・このような行為は普段しませんし、日常茶飯事の中の出来事ではなく一般的に考えても特別な行動です。是枝監督は最後の最後に彼が避けてきた映画的ファンタジーに帰結したんじゃないでしょうか。それまで排除してきた脚本通りのシーンがいきなり描かれたので違和感を覚えたのだと思います。ラスト・シークエンスまでのこの映画の完成度は群を抜いていますが、観終わった後に妙にちぐはぐな印象が残りました。この映画がいまいち絶賛されないのはラスト・シークエンスの描き方だったような気がします。

例えば、顛末はこのままでも“掘って埋める”という場面を全てカットしただけでもかなり印象は変わったんじゃないでしょうか?例えば、二人(明と紗希)で羽田に行き、トランクを囲んで二人(明と紗希)で夜の空を飛来する飛行機を見る・・・そのまま画面暗転。次のシーンで明と紗希はモノレールの中。服は汚れている・・・そして、再び新たな日常が始まる。というような描き方でも十分だったような気がします。オイラの場合は明らかに“掘って埋める”という行為を見せられたコトによって、いきなり暗い劇場内でスクリーンを観ている現実に引き戻され、シラケてしまったんです。それよりも、最後まで“誰も知らない”・・・つまり「ゆきが入っていたトランクはどうしたの?埋めたのかなぁ・・・海に流したのかなぁ・・・」と、観客の推測に任せたほうが良かったような気がしてなりません。そして新たな日常の始まる・・・その流れの方が“誰も知らない”という問題提議が出来たような気がします。

どちらにせよ、観る価値のある映画なのは間違いないですが、個人的にはこのような結末が良かったとは思えません。まぁ、好みの問題ですけどね。だって、本当にシラケちゃったんだよなぁ・・・・ボソ。


小さい頃、こんな謎々がありました。「目が3つ、手が1本、足が6本!さて、な〜んだ?」答えは丹下左膳が馬に乗ってるトコ!でした(苦笑)。というワケで、26本の作品を残して、若干28歳で中国戦線で病死した天才・山中貞雄の傑作『丹下左膳餘話・百萬両の壷』です。とにかく、観たこと無い人は観て下さい。なにせ70年前の作品ですから、映像も音声も状態が良くありませんが、間違いなく邦画の傑作です。竹を割ったようなコメディとでも言うのでしょうか(言わないよ!(笑))、この作品に流れているテンポの気持ち良さは絶品です。言い方を変えると「タバコ!」と言ったらライターと灰皿が一緒に出てくるような、「お茶が怖い」と言う前にお茶が出てくるような感じでしょうか(笑)。不思議なのは、今はこういうオーソドックスなコメディの邦画って作られないんですよねぇ・・・どうしてでしょうか?誰か教えて下さい!ところで、途中で流れてくる♪この子の七つのお祝い がレゲエのリズムだったような気がするンですが・・・さて、来週は16歳の原節子でも観てくるかぁ〜♪


2004年09月06日(月)  ヴァン・ヘルシング

『ハムナプトラ』シリーズで名を売ったスティーヴン・ソマーズが監督、脚本、製作を兼ねる『ヴァン・ヘルシング』。ブラッカイマーより、さらにお馬鹿なブラッカイマーっぽい映画でした(って、なんじゃそりゃ!)。お寒い限りのストーリーは全く意に介さず、ひたすらCGで作った映像を「どや、オモロイやろ!」って見せられてもねぇ・・・(苦笑)。つまんねーよ!どうせ荒唐無稽なら、もっとハチャメチャなストーリーにすればいいのに!例えばドラちゃんとヴァンちゃんが異母兄弟で、アナ王女はヴァンちゃんと生き別れた双子の片割れで、フランケンの脳はドラちゃんの親父のモノで、心臓はヴァンちゃんの母親のモノで、でもってフランケンはドラちゃんに「I’m your father」とか言っちゃったりして、オマケにフランケン博士とヴァンちゃんの助手Qちゃんは親子で・・・みたいな感じでいかがでしょう(笑)。ところで、いつ頃から人間のキャラも不死身になっちゃったんですか?チャリエンでは既に全員が不死身でしたが・・・(苦笑)。


2004年09月03日(金)  LOVERS

『HERO』に続くチャン・イーモウの新作『LOVERS』は<チャン・イーモウ展“featuring Zhang Ziyi”>みたいな展覧会を観に行ったと思えば問題ないでしょう(苦笑)。ストーリーは驚くほど投げやりですし、グラフィカルな様式美を追求する演出は、格闘シーンはともかく“LOVERS”な場面になると、コッ恥ずかしいモノがあります(笑)。特にラストは「これが笑わずに居られよか!」っつーくらい、口あ〜んぐりモノです。それでも観る価値は十分あると思いますよ。何せ、世にも美しい展覧会ですから(笑)。ワダエミの衣装も綺麗ですよぉ〜♪コンテ通りと思われるシーンの連続なので、ちょっとボーっと観ているとゲームのCGムーヴィーのような趣きもあり、なんだかなぁ・・・という印象も無きにしも非ずです(一体、どっちなんだよ(笑))。でも、チャン・ツィイーはマジで美しいですし(この人は成長してますねぇ!)、金城は下手くそですがそれなりにハマってます。で、友人も指摘していますが、アンディ・ラウがちょっとズレてるかなぁ・・・だって、この人ってルックスがグラフィカルじゃないじゃん!個人的にはもっと冷たい美形が良かったです。金城にチビっと無骨系が入ってるので・・・往年の田村正和とか近藤正臣(古いよ!)、最近だったら京本正樹(オイオイ…( ;・_・)ッ( ゚ー゚)ウキ…)とか、最近だったら北村一輝とか・・・どちらにせよ、切れ長系の美形が良かったかな(笑)。


2004年09月01日(水)  MASK DE 41 16歳の合衆国 茶の味

「由井正雪のような長髪を振りかざしながら、長州力率いる維新軍の登場です!」あの古館一郎を一躍有名にしたプロレス第二期黄金期・・・アレからもう24〜5年が経つんですねぇ・・・(遠い目)。『マスク・ド・41』は猪木や長州力、タイガーマスクの登場に一喜一憂していた高校生が中年になった時の話です。リストラがきっかけで家庭崩壊した41歳の中年男・倉持(田口トモロヲ)は、何を血迷ったか趣味のプロレスに全てを注ぎこんでしまいます。オイラは少女やゲイの心の内なんて、ほとんど理解出来ないボンクラですが、妻子持ちで生活に疲れている中年男の気持ちは十分理解出来ると自負しております(笑)。まぁ、家庭なんて多かれ少なかれ問題を抱えているワケで、どうにか踏み止まっていられるのは収入があり、それなりに生活出来ているからで、その支えが無くなった時に色んな問題が噴出し一気に崩壊へ向かうってコトは良くあることです。この作品は崩壊家庭の描写と蛯脇(松尾スズキ)が絡んだプロレス部分の描写がいまいち噛みあわないので、映画としてのまとまりに欠けていますが、美味いけど形の悪いオニギリみたいな味わいがあります(苦笑)。オイラにはドタバタ風味の味付けがちょっと濃かったですが・・・それでもこの映画が好きです。情けない中年男が昔から好きだったしょーもない趣味で一念発起して、なんとか立ち直るというストーリーが自分的にはツボなんですねぇ(苦笑)。だって多くの男性って、毎日たいして好きでもない仕事(昔は好きだったのかもしれないけど、いつのまにか“好き”だけじゃすまなくなってしまいます)をこなしながら、チビチビと趣味の世界でストレス解消したりしてるワケですよ(って、勝手に決め付けてます)。で、何も無くなって四面楚歌状態になった時に、開き直ってその若かりし日々に燃えた趣味の世界で一旗揚げよう!ってのは、楽しいじゃないですかぁ!応援したくなります。現実では、抱えているモノが多ければ多いほど守りに入って無難に生きていくしかないのですが、そんな中年オッサンの溜飲を少しでも下げてくれる映画だと思います。倉持の妻を演じた筒井真理子が120%そんじょそこらに居そうな主婦を熱演していて好感触(笑)。ラストでの決着の仕方がまたまた痛快で、最後に来てさらにメートルが上がっちゃいました(ろぶさん的表現から引用)。また、切羽詰ってもヌル〜い親子関係とか、妙に力が抜けててリアルに感じました。まぁ、実際に大変なのはこれからですからね。特にお薦めはしませんが、オイラはこの映画は好きです!蛇足ですが、この映画の中で度々登場するプロレス仲間が集まる飲み屋ですが、以前オフ会の二次会で使った店です。花園神社横にある『唯唯』でした。オイラが学生の頃から出入りしていた店で本来は映画と音楽好きが集まる場所です。入り口に通じる階段には松田優作のポスターが貼ってあるんですよね。また皆で行きたいモンです。


『16歳の合衆国』・・・悪い映画では無いんですけどねぇ・・・どうにも散文的過ぎて、作品としてはまとまりがありません。ただ、それが観ている者に様々なコトを考えさせる要因になっており、観る人によっては深い印象を残す人も居るでしょう。結局はリーランドもアレンも良くも悪くもこの世界を生きていくバランスに欠けている(というかセンシティヴ過ぎる)人間としては同類です。一見平和に見える世界でも人は様々な罪を犯していますが、些細なモノだからと言って自分で免罪符を発行しています。そして多くの人間は人が犯した些細な罪に寛容に接して節度ある態度で対処します。それがある意味、この世界を潤滑に動かしているのですが、敏感過ぎる人には辛い暗黙の了解事項だったりします。もっと分かり易い過酷な状況、例えば人間としてのプライドを剥奪され殺人機械になるようにシゴかれても、多くの人間はジョーカーやカウボーイのように、いつのまにか慣れてしまい(麻痺とも言う)生きていく術を身につけていくのですが、中にはパイルのような結末を向かえる人間も居るワケです。話が逸れましたが、こういう内容の映画を作る意義はもちろんあるのですが(オイラも含めて、あまりに脳天気に生きている人間が多いですからね)、なかなか難しいモンがあります。今回は周りの人間にとらわれ過ぎたような気がします。結果的に、とても読解力を必要とする仕上がりになってしまい、いまいち釈然としませんでした。個人的にはラストの決着の仕方があまりに唐突な印象です。この落とし前では、リーランドが知的障害者のライアンを殺した話が曖昧になってしまったような気がします。つまりリーランドもアレンもヤバイ人達、こういう人って危険なのよねぇ・・・って感じでしょうか。まぁ、好みでしょうけど、もっと前向きな方向で終わって欲しかったです。


『茶の味』です。『鮫肌男と桃尻女』でデビューした石井克人はどんどん詰まらなくなってます。これは映画では無く、単に一発芸の羅列商品です。それぞれのエピソードが全くリンクしないので、いつまで経っても終わらないし、おじいちゃん(我修院達也)の残した物だけでまとめようとしたって無理!って、モンです。映画はそんなに甘くありません!今一度原点に戻ったらどうですか?小手先のセンスだけで映画が作れると思ったら大間違いです!そんな姿勢で騙されるのは、せいぜい上映中にメールをやってるような輩だったり、元々勘違い(なにを?)している人間だけです(苦笑)。センスの良い映像や魅力的なシーン、上手なセリフもあったりするので、もったいないと思うんですよねぇ・・・次回はキチンとストーリーのあるモノを演出して欲しいモンです。無理なのかなぁ・・・・ボソ。


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