Deckard's Movie Diary
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2002年10月31日(木)  木曜組曲 ダーク・ブルー

 なんじゃこりゃ!オレは松田優作か!(すみません)っつーくらいビックリしちゃったシネ・ラセット近辺。なんてたって開演20分前に行って既に超満員状態!列は道にまで溢れて、もう大騒ぎ!元凶は京香、美枝子、靖子、尚美、登紀子、大御所・ルリ子、6大女優?共演の『木曜組曲』。出直して翌週が本日の木曜日(だって1000円なんだもーん)でんがな。それだけ苦労して観た映画だったんですけどねぇ・・・つまらんなぁ・・・。だってさ、ルリ子と登紀子の関係ってナンだったの?それにミートソースは誰がやったの?何故にデビュー作へ書き込みしてるの?わからないコトだらけ!っつーか、それ以前に演出がヘタクソだし、演技がヘタクソだし、特に西田尚美はミスキャスト!どーやっても純文学の作家に見えねー!っつーの!観客をバカにしてんのかよー(苦笑)。アホくさ。良かったのは浅丘ルリ子が見れただけだな・・・ボソ。監督の篠原哲雄の代表作は『月とキャベツ』『初恋』『命』等ですが、個人的には『初恋』が好きなんですよ。他はちょっとねぇ・・・。どうやら『初恋』は長沢ナニガシ(『ココニイルコト』の監督さん)の脚本が良かったようです。これからは期待しません。それにしても、このシチュエーションって、まもなく始まるフランス映画『8人の女たち』に似てるんかなぁ・・・ボソ

 スピット・ファイア(第2次大戦中に活躍した英の飛行機で、あの『パール・ハーバー』にもちょこっと出てきました。)好きなんですよ。あの主翼の形が!何か女性っぽい感じがしてね(苦笑)そういうワケで『ダーク・ブルー』です。『コーリャ 愛のプラハ』で東京国際映画祭GPを獲得したヤン・スヴィエラー監督の新作。『コーリャ』はとても良い映画でしたが、この監督の持ち味であるような「淡々さ(イラン映画に通じるような雰囲気なのかなぁ)」はこの映画ではアダになったようです。決して悪い映画ではありませんし、ストーリーも良く出来てます。だけんどもしかし!何もこちらに響いて来ないのです。空を飛ぶ!ということは「夢のある現象」で、例えそれが戦争中であっても、そこにロマンがあって欲しいと思うのは男だけなんでしょうか?この映画には飛行機乗りが持つ(だろうと思われる)、大空を飛ぶ行為への敬意が全くありません。飛行シーンが良く出来ていただけに残念です。


2002年10月29日(火)  トリプルX

 『ワイルド・スピード』より断然面白かったぁー!ヴィン・ディーゼル主演『トリプルX』。こういう映画こそ「楽しんだモン勝ち!」て奴ですね。理屈ぬきに楽しめました。ハラハラドキドキの見せ場満載!雪崩のシーンなんて最高でした。手すりの銀プレートボードも上手いアイデアだったしね。ならずモノ(古い言い方だなぁ(苦笑))が国に利用されるシチュエーションは決して新しくありませんけど、ここまでシークレットエージェント風に作り上げてるパターンってのは珍しいんじゃないですか。出来れば続編も観たいです。『ウラ007』の道まっしぐらぁ〜!。なんてたって自分で名乗らなくても「あんたぁ、ザンダー・ケイジだろ!」って言われちゃうくらいですから、既に超えてます(何を?)タイトルバックまでも妖しい雰囲気で楽しいいよー♪


2002年10月25日(金)  9デイズ

 ナンだか怪しい噂が飛び交っていたジェリー・ブラッカイマーの新作『9デイズ』。怪しい噂というのは「コレってコメディだったんですね。」って言葉を聞いてしまったんで、予告編の印象からは全くそういうイメージが無かったものですから、ちょっとビックリしてしまったんです。まぁ、観てわかりましたよ。まさに全てが中途半端な映画!眠たかったなぁ。だいたい、アンソニー・ホプキンスにアクションとかやらすなよ!無理だし、観てて辛いし、いくらなんでも掴み合いで若いテロリストに勝てっこないでしょ(苦笑)。ホテルの銃撃戦とかもいい加減だったなぁ(呆)。良かったのはトレバー・ラヴィンの音楽くらい・・・って、またかよ!えー、良かったのはテロリストが最後に発するアメリカへ向けてのセリフですね。監督はジョエル・シュマッカーですけど、一作一作が全くバラバラですねぇ。内容はもちろん、出来不出来もね(苦笑)


2002年10月24日(木)  テキサス・レンジャーズ

 木曜1000円に釣られて『木曜組曲』を観に行ったら、20分前で長蛇の列で、ラ・セット前の通りはもう大騒ぎ!唖然としながらも冷静に標的を『テキサス・レンジャーズ』に変更。いやぁ、ヌルかったなぁ!この映画。平々凡々なストーリー&キャラに、退屈な演出。いやぁ、ヌルかった(爆)まぁ、ある程度、予想はしてましたけどね(苦笑)でも、久々に西部劇が観たかったんですよぉ。良かったのはトレバー・ラヴィンの音楽くらいですかね。それから個人的にはどーでもイイんですけど、レイチェル・リー・クック・・・口が曲がってましたよ(爆)


2002年10月23日(水)  群青の夜の羽毛布

 『恋愛中毒』等で、OL層に人気のあるらしい直木賞作家(『プラナリア』で受賞)山本文緒の原作『群青の夜の羽毛布』です。主演がヘタッピィな本上まなみですし、全く観る気はなかったのですが、監督があの『がんばっていきまっしょい』の磯村一路と聞いて、急遽行ってきました。レディースデイってコトもあったでしょうけど、噂に違わぬようで、観客の95%は女性でした(苦笑)。映画は全編を明暗の差のないライティングで覆って、どんよりした空気感を出すのには成功していますが・・・だから何?厳格な母親に抑圧されて生きてきた娘の自立の話。藤真利子演じる母親は、とても正気とは思えませんし、全編がうそ臭いエピソードの羅列で全く理解し難いストーリーでした。物語を作る為に、わざわざ現実離れした人たちを登場させるような手合いは苦手です。しかし相手役の鉄男君があの『ウォーター・ボーイズ』の玉木くん(アフロヘアで頭に火がボーボーの彼)だったんですねぇ。全くイイ男になっちゃって!このー(笑)


2002年10月22日(火)  狂気の桜 OUT

 窪塚が企画から参加したらしい『凶気の桜』。映像も編集も監督がクリップ上がりだけあってセンスいいです。想像していたよりも飽きることなく観れました。でも、それだけでした。高橋マリ子扮する景子のキャラってのも薄っぺらくて嫌だったなぁ、山口(窪塚扮する主人公)との関係もダサかったし(爆)。結局この映画はオバカな若者達の青春モノってコトでなんですね。ナンだかなぁ・・・。もっと前向きなラストにしようよ!これじゃ、ただの犬死じゃん!それに江口ってどーよ!つまんねーキャスティング!ただ、窪塚の脇を固めるRIKIYA、須藤元気は素晴らしかったですね。また、この映画は今の渋谷の街がガンガン出てくるので、おそらく10年、20年してから観ると、「懐かしい!!」って言葉が自然と出てくるでしょう。昔からヤクザが仕切る新宿、右翼が仕切る渋谷。として有名なんですけど、この映画はその恩恵に思いっきり与ってますね。普通は、あんなに堂々と撮影出来ないですよ。

 TV版は見てました。桐野夏生のベストセラー『OUT』です。うーん、別に悪くないです。今や邦画界の表舞台のエースになりつつある平山秀幸監督ですからねぇ。キッチリ仕事はしています。でも、傑作はもちろん佳作にもなってません。おそらく全体に平均的過ぎるのでしょう。個人的には深夜の弁当工場のシーンにもっと強烈な印象が欲しかったですね。真っ白い空間に閉じ込められた女達のやり場のない気持ち!みたいなモノを、映画らしい手法で見せてくれれば良かったんですけど・・・。それとですね、相変わらず小道具のセッティングがなぁ・・・住んでいる感じがしないんだよねぇ。特に主人公・香取雅子の一軒家と山本弥生(西田尚美)のアパート。まぁ、西田の妊婦の動きも軽すぎますけどね(苦笑)


2002年10月21日(月)  酔っぱらった馬の時間 トスカ

 『酔っぱらった馬の時間』。クルド人監督、バフマン・ゴバディによる初のクルド人映画です。『クルド人』とは「国家を持たない世界最大の少数民族」というコトだそうです。舞台はイラン=イラクの山岳地帯。両親を亡くした子供達が難病の弟を抱えながら、健気に生きて行く姿を描いています。弟の手術代を稼ぐ為、長男のアヨブは危険な密輸キャラバンに!うーん・・・・あまりに悲惨で一言もありません。子供は生まれる国は選べない!とは言いますが、ただただ自分の恵まれた環境に感謝したいと思います。それにしても・・・現地でキャスティングされた子供達の演技はとても演技には見えません。鳥肌モノです。

 プッチーニの『トスカ』。眠たかったぁ・・・ボソ。なんなんだこりゃ!ただただ歌ってるところを延々とバストアップで撮影してるだけ。ところどころにチョビっと申し訳無さそうに、録音シーンとかローマの風景なんぞが挿入されます。でもさぁ、オペラを思いっきり歌っている力一杯の顔のアップなんて見たいですか?アレってロングショットで大きなアクションがいいんじゃないですかねぇ?顔がアップのせいか、歌声さえウルさく感じちゃいました。(>_<)アチャ!もっと『心中天網島』くらいの映画的な飛躍があるのかなぁ・・・と、思っていたので、かなりガックリでした。でも、良かったコトもありましたよ!上映館・シネマ・ソサエティの入り口の装飾がかなりイケてます。嬉しくなっちゃいました。


2002年10月18日(金)  容疑者 王様の漢方 シャクルトン/奇跡の生還

 相変わらず精力的に映画に出巻くっているデ・ニーロ最新作『容疑者』。ピュリッツァー賞受賞ジャーナリストの実話を基にした原作の映画化です。話が2時間ドラマのように手際よくサクサク進んでいってしまうのですが、演出が上手いのでついつい見入っちゃいます。音楽は必要最小限にしか入りませんし、たまにここぞ!とかかるメロディがマイナーなんですよ。だから、ハリウッド映画では珍しいくらいにウェットな気分にさせられます。ラスト近辺、デ・ニーロの演技は最高潮になるのですが、ナンだか良く出来ている邦画を観ているようでした。そうなんです!この映画ってかなりベタベタな邦画風味!とにかく、息子を持つ男親としては泣けた映画でした。息子役のジェームズ・フランコも良かったですよ。でも・・・ロングアイランドってあんなにサビれちゃってるんですか?

 なんだよ!コレ!『王様の漢方』。マジで怒りたくなった。コレって映画になってないよ。端的に言えば『小学生低学年向け教育フィルム』。漢方のコトなんて誰でも知っているような精神論だけだし、全ての話がぜ〜んぶ消化不良で終っちゃうし、挙句の果てに「農薬は人体に悪影響がある!」なんて大声で言われたってなぁ!もっとこの薬草は○○の効果があり、その昔うんぬんかんぬん・・・とかアルんだと思ってたのにぃぃぃ!御丁寧にその後の皆さんの行く末なんかを『スタンド・バイ・ミー』ヨロしくラストに出ちゃったりするけど、な〜んも関係ないし(爆)ノーマン・リーダスなんて全くやる気ないし(苦笑)判ったコトは、監督のニュウ・ポって有名なアーチストらしいけど、監督業の才能は全くナイですね。共同脚本に名を連ねている江戸木純にも、今まで映画の何を観てきたんだ!と言いたくなります。この映画にキャッチコピーを付けるなら『決して一人では観ないで下さい』でしょう(笑)。誰かと、そう今!ケンカしている誰かと、又は仲良くなりたい誰かと!一緒に観れば「ふざけんな、コノヤロー!」ってコトで意気投合出来る事間違いなし!(爆)全く、こんなチラシ(お皿に乗ってる色々な薬草)作るんじゃねーよ!詐欺だろ!(御立腹状態です・・・ボソ)

 新宿高島屋から品川プリンスホテルに移ったアイマックスシアター。好きなんですよ。あのデッカイ映像が!(苦笑)。で、新作『シャクルトン 奇跡の生還』です。20世紀初頭、1年9ヶ月もの極寒の南氷洋漂流から、全隊員29名を生還させた驚異の冒険家・シャクルトンの話です。当時の貴重な映像がちょっと多かったですね^^;もっと、南極の映像を観たかったです。それでも、アイマックスの映像を観ているだけで、ボーっとしてしまうオイラには十分でした。途中『パーフェクト・ストーム』のようでしたが(笑)。でも、金曜日の夜に観客は20人・・・大丈夫なのかなぁ・・・・ボソ。撤退して欲しくないんだよねぇ。神様お願い!もっと観に行きますから、止めないで下さい。


2002年10月16日(水)  青春の殺人者

 フィルムセンターにて、76年作『青春の殺人者』。言わずと知れた長谷川和彦の監督デビュー作であり、キネマ旬報ベストテン第1位作品。雨の中をトボトボ歩く順(水谷豊)。望遠レンズで捉えた映像に静かにイントロが被さって来る。横を走るトラックに水飛沫を浴びせられ、一瞬立ち止まる。再び歩き出した順に♪Do me a favor, will ya? と突き抜けるような透明な歌声が響き『青春の殺人者』のタイトルがバーン!!いやぁ、マジで胸が熱くなりました。26年前学生だった時にも感じた、何とも言えない胸の高鳴り。この洗練された音楽には驚きました。かなり音楽状況に詳しかった小生でしたが、どんな音源なのか全くわかりませんでした。広告等では音楽も先進的な使われ方などしていましたが、まさか、邦画で!? というわけでオープニングから、その新しい感覚にやられちゃったんですねぇ。しかし映画全体としては、当時の先進的な部分(特に映像感覚)は、今となっては手垢が付いた演出のように見えてしまって、ちょっとスカスカに感じてしまいました。(>_<)アチャ!それでも、母(市原悦子)と順の格闘(殺し合い)シーンは凄まじい空気で充満していて、やはり目に力が入ってしまいました(笑)。そしてナンと言っても恋人ケイ子を演じた原田美枝子(当時17歳!同じ年に『大地の子守唄』にも主演))!まだまだヘタクソなんですけど、その存在感って言ったら!まさに、この映画の為だけに存在していた。と言っても過言ではないでしょう。内容は千葉県で実際におこった「両親殺人事件」が題材なので重いです。それなのに、見終わって清々しい感覚さえ感じるのは紛れもなく水谷豊の飄々な存在感と、ゴダイゴの音楽でした。原作は中上健二の『蛇淫』。チョイ役で桃井かおり、江藤潤の70年代系の売れっ子達が花を添えています。あの『愛を乞う人』の原田美枝子なんだよなぁ・・・あー、時は過ぎたのねぇー(苦笑)


2002年10月15日(火)  Dolls 火星のカノン

 世界の北野武最新作『Dolls』。個人的には、何故そんなに高い評価をされているのか、全くわからない監督です。今作は北野監督としては『あの夏、いちばん静かな海。』以来の男女が関係してくる映画。究極の「愛」がテーマだそうで・・・。こちらの勉強不足で申し訳ないのですが、トップに出てきた文楽はどういう意味の浄瑠璃なんですかねぇ?近松のどういう話なんですか?それが解ると、この映画はもっと面白いんでしょうか?結局「愛は狂気」っとコト?だってね、どうしようもなくつまらないじゃないですか!笑っちゃうくらい面白くない!何なのコレは!私はこの映画の良さを全く理解出来ませんでした。強いて言えば、良かったのはファッションだけかなぁ・・・。それにしても観たのは平日昼間なんですけど、混んでましたねぇ。まぁ、若いカップルの多いこと!(苦笑)

 『冬の河童』(未見)でロッテルダム国際映画祭グランプリを獲得した風間志織監督の新作『火星のカノン』。29歳で独身の絹子(久野真紀子)は43歳の男性(小日向文世)と不倫中、せつない日々を過ごしている。そんな絹子に昔の職場の後輩・聖(中村麻美)が近づいてくる・・・・。まぁ、こんな話なんですけどね、今さらさぁ、不倫でせつない状況なんて見たくない!っつーの。そんなもん100万回は見てるよ。だからさぁ、この聖って娘の設定が面白いんだからさ、絹子だけじゃなくて3人を主人公にした方が良かったんじゃないの!「不倫しているので、ワタシ・・・満たされないの。」な〜んてアホ臭い描写が多すぎて白けます。締まらない映画!それよりも男と女、女と女、女と男の三角関係をメインにした方が断然面白かったのに!久野真紀子って女優さん、ちょっと面白いね。


2002年10月10日(木)  阿弥陀堂だより 昭和枯れすすき

 予告編ではちょっとヤバそうなニュアンスだった『阿弥陀堂だより』を観てきました。最初、ちょっと大丈夫かぁ?と思いましたけどね、さっさと白状しちゃいますが、とても良かったです。小泉堯史の初監督作『雨あがる』よりも好きです。パニック症候群の治療を兼ねて東京から田舎に移り住んで来た夫婦の話。それだけの話です。しかし、この映画の奥深さは只者ではありません。ただ、この映画の良さはそれなりに年齢を重ねないと分らないかもしれません。今年91歳の北林谷栄は涙が出るくらい絶品です。また黒澤組の香川京子は凛としています。寺尾聡も樋口可南子も別に好きな役者ではないですが、抑えた演技に好感が持てます。また、喉を患い唖し役の小西真奈美は『息子』の和久井映見に匹敵する美味しい役ですが、やはりとても美しい存在として輝いていました。長野県奥信濃で1年間に渡る長期ロケを敢行した映像は、叙情的な加古隆の音楽に彩られて、これ以上は無いといえるほどの丁寧な作りなっています。この映画は全編を通して賞賛されるべき仕事と言えるでしょう。しかし!たったひとつだけ言いたい事が・・・この映画には決定的に欠けているモノがあって、それさえあれば凄い傑作になったんじゃないかなぁ・・・と、思いました。古き良き邦画を彷彿とさせる、名も無く貧しく美しくの「清貧」の思想を感じさせるこの映画は生真面目な映画で、それはそれでイイんです。でも、人が生きていく上には他にも必要なモノがあるじゃないですか。生きているだけで、そう感じさせるモノが。そう、ユーモアなんです。いとおしくなってしまうような滑稽な部分。北林谷栄のお祖母ちゃんにちょっとその雰囲気がありましたけどね。もっとクスっと笑える部分が欲しかったなぁ。まぁ、日本人が一番苦手としている表現なんですけどね。でも、この映画はジワジワ心に染み込んでくる素敵な映画でした。

 75年作の『昭和枯れすすき』は、心の片隅に妙な感覚で居座っていた映画でした。今回フィルム・センターで上映されたので、その「妙な感覚」が何だったのかを確かめに行って来ました。新宿署の刑事、原田(高橋英樹)は青森から上京して、洋裁学校に通っている妹の典子(秋吉久美子)とアパートで慎ましく暮らしている。例によって妹は洋裁学校をいつのまにか中退、スナックで働いてるわ、チンピラ(下条アトム)と付き合っているわで、お定まりのコース。ところがこのチンピラが殺されてしまって、遺留品から典子が容疑者に!この映画は、藤田敏八の一連の作品で70年代を体現する女優として抜群の存在感を発揮していた秋吉久美子が、前年『砂の器』でほとんどの映画賞をさらっていた巨匠・野村芳太郎と組んだ異色作でした。脚本は新藤兼人。劇中、兄が語る両親のエピソード、母親は父親が出稼ぎ中に男を作って蒸発、父親はその後事故死!という話を聞いた時は、思わず噴出しそうになってしまいました。ただ、あの頃は、学生運動のドタバタから脱却した日本が少しずつ一億総中流化へ向けて歩き始めたばかりの時期で、出来れば・・・猫も杓子も大学へ!という状況の中、色んな事情から乗り遅れた人々も多く、明らかに恵まれた人達とそうでない人達との軋轢が様々な人生模様を生んでいたワケです。そういう意味では、今で言う2時間ドラマのような話なのですが、ラストの着地の仕方に新藤兼人の巧みさを感じさせます。原作は結城昌治の「ヤクザな妹」でヒット曲の「昭和枯れすすき」はオープニングにかかりますが、映画とは何の関係もなく、便乗タイトルってコトでしょう。で、「妙な感覚」ですが・・・このフィルムには、75年の当時の新宿が色濃く漂っていて、それも手持ちカメラのダマテン(許可のない撮影)のような感じで写されているんです。出来たばかりのサブナードを始め、歌舞伎町(映画の看板は『ドラゴン怒りの鉄拳』でした)、セントラル・ロード、アルタに変わる以前の二幸、新宿駅前交番、そして新大久保へ向かうところにある連れ込み旅館街等。当時学生だった小生が仲間と8ミリ映画を、同じ新宿で撮ったのが76年。8ミリと35ミリとの違いはありますが、映し出された映像は全く同じ空気の色だったんです。ちょっとビックリしました。


2002年10月09日(水)  アマデウスDC

 アカデミー賞8部門、ゴールデン・グローブ賞4部門、イギリス・アカデミー賞4部門、LA批評家協会賞4部門!まさに受賞の嵐と言えるミロシュ・フォアマン監督作『アマデウス DC』。さすがに素晴らしい!もちろん初公開当時に劇場観賞はしていますが、素晴らしいモノは何度観ても素晴らしいです。音楽はもちろん、脚本、演出、美術、衣装、全てに惚れ惚れします。物作りをしていると、明らかに自分の力を越えてるなぁ・・・と思える作品を作り出す事があるのですが、この作品はまさにソレですね。ミロシュ・フォアマンの力量(もちろんその才能は認めていますよ。『カッコーの巣の上で』も素晴らしい作品でした。ただ、監督の個性を越えて輝く作品となると、コレはまた別の領域だと思うんですよ。)を凌駕していると思うのはオレだけじゃないでしょう。ただ、個人的にはオリジナルのが好きです。やはりちょっと長いかなぁ・・・。もちろんアマデウス夫人がサリエリを嫌っている意味は明確になっていましたけどね。まぁ、とにかく万人にお薦めしたい映画に変わりはありません。


2002年10月08日(火)  宣戦布告 ミーン・マシーン

 ベストセラー(麻生 幾)の映画化なのに過激な内容が災いしてか、途中でSPは降りるわ!防衛庁は協力してくれないわ!で、ポシャリそうだったのを、東映がバックアップしてどうにかこうにか完成させた石侍露堂(セジ・ロドウ・・・誰?)監督作『宣戦布告』。悪くなかったですよ。思っていたよりね(ってコレが曲者)。試写会で石原が激怒したそうだけど、これは怒るでしょうね。まず、こういう状態になったら現場レベルで発砲するんじゃないでしょうか。また、幾ら実戦経験の無い自衛隊だって、こんなバカな作戦は立てませんよ。っつーか、こんなアホな行動(敵に撃たれるように飛び出す。それが許されるのはジョン・ウーだけです!)はしませんよ。それにCGのヒューイ(ヘリ)に固執しすぎ!ま、わからんでもないですけどね(苦笑)しっかし、自衛隊の発砲ってそんなに難しいんですか・・・無知なのでワカリマセンでした。映画としては描かれたコトのない世界だったので楽しめました。

 元サッカー選手・ヴィニー・ジョーンズ主演『ミーン・マシーン』。早い話しが『ロンゲスト・ヤード』。で、別に悪くもなければ良くもない(苦笑)言い方変えれば「もっと面白くなっただろうに!」ってコト。囚人達がけっこうマトモなんだもの(苦笑)それにね、やっぱり相手をボコボコにするならアメラグでしょ!『ロンゲスト・ヤード』のバートは偉大だったナァ・・・(遠い目)


2002年10月07日(月)  ロード・トゥ・パーディション なごり雪

 初監督作『アメリカン・ビューティー』でアカデミー賞を受賞したサム・メンデスの2作目はポール・ニューマン、トム・ハンクス、ジュード・ロウという魅力的な共演の『ロード・トゥ・パーディション』。良く出来てますよ!共演の3人も素晴らしく、重厚な演出も相まって素晴らしいコラボレーションです。前回と同じく父と子の物語。しかし今回は男の子二人を持つ主人公、小生と同じ境遇ってのもありますが、好感度でした。ラストで親子の関係が良かったですねぇ。やっぱり親はこうありたい!映画としては『アメ・ビュー』でしょうけど、この映画も好きです。しっとりと成熟した空気に満たされた良い映画でした。

 『あした』以来、久々の大林作品です。『あした』は、つかのまの再会と永遠の別れを独特の大林ワールドで描いてみせた佳作でした。で、『なごり雪』です。うーん・・・大丈夫かぁ?大林ぃ!はっきり言って、かなりヤバいです。このロボットみたいに感情のない登場人物は何?この棒読みのセリフは何?この饒舌すぎるダイアログは何?このヌルい脚本は何?早い話し、タイトルバックで現在の伊勢正三が黒バックで「なごり雪」を歌っているのを観たときに「ヤバ!」って感じたんですが・・・この演出はヤバいっしょ!それに加えて、今年64歳の大林は、どうも70年代を自分の青春時代、つまり50年代後半辺りと勘違いしているようです(違うかも・・・)。大林と言えば、真面目に作った映画とそうでない映画にやたらと差のある人ですけど、今回は真面目に作ったパターンなんですよ。それがねぇ・・・あの『転校生』『時をかける少女』『さびしんぼう』の尾道3部作を始め、『異人たちとの夏』『北京的西瓜』『ふたり』『青春デンデケデケデケ』『はるか、ノスタルジィ』『あした』の大林の何とも言いようのない・・・駄作。大林は死んだかも・・・・ボソ


2002年10月04日(金)  完全犯罪クラブ 竜馬暗殺

 宣伝コピーは「犯罪オタク高校生がしかける、次世代型犯罪の幕開け」。面白そうじゃないですかぁ!『完全犯罪クラブ』。見終わって一言「何処が完全なんじゃいー!」。底が浅せぇ〜〜〜〜〜!こんな脚本でいいのかよー!えー、ハリウッドさんよー!後半の脚本をもっと練りこめば、すっげぇ良くなった可能性があるのになぁ!つまり現場に残された証拠品まで計算されていた方が面白くなったし、ラストでサンドラ・ブロックは○○○ちゃって、それでも犯人は最後に捕まっちゃう!みたいな話しが良かったなぁ。そのくらい楽しませてよ。犯人役の高校生ライアン・ゴズリングにはちょっとエドワード・ノートンのような雰囲気が漂っていました。

 夜はフィルムセンターにて74年作『竜馬暗殺』を観てきました。学生時代に観て以来の観賞でした。記憶に残っていたのは低予算のモノクロ・スタンダード、松田優作の白塗り、真っ黒の血、公開当時の世相(革命運動)を反映した幕末の内ゲバものという4点ナリ(何故に「ナリ」なのか!それは映画を観てのお楽しみ)。話は竜馬暗殺に至る3日間を描いています。竜馬役は原田芳雄で、汗臭い女たらしという人物像は、かの武田鉄矢が怒りそうなキャラクター設定です(笑)相棒の中岡慎太郎役は石橋蓮司。竜馬を狙う若い刺客が優作で、その姉で質屋の親父(竜馬の後見人)に囲われている妖しい女が中川梨絵。この濃い4人の愛憎関係はまさにATGですなぁ。この映画で竜馬は新撰組を始め、名を上げたい浪人ドモにも、薩長軍にも、郷土の土佐藩氏にも、挙句の果てには中岡にも命を狙われています。ところがいざとなると、中岡も優作も竜馬を斬れずにいるという、へんてこなブラックユーモアが漂っていて、何処かおちょくった字幕ナレーションと相まって、哀しくも可笑しい内ゲバ抗争が描かれています。ま、革命の真っ只中なんてそんなモンなんでしょうなぁ。また圧政権力への抵抗として庶民が生んだ流行現象「ええじゃないか」が重要な要素として登場してます。すっかり忘れてました・・・(⌒▽⌒;)アハハ!しかし、この頃の邦画の白黒って猥雑なエネルギーでいっぱいですねぇ。因みに74年は第1次石油ショック、三井・三菱爆破事件が起きてます。


2002年10月02日(水)  ズーランダー ジャスティス ダウン 甘い嘘

 本日は映画の日!朝から頑張っちゃいますよー!

 まずは、「あちこち探しても、前売り券が全然ナイじゃん!」事件まで起こしたメチャメチャ評判の宜しいベン・ステイラー監督・主演の『ズーランダー』。いやぁ、噂に違わず面白かったぁー!ブルー・スティール、オレンジ・モカ・フラペチーノ、FGTH、ボウイ、必殺パンツ、コホンコホン、ツボになったところは数え上げたらキリがないです。しっかし下らないですなぁ!(←最大の褒め言葉ですよ)個人的には『ゴールド・メンバー』より断然面白かったです。同じコメディでも『メルシィ!人生』と対極にある映画ですね。片や古典的コメディで、片や今の時代の旬のコメディ。どうして大きな劇場で公開しないのかなぁ・・・・ボソ。全てマレーシア関係なんですか?

 友人2人と『ズーランダー』を観賞した後、出入り口でバッタリまたまた友人と遭遇。いやはや皆さん好きですねぇ。友人達と別れ、シネ・パトスから丸の内ルーブルへ!歩いて5分です。

 2本目は『ハーツ・ウォー』からタイトルが変更になった『ジャスティス』。これは拾い物でしたねぇ。とっても地味ぃ〜な戦争映画。予告編で想像していた映画とは全く違っていました。ちょっと話が複雑になりすぎたきらいはありますが、上手くまとまっています。下級将校役のコリン・ファレルが全く戦場経験のない設定ってのも似合ってたし、ブルース・ウィリスも良かったんじゃないですか。ただ、こんなコト(捕虜収容所での裁判)なんてアルんですか?その辺りが、ちょっと・・・汗かな。でも、この映画は高感度。主人公が、どうにもならない状況に追い込まれるパターンって好きなんですよねぇ〜。監督のグレゴリー・ホブリットは『真実の行方』『オーロラの彼方へ』の人ですが、けっこう相性いいかもしれません。

 丸の内ルーブルから再びシネ・パトスへ。

 3本目は、監督のディック・マースが自らの『悪魔の密室』をリメイクした『ダウン』。なんてたって主演がナオミ・ワッツですから(だから、何?(爆))ほとんど毎日使っているエレベーターですから、トラブルはちょっと怖いです。まぁ、エレベーターが勝手に暴走しちゃうワケですが、その理由がねぇ・・・あまりにアホ臭かったです。だいたいナンでエレベーターに組み込む必要があるんだ?まぁ、それしか無かったってコトなんでしょうけど、口あ〜んぐり!個人的にはワケわかんない方が良かったなぁ。しっかしお安いセットですねぇ。扉が閉まる度に跳ねちゃうってのはどうなん?(苦笑)

 『ダウン』が終ったら、エンドロールもそこそこに銀座線に飛び乗り渋谷へ。

 4本目はル・シネマで『甘い嘘』を観賞。(´―`)┌ ヤレヤレ...って、馬鹿じゃん!さ、気を取り直して(取り直すんかいー)感想です。まずですねぇ、ストーリーは好きです。ラストもどちらとも取れるような描写で好きです。ヒロインのクロチルド・クローも、昔好きだった女の子に似ているので好きです(自爆)。だけんどもしかし!この監督が下手クソなモンですから、もうタ〜イヘン。説明不足や無駄な描写が満載で、話がアッチコッチヒッチコックレベッカ&裏窓風味っつー感じで行っちゃいます(わかるかなぁ?わかんねぇだろうなぁ?)よって、中盤はダレっぱなし。後半、どうにか持ち直しますが、もっと上手い演出だったら、かなり面白くなったような気もするので、ちょっと残念!

 観賞後、そのまま渋谷で友人4人とミニ・オフ。心地よく疲れた一日でした。


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