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2004年06月13日(日) |
映画よろず屋週報 Vol74 |
*****映画よろず屋週報 Vol74 2004.6.13.*****************
1928年6月13日、 数学者のジョン・ナッシュが生まれました。 統合失調症に悩まされながら 1994年のノーベル経済学賞を受賞するなど、 その数奇な運命は、 『ビューティフル・マインド』として描かれました。
そこで本日は、実在の人物の登場する伝記映画を 集めてみました。
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【音楽・芸能】
戦場のピアニスト Le Pianiste/The Pianist 2002年 イギリス・ドイツ・フランス・ポーランド ロマン・ポランスキー監督 第二次大戦下のポーランドの実在のピアニスト、 ウワディスワフ・シュピルマンの物語。 余りにも個性的なルックスで、 それまで演じてきたのも変な役が多かったせいか、 映画の内容と、 折しもイラクとの関係がこじれていたアメリカの実情に 十分配慮した 主演エイドリアン・ブロディ アカデミー賞でのスピーチに 驚き、感動した人も多いのでは?
マン・オン・ザ・ムーン Man on the Moon 1999年アメリカ ミロス・フォアマン監督 余りにも個性の強い芸風で、 多くの人が惹かれ、また多くの人に引かれたコメディアン、 アンディ・カウフマン(ジム・キャリー)の物語。 同名のR.E.M.の曲も聞き物です。
【著述】
ノーラ・ジョイス 或る小説家の妻 Nora 2000年ドイツ・イタリア・アイルランド パット・マーフィー監督 アイルランドを代表する作家 ジェームズ・ジョイス(ユアン・マグレガー)に 時には愛され、時には罵倒された 妻ノーラ(スーザン・リンチ)の喜びと苦悩の人生。 ひとかどの才能を持った人間は 残念ながら人格破綻者も多いなあと思わせる いけ好かない男ジョイスを マグレガーが好演しています。
アイリス ris 2001年イギリス/アメリカ リチャード・エアー監督 高い知性を持つ奔放な女性アイリス・マードックと、 彼女を愛し、尊敬し続けた夫ジョン・ベイリーの物語。 作家で哲学者のアイリス役を、 若い頃のパートをケイト・ウィンスレット、 晩年をジュディー・デンチという納得の配役で 見せてくれました。 英国アカデミー賞【BAFTA】では、 上記の2女優と、 夫ジョン役を演じた (若)ヒュー・ボナヴィルと (晩)ジム・ブロードベントで、 演技賞部門を総なめにしました。
【スポーツ】
アリ Ali 2001年アメリカ マイケル・マン監督 後に「モハメド・アリ」と改名するボクシングヘビー級チャンプ カシアス・クレイの役を、ウィル・スミスが熱演したそうです。 実は私はまだ見ていないのですが、 容姿のよさとお茶目な性格で人気者のウィル・スミスが どのようにシリアスキャラクターを演じたか、 確認の意味でも見たいところです。
【政治家(ちょっと番外)】
ブレイズ Blaze 1989年アメリカ ロン・シェルトン監督 実在したストリッパー ブレイズ・スター(ロリータ・ダビドビッチ)と 彼女を見初めたルイジアナの名物州知事 アール・ロング(ポール・ニューマン)の ちょっと聞きにはスキャンダラス、 よくよく見れば、なんとまあ純愛なんだ、という 人間味あふれる恋愛物語でした。 あんまりメジャーとは思えないだけに、 強力にお勧めします。
1967年6月12日、女優のフランシス・オコナーが生まれました。
悪いことしましョ! Bedazzled 2000年アメリカ ハロルド・ライミス監督 ビデオ・DVDあり(FOX)
1967年製作のイギリス映画(スタンリー・ドーネン監督)と 同名、ほぼ同趣旨のリメークです。(邦題まで一緒…) ただし、オリジナルでピーター・クックが演じた役を、 本作では、セクシーで衣装映えする美女 エリザベス・ハーリーが演じていました。
エリオット(ブレンダン・フレイザー)は、 人は好いけれど口下手で、 会社の同僚たちからうっとうしがられ、 好きな女性アリスン(フランシス・オコナー)とは まともに口を利くこともできません。
そこで、早まったことに、 「アリスンと仲良くなれるなら何でもする」などと 言ってしまったために、 突然、「悪魔」を自称する美女(ハーリー)に、 7つの願いを叶えてやるから、 あなたの魂をよこせと言われます。
悩んだ挙句、その話に乗ってしまったエリオットは、 時にはロマンチック、時にはワイルドな男に変身し、 愛しい彼女を口説くのですが、 そのさまは、どう見ても悪魔に翻弄されているとしか見えず……。
他愛もないオチまで続く他愛もない話を、 サービス精神で引っ張っていくタイプの 目に楽しい映画です。 E.ハーリーは、もともとモデルということもあり、 その完璧なプロポーションとゴージャスな美人顔で、 衣装を着替えまくり、でも、「それだけ」にならず、 コメディエンヌぶりもなかなかのものでした。
一方、ある時期から明らかにコメディアン化している B.フレイザーは、 (デビュー間もない1992年『原始のマン』から既にそうだったかも) 二枚目が無理やり 「俺は今回イケてない役だから、 みんなそのつもりで映画を見るように」 と注釈をつけるような設定でなく、 どう見ても、ため息の出るような「イケてなさ」で 詩人のようなロマンチストからNBAのスター選手から何から、 思い切りのいいコミカル演技を見せてくれました。
ただ、エリオットが憧れるアリスンという役が、 無難な美人なら、誰がやっても一緒かなと映ってしまうのは ちょっと残念だった気がします。 とどのつまり、あんまり重要な役じゃないってことでしょうか。 もっと気合入れて役の設定やキャストを考えてくれたら、 映画の印象も変わっていたかもしれませんが、 それがよかったとも限らないかもしれない、とも思わせます。 ……あ、結局「あれ」でよかったんですね。 この映画のヒロインは、ある意味E.ハーリーだし。 (9行も使った挙句、自己完結してしまってごめんなさい)
人生観を変えてしまうような作品ではありませんが、 さりとて、捨てたもんじゃない、 なかなか質のいいコメディーだと思うので、お勧めします。
われらの歪んだ英雄 Urideului ilgeuleojin yeongung Our Twisted Hero 1992韓国 パク・ジョンウォン監督 ビデオ・DVDあり(エースデュースエンタテインメント) 李 文烈【われらの歪んだ英雄】情報センター出版局
それにしても、いいタイトルです。 大仰に響く割に、見当違いな感じがありません。
予備校講師のビョンテは、 小学校時代の恩師の葬儀のため、 少年時代を過ごした田舎町へ赴きます。
1960年、李承晩の不正選挙による大統領四選が 糾弾されたこの年、 5年生のビョンテ(コ・ジョンイル)は、 父の仕事の都合で ソウルから田舎の学校に転校しました。 成績はトップクラスで、級長も務める優等生だった彼は、 絶対的な力をもって「5年2組」を統括する 級長のソクテ(ホン・ギョンイン)が 油断ならない悪党であることをすぐ見抜きました。
時には教師に彼の悪事を告発したりもしますが、 逆に、告げ口は卑怯なことだと叱られてしまいます。 また、ソクテの腰ぎんちゃくたちを 映画を見せたり食べ物をおごったりして 懐柔しようとしたことも裏目に出て、 しまいには、 教師から問題児扱いされるまでになるのですが、 ソクテに抵抗することをやめ、うまく渡り合うことを覚え、 ようやく落ち着いた学校生活が送れるようになったとき、 若い教師キムが赴任してきます。
キムは、ビョンテたち新6年生の担任になりますが、 ソクテが不自然に級友の支持を得ていることや、 教師たちまでもが ソクテを何の疑いもなく信頼していることを不審に思い、 徹底的にソクテの悪事の数々を追及するのでした。
一見して、ビョンテ役のコ・ジョンイルは 「かわいい・賢そう」 ソクテ役のホン・ギョンインは 「将来出世しそう」と思うような、 それぞれ非常に魅力的なルックスをしています。 ソクテに服従することを決めたビョンテは、 ただ「何かをあきらめた」わけではなくて、 ソクテのヤバいカリスマ性のようなものに、 全く惹かれていなかったとは言えないんじゃないか、 そんなふうなところも、それとなく漂わせていました。
ソクテが級友という名の子分たちを使って やったことといえば、 弁当の時間にフルーツを差し入れさせるとか、 女性教師のトイレを覗かせ、様子を報告させるとか、 テストの答案に自分(ソクテ)の名前を書かせて 替え玉でいい点をとるとか、 鉛筆やビー玉、 その他大切なものを取り上げて返さないとか、 (それが教師にバレそうになると迅速に返し、 もっともらしい取り上げた理由まで付す周到さ) セコくて情けないことばかりです。 「昔はガキ大将みたいなのはいたけど、 今みたいに陰湿ないじめはなかったよ〜」 と言いたがるノスタルじじぃどもに言わせれば、 ありがちな、かわいい小悪事にすらなってしまいそうです。
やむなくソクテに服従していた子供たちは、 ソクテより一段上に立ち、 彼を厳然と罰するキム教諭に促され、 それまでたまっていたものを吐き出すかのように、 まあ、上のパラグラムで並べたような、 ソクテにやらされたことを次々と暴露し、 「あいつ(ソクテ)は悪い奴だ」と言い放ちます。 そんな迷える子羊たちの心の脆さと、その先にあるものを 社会情勢なども絡めて描いたことで、 強烈な説得力とインパクトをもって 迫ってくる映画ではありました。
難を言えば、終盤で口数が多いなあと感じさせること。 ごちゃごちゃ言わなくてもメッセージ性は十分だったので、 ちょっと残念でした。
2004年06月06日(日) |
映画よろず屋週報 Vol73 |
*****映画よろず屋週報 Vol73 2004.6.6********************
皆さん、こんにちは。 私は、まだ6月だというのに、連日の暑さのため、 ノースリーブで自堕落に過ごしておりますが、 7月・8月になったら、一体何を着る気だろうと、 人ごとのようなスタンスで心配をしてあります。 皆様におかれましては、いかがお過ごしでしょうか。
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本日は、「6月6日にあめざあざあふってきて…」 のフレーズでおなじみの絵描き歌 『かわいいコックさん』にちなみ、 『コックさんの日』だそうです。 できあがりがかわいいかどうかはともかくとして、 一度くらいは描いたことがあるのではないでしょうか。
そこで、コックさん・レストランの登場する映画を 御紹介いたします。
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マーサの幸せレシピ Bella Martha Mostly Martha 2001年 イタリア/スイス/ドイツ/オーストリア サンドラ・ネットルベック監督 料理の腕はいいけれど、 自分の殻に閉じこもりがちだった女性が、 突如、『育ての母親』の役を割り当てられたとき、 何よりの手助けになってくれたものは?
パリのレストラン Au Petit Marguery 1995年フランス ローラン・ベネギ監督 30年間、パリを見つめてきたレストランの 閉店ディナーに集う人々の悲喜こもごも。 そうメジャーではありませんが、お勧め作品です。
恋人たちの食卓 飲食男女 Eat Drink Man Woman 1994年台湾 アン・リー監督 有名ホテルのシェフにして、3人の娘を一人で育ててきた男。 その腕を家庭の厨房でも振るうも、 娘たちは、父親の料理よりも、 自分たちの恋愛その他に関心が向く年頃になっていた。 名優ラン・シャン演じる「父親」がいい味を見せる 『アン・リー父親三部作』最後の作品。
ディナーラッシュ Dinner Rush 2000年アメリカ ボブ・ジラルディ監督 ニューヨークに実在するイタリアンの店を舞台に、 店の経営者である父(ダニー・アイエロ)と その息子で、若く才能のあるシェフ、 ウード(エドゥアルド・バレリーニ)の確執、 2人を取り巻く人間模様を、 ちょっとした大きな事件を取り入れながら描いた、 緩急に富む、退屈しない作品です。 亡き母のような古きよきイタリアンを要求する父親とは 意見が合わず、 また女性にだらしないウードを演じたE..バレリーニが ハンサムで、エゴイストで、 実生活では余りお近づきにはなりたくないタイプながら、 映画映えしていて、とってもすてきです。 ちなみに、監督ジラルディは、 舞台となった店『ジジーノ』の実際のオーナーだとか。
食神 Shi shen God of Cookery 1996年香港 チャウ・シンチー監督 恐れ多くも「食神」の異名をとる 天才料理人・周(チャウ・シンチー)。 いい気になって、ふんぞり返っていたら、 へらへらと近づいてきた弟子志願の男に足元をすくわれ、 どん底に叩き落されますが…。 口に入るものが扱われるだけに、慎重になってほしいのに、 あの怪作『少林サッカー』よりエグいつくりになっています。 また、日本のコミックについての造詣の深さも窺われました。 何はともあれ、シンチーの「俺様キャラ」炸裂です。
タンポポ Tampopo 1985年日本 伊丹十三監督 トラックドライバーの山崎努と渡辺謙!が入る、 宮本信子のラーメン屋って、 よく考えたらすごく贅沢です。 食べ物にまつわるエピソードがところどころに織り込まれるのを、 意味不明ととるか、伊丹流薀蓄披露の決定版ととらえるかで、 評価の分かれる作品ではありますが、 あの、目の毒なほど見事なオムレツだけでも 見る価値はありましょう。
草原とボタン War of the Buttons 1994年イギリス ジョン・ロバーツ監督 ビデオあり(ポニーキャニオン) ルイ・ペルゴー【わんぱく戦争】ハヤカワ文庫
60年代のフランス映画 「わんぱく戦争La Guerre des boutons」の リメイク作品です。 私は、そのオリジナルの方は見ていないので、 こう書くことで、どの程度のネタバレになるかはわかりませんが、 どちらの原題も、直訳すれば「ボタン戦争」。 もし「わんぱく…」の方が、ボタン戦争という言葉から連想される 核戦争のニュアンスが強かったのならば、 それほど忠実なリメイクではなく、 同じ原作に材をとったという程度かもしれません。
アイルランドの田舎町を舞台に繰り広げられる、 それぞれ小さな隣接集落に住む少年たちの小競り合いを ユーモラスに、時にシビアに描いた作品でした。
運動会の騎馬戦ならば、大将の帽子を奪うのが勝利の証ですが、 彼らの「ボタン戦争」は、その名のとおり、 お互いの服のボタンこそが戦利品でした。 だったら、こういう手でどうだ!と展開された究極の勝利作戦は、 戦士たちが少年だからギリギリセーフかなあ、と思うような、 おっさんたちに置き換えたら「引いて」しまうようなものでした。 (ここがネタバレポイントの一つなので、もって回った言い方になりますが)
民謡が似合いそうな、のどかでラブリーな田園風景のみならず、 アイルランド人にこだわった(多分) 子役たちの魅力に負うところの多い映画でした。 敵対する少年グループの間には、わずかながら貧富の差があります。 制服もある比較的きちんとした学校に通っているグループのリーダーは ジェロニモ(ジョン・コフィー)、 どちらかというと貧しい子たちのリーダーが ファーガス(グレッグ・フィッツジェラルド)ですが、 J.コフィーのお坊ちゃん顔(子役時代のイーサン・ホーク風)も、 G.フィッツジェラルドの、 どこかジョシュ・ハートネットを彷彿とさせるような素朴さも、 どちらも捨てがたいものです。 例えば『スタンド・バイ・ミー』や 『マイ・フレンド・フォーエバー』とは また一味違う吸引力がありますので、 (あらゆる意味で)少年映画大好き!という方にお勧めします。 ファーガスの幼馴染マリー(エビアンナ・ライアン)に なったつもりで、2人を見守ってやってくださいませ。
もしも、文章の一部にヨゴれた意図が感じられるようでしたら、 映画そのものには全く責任がなく、 筆者のよこしまな思惑のせいですので、ひらに御容赦を。
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