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2004年07月30日(金) ロザンナのために

1948年7月30日、ジャン・レノが生まれました。
今や「フランスを代表する」大スターですが、
生まれはモロッコのカサブランカ、
御両親はスペイン系というバックボーンがあるようです。
そして、『グラン・ブルー』や『レオン』に見られるように、
イタリア系の役のイメージも強い人ですね。

本日御紹介の作品でも、イタリアの田舎町の
気のいいオヤジを好演していました。

ロザンナのために
For Roseanna

1997年アメリカ ポール・ウェイランド監督


マルチェロ(J.レノ)とロザンナ(マーセデス・ルール)は、
イタリアの田舎町で食堂を経営する、仲のいい夫婦です。

ところで、ロザンナは実は病気を患っていて、
自分が死んだら、
幼いうちに亡くしてしまった娘のそばで眠りたいという
願いを持っていました。
となると、現実問題として、村内で不足気味の墓地が
妻にもちゃんと回ってくるよう、
「村からこれ以上死者を出さないこと」が重要になってきます。
マルチェロはそのために、「雨ニモ負ケズ」ばりの東奔西走で
妻の願いを叶えようと奮闘するのでした。

ロザンナはロザンナで、
自分が死んだ後のマルチェロの身辺が心配で、
マルチェロとは決してうまが合わない
自分の妹セシリア(ポリー・ウォーカー)を
後添いにと考えるなど、
腹が据わっていました。
(しかもの胸に秘めておくわけではなく、口に出しちゃっちゃってますし)

さあ、マルチェロの努力は報われるのでしょうか。
そして、ロザンナの命の行方は……?

愛する人にはずっとそばにいてもらいたいと思うのは
言うまでもなく、ごくごく自然な感情で、
「私が死んだら…」「ばかだなあ、君が死ぬもんか」的やりとりは
多くのテレビドラマや映画で見られるシーンです。
けれども、現実として死に至る病を得てしまったなら、
せめて、本人の心からの願いを叶えてやりたいという、
その部分だけを切り取って映画化したというところに
何というか、潔さのようなものを感じました。
まるで死ぬのを待っているよう、と、とれなくもないけれど、
この映画を見てみれば、そう感じる人は余りいない気がします。
大前提に納得できないという方には、無理におすすめしないものの、
心温まる空気の流れを感じる、ユーモラスでちょっといい話というのは
間違いありません。
「そうか、泣いてほしくて作ったんじゃないのか…」と感じる
ラストへの運びもいい感じでした。

ジャン・レノにはコメディは不向きという意見もよく聞きますが、
あの不器用そうな感じは、この映画には合っていました。
達者な役者に小器用にこなされると、
それこそ「死ぬのを待っている」ように
見えたんじゃないかと思います。



2004年07月25日(日) 映画よろず屋週報 Vol76

*****映画よろず屋週報 Vol76 2004.7.25****************

1973年7月25日、日本シェーキーズが
ピザ第1号店を東京・赤坂に開店させた日だそうです。

そこで、ピザから思い起こされる映画人・映画を
幾つか集めてみました。

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ナタリー・ポートマン Natalie Portman
1981年6月9日イスラエル生まれ

1994年、リュック・ベッソン監督の【レオン】で、
痛々しいほど美しくりりしい少女を演じた彼女は、
ピザ・パーラーでモデルとしてスカウトされ、
「女優なら興味がある」と答えてこの世界に入った、
という逸話があります。
30近いオッサン(ティモシー・ハットン)に
ロリータではなく、一人の女性を意識させてしまった
【ビューティフル・ガールズ】 (1995)
ミュージカルコメディー【世界中がアイ・ラブ・ユー】(1997)
そして【スター・ウォーズ1・2】 など、
若いながら、芸域の広さには目を見張るものがあります。
個人的には、
巨大スーパーウォルマートで出産する少女を演じた
2001年の【あなたのために】 がお勧め。

ミスティック・ピザ Mistic Pizza
1988年アメリカ ドナルド・ペトリ監督

ポーランド系アメリカ人が住むコネティカット州の小さな町で、
町の名にちなんだ「ミスティック・ピザ」という店で働く
それぞれ個性が違う3人の女性の恋愛模様を描いた作品。
ジュリア・ロバーツが、
鄙には稀なるナントヤラという感じで
やや野暮ったいセクシー美女を好演しています。
その小さなピザショップに、グルメ評論家がやってくる、
というエピソードもあり。


TAXi Taxi
1997年フランス ジェラール・ピレス監督

人気のカーアクションコメディーの記念すべき第1作。
サミー・ナセリが感じた走り自慢のドライバー、ダニエルは、
タクシーの営業許可が下りる前は、
これまた走り自慢のデリバリーピザの配達員でした。
「人類は四足歩行から二足歩行へと進化したが、
この男は、二輪から四輪に転向します」
という、転職時の仲間からのはなむけの言葉が印象的。

いちご白書
The Strwberry Statement

1970年アメリカ スチュアート・ハグマン監督

1968年、コロンビア大学の学園紛争を描いた
ジェームズ・クーネンの小説の映画化。
政治的思想を特に持ち合わせていなかった
ボート部員の青年サイモン(ブルース・デイビソン)が、
恋した女子学生(キム・ダービー)に近づきたくて覗いた
学生運動の世界とは……。
サイモンが、散らかった部屋で、
食べ残しのピザにたかる油虫に向かって
「このベトコン野郎!」とののしるシーン
がありました。
タイトル【いちご…】の由来は、
「見た目は赤い(共産主義志向)だが中は白」
というからかい。
学園当局が、闘争に加わる学生たちをして
「「僕たちは赤いいちごが好き」と言っているだけの連中」
と、その思想の甘さを批判しているシーンもあります。

キャント・バイ・ミー・ラブ
Can't Buy Me Love

1987年アメリカ スティーブ・ラッシュ監督

(以下は、某映画批評サイトに載せていただいている私が書いたあらすじ文の転載です)
自分自身がモデルをエスコートしたときに
他人からちやほやされた経験が
もとになっているという、
スティーブ・ラッシュ監督の青春コメディー。
“ボケ”グループのイケてない男の子
ロニー(パトリック・デンプシー)は、
ひょんなことから学園のアイドル的な
女の子(アマンダ・ピーターソン)のピンチを救い、
彼女に1カ月契約で恋人のふりをしてもらうことで、
学校じゅうの人気と注目を集めることに成功するが…。
“いいもの”を持っているのに自信が持てないというのが、
いかにも80年代学園モノの愛すべき主人公像。
ロニーの弟を演じたセス・グリーンの愛らしさも、
今となってはお宝映像です。
(ここまで)
ロニーが注文したピザを、いじめっこグループに
ごっそり食べられてしまうというシーン
がありました。
余談ですが、
この映画を一緒に見に行った我が母は、
このシーンからこっち、
ずっと「ピザとコーラ」のことを考え続けていて、
映画が終わった後、何かを食べようという話になると、
躊躇なく「ピザとコーラ」と言いました。
私の田舎にはシェーキーズはなかった(今もナイ)ので、
結局、適当な喫茶店で注文した覚えがあります。


依頼人 The Client
1994年アメリカ ジョエル・シュマッカー監督

さる大物が絡む殺人事件の現場を目撃してしまった
小さな兄弟。
弟はそのショックから、重いPTSDで寝込んでしまうが、
兄マーク(ブラッド・レンフロー)は、
その殺人の黒幕から家族と自分の身を守るため、
ポケットの1ドル札で
弁護士レジー・ラブ(スーザン・サランドン)を雇います。
サスペンスフルですが、
親子以上の年の差がある男女の
“ラブストーリー”といえなくもない、なかなかの佳作。
不本意にも、
一時、留置所に身柄を拘束(一応“保護”か)されたマークは、
転んでもタダで起きないというか、
宅配ピザを使って、オトナに一泡吹かせました。
ちなみに本日7月25日は、
ブラッド・レンフロの22歳の誕生日だそうです。
2000年の【ゴーストワールド】で見たときは、
随分肥えちゃったなあという印象を受けましたが……。

殺したいほどアイ・ラブ・ユー
I Love You to Death

1990年アメリカ ローレンス・カスダン監督

女好きのピザショップオーナーケビン・クライン)は、
火遊びが過ぎて、とうとう妻(トレイシー・ウルマン)に
殺意を抱かせてしまいます。
5回殺されかけた男をモデルにした実話とか。
L.カスダン&K.クラインという「名コンビ」による
ブラックコメディー。
妻ロザリーに思いを寄せる若い従業員役で、
今は亡きリヴァー・フェニックスが出演しています。

Mr.ディーズ Mr. Deeds
2002年アメリカ スティーブン・ブリル監督

メディア王ブレイク氏の急死に伴い、
たった一人の遺産相続人として浮上したのは、
田舎でピザショップを営む善良で愛すべき男
ロングフェロー・ディーズ(アダム・サンドラー)でした。
相続の手続のため、都会に引っ張り出され、
柄にもない大金持ちの生活をしばし味わうディーズは、
莫大な遺産相続と、その率直過ぎる行動から、
メディアのおいしいネタとなってしまうのでした。
1936年のフランク・キャプラの傑作
【オペラハット】のリメーク。
A.サンドラーの映画だけに、
かなり思い切った現代のコメディーにはなっていますが、
ディーズが素人詩人としての活動をしているところや、
天井の高い屋敷で声を反響させて
子供のように喜ぶシーンなど、
オリジナルの設定をそのまま生かしたところが
いい持ち味になっています。


2004年07月18日(日) 映画よろず屋週報 Vol75

*****映画よろず屋週報 Vol75 2004.7.18 **************

1817年、イギリス閨秀作家の代表格
ジェーン・オースティンが41歳で亡くなったそうです。
ざっと200年近く前ということになりますが、
彼女の作品群は、今も映画のモチーフとして愛され、
現代の日本で見られたり見られなかったりしています。

そこで本日は、その映画化作品と、
原作がヒントとなっている作品、
また、作中でタイトル名が印象的に使われた作品などを、
ちょこっと集めてまいりました。

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いつか晴れた日に
Sense and Sensibility

1995年アメリカ アン・リー監督

原作の平均的日本語タイトルは「分別と多感」
それぞれ、三姉妹の長女(エマ・トンプソン)と
次女(ケイト・ウィンスレット)の気質を
あらわしているようです。
(ちなみに三女はまだ子供…というより、
トンプソンの娘といってもおかしくないような子が演じていました)

19世紀初めのイングランドの田園を舞台に、
主に姉妹2人の愛し方、愛され方を微笑ましく描いた
品のいいロマンチックコメディーでしたが
「え、これ“アメリカ映画”なの?」
「監督って台湾出身のあの人?(李安)」と、
後からたくさん驚かされた、
とっても「英国の薫る」映画でした。
達者で多彩な女優エマ・トンプソンは、
この作品でアカデミー脚色賞を受賞しました。

エマ Emma
1996年イギリス/アメリカ 
ダグラス・マクグラス監督

舞台背景は、上記の「いつか晴れた日に」とほぼ同じ。
魅力的な貴族の娘エマ(グゥイネス・パルトロウ)は、
自分の恋愛そっちのけで、周囲の「消極的な人々」の
恋愛関係を取り持つのが大好きという、
はた迷惑なはりきり屋さんでした。
似合っているんだかいないんだかいまいちわからない
ユアン・マグレガーのノーブルなコスプレも拝めます。
ちなみに、この1年前の1995年製作で、
エイミー・ヘッカリング監督、
アリシア・シルバーストーン主演で
現代アメリカのリッチな高校生たちの
学園コメディー仕立てにした作品が『クルーレス』ですが、
こちらはこちらでなかなかお勧め。


高慢と偏見
Pride and Prejudice

1995年イギリス サイモン・ラントン監督

「金持ちで独身の男性は…」云々という書き出しが
この作品を傑作たらしめた、というほど有名ですが、
(人によって訳が少しずつ違うので、
中途半端に引用してしまって申しわけありません)
例えばこんなふうに、
映画・ドラマの素材として見る者にとっては
本当は惹かれ合い、結び合う運命にありそうな男女が
最初は反発し合ってけんかばかり、というのは
ロマンチックコメディとして絵になります。
BBC製作のテレビムービーですが、DVDが出ています。
めちゃくちゃ長い作品なので、日本ではNHK衛星及び地上波で
3夜に分けて放送されました。
言われてみればそうかも、という感じですが、
映画「ブリジット・ジョーンズの日記」も、
この作品がモトネタのようです。


ユー・ガット・メール
You've Got Mail

1998年アメリカ ノーラ・エフロン監督

商売敵とは知らず、30代のチャットルームで意気投合した
男女(トム・ハンクスメグ・ライアン)が
繰り広げるラブコメディー。
1940年のエルンスト・ルビッチ監督作
『桃色の店』のリメークですが、
主人公が会う約束をするシークエンスで、
女性が目印になる本を持ってきますが、
『桃色…』でトルストイの
「アンナ・カレーニナ」が使われていたのに対し、
この『ユー・ガット…』では、『高慢と偏見』でした。
なかなか含蓄のある選択ではあります。

華氏451
Fahrenheit 451

1966年イギリス/フランス
フランソワ・トリュフォー監督

読書が禁忌とされる近未来が舞台となった
レイ・ブラッドベリの同名小説の映画化。
ただし、
どこでどうジェーン・オースティンの小説が扱われるか、
言ってしまうとネタバレになるので、
控えさせていただきます……が、
くすっとさせられる扱い方ではありました。
ちなみに、「華氏451(度)」とは、
書物が燃える温度のことです。


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