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旅先から■2002年11月30日(土)

朝から生徒は何度も電話してきた。

一緒に行った友達が試験を受けている間、暇で仕方なかったようだ。

「10分毎にかけるね、小刻みに。」

と宣言したとおり、ほんとに10分間隔で20回近く電話してきた。

でもまあ、ホテルの部屋で勉強していたので、いちおう安心。

外をプラプラ歩かれると、ナンパされたり、拉致られたりしないかと心配で仕方ない。

そして、旅先でも勉強してるところはさすがに危機感があるみたい。





午後、僕はクリスマス・ケーキを予約してきた。

24日は火曜日、彼女の指導にあたる。

この間から生徒は、ロウソクの火を吹いて消すのやりたい!ってそればっかり言ってる。

冬休みだし、昼間の指導だから、ケーキ食ってる時間くらいはあるだろー。





明日はセンタープレ。

最後の模試。

今、生徒はまだ新幹線の中。

明日、体力持つかな…。






こういうのを成田離婚って言うんだっけ?■2002年11月29日(金)

夕方、生徒を家まで迎えに行った。

友だちの受験についていくと言う彼女を、新幹線のある駅まで送るためだった。

つか、受験勉強…。

その友達が受験会場にいる間、生徒は「別行動で遊んできます!」って笑顔笑顔。

彼女は完全に旅行気分ではしゃぎまくりだった。

「ねーねー、今日の私、格好良くない?」

確かに、ジーパンに黒のジャケットはいい感じだったなー…駄目だ―、この娘のペースに乗せられてる。





駅前前は、のんびり駐車していられるほどの交通量じゃなく、停めてすぐに彼女は尾降りていった。





無事、任務完了…と思いきや。





乗車予定時刻の1時間ほど前に生徒からワケの分からん電話が来た。

「あのさー、中止。なんか、けんかになってんの。腹立ったし、帰ろうかと思ってるんだけど―。」

は?

「二人で歩いてたら私がナンパされて、その男に連れていかれそうになって。」

で、それをその友達は“自分を置いて男に着いて行った”と思ったのか、戻ってきた生徒に対して怒ったそうだ。

「だから、私も感じ悪くなってさー。」

で、今、どうしてんの?

「んー、今、一人で駅の近くの服屋にいるよ。なんか、ムカつかない?」

マジで!?





話の途中、その友達からのキャッチ・フォンを何回も彼女は無視するし…。

新幹線の発車がいよいよ迫った頃に、ようやく彼女は友達との電話をつないだ。

結局、「仲直りしたから一緒に行くね」と聞かされたが…。

ほんと、一筋縄ではいかない娘だよな。





受験直前は、誰でもピリピリするもんだよ。

他人事じゃないんだてば。

数ヵ月後、キレるなよー。






頼み事をするときの言い方■2002年11月27日(水)
水曜の昼もマックで勉強。

ハッピーセットのミッキーが増え続ける恐怖。





生徒がいきなりなことを言い出した。

「あのね、金曜は先生が来る日じゃん、でもね、私、金、土といません。」

は?

「友達が県外へ推薦入試受けに行くんだって。で、その子に、『付いて来て―』って頼まれちゃったから、行って来るね!」

分かんねえよ、ぜんっぜん意味が分からねえよ。

日曜には帰って来いよ。模試は受けろよ。

「ごめんねー。お土産買ってくるから、ゆるしてぴょ?」

ぴょ…。





生徒が黙々と勉強している間、人から教えてもらった『妖精占い』を携帯でやった。

妖精占いはこちら。(リンクを作ってみたが、分かりにくい…。)

信じちゃいないけど、たまにやると結構面白いんだよな、こういうの。






僕は森の妖精だとか(包容力あり…果たして??)。

生徒は若葉の妖精(働かなくても自然と周囲からお金が集まってくるらしい…確かにそうだ。)。

そして彼女の結果には、「森の妖精は貴方にとって師匠のような良き友人」と書いてあった。

既に、師匠だよな?

僕の問に対して、彼女は一言。

「どこがー?いつからそんな偉い人になった?」

勉強の邪魔してすみません。




※『妖精占い』はリンクフリー、とのことです。

夢?破れり。■2002年11月26日(火)
生徒のテストが午前中に終わったので、待ち合わせの場所にて車で拾い、マックへ向かった。

道中、娘はタバコを吸う吸う。

「制服のままで外で吸ってると、ヤンキーと勘違いされるから嫌なの。」

でもな、車の中で吸い貯めすんな。

警察に見つかったらタイホされるうううう。





いつものマックでテスト勉強。

かわいい子ぶって禁煙席とか行くなよなー。

最近、大学でみんなに言われるんだよ、「吸わないのに、いつもタバコ臭くない?」って。





この日、生徒を一旦家まで送り届け、夜に指導だった。

生徒の態度は、マックとか外にいるときとは大違い。

家にいるときは究極の内弁慶。

テンションたけーよ。





「ちょっとさあ、勉強モードに入っていい?」

いいっすよ、望むところで…ってもぞもぞと何やってんの?

「ブラはずしてんの。つけてると落ち着かなくてねー。ほら見て、今日は青でした。」

生々しいよー、エロくもなんともねえの。





いや、悪かった、女の子に幻想抱いてた自分が間違ってました。

所詮、女なんて、女なんて…。






今、一番重要なこと■2002年11月25日(月)
生徒の学校では、今週、期末試験がある。

「テストよりもさー、私、出席がやばいんだよねー。」

遅刻しすぎてるからだろーが?朝、ちゃんと起きろ。

前々からヤバイとは聞いてたけど、いよいよ数えるほどしか授業をサボれなくなったらしい。

怖えぇー、マジで怖えぇよこの娘。

大学受かって高校卒業できないとか…勘弁してー。





月曜の夜(書いているのは火曜)電話でいくつか彼女の質問に答えた。

「ま、赤点とかはないでしょ。余裕、余裕。」

勉強頑張ってるのは分かった、とりあえず学校行け、いや、行ってくださいお願いします。





(24日分も更新)






ダブルヘッダー後半 単語の成り立ち■2002年11月24日(日)
単語の頭ににim-とかin-が付くと否定の意味になるよな。

僕は生徒に英単語の語源について説明していた。

例えば、possible(可能な、有りうる)に接頭語のim-が付けばimpossible(不可能な、ありえない)になるだろ?

接頭語や接尾語を知ってると何かと便利だよ。

僕の説明に対し、生徒はガッツポーズをするように腕をグッと曲げて言った。

「じゃ、アレが元気良いときは“ポ”?」

“ポ”?

「だって、先生のアレは元気の“ない”インポ、でしょ。だからインを取ったら“ポ”じゃん?」

殺す、殺すよ?





これは土曜の夜、ダブルヘッダー指導の後半のこと。

いい加減昼間にも勉強していたので、僕も生徒も、余談する気力もなく淡々と英語をやった。

唯一出たあほな会話が、上のやつ。





ちなみに。

impotentインポテンツは性的不能、形容詞potent「力強い」名詞potential「潜在能力」ってことで、生徒の指摘は間違ってはいない…ムカつくけど何も言えねー。






前半終了;現在ハーフタイム中■2002年11月23日(土)
ただいま。

本日ダブルヘッダー。

昼間の指導を終え、さっき帰ってきたところ。

これから夕食を食べ、20時30分には再び生徒の家に戻って指導再開。





生徒は一昨日に友達と撮ったプリクラを見せてくれた…はいいけど、僕が欲しいと頼んでも無視された。

「かわいく撮れてるでしょー?」って見せびらかすくらいなら、くれたっていいじゃん、ケチ。





いつもの事だけど、生徒は問題を解くときに行き詰まると、「分からない―。」と僕の腕に抱きついてくる。

問題に正解したときも「できたー。」とまたくっついてくる。

そこで今日、僕が、

そんなことされると(僕の生徒に対する)気持ちを諦められなくなるだろーが?

と言うと、生徒はパッと離れ、

「ふいいい、怖い―、怖い―。」

としょっぱい顔してた。

ひゃっはっは。





さてと、後半に向けて腹ごしらえ腹ごしらえ。





日記を一日で3回も更新するなんて…有り得ねー。






pretend to 〜ふりをする■2002年11月22日(金)
昨日(22日金曜日)は生徒の指導日だったけど、僕の学校の都合で延期。

本日は昼と夜のダブルヘッダーになった。

前半は14時30分からなので、今、その支度をしているところ。





学校の都合といっても、実情は研究室の飲み会で。

来年もここの院生なので、先輩の研究生やらなにやらに挨拶回りしなきゃいけない雰囲気。

めんどくさい。

途中、生徒から電話がかかってきて、周りには彼女?とかはやし立てられた。

いえいえ、まあまあ、とか言って、いちおう照れている振りでもしておいた。

解散した後、改めて生徒に電話して、数学の質問に答え、翌日の時間を確認したりして電話を終えた。





さて、そろそろ行ってくるか。






遊ばれてる■2002年11月21日(木)



なんだかんだ言っても、僕は生徒のことが気がかりで仕方なくて。

昨日の夕方、生徒は僕の気付かないうちに二度携帯にかけてきていて、後でそれに気
付いた僕が電話すると繋がらなかった。

何度かかけ直したが、電波が届かない、とのメッセージが流れるだけ。

僕は彼女の身に何かあったのでは?と心配で仕方なかった。





結局、それは杞憂で、8時過ぎに彼女がメールで「友達とご飯食べてた!その子が良い化学の参考書ない?って言うんだけど先生は知ってる?」と知らせてきた。

建物の都合で電波が入らなかったそうだ。

この、あほ娘。





9時に彼女から電話がきた。

「今、駅にいるんだけど、会わない?」

家まで送れってか、いいよ。

「ありがとー、優しいねえ。んー、じゃあ、ついでに彼氏の職場に寄り道してもらえ
ると・・・あれ?さすがにキレ気味?」

結局生徒は、今日は家から駅まで自転車で来たからそれで帰ります、と言って電話を
切った。

最初から僕を呼ぶつもりなどなかったわけで。

つまり、試されてたんだ、僕は。





こんなふうにして、彼女は何処まで許されるかを知ろうとしているんだ。






ゲームオーバー 2■2002年11月20日(水)

(11月19日の続き)

生徒の彼氏の職場までは車で走ること30分ほどで到着した。

「一方通行の道ばかりだから、帰りは迷わないでね。」

そう言う生徒に対して、僕は、

じゃあ、近くで降ろすよ。歩いていけるだろ?

と返した。

彼女は驚いていた。

「え?怒ってるの?」

別に、怒ってないよ。

「うそ。キレ気味になってる。だって、いつもだったら“途中で降ろす”なんて言わないもん。ねえ、怒ってるの?」

そのとき僕は自分の気持ちを理解できてなくて、なんの説明もしなかった。

むしろ、ただもう、彼女の質問に答えることも、会話することも、いっさいを拒絶したかった。




小道を走ってすぐに彼氏の職場の看板が見えた。

「ここでいいよ。ありがとう。」

生徒はごく明るくと言った。

僕は車を停め、降りる彼女の顔も見ず、じゃあな、とだけ言った。

「ねえ、やっぱり怒ってない?」

うるさい、さっさと行け。

ドアを閉めさせ、僕はすぐにそこから去った。

もう、何もかもが嫌だった。




朝起きると、携帯に2時頃に生徒からメールが入っていた。

メールには、彼氏は性病でなかった、それでも病院に行くべきか聞きたい、そして昨晩は送ってくれてありがとう、と書いてあった。

僕が返事を返さなかったが、10時に彼女が新しいメールを送ってきて、病院へ行ったけど病気じゃなかったよ、と知らせた。

もう、焦り具合を見てられないからよ、彼氏にうしろめたいと思うようなことはするな、僕はそう返信した。





心は決まった。

もう、止めにしよう。

これ以上苦しむのは御免だ、気楽なただの家庭教師に戻りたい。

君がその彼氏のことをどれだけ好きなのかは分かったよ。

彼氏だけをまっすぐ見ているんだろ、ほかの男達が君をどう思おうが、その思いは伝わらないんだろ。

だから、ちょっと頼みごとがあるんだけどさ。

自分では諦めがつかないから、僕を手痛く振ってくれないか。







ゲームオーバー 1■2002年11月19日(火)


昨晩は数学の指導。

生徒の様子が変だったので、勉強が終わったあとで何かあったか?と彼女に訊いた。

月曜日に彼氏はメールで、彼の性器が腫れ上がりうみが出たので病院へ行ったと伝え、それ以来、まる一日以上連絡が途絶えていたそうだ。

「私が病気をうつされてきたかも知れない。浮気がばれたかも知れない。彼氏が怒ってたら、どうしよう?」

生徒は、夏の頃に一度浮気したことがあったと彼女は告白し、泣き出しそうな顔をしていた。

僕は、大丈夫だよ、と言った。

裏切られていたことに怒るよりも、まずは彼女を落ち着かせることの方が先決だった。

今夜はまだ仕事が忙しいんだよ、きっと。だいたい、今夜は僕と勉強してると思って、彼氏は遠慮しているんだろう。

「だって、夕方から何回電話してもメールしても返事がない…。」

時刻は23時を過ぎていた。

それに、病気だったら堕ろした時に判ってるはずだから。そんなに前のことが最近になって突然発症するとは思えない、そう僕が否定しても生徒は悪い予想ばかり膨らませていた。





仕方ない、僕は生徒に、彼氏の職場まで行こう、と言った。

彼女の家には門限がないのか、生徒は夜も自由に外出している。

彼氏の仕事のあがりが夜遅いというのを家族が知っているはず、だから彼女がこれから出て行っても彼氏が迎えに来たのだとみなされるだろう、と僕は考えた。

そこで、僕は一旦彼女の家を出て、10分後に支度を済ませた出てきた生徒を車に乗せて出発した。

彼女を落ち着かせるには、他に方法がないと思った。





車に乗ってからの生徒は、さっきまでとうって変わり、興奮して多弁だった。

そして携帯に同級生の○○君からメールが入ってくると、

「もう、この際振っちゃおっと。この子、推薦入試も終わったことだし、少しくらい落ち込ませてもいいよね。すっきりさせよう。」

とメールを打ち始めた。

「…私は勉強に集中しなきゃいけないし、○○君は遠くの大学へ行っちゃうし、別れよう。こんな文でどう?いいよね、送りまーす。」

生徒のメールに対し、その○○君からは一度、どうして?ととまどいのと返信が来たが、

「これを読んだらもう何も言ってこないでしょ。」

と生徒が言うメールを送ったあとは、彼女の言葉通りなんの返答も来なくなった。

やっつけ仕事、一丁あがり。





「こんなあっさり終わるもんなんだねー。悪いとかぜんぜん思わないし。」

生徒は僕の方を見てピースしながらそう言った。

人と人との関係なんて、そんなもんだよな。

つながりなんて、あってないような、弱いものだ。

僕は、数ヶ月後には自分と生徒との関係もあっけなく途切れるのだ、と想像しながら運転していた。

(11月20日へ続く)







疲れか、昨日のことを引きずってるのか■2002年11月18日(月)

一週間の始めの日なのに、既に疲れた。

卒論…四年間遊びすぎたことへの罰か、これは。





20時頃、生徒が電話してきた。

彼女が昨日の彼氏とのデートについて報告し始めた時、僕は、疲れてるから、と早々に電話を切った。





そういう話だったら、今は聞きたくない。





とにかく、眠い。





寝よう。







I'm a loser babe■2002年11月17日(日)
土曜の夜、生徒との電話の中で、指導時間外でも彼女の勉強に付き合うことが決まった。

「誰かが一緒にいると勉強できる気がする。」だそうだ。

安くないよー、僕を雇うとなー。





そういうわけで、日曜の朝っぱらから、受験生の頃よく行ったマックで勉強。

自分が受験生だったころと店の雰囲気が変わってなかった。

客層は学生や高校生、浪人生など長居する連中ばかりなので、気兼ねなく勉強していられる。

めーわくな客が4年ぶりに帰ってきました、またお世話になります。






生徒は昼過ぎに彼氏と会う約束をしていた。

休日の午前中は寝て過ごすってか。

学生は毎日休みみたいなもんだから毎朝早いよ。

社会人ご苦労様って感じ。





13時頃、勉強にきりをつけ生徒を家まで乗せていった。

それからずっとつまらない気分が続いている。

彼女にとって僕と会う事は今日のメインイベントではないということが嫌だ。

嫉妬ってやつか?これは。

好きな女が他の男とやるのを想像したくない、自分の手で抱きたい欲求は今はないけど。




別に奪っちゃえばいいじゃん、そうしたって誰も傷つくわけじゃないし。

でも、現実に彼女の自分だけのものに出来てないのは、自分がその彼氏に負けているからだろうな。

だったら、文句は言えない、負け犬、負け犬。

 I'm a loser babe

 So why don't you kill me?

 おれは負け犬だからよ

 殺したきゃ殺してくれたって構わねえよ?  ("loser" / Beck)





肝心なのは開き直りと気だるさ。






自作問題■2002年11月16日(土)


昨晩は英語の指導だった。

帰ってきて、(行く前に書いておいた)前の日の日記を更新したらもう疲れてて限界。

今週は疲れ気味。





thatについて、名詞節、関係代名詞(形容詞節)、同格、どの用法かを判別する勉強。

彼女の英語嫌いをなんとかせねば―――昨日の指導では自作問題を用意していったら、生徒のやる気が違った。

僕が指導のためにどの程度努力してきたかは彼女に見抜かれてしまう。

だから教材研究と準備に手が抜けなくて…嬉しい悲鳴だったりするけど。





“あれ”からもう一ヶ月。

大きな波がこなかったのは予想外だった。

それでも、僕はまだ身構えていたりする。





僕が彼女の家庭教師でいる期間は残り3ヶ月くらい。

僕と生徒は、この関係の終りについて話すことが増た。最近。







んー、キモいです♪■2002年11月15日(金)

夕べ生徒から電話が来て、長々と喋った。





始めは○○君の話題で…「彼氏面するからムカついてきた。私に彼氏がいること知らずに。」

彼氏がいること隠して言えるせりふかよ…この娘に倫理はあるのかー。

質問や他愛もない会話をだらだらと続けた。




「先生、よくこんなだらだら喋っててキレないね。尊敬する。」

尊敬?

「わたしだったら、人に電話でうだうだ喋られたら迷惑だもんね。」

いいんだよ。君となら話していたい。

「んー、キモいです♪」

手に取るように分かる…電話口の向こうの笑い顔が…。

この娘…。





今夜は英語、英語。 






普通 / 普通でない (12日分も更新)■2002年11月13日(水)

(12日の続き)

指導のあと、生徒の彼氏の話になった。

「彼氏に会ったら、先生殴りそうだよね。」

生徒は気軽にそう言った。

殴る、か。

「そう、こんなかわいい子を独り占めしやがってーって。」

僕は自分の気持ちを言う代わりに、生徒に彼女の推測を話させた。

彼女が僕についてどんなイメージをもっているかを知りたくて。

独り占め、か。それじゃ、殴る理由にならんよ。

「じゃあ、堕ろした子供のこととか?」

子供、か。それなら十分な理由になるな。君に傷をつけた奴は誰でも許せんよ。

「でも彼氏は私に、“将来のことを考えて、堕ろしたいと思うんだったら堕ろしてもいいよ”、って言ってくれたんだよ。」

そういえば、僕は堕胎に至る経緯を詳しくは聞かされてない。

また僕はそんな質問をするべきでないと思っている。

生徒が話したければ聞くことになるかもしれないけれど。





「責任は二人に半分ずつあるんだから。」

でもな、こうなるのを防ぐことだって出来たはずなんだ。なのにそれをしなかった。

「だから、それもお互い様じゃん。」

悪いけど、こういうことは男に責任があるとされるのが普通の考え方なんだよ。

僕がそう言うと、生徒はたばこを吸って話すのを止めた。





普通が聞いてあきれる。

僕の言ってることは全く間違ってるじゃないか。

合意の上で避妊をしなくて、それで妊娠したなら責任はお互い様。

きっと、それが理にかなった考え方、普通の考え方。

だったら、少しも普通ではないじゃないか、僕の気持ちは。





そんなこと、どうだっていい。

彼女が幸せでいてさえくれれば、それでいい。


はっきりさせるブーム、だそうだ。■2002年11月12日(火)

昨日は数学の指導だった。

「先生あのね、私、今、はっきりさせるブームなの。」

はあ?

「だから、はっきり言います、英語は嫌いです。」

にこにこ顔でピースする生徒。

言っとけ、言っとけ。





数学の問題の解き方を紹介しているとき、生徒は、分からない、とすねてしまった。

こたつ布団にもぐり、生徒は言った。

「ねえ、どっち?私の頭が悪いのか、先生の教え方が悪いのか。」

不快なことが起きると、決まって生徒は裏切りを受けた子どものような目つきをする。

意図してるそういう表情をしているのかは判らない、が彼女は事態を解決する責任を全面的に僕に押しつける。





僕は彼女に待ってくれと言い、彼女が行き詰まっていた箇所を探し、その問題について別の解説の方法がないか考えた。

結局、彼女の気を取り直させ、解き方を教えることで収まった。




この日、生徒の携帯には、同級生の○○君から何度もメールが。

そのたびに指導が中断するので(許容している僕も僕なのだけど)、生徒が「ごめんね、ってか、私が中断させといて分からないとかキレるのもヒドイよね?」と言い、機嫌を取り直すきっかけにもなった。

生徒曰く、○○君は好きでもなんでもないことが分かったから、別れる。そして、

「彼氏は一人でいいと思ってきた。」

と言った。

んじゃ、僕はどうなる?

「先生はー、家庭教師?実際、それ以上になんでもないでしょー?」

そうかい。

ふられた、ふられた、ははは。






補講■2002年11月11日(月)
「先生―、今夜バイトある?」

ないよ。

「今日、勉強しよ!新しいグロス買ったの。かわいいから見に来て―。」


は。





土曜に予定されていた補講は今夜へ移動。

急遽、教材作成中。







子どもの頃からの疑問■2002年11月10日(日)

りんごは赤く見える

誰もが、赤い、と言う

でも、本当にりんごは赤い?





りんごが赤く見えるのであって

実際のりんごは別の色かもしれない

りんごの皮が人の目に赤く写る物質で出来ているだけで





僕が見ている世界は

実は目に映っている幻想であり

実物の世界は全く違う色で構成されているんじゃないか?






りんごは何色?







土曜■2002年11月09日(土)

昼から英語の指導だった。

午前中、生徒の家には○○君が来ていたとか。

生徒は本命の彼氏がいる事をそして僕との関係をその男子高校生に隠しており…あほ娘が。

「あの子の推薦が決まったら振るね。試験前に落ち込ませちゃ悪いじゃん?」

そんな気配りする前にな、嘘ついてまで浮気すんな、あほ。

「じゃ、先生とも終りだよ?バイバーイ?」

うるさい。さっさと問題解け。





受験が終わったら、二人でガッツリと飲みに行くこと、生徒が埋もれるくらいの雪が積もる場所へ旅行しようと約束した。





ちなみに、これから合コン。

行ってきます。







半分寝てる■2002年11月08日(金)

生徒に英語教えて帰ってきた。

彼女は寝不足とかで、まあ、扱いが難しい。

眠いだの疲れただのと愚痴る彼女をなだめすかして勉強させた。





あー、なんだかこっちまで疲れた。

眠い。

寝よう。





明日も昼間に英語の指導。







僕は死ぬように生きていたくはない。■2002年11月07日(木)

大学からの帰り道、久しぶりに生徒を車で拾ってきた。

補修、お疲れ様。

でもな。

車に乗るなりタバコで一服するのは勘弁して…制服着たままで。





スピッツのトリビュートアルバムと交換、と生徒は僕に中村一義の100Sを貸してくれた。

早速、車の中で聞いた。

いいね。

“僕は死ぬように生きていたくはない。”

歌詞は謎だけど、曲はすばらしいということで意見が一致。






生徒を家まで送り、僕は別の家庭教師先でバイトをして帰ってきた。







抱擁■2002年11月06日(水)

長いよ。

つくづく読者への配慮に欠ける日記ですみません。





一時間勉強した後の休憩の時に、生徒が同じ中学で彼女に告白してきた○○君とはまだ続いている、と言ったことから始まった。

「彼氏として見られるのは彼氏一人。○○君に対しては好きとかそういうのが全くないの。」

じゃ、その男は切れ。とっとと切ってしまえ。

「えー?やっぱ悔しかったりするわけ?」

うるさい。

生徒は“第三の人”が出来てしまいそうなことについて、彼氏には悪いとは思わないんだけどね、と断って、

「先生に悪いなって思うんだよね。不思議でしょ?なんでだろ。」

なんだ、そりゃ。

「先生に十分に愛情をあげてなくて悪いなって思う、そんな感じかな?」

そういうのを情けって言うんだよ、うん。

「そうかなー?だったら私、ほんっと失礼な女だよねー。」

僕が、

覚えてるか?始めの頃を。君が僕に対してなんと言ってたか。

と問うと、彼女は恥ずかしそうに手で顔を覆った。
「エー、覚えてないー。ってか、なんで覚えてるの?嫌な人だー。」

ああ、嫌な奴だよ。逐一しっかり記憶してるからな。女性には嫌われるタイプだろーけどな。

あのな、『男はみんな私のことを好きだって言ってくれるわけ。だから先生は私のことを好きにならなきゃいけないの』ってな。でもさ、僕は反論したよ、“君は僕を公式に当てはめたいだけ。僕自身にはなんの興味も持ってないんじゃないか?。どうせ、僕を他の男と同じように消費し、捨てるだけだ、だから止めておけ。”って。

生徒は笑いながら、私ってほんと最悪な女だねー、と言い、

「でも」と僕を見た。

「でも、実際今私の中で、先生は先生しかないポジションにいるわけよ。」

カテキョだよ、ただのカテキョ。それでよし。

長引きそうな話を中断させ、指導に戻った。





で、終わってからはまた話が再開。

「私は、先生に対して申し訳ないと思ってるのかな。病気とかさせちゃって。」

ああ、帯状疱疹な。性欲もなくなった。うつだ、うつ。

生徒は僕の腕に抱きついていた。

「こうしてくっつくのも先生に対して情けの気持ちがあるからかな?」

ん、わからんよ。けど、そんなこと分析することに意味があるんかね?くっつきたいならくっつく。それでいいんだよ。

あんまりぴったりくっつかれるのも恥ずかしいけど。





「私は先生をどういう目で見てるんだろう?」

わからんよ。僕とどういう関わりを持っている?

「勉強を教わる、たまに電話で話すけど、質問するとかで…。」

ただの家庭教師、うん、ただの家庭教師として見てるんだ、な?

そう言う僕に対し、生徒は少しキレ気味で

「それだけなわけ、ないよ。」

と言った。




しばらくして、生徒は携帯を取りだした。

「よし、決めた○○君を振る。先生、そこで聞いてて。」

って、おい、いきなり電話かよ。


生憎、その男子高校生の方が先にメールを入れていて、風邪を引いたから早く寝ると書いてあった。

「病気の人を更に落ち込ませるのはさすがにねー。」

よって、延期。





12時が近づき、僕は帰ることにした。

コタツから立ち上がると、生徒は両手を広げて僕に向かっていた。





何?柔道?

生徒も「一本背追い!とりゃー。」。





「じゃなくてー。」




抱き合った。

何ヶ月かぶりの抱擁。

なんか不思議な気持ち。

まるで恋人を抱いているような気持ちがした。







現実味がない話■2002年11月05日(火)

朝、学校へ。

卒論の経過を報告しに行く。

教官に、時間がないとやたら待たされる。

教官の都合で、各学生の報告する曜日が決まっていて、僕は本来は月曜なんだけど、連休が多くてよくずれ込む。

面倒くさい。





生徒と一緒にいられるのもあと数ヶ月か。

最近、よくこのことが頭に浮かぶ。

でも、実感も感情も湧かない。

前に一度、別れを意識してすごく辛くなった事はあるけれど、あの時とは違う。

日付がどんどんと進んでゆくのをただ眺めている、そんな気分。

自分の生活から彼女の存在が切り離される?

そんなことがあるとは到底思えない。





今夜は数学の指導。




スピッツのトリビュート・アルバムを貸して欲しいと言ってたな、忘れないようにしないと。







連休■2002年11月04日(月)

病院へ見舞いに行ったり、法事に主席したり。

あまり明るくない連休だった。

会う人々に大きくなられて、立派になられて、とお褒め?の言葉を頂くけど、自分では図体がでかいだけでちっとも使えない人間だと思ってるよ、自分では。

もうどこかにお勤めされてる?って、まだ学生です学生。

しかも更に2年は院生…今までは就職とか先のことを考えてなかったけど、ああも繰り返しいろいろな人に質問されると働かずにいることが気まずい思いをしたな…明日にはすっかり忘れてるだろうけど。





生徒からは「解き方が分からない」と二度ほど電話がきた。

そうしょっちゅうかけてるとまた携帯止められるぞ、あほう(先月の終わりに一度使用不可になった)。

「最近、先生ってやっぱ頭いいなって思うようになった。ごめんね、これからは敬語使うようにするわ。」

敬語!?

気持ち悪いよー、やめてくれー。






頑張っておいで。言いたいいのはそれだけ。■2002年11月02日(土)
今日は昼間に生徒の指導だった。

先月どたばたで遅れていた分を、今月は取り返さなければ。

明日は模試とあって、(前の日に焦っても仕方ないんだけど)意気込みが少し違っていたかも。





ただ、な。

問題の解き方を教えている時にぺたぺたくっついてくるじゃないよ。

赤ん坊がぐずるような声を出して、人の腕の上にあごを乗っけたり。

いくら僕が性欲ないからってなー…。

僕も僕でよしよしと頭を撫でたりしたけど、まるで飼い犬の相手してるみたいだよ。

別に変な気を起こしてもないし。





変な気っておかしな言い方だな…前はセックスしてたし、付き合っていればそうすることは不自然ではない。

最近そういう事をしてないから、いかにも付き合っている者同士の雰囲気に慣れてないんだろうな。





ま、よ。





明日のマーク模試、頑張っておいで。









rationalization■2002年11月01日(金)

風邪引いた。

朝から熱っぽくてダルかったので大学は授業だけ顔を出してさっさと帰ってきた。

それでも今夜は生徒の指導が控えている。





帰り道、CD屋でスピッツのトリビュート・アルバムを買った。

今、それを聞いているところ。

耳に心地良い。

つじあやの→POLYSICSの流れって、あまりにギャップが…。





受験を選択した、という理由。

今は育てられない、という理由。

周囲がまだ認めていない、という理由。

そういう理由を使って、生徒が彼女自身を納得させようとするなら、僕はそれに賛成。






理由は罪悪感を打ち消す力を持っていなければいけない。

だから、僕は彼女を受験に勝たせてあげたい。

きっとそれが僕がしてあげられる最善、最大のこと(家庭教師なんだから、当たり前なんだけど)。







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