リセットボタンをいざ目の前にして、怖気づいている事に今頃気づく。
けれど、現実はリセットボタンを押すみたいにうまい事切り替わらない。 顔や背格好が好みではないとか、劇的にセンスがないとか、 思ったことを言葉に出しやすいとか、 他人にされると微妙にむかつくリアクションをするとか、 ちょっと引っかかる部分もあるにはある。
それ以外に、色々な面倒な事が見えてきて、 それをどうやって面倒でなくするか、ずーっと考えている。 それが、ほとんどが自分の気の持ちようなのも知っている。
リセットボタンを押しても自分は自分でいられるのか。 働く事で得られた自分は、リセットボタンを押せば消えてしまうのではないか。 自分はただ飼われていられるだけの存在にならないだろうか。 誰もいない何も知らないところで自分を保てるか。
悩んでどうにかなるかは知らないが、悩みきるだけの時間は欲しいと思う。 色々考えて重い、と言っていたが、私も今そんな気分だ。 事の重大さが今頃わかった。
腹を決めた。 かといってあまり急いでしまっては混乱してしまうから、 とりあえず今を楽しもうということになった。 金の卵を産む鶏の腹の中を割ったら何もなかった、 なんてことがないように、 この気持ちがこのまま温まりっぱなしならいいと思った。
リセットボタンが本物で、目の前に現れ、それを押すことにした。 押すタイミングはもうちょっと後になりそうだ。
別にリセットがしたかったわけではなくて、 その後の暮らしが何となく想像できて、 一緒にいてこれほどまで楽と思ったこともなくて、 自分だけでなくて相手もそんな風に感じていてくれた。
きょうは私のほうが眠れない。
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