diary of radio pollution
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一路、北へ。
以前から気にかけていた経ヶ岬へ行くことにする。そこに灯台があるから。
一番近くにある有名な灯台なのに、ほんの数キロ手前まで行ったことはあるのに、今迄訪れたことはなかった。
昼前に出発。ひたすら走り続けて四時過ぎに到着。風もない暑さの中、山道を登り、眼の前に姿を現す白い灯台。
誰もいない夏の午後。音もなく、鮮やかな色彩の底に沈み、沖には、一隻の腹の赤い大型船が浮かんでいた。
やがて賑やかなカップルがやって来たので、岬を後にした。
萎びた向日葵、大きく垂れ下がる稲穂。夏の終わりの光景。
koji
地図を完成させてみるか。
相変わらず、頻繁に夢を見る。ある晩の夢の中、またあの街に居た。過去にも幾度か訪れたことのある、夢の世界のとある街。実在の街に近いものは、知った限りでは存在しない。そこは、架空の街。
どうやら日本のようだ。規模は大きくないが、中心地にはそれなりに人がいつも往来している。観光地であるらしく、旅行者や修学旅行生が多い。過去に訪れた際は、何者かに追われ、必死で街中を逃げ回った記憶がある。なぜか車やタクシーに乗っていることが多い。渋滞回避の裏道を知っている。たしかケーブルカー、もしくはロープウェイがあるが、乗ったことはない。数本のアーケードがあり、それはある地点から放射上に伸びている。坂や階段が、いくつかある。他
今回は幸いなことに、起床直後、ベットの側に置いてあった紙にその日訪れた街の一部分を書き記すことができた。
果たして、住んでいるのか、ただそこを訪れただけなのか。
koji
また一つ。
先日、ようやく念願の本州最南端潮岬に立つ。全ては、そこに灯台があるから。地図で見るとそんなに遠い気もしないが、実際は本州の最南端だけあり、最果ての地。京都からは、やはり遠い。
真夏の青空に映える白は、もちろん美しい。また、淡い光は、夜空を通り過ぎては、帰ってくる。
見飽きぬ、夏の夜。
koji
文豪気取りで軽井沢。
その地名の響きだけで高揚してしまうのは、やはり文豪の足跡がそこにあるからだろう。
関西からだと、やけに遠く感じる軽井沢。縁もないので、勝手な想像だけが先行する。少し行きたい所だけ調べて、あとは気ままにぶらり。
近づくにつれ、岩肌の多い山が連なり、独特の風景に心が高ぶる。白樺の景色を好む者としては、平地にまっすぐ続く道にも楽しさを感じる。そして、暑い気温さえも、心地よい風がさっと拭い去る。
中心部にはアウトレットが在り、賑わいを感じるが、どこか都会のそれとは異なり、雄大な景色のような余裕というか、独特の落ち着いた時間が流れている。街中も外れも、所謂田舎風情ではなく、さすが外国人が切り開いた土地だけあって、期待通りの軽井沢。
珈琲店は、数日旅行では回りきれない程で、二店だけ選んで味わう。どちらも期待を裏切らない。
別荘地帯の木漏れ日の射す小道と静けさ。
嬬恋まで足を運ぶ。独り高原の露天風呂に浸かり、流れる夕雲を眺めていると、天上の世界を想った人々の気持ちも沁みてくるようだ。
浅間山の裾野に広がる森林は、さながら小説の世界。白いノースリーブのワンピースを着た少女が木立の間から顔を出す。眺めていると心が離れなくなるので、軽井沢を後にした。
koji
そんなに老けたか。
ある小説を読み終わり、その後に続く解説に目を通していると、ふと随分前の記憶が開いた。なぜだかわからない。何か思い当たる文章や単語、ましてや登場人物があるわけでもないのに。
そんな感じで追憶するから、気付けば軽く十行ぐらいは読み飛ばしていて、また戻る。解説なので四段落と短く、すぐに読み終えたが、いよいよ過去が頭を離れなくなり、懐かしい物を手にとってみた。
追随してみると、様々な物や記憶が出てきて、あれこれと思い返す。記憶は欠け、そして詳細は薄れ、いずれ大きな断片しかこの小さな頭には映らないのだろう。幸い今回はこうやって拾い上げたが、明日になると、また遠くへ霞んで小さく小さくなり、いずれ身体の終わりには、如何ほど残っているのだろうか。
何となく、山の音が響いていたのかもしれない、と今は思う。
koji
酷暑の日々。
先日、朝からあまりの暑さで寝てもいられないので、琵琶湖へ行くことにする。水着、水中眼鏡、ウォーターシューズ等を準備して車に飛び乗る。道中、峠へ差しかかり窓を開けてみたが熱気しか吹き込まず、慌てて窓を閉める。逃げ場もない暑さ。
いつもの湖岸に到着後、草むらをかき分け、小川を渡り、勝手に思っているプライベート・ビーチへ。まぁ少し面倒な場所だけに、人はいつもいない。木陰にブランケットを広げ、光が照り返す湖面を眺めながらパンを食べる。
一泳ぎ。仰向けに浮かんで空を見るが、あまりの眩しさに、また潜水。水色の水中眼鏡を外すと、世界は淡い暖色に映る。ふと波打ち際で立ちつくし、既視感を覚える。少し考え、それはチャカウアだと知る。
あれは海だったが、独り半身水に浸かり、陽光が背中を焼く、あの光景。
ブランケットの上で横になり、読書。ここはハードカバーやペーパーバックなんかが似合うところだが、残念ながら今読んでいるのは文庫だった。蟻が体を這い上がって来る。
しばらくして、暑さと水上バイクのモーター音に邪魔されて本を閉じる。最後にもう一度、湖底を散策。指でなぞると舞い上がる砂。
葉月の始まり。
koji
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