月のシズク
mamico



 あたかもそれは一瞬芸

夜の10時頃、ちんたらと吉祥寺通りを北に向かって歩いてたら、
ふたりの婦人警官が慌ただしく交通整理をしている。
ふと通りの向こうをみると、今まさに、2台の車がレッカーされるところだった。

赤信号で交通が止まっている間に、ちゃっちゃと作業を始める。
作業着の男たちがふたり一組でレッカーに取りかかる。
ジャッキでシャッシャと後輪を上げ、荷車みたいなものに乗せる。
あんなに大きな車を「せーの、よいしょ」と持ち上げ、車の両車輪を固定すると、
男Aは素早くレッカー車に乗り込み器用にバックしてくる。
その間、男Bは車が半身乗った荷車をひとりで引っ張る。(おいおい動いてるよ)
カッシャンとレッカー車に接続が終わると、動き出した車にひょいと男Bが飛び乗り、
信号が青に変わると同時にどこかえ消えてゆく。

婦人警官たちは、駐車されていたところへ白いチョークで連絡先を書きなぐる。
てきぱきと無駄のない動き。それにすごいスピード感。
見ていて気持ちがいいくらいだ。

ふたたび信号が赤になるのを待って、私はバカみたいにもう一台が
レッカーされる光景を眺める。

ほんと、ぱちぱちと拍手を送りたいくらいに見事でした。
そこには持ち主に対する同情の余地など、まったくないのだけれど。




2001年03月30日(金)



 intruder

突然、隣の席に打ち合わせに来ていた営業の男性の携帯が鳴った。
慌てた様子で電話に出るが「はぁ、はぁ?はぁ」とおかしな対応をしている。
しまいに「いや、結構です。お墓はいりません」と電話を切る。

どうしたんですか?と声をかけると「どこで仕入れるんだろう。
お墓のセールスだよ」と笑いながら話してくれた。
「とつぜん出会い系サイトからiモードにメールが入っていたり。
こっちは急な案件かと思って真剣なのに。まったく厄介だよ」と。

へぇー、最近は個人の電話にまでそんなジャンキーな情報が入ってくるのか。
自宅の電話にはしばしばマンションのセールスや英語教材購入の紹介、
新興宗教の勧誘などかかってくるけど。

やっぱり個人空間に勝手に侵入されるのは不快ですね。
ちょっとノックくらいしろよ、って怒っちゃう。
まったく、ねぇ。





2001年03月29日(木)



 浅い眠り

日頃からあまり深くは眠れない体質なのですが、
ようよう桜が咲き出して、夜がなまぬるくなると
いよいよ眠りが水面を漂っている状態です。

だから余計にだらだら、どろどろ眠れてしまう。
そして会社に行くことすら面倒になってしまう。
堂々と白昼夢をみまくっています。




2001年03月28日(水)



 Dancer in the Dark

ぽっかりと時間が空いたので、レイトショーを観に行きました。
ある雑誌に「田口ランディとビヨークの感性が似ている」と
コメントされていたので気になったのもあるし。
さすがに平日の夜だけあって、客席はガラガラのスカスカ。
ちょうど中央に陣取る。

・・・泣きましたさ。ぼろっぼろっと。
ビヨークって決して美人でも、ハリウッド女優のようにスタイルがめちゃめちゃ
いいわけでもない。どちらかというと控え目な顔の造型だし、背だって低い。
でも、あの表情にはやられます。にっこり笑うとチャーミングで、
相手との距離がぐっと近くなる。それに、彼女が本当に悲しんでいるときって、
目元と口元でわずかに微笑むんですよね。その表情をみていたら、彼女の
奥底にしまわれていた「哀しみ」が伝わってきて、もう(ぼろぼろ、ぼろぼろ)

映画構成の細部を語ると尽きないだろうけれど、私は映画評論家じゃないので
これくらいにしておきます。しんとした空気に包まれて、どうしたものか。
映画の魔力か、ビヨークという女性の魔力か。




2001年03月27日(火)



 たより

メールを開くと、この時期ならではの便りがいくつか届いていた。

国試が終わって国外逃亡を企てるもの
転任が決まってどたばたと身辺整理を始めるもの
「わたしたち結婚しました」のお知らせ
そして、引っ越します、という住所変更届けなどなど

みんなからの便りを読んで、ふとおもう。
あれ、私からのお知らせってなにかあったっけ?
代わり映えしない毎日の中、「元気にしています」(笑)



2001年03月22日(木)



 朝の余裕

今日から新入社員が入ってくるので、出社時刻が30分繰り下がり
9時30分出社となった。

この朝の時間というのはかなり重要なのは言うまでもないかな。

眼がさめてからベットの中でぐずぐずできるし
コーヒーを座って飲めるし
歯だってじっくり磨ける
それに、朝の電車が少しだけ空いている

わずかな朝の余裕って、一日が始まるのに大切なことなんだよね
あ、それに夜更かしをする楽しみも増えたかしら




2001年03月21日(水)



 海からのメール

「今、海に来ています」と携帯からメールが入っていた。
東京もすごく暖かだったので、海からの風はきっと気持ちいいだろうな
と想像する。また鎌倉あたりの砂浜に降りたい衝動に駆られながらも、
ちゃんと「こちら側」に立っていられる自分。

海に行くのはもう少し先にとっておこう。

しかし

5週連続土日返上で働き続けている同期の女の子たち(それもほぼ毎日終電の日々)
が気の毒だ。私は要領よく土日のどちらかはお休みにしているけれど、
日々笑顔が消えてゆく彼女たちの表情は心苦しい。

こんなあたたかな春の日でも、外も見えないオフィスに幽閉されてるなんて、
ごめんねぇ。




2001年03月20日(火)



 惰眠を貪る快楽

ウィークディの睡眠不足を埋めるように、
眠り、眠り、眠り、そしてまた眠る。
目覚めたら、脳味噌が溶けているような感覚。

やおらチェロを引っ張り出して弾いてみるも
ふたたびベットに引きずり込まれる。
そして、眠り、眠り、また眠る。





2001年03月17日(土)



 ぽかぽか陽気

ノックもせずに、突然春がやってきた。
4月下旬から5月上旬並の陽気だという。

薄曇りで、なまあたたかい風の中を歩いていると、夏の夕暮れを思い出した。
けだるくて、やるせない、遊び疲れた子供のような足取りで会社へ向かう。
空を細かく切り刻んでミキサーに入れ、どろどろになったのを取り出して
ガラスのコップに注いで、一気に飲んでやりたい。

だからどうしたってことはないのだけれど。




2001年03月15日(木)



 ひとときのやすらぎを

Lemon Drop の黄色いケーキの箱と、小瓶のシャンパンをいただいた。
たぶん、その、お義理で。(苦笑)

疲れた顔した女の子には、生クリームたっぷりのイチゴ・ショートケーキ
がいいのだとさ。あまぁいものを食べると、自然に頬のあたりの筋肉が
くにゃっとゆるむので効果的らしい。

いちにち脳味噌をフル稼働させていると、夜遅くに帰ってベットに横になっても
なかなか寝付けないから、軽めのアルコールを少しだけ身体に流し込むと
寝付きがよくなるらしい。ふむふむ。

ということで、借りてきたABBAの"S.O.S"を聞きながら、
ストロベリー・オンザ・ショートケーキを見つめる。
こんな時間に食べちゃうと、やっばいよなぁ、と思いながら
指で生クリームを少しすくって舐めてみた。

これだけでもかなり効果的です。くにゃ。




2001年03月14日(水)



 エチケット:名乗りましょう

メールを開くと、突然「6月に結婚するので、招待状を送ります」
とメールが入っている。差出人の名前はなく、メアドからも判断不能。

でも、そのアドレスに組み込まれている名前は、ずっと昔に付き合ったヒトの
あだ名と同じで驚いた。昔付き合った女をわざわざ結婚式に呼ぶほど
物好きじゃなかったはずだ。

なんだか居心地の悪い思いをして一晩明けたら、中学の同級生の女の子からでした。
まったく、びっくりしたじゃないか。

とはいえ、「結婚します」宣言も、最近はメールが主流のようですね。
書き言葉は温度が低いから、ちょっとほっとします。


2001年03月13日(火)



 吉祥寺の夜に「おおきに!」

吉祥寺はジャズの街として定着している。
そして吉祥寺の"Sometime"といえば、毎夜ライブが繰り広げられている
昔ながらのホールだ。細い階段を下りてゆき、ドアを開くと中央に
グランドピアノがあり、それを取り囲むように客席がもうけられている。
半地下と2階席もあって、キャパが小さいわりには立体的で視覚には
ぐっと広く感じる。

風邪の具合が悪くて、本当はこのまま帰って眠ってしまおうかとも考えたのですが、
せっかくの元PSY'Sのチャカのライブだったので、だるい身体を引きずって
階段を下りる。7時過ぎに入って、結局スリーステージを全部聴いてしまった。

なんだろな。あの声と流れるようなピアノに、魂がぐらぐら揺さぶられて
離れられない感覚。トリオの息がぴったり合っていて、ぜんぜん無理のない
演奏に風邪までhealされていく感じかな。ジャズのいいところは、
歌詞がちゃんと声にのって意味まで伝えてくれるということ。
その言葉が具現する感触や感覚、そう、喜びも哀しみもつらさもせつなさも、
すべて。

チャカさんは15年も東京に住んでいるわりに、ばりばりの関西人で関西根性丸出し。
MCでは常に客を笑わせてくれた。この人、うちの母と顔がそっくりなんですよね。
で、最後には「言いたかった台詞言わせてね。」と人差し指を伸ばした腕を斜め45℃に掲げて叫んだとさ。
「吉祥寺の夜に、おおきに!」

いや、こちらこそおおきに、ありがとう、といったライブでした。
私の風邪は、アルコールで消毒され、奥深い歌声に癒されたとさ。



2001年03月12日(月)



 オレンジ色のブーケ

本番が終わってホワイエへ出ると、友人たちが出迎えてくれた。
今年9月に結婚が決まったカップルからオレンジ色のブーケをもらった。
まさしく、花嫁が持つにふさわしい可憐な色合い。

女性ってなんで花をもらうと、こんなに嬉しく感じるのだろう。
それがたとえすごく不釣り合いな図であっても、だ。
部屋のあちこちに花が飾られています。
春、ですね。




2001年03月11日(日)



 良かったのか、悪かったのか・・・

今朝、病院へ行って来ました。
先月も同じような症状で診察してもらっていたのですが、
今回は花粉症疑惑が浮上。風邪なら数日で直るけれど、
花粉症だったら毎年恒例になるから嫌だなと思っていました。

結果:風邪でした。

おとといから微熱が続いていたし、咳も出ていたから風邪の確率が高いそうです。
でも花粉症が併発している可能性もあるので、症状が治らないなら
また来てくださいとのこと。おなじみの筋肉注射(鼻水止め&咳止め)を
ちくり、じじじじっと刺されて腕をもみもみ帰ってくる。

午後、死んだように眠って夕方祐天寺へオーケストラの練習へ。
明日の本番、楽しみだけど、熱が出なきゃいいな。



2001年03月10日(土)



 Snow comes down in March

"Sometimes the Snow comes down in June,
Sometimes the Sun goes around the Moon..."

たぶん、ヴァネエッサ・ウィリアムズの曲だったと思うけれど、
この2行の詩が大好きで、車を運転しながら、自転車に乗りながら、
散歩しながらよく口ずさんでいます。

「ありえないことかもしれないけれど、可能性としてないとも言えないでしょ」
ってささやかれているようで、素直に素敵だなって感じます。

そして、3月も半ば、東京に雪が降ってきました。
とても細かい砂のような粉雪。
3月の雪は桜の花びらを思わせます。



2001年03月08日(木)



 認めたくはないのだが・・・

朝起きてから様子が変だった。
やたら鼻水がずびずびしていて、喉も焼けるように痛い。それにくしゃみの連発。
どっかから「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃ〜ん」と大魔王が
出てきそうなくらい。だるいし熱っぽい。風邪かな、と思って遅刻しつつ出勤。

・・・すると、会社には同じような症状の人々がわんさといる。
あちらこちらから、くしゃみが飛び、鼻をかむ音が響いている。
これは「花粉症」というらしい。私には無関係だと思っていた。
みんなから「とうとう君も仲間入り」とにやにやされつつも、
断固として「風邪です」と言い張る私。
そんなぁ、これじゃひ弱な都会っ子みたいで情けないじゃないですか。

(と更新を会社でしつつ、時計をにらむと終電の時間が迫っている。長い一日だったわ)



2001年03月07日(水)



 夕暮れの頃

ひさしぶりに、ほんとうに久しぶりに6時頃に会社を出た。
いつもは街のシャッターがすべて降りて、飲み屋さんものれんを
仕舞う頃に帰宅していたから。夕暮れどきの薄暗い空に、明るく白い月が
出ている。この時間の月がいちばん美しいと話してくれた人がいたっけ。

お店が開いているので、ここぞとばかり買い物をする。
シュゥ・ウエムラのオイルクレンジングをボトルで。
マツキヨでシャンプー、歯ブラシ、綿棒と「南アルプスの天然水」を2本。
カルディでは、缶入りのダージリンの葉っぱと、ベリー系のハーブティのパック、
それにガテマラの豆を400g挽いてもらう。
ミントチョコも欲しかったけれど、また今度にしよう。
今はひどい肌荒れだし。(苦笑)

街が清潔に動いている時間帯に少しでも身を置けると、
それだけでバランスが保てる。殺気立った朝の電車と、酔っ払いが
詰め込まれた電車に揺られるだけの生活には、もう心底うんざりです。


2001年03月06日(火)



 grotesque

チェロを弾いているわりに、私は音楽の原理やら理論やらに疎い。
リズムは鈍く音感もひどい。音楽の基礎体力的なことが、
すっぽり抜け落ちているのだ。
でもしかし、だ。

「音楽のタブーを片っ端から破り、音程もめちゃくちゃ。
グロテスクでエロスが渦巻いた、原始的な音。
でも不思議と不快ではない。そんなチェロの音」

というものを聴いた。
こんな表現をできるほど、私に音楽の知識はないので誰かの言葉として
おいてください。この音の正体を知りたい方がいらっしゃれば、
11日の演奏会、ぜひ足をお運びくださいな。




2001年03月05日(月)



 ストロベリーフィールド

今いちばん行きたいのが「いちご狩り」。
果物はどれも大好きなんだけど、イチゴはかなりランクが高いです。
ちょっと強めの匂いも、赤い色も、シャクッとした歯触りもみんな好き。

駅に貼ってあった「いちご狩りカレンダー」の前で立ち止まる。
30分、取り放題、食べ放題。「〜放題」というのは好きじゃなけれど、
いちど試してみたい。口の中が真っ赤に染まるほどたべてみたい。

部屋に戻ると、買い置いてあった苺の香りがたちこめている。
大粒のをひとつつまんで、コートを着たまま食べみた。
小さなしあわせです。




2001年03月03日(土)



 留守電の点滅

部屋に帰ったら珍しく留守電が点滅している。
「3件」

ナンバーディスプレーなので着信番号もはっきりわかる。
(ちなみに非通知は拒否)

1件め、無言
2件め、コンタクトを買った量販店のおっさん。特注なので入荷が遅れるとのこと。
3件め、無言
以上、おしまい。

そりゃ私はいつも帰りは遅いし、居留守も使いまくる。
でも留守録を促すメッセージを最後まで聞いたなら、なんかいれろよな。
声はせねど、君が誰かということくらい、私はちゃんと知っているんだから。




2001年03月01日(木)
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