A Will
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2006年04月30日(日) 駆け足。

この日この日この日この日この日
ひたすら書いてみました。
いっきに。少し疲れました。さすがに。



一冊のノートにびっしりと、あの人の名前を書いたことがありました。
死んだ直後。

それだけ頑張ったら会えるような気がして。
ご褒美、のような、そんな感じ。笑


勿論、会えるわけなんてなくて。
そうしたら、悲しくて、その日に初めて泣きました。

あの人の死んだのが悲しくて、初めて泣きました。




今、わたしが、あの人の話をすると、
ただの未練だと言われてしまう。

未練。


そうなのかもしれない。
ただの、未練。


釈然としない感情。

だって、とても自然なことなのに、と思ってしまう。


美味しいものを紹介するみたいに、あの人のことを話したい。
ときどき、そう思います。

もっとアッサリと。


ただ、好きな人が死んでしまったら、それだけでアンハッピーのようです。
アンハッピー。不運。不幸。

物語としたら、最高なのかもしれない。


けど、わたし、そんな話大嫌い。
お話の中なら奇跡くらい起こせば良いのにって思ってしまうのです。

きっと、好きな人を亡くしたことのない人の書いた話なんだわって、
つい斜めに構えてしまう。ごめんなさい。



ここで日記をつけ始めて。
高校生のときでした。

単純に日々のことを書いてました。今もそれはあんまり変わりません。

ただ時系列に興味はないので、そこはめちゃくちゃです。
わたしだけが判れば良い。そんなスタンスです。


わたしのために書いてきたつもりでした。

けど、なんだか、あの人のためにつけてたような気がしたりもします。

何故かな。
相も変わらず好きだということを、ただ確認してる。


感覚が覚えてる。



もっと正直になればよかった、とたった今思いました。


未練。と呼ばれても。
気の済むまで、書いてみたい。



案外、すぐに飽きてしまうかもしれないし。




話しかけてしまう癖。
ねぇ京ちゃん、と、本当によく話しかけました。

楽しかった。

本当に楽しかった。





長かったな。
たったこれだけのために8年。






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2006年04月29日(土) お墓参り。

くだらない。
こんな下らないことってない。


手は合わさなかった。
墓石を蹴っ飛ばした。


この下に、眠ってる?
馬鹿じゃないの?

死んでるの。今は骨になってるの。眠ってなんか、いないじゃない。




死んじゃう人は嫌い。
だって、悲しい思いさせるんだもん。


大嫌い。
大嫌い。

だいっきらい。




相変わらず。嫌い。こんな場所。

わざわざ辛気臭くして、なんのつもりなのかしら?
どうして死者は死者ってだけで悼まれたりするの?

祈られて、拝まれて、
死んじゃったくせに。



もう一度蹴っ飛ばした。



わたしは、あの人への初めてのお墓参りで、
ようやく涙が出た。







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2006年04月28日(金) 一苦労。

当たり前なんだけど、悪い記憶ってあんまりない。

たくさん不満あったはずなのに。悲しい。


思い出すのも大変だよね。




猫を拾ったの。
わたしが見つけて、あの人が飼うって言ったの。

名前を「キキ」と「ゆず」って決めた。
理由は知らない。

響きが良いってそれだけだったと思う。


2匹は、なんだかものすごく仲が良くて、
それで、ゆずはとても良い子で懐こい子で、可愛かったけど、
キキはとても気位の高い猫で、ちっとも懐かないで、でも可愛かった。笑


あの人は、猫とあんまり仲良くなれない人だった。
猫みたいな人だったもん。

縄張り?とか色々あるんでしょう。きっと。
本気で喧嘩して、引っかかれて、機嫌悪くむすっとしてたことがある。

馬鹿じゃないかしら?って思って可笑しかった。


あの人の弟が、猫に好かれてて、
あの人の弟からじゃないと、キキはご飯を食べなかった。


そのくせ、あの人が死んだときに、とても元気がなかったのもキキだった。
痩せて、動かないで、あの人の居た場所で眠るようになった。

時々、びくりと起きては何もない虚空を見つめてた。


動物って霊感強いんだっけ?なんて話をしたの。




キキも死んじゃった。
って言っても後を追うように、とかじゃなくて、
もっと後に。だけど。

動かなかったよ。ずっと。
あの人の居た場所から。無理やりどかすとね、怒ったの。




好きだったんじゃない。
素直じゃない猫。

あの人と一緒に見つけた猫。


キキが死んじゃったら、今度はゆずが元気なくなって、
これは後を追うように、眠るみたいに死んじゃったの。








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2006年04月27日(木) 未だに鮮明。

どちらかと言えば、あの人は寡黙だったんじゃないかしら?
と思ったりもする。

あの年齢を考えたら、あまり喋る人ではなかったのかもしれない。


だから。
わたし、笑っちゃうくらい話しかけてた。

ねぇ。

あのね。

えっとね。

それでね。

だからね。


1人で喋ってられた。
時々、返されたぶっきらぼうな返答。

わたしの軽口に、ふざけて叩いたりされた。
ぺし。案外痛いのこれが。



勿論、相対的に見て。あの人は喋るほうじゃなかっただけだから。
無口ではなかった。

時にはよく喋る。
あの人が喋るときは、何かを隠そうとしてるとき。


たとえば。
寂しいのとか、悲しいのとか。

隠しきれるはずのない、得体の知れない、感情。



気づかないふりは得意だった。
気づかないふり、だとあの人は知っていたと思う。

そのくらいには賢い人だった。







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2006年04月26日(水) 思い出の続き。

薄情かもしれないけれど。
8年。

8年1度も顔を見なければ、思い出せなくもなる。
8年1度も声を聞かなければ、思い出せなくもなる。


けど。思い出せるものもあるの。ちゃんと。
忘れもしないわって、自信があるの。


写真は捨てちゃったの。嫌いだから。
誰にも言ってないエピソードだってあるの。わたしだけのものなの。
捨てられないものは缶に詰めて大人しく部屋に居てもらうの。

時々、過去一色の部屋になるときもあるけど。




「桃の花のほうが好き」
たった、その一言で桃の花が好きになった。

伸びた前髪を気にする仕草がたまらなく好きだった。

時々、悲しそうな顔をするのが気になって目が離せなかった。

抱き合って眠って、起きたときに傍にいる幸福感で、
もしかしたら人は死ねるのかもしれないと思ったりもした。


幸福死。

あの人の傍なら、そんなこともあり得る。言い切るの。






不思議。

時々、不思議。


なんで、いないのか判断がつかなくなる。
目を閉じて、開けて。

そうしたら、目の前にいるんじゃないかなって。

期待。


裏切られ続けた期待。

もう、悲しくはないけれど。
笑うことも出来るけれど。


けど、飽きずに期待しちゃう。目の前にいるんじゃないかって。
当たり前にいないことを、少しも疑わずに。



不思議。

確かにこの目で、死んでしまったあの人を見た。
目を閉じていた。


長くも短くもない睫。
初めてまじまじと眺めた。


死んでいる、と実感。



なにも感じなかった。ただ、あぁ死んでいると。それだけで。





未だに掴みきれてない。のかもしれない。

なんで死んじゃったら会えないの?








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2006年04月25日(火) 思い出。

ひんやりした手を、ほっぺたに。

押し当てられた真っ暗な夕方。



帰りたくない、と何度も心の中で思った。
きっと、あの人だって思ったに決まってる。

帰りたくない子供は、帰りたくない子供を見つけるのが得意だから。




手を繋ぐ。とても自然すぎて笑えた。

笑ったら「なに」と完結した口調で聞かれた。
それですぐに「笑ったのなんで?」と今度こそ疑問口調で聞かれた。



「雪、降りそうだね。降るかな」って言ったら、
まじめな顔して「どうかな」って言ってた。真剣な横顔が珍しかったのを覚えてる。

握った手を、当たり前に握り返してくれて、
ほどけて、それでまた絡まるみたいに、何度も握った。



「寒いの好き?」って聞かれたから頷いた。
「暑いのよりは好き」って言ったら「俺も」って言ったの。





覚えてる。本当に、覚えてるの。

わたし言ったの。いつもなら言わないのに。言ったの。
「帰りたくないなぁ」って。明るく。元気に。



あの人の足が止まる。
じっと見られた。暗くてどんな顔なのか良くわかんない。
不安になった。

なんとなく、その言葉がタブーなのは知ってたから。




がくんと、腕引っ張られて。
走った。走って走って走って、疲れて止まって。

あの人言ったんだ。「ごめん」って。やさしく。


乱れた白い息さえ好きだと思った。
泣きたかった。上手に涙が出なかった。ただ声だけ潤んだ。
「大丈夫」

痛い、と思った。

どこが、なのかはよくわからない。


痛かった。多分、全身。
どこもかしこも。






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けれど、あたたかかったの。とても。すごく。


2006年04月17日(月) 100万の嘘と1億の本当と、たった1つの本物。

吐き続けた嘘は、間違いなく本物だと思う。

少なくても、たった一度きりの本当よりはホンモノ。




言葉に責任はないから、空中に漂わせることに罪悪なんて感じなくて良い。


そう思って、生きてきた。




冷ややかな視線に、喉がつったみたいに絡まった。

目の前にあった顔と、今わたしが思い出している顔が、
果たして同一人物か。

それは誰が判るって言うの。





記憶ほど、嘘吐きなものはない。



証明しようのない、曖昧さで、ただみんな信じたいから信じてるだけだ。



認識なんて、その程度。






嘘か本当か、なんてどうだっていい。




そもそもがフェイクじゃない。






2006年04月08日(土) ひらひらひらり。

車のライトをあてて、即席で夜桜をライトアップ。

疲れた社会人の「ボーっと仕方」を教えてもらう。
その人の隣にいるわたしは、きっと。
多少頑張り屋で、よく笑って、時々愚痴めいたことを言って、

それでいて、案外弱い。



やさしいと、損しちゃうよ?って教えてあげたのにも関わらず、
わたしに騙されたいのか、あまり冷たくしきれてない。

冷え切って、すれ違うようなことさえなければ、


こんな風に、すべてがわたしの責任でることに関わらずにすんだのにね。





ごめんなさい。なんて100回死んでも思わないわよ。









好き、とは違う人。

たぶん、利用してるっていうのが一番適切な言葉なのだろうけれど、
それは敢えて気づかないようにしたい。



夜は冷えた。

向こうから車が来るから慌ててライトを消した。





わたしの、ずるい我侭を、ずるいと判ってるくせに受け入れる、

それは、その人のずるさだと思う。





けど良い。
責任はすべて、わたしが持ってあげる。


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