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◆ 冷たい夜が、冷たい夢を招き寄せる |
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夢を見た。 夜店があり、いかにも怪しい感じのオジサンが、 いかにも怪しい生き物を売りつけようとした。 関わったらまずいと思って、足早に去ろうとしたら、 「無視しとるな」と、いちゃもんつけられた。 回りには無数の得たいの知れない生き物の死体がいっぱい。 それを踏み潰しながら走った。 入り口を入ろうとして、アジア系の女の子とぶつかった。 その瞬間。 突然、銃弾の嵐! 私はドアの影にいたから当たることはなかった。 急いで隣の部屋に逃げ込んだ。 そこには私の大切な人がいてから。 早く窓から逃げるように言った。 二階だったけど、無事に逃げた。 その間、撃たれた女の子がこの部屋に逃げ込みたくて、入ろうとする。 が、私がドアを押さえ、入れないようにしていた。 自分タチが無事に逃げるために。 自分タチの命のために、彼女の命で時間稼ぎしてもらったのだ。 何の罪悪感もなかった。 大切な人を守れたことだけに安心した。 自分のモノを守るためには、他人の命の価値なんて。 どれだけの価値も感じない。 愛という存在の罪深さを何度も思う。 愛情深い振りをして、他人に対して排他的傾向。 世間の親も恋人同士も友達も、皆そうなのかもなあ、って。 ぼやけた頭で考える。 動物なら自分の大切なものを守るためなら他の生物を当たり前に殺せるのに。 それが当たり前なのに。 人間には常に罪悪感との戦い。 メンドクサイ。 考える振りをしないければいけないことが。 常識ある人間に見せかけないといけないと思ってる自分が。 と言いながら、夢での私は罪悪感の欠片も感じなかったけど。 ただ、このことは、一生大切な人には話さないんだろうなと思った。 告げられない感情の固まり。 空は夕焼けだった。 楽し気に会話した。 それはそれはささやかで楽しいものだった。 日常だった。 当たり前の風景だった。 目が覚めた。体が冷えて、貧血ぽかった。 熱いカフェオレを飲んだ。 やっと血が通った気がした。 2003年10月23日(木)
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沙 亜 子 は い ま だ 、 水 の 中 |
◆ 感情は、過去をさすらい、今を彷徨い、乾いた風となる |
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大会以来、アスファルトを走ることに快感を覚え。 街中を走るようになった。 私が普段走っているのは公園の土で。 道路ほど弾むことはない。 日曜日は、早朝6時から夜まで、3回に分けて30km走った。 弾むアスファルト。 こんなに気持ちいいとは知らなかった。 坂のあるところを選んで。 一つ向こうの駅まで走ってみた。 どこまでも走れるような気がして。 すつかり”スマイル”気分。 単純な単純な毎日。 毎日毎日、同じことの繰り返し。 飽きないのは、そこに自分の意思があるから。 きっと。 ◆◆◆◆◆ 夜を走った。 その晩、後数時間で、昔付き合ってた人の絶命の時間だった。 家からそんな遠くない道。 あまりに昔のこと。 あの時の記憶は、確かにはっきりと感触が残っている。 なのに、感情はない。 元々感情が薄いたちなのかも知れない。 いや、その時々の感情を抱えて生きていないからだ。 足元しか見ない、視野の狭い生き方。 明日、何をしようか。 小さな目標を積み上げることだけに精一杯。 私の新陳代謝は。 自分でも自覚ありありの細胞分裂の繰り返し。 一ヶ月たてば、りっぱに違う自分に生まれ変わり。 過去を懐かしむことさえない。 断片の集まりの記憶の束。 乾ききった感情。 それは湿っているのか、もだえ苦しんでいるのか。 そんな感触も、過去の記憶には備わっていない。 「何か、言ってませんでしたか?」 救急隊員に、警察に、加害者に、最後に会った知り合いに。 私は聞いて回ったのだ。 あの時。 知らなければ。 何だか、それだけ。 それだけ気になって。 私は聞いて回ってた。 それだけ、何だか覚えてる。 秋の晴天が不自然なほど続き。 いつまでも洗い流されることがないおびただしい血の影。 ついに、一滴の涙も流すこともなく。 あの出来事は、彼方へと流されたのだ。 ◆◆◆◆◆ 私のことを変わっている人と連呼する人。 はっきり言って、私の方こそがその台詞を連呼したい。 変わってるなんてもんじゃない。 感覚が私と外れ過ぎ。 今日もある人が「こっちが手を振ると、振り返してくれる人がいる」と言ったら。 「ああ、精神病の人にそういう人が多いのよ」と言う。 もう、一同絶句。 いつも一言が多く。 何と反応していいか、リアクションに困る。 他人を自分の感覚で決め付けることも多々。 でもまあ、いっか。 単なる仕事仲間だから。 少々困ったところがある人の方が見てて退屈はしない。 良い人過ぎる人の側にいる窒息感に比べれば。 地獄の遊園地なみに楽しめる。 ◆◆◆◆◆ 私は人を見下す傾向がある。 昔からそうで。 気をつけなきゃとは思うものの。 さすがに性格を直すことなんて無理だと思い知る昨今。 せめて、それを悟られないようにする術を身に着けようと思っている。 それでも。 そんなメッキはいつか周囲にもばれ。 きっと赤面ものの醜態を晒す日が来る。 姑息な一面がばれるのはみっともない。 相手に嫌な思いをさせて悪い、そんなことは微塵も感じず。 ただ、自分の体裁の傷を思うのだ。 だから。 覚悟だけはいつもある。 一人になっても仕方ない、そんな覚悟だけは抱えてる。 と言いつつ。 そう考える振りをしているだけ。 2003年10月22日(水)
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沙 亜 子 は い ま だ 、 水 の 中 |
◆ 煌めく小石はたたずむ、誰にも知られず |
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すこぶる順調な職場。 が、微かにかちんとくる人がいる。 「あなたって変わってるわね」、何かにつけ言ってくる。 変わってるという言葉は、私という個を指してるとは限らない。 自分の中の違和感、異種な感情。 理解しようとする前に口にして。 自分に気付かれないように。 線引きをする。 残りの人たちに同意を求め。 自分の賛同者を作り。 相入れない人を排除する。 シラケる。 そんな時の鎮静剤の言葉。 「私の大切な事、そんな貴方ごときには見せられないから」 結局、自分も線引きなんだけど。 それでもざわついた気持、深呼吸。 2003年10月21日(火)
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沙 亜 子 は い ま だ 、 水 の 中 |
◆ 誰も知らない甘美な秘密に包まれる、蒼の日に。 |
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ああ。 やってしまいましたね、って感じの今月。 よりにもよって。 JUDEのフリーライブの日に。 交通事故だよ。 さすがにへこんむ。 加害者側の保険屋が気に入らないこと言うもんだから。 いまだに話し合いはしてないけど。 それでも、落ち込むことは、ない。 なんだか、な。 元気が出た。 変な話だけど。 エネルギーがフツフツフツフツ。 私を復活させた。 何か起こると、自分の知らない自分が沸き起こる。 その瞬間が心地いい。 小さなことでも、面倒なことでも。 乗り越える瞬間が爽快。 小さく、地味な人生だけど。 普段考えないようにしている、「生きてる」ってこと。 実感する。 ナンチャッテ、、、だな。 結構、たまにはいい経験。 ◆◆◆◆◆◆◆ ハーフマラソン、初参加した。 練習の時のタイムより、15分も速かった。 やった。 やった。 やった。 なんかなあ。 ホント、この瞬間のために頑張ったんだよなあ、って。 感慨深いモンを感じちゃった。 8、9月、それぞれ月間走行距離300〜400km、走破。 体調不良と事故とため。 走らなかったのは、結局5日間。 その後もレース前は押さえ気味の練習だったけど。 レースの最後5kmで猛ダッシュ。 その時。 ランナーの野口みずきの台詞を何度も思い出した。 彼女が大会で、途中呼吸が出来なくなった時。 「どうなってもいい」 「死んでもいい」 と、走りきることをやめなかったというエピソード。 そんな台詞は今時、少女漫画の中だけかと思ってた。 日常の、どんな時に使う言葉なのかと思ってた。 死ぬ気で頑張るといっても。 死ぬ気で努力してない人には、出来ないことだとはわかっているけど。 最後5kmでやってみた。 野口みずきの万分の一のさらに小さな努力だけど。 ゴールを倒れこむくらいに頑張ってみたいなあ、って。 何人も抜いた。 嘘とか見栄でなく、何十人も抜けた。 最後の最後まで。 ゴールの数メートル前まで。 最後5kmを猛ダッシュしているその目の前に。 幻想のように。 妄想のように。 新陳代謝を終えて。 ぴっかぴかになった自分を見つけた。 本当に見える気がしたのだ。 ああ。 ラーンナーズハイ? もう。 その日は、くすくす笑えてしょうがなかった。 次の日。 いつもの日常が始まる。 でも、誰も私の週末を知らない。 こんな大きな秘密を知らない。 そう思うと。 よけいにくすくすくすくす、笑いがこみ上げてくる。 2003年10月19日(日)
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