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りょうちんのひとりごと
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2018年09月30日(日)
Vol.873 ヒガンバナが咲いていた

おはようございます。りょうちんです。

【ヒガンバナ】ヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草。曼殊沙華とも呼ばれる。9月中旬頃に赤い花が咲く。有毒。不吉で忌み嫌われることもある。
小学生になった年の秋だったと思う。いつも遊んでいる空き地で、見たことのないものを発見した。すうっとまっすぐ伸びた茎の先に、毒々しいほど鮮やかに咲く赤い花。それがひとつだけでなく、何十とかたまって咲いている。線香花火の火花を散らしたように見える花のカタチも、花と茎だけで葉が一枚も見当たらないのも、見るほどに奇妙で独特な植物だ。でも確かに昨日まではこんなインパクトのある花は、絶対にここには咲いてなかったはず。ただ緑色の草が茂っていて、蕾の存在さえ気づかなかったのに。一日で一気に存在感を現した赤い花に、俺はひどく驚いてしまった。
真っ赤に咲くその花に、俺は思わず手が伸びた。手折ろうとすると、一緒に遊んでいた友達のひとりが俺に叫ぶ。「その花、縁起が悪いんだよ。折ったら、おうちが火事になっちゃうんだから!」と。
家に帰った俺は、さっそく母に真っ赤な花の話をした。空き地に昨日はなかった真っ赤な花がたくさん咲いていて、それは葉が全然ない今まで見たことのない植物で、花を摘もうとしたら縁起が悪いからやめた方がいいと言われて。すると母は、「あー、あれはヒガンバナと言ってね…」と、詳しく俺に教えてくれたのを覚えている。毎年秋の彼岸の時期になると一斉に花開くヒガンバナは、雨に打たれるとあっという間に色褪せ存在感を失う。彼岸、花の命の刹那さ、縁起の悪い花という言われ。ヒガンバナの第一印象がそんなだったからか、鮮やかに赤く咲くヒガンバナに対して、美しいと感じながらもずっとどこか忌み嫌っている自分がいた。
先日の彼岸の中日、弟一家と墓参りに行くと、墓地の裏手に一面にヒガンバナが咲き乱れていた。昔はこんなところにヒガンバナが咲いていた記憶はないのだが。でもこれほど見事にヒガンバナが咲き誇れる場所はここ以外にはないのかもしれないと、俺はしばらく真っ赤な花々を眺めていた。