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りょうちんのひとりごと
りょうちん
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2016年06月30日(木)
Vol.842 不審者が現れた

おはようございます。りょうちんです。

日曜日の真夜中。午前0時を過ぎ、日付は月曜日に変わっている。降り出した霧雨がアスファルトを濡らす。街が最も静かになる時間、大通りから路地に入ると誰ひとり見かけることもない。誰もが眠りにつく中、週末の忙しさで疲れた仕事帰りの俺は、いつものように車を走らせアパートの前の駐車場までやってきた。
アパートの脇に電柱があって、街灯が照らしている。ほんのり明るくなった電柱の下に、見知らぬ人がじっと立っていた。車で横を通り過ぎる時、上を見上げて目を閉じているのが見えた。最初、幽霊かと思った。そぼ降る雨の中、傘もささずぼんやりと照らされる気味の悪い姿は、まさに幽霊に見えた。駐車場に車を停めた俺は、ミラー越しにもガラス越しにも何度も見返したけれど、どうやら足はある。固まってしまったように微動だにしない姿は、どうやら幽霊ではなさそうだ。俺は車に乗ったまま少しの間様子を見ていたのだが、いつまでもこうしているわけにもいかず、そっと車から降りてその人の近くに向かった。50代半ばくらいで白いフードのついた服を着たその見知らぬ男性のそばまで歩みを進める。すると突然、彼は何の前触れもなく動き出した。びっくりした俺は反射的に「大丈夫ですか?」と声をかけるものの、彼は無言のままよたよたとおぼつかない足取りで歩き出し、俺の横を過ぎていった。そして次の電柱の下まで来ると、また同じような態勢でじっと立ち止まったのだ。
部屋に帰り、俺は速攻で警察に電話をかける。事の詳細や彼の特徴をわかる範囲で説明した。しかし電話を切ったあとも彼はまだ隣の電柱の下にしばらくいたのだが、やがて再びよたよた歩き出しT字路を左に曲がり見えなくなった。そしてすぐに向かうと言っていたお巡りさんが来たのがそのわずか3分後。すでに姿を消した彼はまだ近くにいるはずと、お巡りさんはあわてて探しに向かった。
なぜ彼が俺のアパートの前でじっと立っていたのか。単なる酔っ払いか、ボケて帰る家がわからなくなってしまったか。泥棒や空き巣には見えなかったし、すぐに危害を与えるような感じはしなかったけれど。不審者が現れたことには間違いない。お巡りさんは彼を見つけられたのだろうか。まったく、物騒な世の中だ。