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りょうちんのひとりごと
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2013年02月28日(木)
Vol.802 神様がいる年

おはようございます。りょうちんです。

『御歩射』と書いて「おびしゃ」と呼ばれる伝統儀式が、俺の生まれた場所には残っている。調べてみると300年ほど前の江戸時代から続いている「おびしゃ」は、関東東部の利根川両岸付近の地域中心に各地で今でも残されているイベントで、元は的を弓で射ることでその年の吉凶や豊作か不作かを占う神事だったそうだ。俺の実家がある地区では、今では弓で射ることもしなくなり儀式もずいぶん簡略化されたし、毎年決まって1月20日におこなっていたという日付もそれにいちばん近い日曜日に移されたりと、時代に合わせたものに変化しつつある。だが、そんな「おびしゃ」に、今年俺は参加することになった。
「おびしゃ」の儀式が終わると、地区を代表して本宿と呼ばれる家に神様は預けられる。この本宿、持ち回り制で約60年に一度各家が引き受けることになるのだが、まさに今年、俺の実家がその順番に当たっていたのだ。神様を預かる期限は次回の「おびしゃ」までの1年間で、本宿に当たっている家に悪いことは起きないとされているから、本来すごく縁起の良いことであるのだが。地区の行事には参加したこともない長男の俺は、数年も前から「もうじき本宿の年だからね!」と親から釘を刺されていたこともあり、あまり浮かない気持ちで重い腰を上げた次第なのだ。
「おぼすな」と呼ばれる神社に向かうと、儀式の準備はほとんど整っていた。見回す限り、集まった人の中で俺が最年少だ。定刻通りに始まった儀式は、簡略化されたとはいえ祝詞をあげたり謡いを謡ったり盃を交わしたりと、そこそこ伝統色の強いものだった。正面には重々しい天照大神の掛け軸が奉られ、松竹梅の鉢や大根とごぼうで作った亀など縁起の良いものが供えられている。進行をつとめたじいちゃんがおぼつかなく儀式を進め、15分ほどで「おびしゃ」は無事終わった。
軽い交流会的な飲み食いのあと、儀式で使った掛け軸、火箸、盃などのアイテムととともに、神様が実家にやってきた。店に臨時で用意した棚を神棚にして、そこに奉る。改めて見ると、神々しくてなんともありがたい。今年は、神様がいる年だ。