たまの日々

2004年06月24日(木) いちばんしあわせな誕生日

日付が変わる5分前。
ベッドのなかで、
ひとりぼっちの明るい夜がじりじりと迫る。
眼をひらいていても、見たいものは何も見えない。
眼を閉じて息を詰めても通り過ぎていかない。
私がここから落ちるしか逃げ道はないらしい。

廊下を裸足で歩いていって、
かろうじて青いソファーに受けとめられた。
しばらくするとちいさなあしでちびわんこがかけてきて
いつものようにキスをした。

いちばんしあわせだった誕生日の思い出。
いつだっただろう?
まだ小さくて生クリームが食べれた頃。
アイスケーキをはじめて口にしたとき。
誕生日記念、と言って先生の辞書にいたずらをしたこと。
バイト仲間が笑顔で、
ちいさなホールケーキに21本もろうそくを立ててくれたこと。
そのあと機関銃で撃たれたみたいなケーキを奪い合うように食べたこと。
友人がくれたメール。
誕生日が同じ人と言いあったおめでとう。
突然やってきて、一晩中無駄話につきあわされた。
私は眠いって不機嫌なフリをしたけど、
本当はとても、とても幸せだった。

たくさんの幸せな誕生日を過ごしたから、
この年になってもまだ、誕生日が待ち遠しかった。
けれど、
日付の変わる直前の青いソファーの上で、
いちばんしあわせな誕生日を思い出して、
なんだかすごく遠くにきてしまった気がした。
歳を取れば取るほど幸せになっていくって、
そんな確信が大きくゆらいだ。

そう思うのはわがままなんだろうか?



2004年06月17日(木) とくべつなそんざい

目が覚める。
私はやさしい匂いの背中にうもれている。
あやうく溺れてしまいそうになるけれど、
つまさきぎりぎりのところでとどまって
そっとやわらかな輪郭をなでる。
その背中はこちらを振り向き、
目覚めのちゅうをしてちいさなしっぽを振る。
のびをして、眠気に負けてぱたりと倒れ、
ちゅうをねだってまどろんで、
それでも私が起き上がるとうれしそうについてくる。
いつもたのしいことをキャッチする大きな耳が朝はやわくたれている。

それにしても、へんなクセ。
明け方になると私の首におなかをのせて、彼は眠る。
もう少し大きい犬だったら、きっと息苦しいだろう。
まだ少しシャンプーの香りが残る、短い毛が頬にここちよい。
明け方私が寝返りをうつと、
目をつむったまま鼻先にはなをすりつけてくる。

いちにちに何度も、私をやさしいきもちにさせてくれる。
とくべつなそんざい。




2004年06月14日(月) 草と水と

午後7時を過ぎても外が明るい。
おかげで私とわんこは、
まだ明るさが残る夕暮れの川原をゆっくりと散歩することができる。
これはものすごく贅沢なことだとおもう。]

堤防は背の高い夏草に占拠されていて、
川でときおり魚がはね、水鳥が飛び立つる。
夕陽が包むような風景の中を吹きぬけてくる、
私の半袖からでた腕やわんこのよくうごく耳をなでる風は、
いきるということのもつあたりまえなあかるさの粒をいっぱい含んでいる。
すれちがうひともいぬもとても穏やかに見える。
私達は短くやさしいあいさつをかわしながら
上質な時間をおもいおもいに過ごす。
これが最近、一番たのしみな時間。



2004年06月09日(水) 蜜月は遠く

ひとつのおもいつきが、
私の中でぐんぐん育ってきもちが離れない。
けれどまぶしすぎて目があわせられない。

とてもなつかしいこのかんじ。
まだセーラー服を着ていた頃の恋に似ている。
この思いが叶えばきらきらと輝く未来が、
とてつもなく幸せな時間だけが私を待っていると切実に思う気持ち。
そのくせ話し掛けることもできず、
ただ見つめるだけで美しい空想で胸をいっぱいにできた、
そんなあの頃のきもちに似ている。

もうすぐ29歳になろうとしている私が、
甘酸っぱいあこがれに似た気持ちで思うおもいつきは、
何とも情けない告白だったりする。
それは愛でも恋でもなくて、
だからこそ私は真剣だったりする。

「私とトモダチになってください」

この告白はかなりやっかいだ。
普通の人はこんな告白しない。
しょっちゅう会っていた頃だったらこんなこと思いつきもしなかった。
普通しなくてもお互いに友達だと思える関係はつくれるもので、
いちいちとりたてて確認しあうことでもないからだ。
第1「友達」という定義にあてはまる関係になりたいか?と考えると
ものすごく微妙だ。
友達、よりは仲間に近い。
でも仲間というくくりは大きすぎる気がする。
だからといって同志というわけでもない、
ツレという言葉もあてはまらない。
そんな自分にすらきちんと説明できないような、
複雑な関係をたとえば「トモダチ」と仮定して、
それを確認したい。ゆるぎないものにしたい。消してしまいたくない。
私が、わすれられてしまいそうで怖い。
なんてめめしいことを考えている。

べったりしたいわけじゃない、甘えたいわけでもない。
久しぶりに会った瞬間、ぴたりと同じカーブが曲がれる、
そのスリルがたまらないんだ。
ジェットコースターに乗って風を切るように、
その瞬間、私には何も怖いものがないんだ。
そういうことをとても大切にしたいんだ。

そういったら笑ってくれる?


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