次の日の事を考えるようになった。 おとなになったなあ、としみじみ。 以前は今日を楽しむことに貪欲すぎて、 次の日のことなんて考えられなかった。
つまりそのくらい暇になったのだ。 それはとてもラクで、 少ししんみりして、 なんの進歩もない時間の繰り返し。 言い訳があることを喜んで、 まんじりと自分をたのしむことをなまける、 むなしく無神経な時間だ。
明日は会社のひとの送別会。 幹事はめんどくさい。 仕事はあんまりない。 眠くならないように、 午後にはコーヒーのお世話にならなきゃいけないかな。
ただぼんやりと、 空をみるように、車窓を見るようにTVを見るように、 時間が過ぎていく。 とてもラクでふわふわした時間だ。
火曜日が入稿日だから、 それまでにあれとこれは片付けておこう。 明日こそフィルムを現像しにいこう。 晴れたらいいな、 会社から10分のお散歩。
目に映るくるくる変わる世界に、 自分を置かないで、 しゃぼんだまのようにただよう一日の繰り返しは、 とてものどかだ。
水曜には久しぶりの友人に会いにいこうか。 おっとその前に、 歯医者の予約いれてたっけ。 オトナになってもどきどきする、 私はなんで歯医者がこんなに怖いんだろう。
つまり私は私でいないようにしている。 私が私だと、 私はとても辛いのだ。 あれもこれも足りない、 不完全で、不器用で、不器量で。 はずかしくって、情けなくって、かわいそうで、 誰の前にも出たくない。
12月には人生初のまともなボーナスだ。 寸志なので5分の1くらいだけど、 さらに半年いればボーナスと呼んでふさわしい金額がもらえる。 正社員はすばらしい。 のんびりと仕事をして、 決まった時期にボーナスがもらえる。 月給はびっくりするほど安いけど。
そして私もあなたも忘れてしまえば、 こんなにも私はラクになれる。 そんなことを知った。 痛い程。
今の私の仕事は、 私以外にするひとがいないから、 みんな、たいへんそうだね、とかいう。 やりたいひとがいないから、興味がないから、 私はのんびりと仕事をする。 飽きない程度の向上心と、 怠けない程度の勤勉さで。
あなたを失えば、 私は私である必要なんてどこにもないから、 今の私はこんなにもラクだ。 砕け散って空気に差し込む光のように。
次の日の事を考えるようになった。 おとなになったなあ、としみじみ。 以前は今日を楽しむことに貪欲すぎて、 次の日のことなんて考えられなかった。
けれどやっぱり、 私がいる限り、 私はあなたを失わない。 遠くても、小さくても、触れられなくても。 どこかできっと信じている。 次の日にもあなたを守る。 きっとあなたを守り続ける。
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