陽あたりの良い、北風を建物でさえぎられた、 守られたソメイヨシノは、 穏やかにひとひら、ふたひらと花弁をほころばせている。
長かった冬も、ようやく終わろうとしている。
一年前、 長く続けた派遣先を退職した。 その頃の冬の寒さが、 いつまでも身体の底につめたくよどんで、 消えなかった。 ずっと、冬のままだった。
そういえば去年は、 風邪をひいて満足に花見もできなかったっけ。 それ以上に、 気持ちが風邪をひいていて、 どんなに美しい景色も楽しい時間も、 ビー玉のむこうみたいにつめたく遠くちいさかった。
春も夏も秋も冬も。 現実感のないまま過ぎ去った。
温かみを失えば、 そのあたたかさをなつかしく、いとしくおもう。 失う程に、痛い程に、理解る。 その、大切さ。
そして、何も残っていない。 それでも、 何も、うしないたくない、 とおもう私の気持ち。
それでも、 今は、 そんな気持ちを少し預けて、 週末には桜をみにいこう。 やっとここまでこられた。
そして、ときどき、春。
2003年03月19日(水) |
今日の私にできること |
昨夜のアメリカ大統領の演説のニュースが、 街中のTVから溢れている。 なのにみんなの顔はいつもと同じ。
3月も半ばになった。 毎朝太陽の光の中で目覚められるのはとてもしあわせだ。 夕陽をみられることも私の気持ちをあかるくさせる。 今日は3ヶ月振りの友人から電話があった。 少し緊張のある会話がとてもたのしかった。 友達は、元気になりたくて電話をくれたみたい。 ヘンに信頼されているのかもしれないな。 私は、 元気じゃないときは絶対に友人に電話しない。 自分のことを信じないから、 突き放される瞬間が怖くて、 自分から声がかけられない。
そんな、 神様を持たない、 自分すら信用できない私だけど、 今、戦争をするのは賛成できない。 この戦争が、 ほんとうの何かを生むとはとても考えられない。
今日の私にできること。 なんだろう。
実家で、 古い写真を見つけた。 中学卒業から大学3年まで。
写真はみんな笑顔だけれど、 いろんな顔の私がいた。
これも私の笑顔の履歴。
これからも、 記録を残してみるのもいいかもしれない。
3月早々風邪をひいた。 おかげで、たのしいことの可能性は全部没収。 再びさみしい週末となってしまいました。
やはり一人暮らしなんてだいきらいだ。
高熱で会社を休んだ火曜には、 実家の母に電話をして、風邪薬と食料を持ってきてもらった。 あとはずっと一人で寝ていた。 9度を越えたときには不安に寒気がした。 うとうとして、目を覚ましては体温を測り、 氷枕におでこをあてて、 買ってきてもらったパンやプリンを食べて薬をのんだ。 これ以上、会社は休めない。 必死だった。
翌日ふらふらしながら会社へいった。
仕事がおわって母からメールが入った。
警察から電話があったって。
近所の保育園の駐車場におきっぱなしだった車のこと。
暗い気持ちで母に謝罪の電話をした。 疲れたような声で、 「あんたの風邪がうつったみたい」 その言葉が耳から離れない。
それ以来、 ずっとずっとひとりだ。 起きて、会社に行き、ご飯をつくって、ひとりで眠る。 ひとりばかりだ。
風邪が完治したとして、 私は実家に顔を出すことができるのだろうか?
金曜の夜は風が強くて、 ひとり、部屋でじっとしていると、 建物全体がときおり風に押されて揺れる。 ひとりでいることがほんとうに嫌だった。
ケータイを握り締めていた。 メモリに並ぶ友人たちの名前をみていた。 だれかと話をしたかった。 ひとりじゃないって、思い込みたかった。 でも、 誰も電話できなかった。
だれに電話をしてもいいのかわからなかった。 電話してもゆるされるのかわからなかった。
どうしたいかはよくわかっていたけれど、 決してそうするわけにはいかなかった。
追い詰められて、電話をしてしまった。 会話がしたかった。 だけど、 迷惑をかけただけだった。 電話なんかしなきゃよかった。 わかってたけど、 やっぱりしなきゃよかった。
心から思った。
私が、 もうすこしかわいくてやさしかったら。
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