今日の日経を題材に法律問題をコメント

2015年06月30日(火) 法科大学院は劇的に減る

 日経(H27.6.30)夕刊で、政府は、司法試験の合格率を7割以上、年間合格者を1500人以上とする改革案を取りまとめたという記事が載っていた。


 合格者1500人というのはいいが、合格率を7割以上にするには、法科大学院の定員を減らすしかないだろう。


 そのため、今後、法科大学院は劇的に減ることが予想される。



2015年06月29日(月) 4人が死亡した火災で罰金50万円の刑

 日経(H27.6.29)夕刊で、鹿児島市でアパートが全焼し4人が死亡した火災で、過失致死と建造物等失火の罪に問われた元住人の被告に、鹿児島簡裁は、求刑通り罰金50万円の判決を言い渡したと報じていた。


 裁判官は、「たばこの残り火をティッシュペーパー入りのごみ袋に入れた責任は極めて重い」と指摘した。


 それでも罰金50万円という軽い刑なのは、過失致死も建造物等失火も、刑の上限が罰金50万円だからである。


 しかし、過失とはいえ、人が亡くなった場合でも刑の上限が罰金50万円というのは、刑として軽すぎるように思う。



2015年06月26日(金) 女性の再婚禁止期間と夫婦別姓の禁止について最高裁が判断

 日経(H27.6.26)社会面で、女性の再婚禁止期間と夫婦別姓を認めないことを定めた民法の規定が憲法に違反するかが争われた2つの事件で、最高裁大法廷は、早ければ年内にも憲法判断を示す見通しと報じていた。


 この2つの制度は、国連の女子差別撤廃委員会が「男女の差別的規定だ」として改善を勧告している。


 ただ、夫婦別姓については、立法政策の問題であり、夫婦同姓が直ちに違憲とはいえないと思う。


 しかし、離婚後に女性の再婚を6カ月間認めないことについては、違憲となる可能性があると思っている。


 というのは、父子関係を巡る紛争を未然に防ぐためであるが、その立法目的と、再婚禁止期間を6か月とすることに合理的関連性がないからである。


 父子関係を巡る紛争を未然に防ぐためには、民法の他の規定との関連で、再婚禁止期間を100日にすれば足りる。


 最高裁はどのような判断をするのだろうか。



2015年06月25日(木) 電池と磁石は詐欺事件の定番ネタ

 日経(H27.6.25)社会面で、2008年11月〜09年1月、沖縄県の無職男性に、実際には開発されていない蓄電池が「近く発売される」とうそを言って販売代理店になるよう持ちかけ、契約金として約3000万円をだまし取ったとして、警視庁は、元会社社長ら5人を詐欺容疑で逮捕したという記事が載っていた。


 電池は、詐欺事件に使われる定番のネタであり、他に使われるネタとして磁石がある。


 それゆえ、電池や磁石の話が出たら警戒した方がよい。


 それにもして、7年以上前の行為が今ごろ逮捕されるのであるから、詐欺事件の処理は本当に時間がかかる。



2015年06月24日(水) 裁判員にバッジを贈呈

 日経(H27.6.24)夕刊で、裁判員裁判の経験者に裁判所から贈呈される記念バッジが、インターネットの「ヤフオク!」に出品され、6000円ほどで落札されていたという記事が載っていた。


 裁判員裁判の経験者にバッジを贈呈していたことは知らなかったが、ネットに出品することに何か法的な問題はあるのだろうか。


 そのバッジがあれば、裁判所に入るときのチェックがフリーパスになるというのであれば問題であるが、そのようなことはない。


 何が問題なのかがよく分からない記事であると思った。



2015年06月23日(火) 医療機関のカルテ開示義務

 日経(H27.6.23)社会面で、厚生労働省の調査によると、医療機関にカルテの開示義務があることを、患者の4割以上が知らないことが分かったという記事が載っていた。


 医療機関は、取り扱う個人情報が5000件を超えれば「個人情報取扱事業者」として、患者からカルテの開示請求があった場合には開示することが義務付けられている。(なお、法改正されれば、5000件以上の要件が撤廃される。)


 これは個人情報保護法に基づく開示義務である。


 ただ、個人情報保護法が法制化されたときは、まだカルテの開示義務が議論されており、結論は出ていなかったはずである。


 それが、個人情報保護法の制定によってカルテ開示義務が生じることになるとは、立法担当者も、医療関係者も想定していなかったのではないだろうか。



2015年06月22日(月) 改正個人情報保護法が成立の見通し

 日経(H27.6.22)法務面で、改正個人情報保護法案が今国会で成立する見通しという記事が載っていた。


 法改正により、これまで適用外だった、個人情報の取り扱いが5000人以下の企業も、個人情報取扱事業者として一定の義務を負うことになる。


 その対象は100万社を超えるとのことである。


 個人情報保護の趣旨からは、個人情報の取り扱いが5000人以下の企業を規制の対象から外すことに合理性はないので、法改正はやむを得ないだろう。


 ただ、個人情報保護法は、個人情報を広範囲に規制しているため、円滑なコミュニケーションを阻害している面がある。


 法改正ではそれに対する配慮がなく、バランスが取れていないと思う。



2015年06月19日(金) トヨタの常務役員が麻薬取締法違反で逮捕

 日経(H27.6.18)夕刊で、警視庁は、アメリカから医療用の麻薬を宅配便で密輸したとして、麻薬取締法違反(輸入)の疑いで、トヨタ自動車の常務役員のジュリー・ハンプ容疑者を逮捕したという記事が載っていた。


 別の報道だと、アメリカからの小荷物には、その薬を小分けにして入れていたそうである。


 小分けにしたからといって、発見される可能性は低くならない。


 むしろ、小分けにすると、違法性を認識していたことを示す証拠となるから、マイナスの効果しかない。


 それでも、薬を小分けにするという行動に出るのが犯罪者の心理といえる。


 この事件では容疑者は否認しているようであるが、薬を小分けにしたことの合理的理由を説明できない限り、起訴されて、有罪になるのではないだろうか。



2015年06月17日(水) 選挙権年齢が18歳以上に引き下げ

 日経(H27.6.18)夕刊で、選挙権年齢を20歳以上から18歳以上に引き下げる改正公職選挙法が参院本会議で全会一致で可決し、成立したと報じていた。


 来夏の参院選から、18歳以上の人が投票できる見通しである。


 数年前に選挙権年齢の引き下げが問題になっていたとき、街頭インタビューなどでは時期尚早という意見が多かった気がする。


 ところが、今では反対の意見はほとんど聞かない。


 今後、成人年齢の引き下げと、少年法の適用年齢の引き下げが問題になって来る。


 現在ではそれには反対が多いようであるが、いずれは年齢の引き下げが当然のようになるのかも知れない。



2015年06月16日(火) 暴力団の上納金について、所得税法違反で逮捕

 日経(H27.6.16)夕刊で、配下の組員から集めた上納金を所得申告せず、所得税約8800万円を免れたとして、福岡県警は、暴力団工藤会総裁を所得税法違反(脱税)の疑いで逮捕したと報じていた。


 上納金について脱税の疑いで立件するということは以前から課題になっていたが、資金の流れを特定することが難しかったようである。


 しかし、工藤会に対する一連の捜査の過程で、傘下組織から上納金を集めたことを示すメモを押収し、逮捕につなげたとのことである。


 ところで、配下組員が市民に不法行為を行った場合に、組長の使用者責任が問われるようになり、最高裁もそれを認めている。


 これにより組長に対して多額の損害賠償請求をすることが可能になり、暴力団組長にとって脅威となっているはずである。


 暴力団にとっては、刑務所にいくよりも経済上の締め付けの方が打撃が大きいと思われる。


 記事にあった、上納金の無申告を所得税法違反で立件し、資金源を断つという手法は、今後、組長の使用者責任と並んで、暴力団にとっては大きな脅威となるだろう。



2015年06月15日(月) 内閣法制局長官が砂川判決に言及

 日経(H27.6.15)夕刊で、内閣法制局長官が、衆院平和安全法制特別委員会で、「武力行使の新3要件で認められる限定された集団的自衛権の行使は、最高裁の砂川判決に含まれると解することが可能だ」と述べたと報じていた。


 なかなか微妙な表現であり、相当考えたものと思われる。


 「砂川判決は集団的自衛権の行使を容認している」とまでは言い切っていない。


 砂川判決では集団的自衛権の行使はまったく争点になっていなかったのであるから、そのように言うことは無理であることを承知しているのだろう。


 そのため、「最高裁の砂川判決に含まれると解することが可能だ」という言い方をしているのであり、言わんとしていることは、「砂川判決で示された最高裁の考え方からすれば、限定された集団的自衛権の行使は認められることになる」ということなのだろう。


 しかし、しょせん言葉の遊びに過ぎない。


 限定された集団的自衛権の行使が違憲かどうかについては議論の余地があり得るし、合憲という考え方も不可能ではないと思う。


 ただ、合憲を根拠づけるために、集団的自衛権がまったく争点になっていなかった砂川判決を引用するのは不当ではないだろうか。



2015年06月12日(金) 防犯カメラの有用性

 日経(H27.6.12)夕刊で、北海道砂川市で軽ワゴン車と乗用車が衝突し、5人家族の4人が死亡、1人が重体となった事故で、北海道警は、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)の疑いで、乗用車を運転していた建設業の男性を逮捕したと報じていた。


 逮捕された容疑者は「事故を起こしたことは間違いないが信号は青だった」として、容疑を否認しているとのことである。


 信号が赤だったのか、青だったのかで罪の重さがまったく違う。


 ところが、軽ワゴン車側は4人が死亡し、1人重体という状況では、「信号が青であった」という容疑者の証言が唯一の証拠となる可能性もあった。


 しかし、防犯カメラからは信号は赤であったことが分かると報じられている。


 それゆえ、防犯カメラの有用性が改めて認識されたといえる。



2015年06月10日(水) 婚姻費用分担請求はいつからできるか

 日経(H27.6.10)21面で、「離婚と争い 別居中の生活費、夫に求めたい」という見出しで、婚姻費用分担請求について書いていた。


 別居しても、離婚しない限りは、収入の多い側は生活費の支払い義務を免れない。


 それゆえ、収入の少ない側(通常は妻側)が収入の多い側(通常は夫)に対し、生活費を請求することができる。


 それが婚姻費用分担請求である。


 離婚を考えている人なら、その程度の知識は持っていると思われる。


 ただ、別居してしばらく経ってから請求しても、過去に遡ることはできないというのが、裁判所の一般的な考えであり、かかる知識までは持っていない人もいる。


 裁判所の考え方はあまり納得できないのであるが、そのようなことを言っても仕方ないので、別居した場合には、請求できる側は、すぐに婚姻費用分担請求の調停を申し立てた方がよいと思う。



2015年06月09日(火) 上告を諦めてもおかしくない事案であるが

 日経(H27.6.9)社会面で、労災認定を受けて休職・療養中に解雇されたのは不当だとして、専修大の元職員が解雇無効を求めた訴訟で、最高裁は、「国から労災保険の支給を受けている場合でも(使用者が)打ち切り補償を支払えば解雇できる」とする初判断を示した。


 労働基準法は、業務上のケガや病気で療養中に解雇することを原則禁止している。


 ただ、使用者が療養費を負担している場合に、3年が過ぎても治らないときは、賃金1200日分の「打ち切り補償」を支払えば解雇できるとしている。


 今回の訴訟では、国が労災保険を支給していたため、使用者は療養費を負担していなかった。


 そのような場合でも、打ち切り補償を支払えば解雇できるかが争点だった。


 一審、二審は「打ち切り補償の適用は、使用者による療養補償を受けている場合に限られる」とし、解雇無効と判断していた。


 しかし、最高裁は、「労災保険が給付されている場合、労働基準法が使用者の義務としている災害補償は、実質的に行われているといえる」とし、打ち切り補償の支払いで解雇することができると判断した。


 上告人である専修大学は、1、2審で敗訴し、しかも、条文の文言を素直に読めば、1、2審の判断の方が正しいともいえる事案であった。


 それゆえ、上告は諦めても不思議ではない。
 

 上告人は専修大学であり、代理人弁護士は、専修大学内に弁護士事務所がある。そのため、両者が綿密に打ち合わせをして、頑張ったのかなあと想像する



2015年06月08日(月) 型を変えれば質も上がるというわけではない

 日経(H27.6.8)法務面で、「監査役制のまま統治改革」という見出しで、監査役制のまま統治改革をしている会社をレポートし、「コーポレートガバナンスの型を変えれば質も上がるというわけではない」という趣旨の記事を書いていた。


 その通りであると思う。


 監査役制度は、海外では「分かりにくい」と言われているようであるが、歴史があり十分に定着しており、また制度自体に問題があるわけでもない。


 それゆえ、監査役制度を変更せずに、それを活かしていくということは間違いではない。


 問題は制度自体ではなく、監査役や社外取締役に十分な情報が提供されているかどうかであり、その点こそが重視されるべきではないだろうか。



2015年06月05日(金) GPS発信機を取り付ける捜査に違法判断

 日経(H27.6.5)夕刊で、大阪地裁は、警察が、裁判所の令状なしで、捜査対象者の車両にGPS発信機を取り付けた捜査を違法と判断し、この捜査で得た証拠を不採用とする決定をしたと報じていた。


 これまでGPS発信機を取り付ける捜査手法は、グレーゾーンと言われてきた。


 確かに、GPS発信機を取り付ける捜査は有用であると思うが、プライバシー侵害の程度は大きい。


 そのため、令状が必要とするという判断には説得力がある。


 これは下級審の判断ではあるが、今後も同じような判断が続くのではないだろうか。



2015年06月04日(木) 年金情報流出 賠償額はいくらになるのか

 日経(H27.6.4)2面で、衆院厚生労働委員会は、日本年金機構から公的年金の個人情報が流出した問題に関する集中審議を開いたが、その中で、水島理事長は、現在約125万件と公表している流出件数がさらに増える可能性を示唆したと報じていた。


 個人情報が流出した場合、企業であれば500円程度のお詫びのカードを送付するケースが多い。


 日本年金機構の場合は、情報が流出した人に対して、お詫びと基礎年金番号の変更を申し入れているようである。


 しかし、それだけで十分なのであろうか。


 訴訟を提起すれば、賠償金額がいくらになるかは別にして、請求が棄却されることはないだろうから、すでに集団訴訟の準備をしている弁護士がいるかも知れない。



2015年06月03日(水) イスラム武装集団の指導者に逮捕状

 日経(H27.6.3)社会面で、日本人10人が犠牲になった2013年のアルジェリア人質事件について、神奈川県警は、人質強要処罰法違反の疑いで、イスラム武装組織「覆面旅団」の指導者の逮捕状を取ったと報じていた。


 人質強要処罰法とは、人を人質にして、第三者に義務のない行為を要求するなどをした者を処罰する法律であり、日本国民以外の者が国外で行った場合も処罰される。


 警察としては、犯罪を認知した以上、その捜査することは当然であろう。


 ただ、実際に逮捕するのは難しいとみられており、捜査機関の苦労が予想される。



2015年06月02日(火) 職員の不注意で125万件の年金情報が外部に流出

 日経(H27.6.2)1面で、日本年金機構がサイバー攻撃を受け、約125万件の年金情報が外部に流出したと報じていた。


 記事によれば、職員が受け取ったメールに添付されたファイルを開いたことでウイルスに感染し、その時点で同機構は端末を隔離し、「不審なメールは開けないように」と職員らに注意を促したが、その警告は浸透せず、別の職員が添付ファイルを開けてウイルスに感染したとのことである。


 職員への教育が不十分であり、管理を見直すべきであることは当然である。


 ただ、いかに管理を厳重にしても人為的ミスをゼロにすることはできず、今回程度のことは今後も起き得るだろう。


 それゆえ、社会保障と税の共通番号(マイナンバー)制度の導入を控えているが、それについても職員の不注意で情報が流出することはあり得ると思う。


 したがって、マイナンバーにあらゆる情報を紐づけすることはリスクが大き過ぎであり、ある程度情報を分散管理することが望ましいと思う。



2015年06月01日(月) 自転車の取り締まりを強化

 日経(H27.6.1)夕刊で、自転車で危険行為を繰り返した運転者に安全講習の受講を義務付ける改正道路交通法が施行されたと報じていた。


 自転車が絡む事故が後を絶たない。


 また、自転車側が加害者になった場合に保険に入っておらず、十分な保障ができないケースも多い。


 そのため、自転車に対する取り締まりを強化することはやむを得ないことだと思う。


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