2015年05月29日(金) |
冨田選手に有罪の判決 |
日経(H27.5.29)社会面で、韓国・仁川アジア大会でカメラを盗んだとして窃盗罪で略式起訴され、帰国後に無実を訴えた競泳の冨田尚弥選手に対して、仁川地裁は、求刑通り罰金100万ウォン(約11万円)の有罪判決を言い渡したと報じていた。
この事件では選手村の冨田選手の部屋から被害品が見つかっている。
ところが、冨田選手は「見知らぬ人物にバッグに入れられた」と主張して争った。
しかし、判決では、「犯行現場の監視カメラ映像に被告が主張する人物は写っておらず、信じるのは困難」と指摘した。
外国の裁判所の判決ではあるが、裁判所の認定は合理的であり、妥当であると思う。
日経(H27.5.27)21面で、「相続税、申告の落とし穴 早い着手でぬかりなく」という見出しで相続税対策について書いていた。
記事では、子どもの名義を使って預金口座を作り、自分の金を預けていた場合などは「名義預金」となるので注意すべきとしていた。
相続税の課税が強化されたので、相続税対策セミナーはどこも一杯であり、講師がこのような話をすると、聴講者から「通帳を子どもに渡して、印鑑はこちらで管理している場合にはどうか」など様々な質問が出る。
その場合、「名義預金」では預金を誰が管理していたかが重要であり、印鑑を親が管理していれば、親が管理していることになり、「名義預金」と認定されるだろう。
要するに、実態が重要なのであり、あれこれ抜け道を探しても、それは無駄であるし、有効な相続税対策とはいえない。
こういったことは税理士の業務ではあるが、法律問題においても、実態が重要であるという点では同じである。
2015年05月26日(火) |
「横浜弁護士会」から「神奈川弁護士会」に名称変更 |
日経(H27.5.26)社会面で、横浜弁護士会は、通常総会で名称を「神奈川県弁護士会」に変更することを決めたという記事が載っていた。
横浜弁護士会には、神奈川県内の全ての弁護士が加入しているので、「神奈川県弁護士会」への名称変更は当然のように思える。
他には、宮城県、石川県が、仙台弁護士会、金沢弁護士会となっている。
ただ、総会では3分の2以上の賛成が必要とのことであり、宮城県、石川県では仙台、金沢に弁護士が集中しており、その人たちが名称変更に賛成するとは思えないから、今後も名称の変更はないだろう。
2015年05月22日(金) |
司法試験合格者を1500人に |
日経(H27.5.22)1面で、政府は、司法試験の合格者数を年間1500人以上とする案をまとめたと報じていた。
現在合格者数は2000人弱であるが、500人や1000人のころに比べて質の低下ははっきりしている。
それゆえ、1500人程度にするのはやむを得ない。
司法制度改革では3000人程度を目標としていたが、その目標が失敗だったことが明らかになったといえる。
2015年05月21日(木) |
ドローンに警察は過剰反応ではないか |
日経(H27.5.21)夕刊で、小型無人飛行機「ドローン」を浅草の三社祭で飛行させると予告する動画を配信し、三社祭の運営を妨げたとして、無職の15歳の少年が威力業務妨害容疑で逮捕されたという記事が載っていた。
この事件は、報道を見る限りでは、少年は、動画配信サイトで「祭り行きますから。撮影禁止なんて書いてないから」と発言し、その動画を見た人が通報し、それにより、主催者側が急きょ警備を強化するなど対応を迫られたということのようである。
そうすると、動画を配信した時点では、主催者側はドローンによる撮影禁止を告知していなかったのであるから、その時点で「ドローンを飛行させる」と発言することに違法性があるのだろうかという疑問がある。
すくなくとも逮捕の必要性まではなく、警察はドローンに過剰反応し過ぎではないかと思う。
2015年05月20日(水) |
特定の者に「相続させる」旨の遺言と、代襲相続 |
日経(H27.5.20)21面の「もしものホーム法務」というコラムで、Aさんは父親から家業の経営を任されており、また、いずれは自分の長男に店を継がせたいと思っているが、自社株式等がすべて父親名義のままのため不安を持っているというケースについて書いていた。
当然、父親に遺言書を作成してもらい、実質的に経営しているAさんに会社の株式等を相続させる旨の遺言をしてもらうべきである。
ただ、Aさんが父親より先に亡くなった場合のことも考慮しておく必要がある。
最高裁は、平成23年2月22日判決において、特定の者に相続させるという遺言をした場合において、その者が遺言者より先に亡くなったときには、特段の事由がない限り、代償相続はしないと判断しているからである。
つまり、Aさんが相続するはずだった分について、Aさんが先に亡くなった場合、原則として、Aさんの長男が相続することにはならないのである。
そのため、父親の遺言において、「Aさんが死亡している場合には、その長男に相続させる」としておく必要がある。
または、Aさんの長男に相続させるつもりはない場合には、「Aさんが亡くなった場合には、Aさんに相続させる旨の遺言は失効する」と明記しておくべきである。
遺言書作成の助言を求められた弁護士等の専門家としては、その点をきちんと説明しておく必要がある。
2015年05月19日(火) |
トヨタ自動車の種類株式発行と「公開会社」の定義 |
日経(H27.5.19)投資情報面の「一目均衡」というコラムで、トヨタ自動車が導入を発表した「AA型種類株式」について書いていた。
この株式は、5間保有すれば発行価格でトヨタに買い取ってもらえ、配当は1年目が発行価格の0.5%で、5年目まで徐々に高まる仕組みである。
種類株の一種であるが、この株式は5年間は売れないという譲渡制限が付いているという特徴がある。
会社法は、譲渡制限のある株式と、譲渡制限のない株式との二種類の株式発行を認めているので(108条1項4号)、そのような株式発行も可能である。
ただ、一部の株式でも譲渡制限がされた場合には、「公開会社」(会社法2条5号)でなくなるのではないかという問題が生じるかも知れない。
この点、会社法は、「公開会社」の定義として、「発行する全部または一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式の承認を要する旨の定めを設けていない株式会社をいう。」としている。
分かりにくい表現であり、解説書でも「じっくり読むと分からなくなる。」としていたが、結局、一部の株式でも譲渡制限がなければ、公開会社ということを意味している。
したがって、トヨタ自動車が公開会社であることに変わりはないことになる。
2015年05月15日(金) |
過払い金返還請求の「山は越えた」 |
日経(H27.5.15)17面で、丸井グループの社長が、「最近は過払い金返還請求が減少し、山は越えた」と語ったという記事が載っていた。
もっとも、アコムやアイフルなどの消費者金融会社に対する返還請求はまだ続いているようである。
これは東京の法律事務所が地方で法律相談会を開催するなどして、顧客の掘り起こしを進めてしているためと思われる。
ただ、丸井が「山を越えた」ということであれば、消費者金融会社もここ1、2年で返還請求の山を越えるのではないだろうか。
実際、弁護士会主催のクレサラ法律相談は、相談者が激減している。
2015年05月14日(木) |
ホンダへの追徴課税を東京高裁が取消 |
日経(H27.5.14)社会面で、ホンダが、海外子会社との取引を巡って追徴課税の取り消しを国に求めた訴訟で、東京高裁は、約75億円の課税処分を取り消した東京地裁判決を支持し、国側の控訴を棄却したと報じていた。
国側は上告を検討しているそうである。
しかし、課税処分が取り消された場合、ホンダへの還付に上乗せされる加算金は現時点で30億円を超えており、上告をすればさらに増えることになる。
これ以上傷を深めないために、国はさっさと誤りを認めて、還付すべきではないだろうか。
日経(H27.5.13)社会面で、川崎市の多摩川河川敷で、中学1年生が殺害された事件で、横浜家裁は、リーダー格の少年を殺人容疑で、他の少年2人を傷害致死容疑で検察官送致(逆送)したと報じていた。
少年審判において、傷害致死容疑の1人は刑法の「緊急避難」の適用を求めたようである。
緊急避難とは、例えば、自分に危険が及ぶ場合には、やむを得ず他人をケガさせても違法性がないとするものである。
記事の場合であれば、被害者を傷つけなければ、リーダー格の少年から自分が傷つけられたので、やむを得ず被害者に傷害行為をしたということであろう。
弁護活動(付添人活動)は弁護士それぞれであり、正解というものはない。
ただ、緊急避難というのはかなり無理な主張と思う。
私であれば、やむを得ず傷害行為をしたという事情があるのなら、情状として主張すると思う。
日経(H27.5.12)社会面で、死亡した母親が生きているように装い年金を不正受給したとして、詐欺の疑いで、無職の男性を逮捕したという記事が載っていた。
親と同居していた子供が無職で、親の年金で生活していた場合には、しばしばみられる事態である。
中には、死亡が発覚して年金の支給がストップされるのを懸念し、親の死体を遺棄する場合にもある。
そうなると実刑は避けられないだろう。
そこまでになるケースは少ないにしても、詐欺罪は、窃盗に比べて人を騙す分だけ、計画的で悪質と思われており、罪は重い。
2015年05月11日(月) |
マイナンバーの利便性とリスク |
日経(H27.5.11)4面で、「マイナンバー、そんなに心配?」として、マイマンバーの有用性について書いていた。
その中で、カルテをマイマンバーと結びつけることに日弁連が反対しているが、それは杞憂ではないかとしていた。
所得だけでなく、カルテなどあらゆる情報がマイナンバーで結びついていれば、利便性は高まることは間違いない。
ただ問題は、あらゆる情報がマイナンバーに結び付けられことによるリスクである。
スマホにすべての情報を入れ、電車に乗るのも、買い物をするのもスマホで済ます人は結構おり、それはそれで便利だと思う。
ただ、そのスマホを失くしたとき、盗み見られたときのリスクは当然ある。
マイナンバーでも、情報を分散して管理した方がよいという考え方もあり得るわけで、日弁連はそのような立場なのだろう。
結局は、様々な情報を一つの番号に結びつけることの利便性とリスクとのどのように考えるかがポイントということになる。
今日は休刊日なので、昨日の日経(H27.5.7)社会面であるが、土地の境界を明確に記した地図の整備が首都圏や大都市で進んでおらず、昨年4月時点の整備率は東京で19%、大阪12%、名古屋21%に止まっているという記事が載っていた。
記事で言っているのは地籍調査というものである。
登記所に備え付けられている地図や図面の中には、明治時代に作られた公図などをもとにしているものもあり、そのような場合には、境界や形状などが現実とはかなり異なっている。
また土地の面積も正確ではない。
そこで、国、県の補助を受けて、市町村が正確な地籍を調査しているのである。
東京の整備率は19%とのことであり、実感に近いが、全国平均では50%を超えているので、意外に整備されているといえる。
2015年05月01日(金) |
弁護士から「違法でない」と言われても、責任は免れない |
日経(H27.5.1)社会面で、日本歯科医師会の政治団体「日本歯科医師連盟」を巡る政治資金規正法違反事件で、日歯連内部の会議で「迂回寄付ではないか」と問題視する声が上がっていたという記事が載っていた。
これに対し、会計担当の幹部が「これはテクニック。法的には問題はない」と反論。
その後評議員らに配布された内部文書でも「迂回献金には該当しない」「嘱託弁護士からも違法でないとの回答を得ている」と記載していたとのことである。
しかし、内部の会議で「迂回寄付ではないか」と問題視されるような事案において、弁護士が「違法でない」とのお墨付きを与えることはあり得ないであろう。
仮に、弁護士が「違法でない」と判断し、担当者がそれを信用したとしても、故意は阻却されない。
これは講学上、違法性の錯誤(法律の錯誤)と言われている問題であり、「犯意があるとするためには、犯罪の具体的事実の認識があれば足り、その行為が違法であることの認識は要しない」とされているからである。
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