今日の日経を題材に法律問題をコメント

2015年04月30日(木) 株式は分散すべきでない

 日経(H27.4.30)「私の履歴書」で、ニトリの社長が、父親が所有していたニトリの株式を巡って、母親、兄弟と相続争いが起こったことを書いていた。


 「コンサルタントからは、『株式については必ずもめるから、株式公開前に新しい会社を作れ』と指導してくれたが、苦労した親兄弟と利益を分かちたいという思いから、そのようにしなかった」そうである。


 私も、そのコンサルタントのアドバイスが正しいと思う。


 税金対策などいろいろな理由から、創業者が、株式を分散させているケースがある。


 また、相続時に、当面の紛争解決を優先して、相続人が株式を平等に持つこともある。


 しかし、そのように株式を分散することは止めた方がよい。


 小さな会社の場合、会社の発展を考えるならば、株式は特定のものに集中すべきであろう。



2015年04月27日(月) 官邸にドローンを飛ばした人物を威力業務妨害罪で逮捕

 日経(H27.4.27)社会面で、首相官邸の屋上で小型の無人飛行機(ドローン)が見つかった事件の続報が載っていた。


 この事件では、ドローンを飛ばした人物は、威力業務妨害容疑で逮捕されている。


 屋上のドローンは、飛ばしてから2週間も経って発見されているので、業務が妨害されたとはいえない。


 ただ、威力業務妨害罪は、業務が妨害される危険性があれば足り(具体的危険犯)、現実に妨害されたことまでは必要ないとされている。


 したがって、威力業務妨害罪は成立するであろうし、起訴もされるのではないだろうか。



2015年04月24日(金) 税務署長が供述調書を破り、逮捕

 日経(H27.4.24)夕刊で、新潟県十日町税務署長が、任意で取り調べを受けた際に供述調書を破ったとして、公文書毀棄の疑いで現行犯逮捕されたという記事が載っていた。


 この税務署長は、職場の飲み会の帰りで酔って部下に暴行した疑いで任意で取り調べを受けていたものである。


 逮捕された署長は60歳なので退職間近であったと思うが、公文書毀棄に罰金刑がないので、起訴されれば懲役刑となり失職し、退職金も支給されないであろう。


 酔った勢いで調書を破ったのだろうが、失ったものは大きい。



2015年04月23日(木) 動画投稿サイト「FC2」の関係者を逮捕

 日経(H27.4.23)社会面で、インターネット動画投稿サイト「FC2」を使った公然わいせつ事件に関与したとして、京都府警などの合同捜査本部は、FC2の実質的管理運営会社の社長と、元社長でFC2創業者の弟を公然わいせつの疑いで逮捕したと報じていた。


 逮捕容疑は、「帽子君」と名乗るライブチャット配信業者が、FC2のサイトで女性との性行為を撮影した動画を有料配信したのであるが、その配信業者と共謀したというものである。


 FC2はアメリカに拠点があるが、経営は日本人であり、その実態はよく分からない。


 それだけに事案の解明が望まれるが、サーバー自体はアメリカにあることから、捜査は難航が予想され、被疑者がとことん否認した場合、起訴まで持っていけないのではないだろうか。



2015年04月22日(水) 九州電力川内原発の運転差止の仮処分申請を却下

 日経(H27.4.22)夕刊で、九州電力川内原発の運転差し止めを住民らが求めた仮処分申請で、鹿児島地裁は、住民らの訴えを却下する決定をしたと報じていた。


 仮処分手続きでは、住民側が、短期間で、原発の運転により周辺住民に被害を及ぼす恐れなどを証明(厳密には「疎明」)しなければならない。


 しかし、それはなかなか難しい。


 それゆえ、鹿児島地裁が住民の訴えを却下したことは常識的な結論であろうと思う。


 逆に、関西電力高浜原発の再稼働を認めなかった福井地裁の仮処分決定が異例の判断といえる。



2015年04月20日(月) 科学鑑定の怖さ 和歌山カレー事件は?

 日経(H27.4.20)社会面で、FBIが1972〜99年に刑事裁判で被告人の毛髪鑑定として提出した268件のうち、257件に問題が見つかり、うち32件には死刑判決が出ているという記事が載っていた。


 FBIと米司法省はミスがあったことを認めているそうである。


 刑事裁判における科学鑑定には怖い面がある。


 鑑定が証拠として提出された場合、裁判官にはそれが誤りかどうかをチェックする能力がないため、ほとんど100%、鑑定結果を信用するからである。


 日本でも、足利事件で、「女児の下着に付着していた体液のDNA型と被告人のDNA型とが一致した」という鑑定を重要な証拠として無期懲役を言い渡したが、後に、その鑑定が誤りであったことが判明し、再審無罪が言い渡されている。


 また、和歌山カレー事件では、カレー鍋に混入されヒ素と、被告人の自宅から発見されたヒ素が同一であるとの鑑定がなされ、それが有罪の重要な証拠となって死刑判決が言い渡されたが、最近になって、その鑑定に疑問が呈されている。


 和歌山カレー事件では死刑判決が言い渡されているだけに、万が一再審無罪となったら、科学鑑定のあり方だけでなく、死刑廃止論にもつながる大問題になることは必至であろう。



2015年04月16日(木) コンビニのフランチャイズ加盟店主は労働者?

 日経(H27.4.16)夕刊で、東京都労働委員会は、ファミリーマートのフランチャイズ加盟店主らを労働組合法上の労働者に当たると判断し、店主らとの団体交渉に応じないことは不当労働行為に当たると認定したという記事が載っていた。


 労働組合法でいう「労働者」は、労働基準法の「労働者」よりも広い概念であり、最高裁は、使用者との使用従属関係だけでなく、事業組織に組入れられているか、契約内容を一方的決定する関係にあるかなどを考慮して判断している。


 その結果、新国立劇場を管理運営する財団が主催するオペラ公演に出演する合唱団のメンバーについては、労働者性を認めている。


 しかし、コンビニのフランチャズ本部に、契約内容を一方的に決定する関係があるとはいえないのではないだろうか。


 直感的に言っても、合唱団のメンバーは労働者性を認めても納得ができるが、コンビニの加盟店主に労働者性を認めることには違和感があるのだが。



2015年04月15日(水) 福井地裁が関電高浜原発の運転差し止めを認める

 日経(H27.4.1)社会面で、福井地裁は、関西電力高浜原発3、4号機の運転差し止めを命じる仮処分決定をしたと報じていた。


 第1回審尋は1月28日で、それからわずか3か月も経たずに結論を出したことになる。


 樋口裁判長は、大飯原発の差し止め訴訟で差止めを認める判決を出しているから、ある程度の知識はあったのかもしれないが、このような重大な問題について、わずか3か月で結論を出してよかったのだろうか。


 仮処分決定の当否はともかく、もう少し、関電側に主張、立証の機会を与えてもよかったのではないかと思う。



2015年04月14日(火) 被疑者と弁護人との接見を警察が盗聴

 日経(H27.4.14)社会面で、袴田巌さんの再審開始決定に対する即時抗告審で、逮捕当時の取り調べの録音テープなどの証拠開示を受けた弁護団は、「テープを再生したところ、逮捕直後の袴田さんと弁護人との接見を静岡県警が盗聴していた事実が判明した」と発表したと報じていた。


 それが事実だとすると、警察は極めて悪質な違法行為をしていることになる。
 

 このようなことがあると、警察署の施設で留置する代用監獄制度は問題と思わざるを得ない。



2015年04月10日(金) サッカーボールによる転倒事件で、最高裁が被害者側の請求を棄却

 日経(H27.4.10)社会面で、道路に飛び出したサッカーボールを避けて転倒した被害者の遺族が、ボールを蹴った子供の親に対し損害賠償を求めた事件で、最高裁は、「危険でない行為でたまたま人に損害を与えた場合、親に賠償責任はない」として、遺族側の請求を棄却したという記事が載っていた。


 極めて常識的な判断だと思う。


 ところが、一、二審は、子どもの親に損害賠償を命じていた。


 その背景には、子どもの親が損害保険に入っていたことがあるかも知れない。


 保険により賠償金を支払うことが可能だからである。


 それにしても、遺族側はなぜ学校を訴えなかったのだろうか。


 子どもの親に対する請求が棄却されれば、誰にも請求できなくなるのだから、通常であれば、学校と親と両方を訴えると思うのだが。


 何か特別の事情があったのだろうか。



2015年04月08日(水) 上西小百合衆院議員に対する除名処分は適法か

 日経でなく、朝日(H27.4.8)政治面で、衆院本会議の欠席などを批判され、維新の党から除名処分された上西小百合衆院議員が、「誤解を解くように努めたが、エモーショナル(感情的)な感じでこういった処分になって残念だ」と述べ、処分に不満をにじませたという記事が載っていた。


 この人の政治的資質には極めて疑問がある。

 
 そのような人が「全国民の代表」であることは恥ずかしいことであり、さっさと議員を辞任していただきたいと思う。


 ただ、法的にいうと、維新の党の除名処分が適法かについては疑問が残る。


 維新の党の党紀規則には、「本党及び本会派の品位を著しく汚す行為」があれば除名処分できるとしている。


 しかし、除名処分というのは、その議員の政治的活動基盤を奪う極めて厳しい処分であるから、十分な正当理由がなければならない。


 ところが、実際の処分理由を見ると、細かな理由を寄せ集めて書いているが、どれも除名処分となるほどの理由ではないように思う。


 そのため、上西議員が、除名処分無効確認の仮処分を求めた場合、それは認められるかもしれない。



2015年04月07日(火) 適法な上告理由があるのだろうか

 日経(H27.4.7)社会面で、JR福知山線脱線事故で、強制起訴されたJR西日本の歴代3社長を無罪とした大阪高裁判決を不服として、検察官役の指定弁護士が、最高裁に上告したと報じていた。


 上告は、被害者の心情を慮ったものであろう。


 しかし、上告できる理由は、高裁の判断に憲法違反があることや、最高裁判決に反していることなど非常に限定されている。


 この事件で果たして適法な上告理由があるのだろうか。


 検察官という公益的立場のあるものが、適法な上告理由が見つからないのに上告したのだとすれば、それは疑問である。



2015年04月03日(金) ウーバーの配車サービス

 日経(H27.4.3)2面で、「ウーバー騒動日本上陸」という見出しで、米ウーバーテクノロジーズが2月から福岡市で始めた配車サービス実験に、国土交通省が中止を指導したという記事が載っていた。


 ウーバーの行っているサービスは、スマホで配車を依頼すると、一般のドライバーが迎えに来て、目的地に連れて行く仕組みで、利用者はドライバーに謝礼の形で運賃を支払うというものである。


 ウーバーは世界約150都市で展開しているそうである。


 しかし、これは白タク行為と同じであり、道路運送法で明確に禁じられている。



 記事では、「このサービスは『ルール破り』なのか『革新者』なのか。評価はまだ定まりそうにない。」としていたが、現行法の下では、このサービスが認められることはないと思う。



2015年04月01日(水) 5年間も捜査するは不自然ではないか

 日経(H27.4.1)社会面で、投資関連会社オール・インをめぐる詐欺事件で、札幌地検は、詐欺容疑で逮捕、再逮捕した同社社長を嫌疑不十分で不起訴処分にし、5年以上の捜査は、逮捕された4人全員が不起訴となって終結したと報じていた。


 通常は、組織犯罪では、下の従業員から取り調べ、十分な供述証拠得た上で、次第に組織上層部の追及をしていく。


 ところが記事の事件では、先行して逮捕された者(おそらく社長よりはクラスが下であろう)が不起訴になっているのである。


 社長の部下たちが不起訴になっているのに、社長について有罪の証拠が集まるはずがなく、そのような状況の中で5年間も捜査を続けることがおかしいと思う。


 邪推すると、最初の捜査の担当検事が相当有力な人で、捜査を止めるに止めらなかったのかも知れない。


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