今日の日経を題材に法律問題をコメント

2013年12月27日(金) 参院選の「1票の格差問題」 高裁の判断が出揃う

 日経(H25.12.27)社会面で、今年7月の参院選の「1票の格差」の問題について、全国14高裁・高裁支部の16件の訴訟の判決が出そろったという記事が載っていた。


 「違憲状態」としたのが13件。「違憲」が3件。そのうち、広島高裁岡山支部は参院選では「選挙無効」と判断している。


 今後、舞台は最高裁に移されるが、これまでの最高裁の判例からして、「違憲状態」と判断するだろうと思う。



2013年12月26日(木) 都議選の「一票の格差」 最高裁は合憲と判断

 日経(H25.12.26)社会面で、「1票の格差」を是正せずに実施された6月の東京都議選は違憲だとして、元最高裁判事の泉徳治弁護士が選挙無効を求めた訴訟の判決で、東京高裁は25日、選挙を「合憲」と判断し、請求を棄却したと報じていた。


 地方議会選挙の「1票の格差」問題については、最高裁の判断がいくつかあり、その判断の枠組みも一応確立している。


 それによれば、最高裁は、国政選挙ほどには「一票の格差」を厳しくてみていない。


 ただ、国政選挙と同様の判断をすべきとする最高裁少数意見もあった。


 本件は上告されるようなので、最高裁がこれまでの判断の枠組みを維持するのかどうかが注目される。



2013年12月25日(水) 新任検事のうち女性が3分の1以上

 日経(H25.12.25)社会面で、法務省は、司法修習を終えた新任検事82人に辞令を交付したが、そのうち女性は31人と報じていた。


 新任検事のうち、女性が3分の1以上という計算である。


 検察庁は、かつては「男社会」と言われており、それは女性差別が残っているというニュアンスを含んでいた。


 しかし、3分の1以上が女性ということになると、もはやそのようなことはないのだろう。



2013年12月24日(火) 放置された空き家が増加

 日経(H25.12.24)社会面で、都会で空き家が放置されている問題を取り上げていた。


 空き家の多くは、高度経済成長期にマイホームブームに乗って建てられた築50年程度の物件で、親の死後、子供が管理や解体を拒み、手つかずになるケースが多いとのことである。


 ただ、管理に困るのであれば売却すればいいだけであるから、それ以外の理由として、相続で持ち分が細かく分かれて、相続人全員の同意が得られないことがあるのかもしれない。


 相続人が増えれば全員の同意を得ることは次第に難しくなっていくから、今後も空き家は増える可能性が高い。


 足立区では老朽家屋の解体費を助成する条例を制定し、これまでに45軒が条例を使って解体されたそうである。


 素晴らしい制度だと思うが、この場合も相続人全員の同意が必要であるから、それだけでは不十分であろう。


 いずれは、法律で、強制的に買い取ることができるようにする必要があるかもしれない。



2013年12月19日(木) 猪瀬知事は不起訴か

 日経(H25.12.19)夕刊で、猪瀬東京都知事が、昨年12月の都知事選直前に徳洲会グループから5千万円を受け取った問題で、都知事辞職の意向を固めたと報じていた。


 この問題では、5千万円を選挙運動費用収支報告書に記載しなかったなどとして猪瀬知事に対し告発がなされおり、今後は、猪瀬知事の刑事責任が問題になると思われる。


 ただ、収支報告書の提出義務は出納責任者にあるから、その者が5千万円の金銭の授受を知らなければ、報告義務違反の罪は成立しない。


 そうすると、知事を辞任して責任を取ったことも考慮すると、検察庁は不起訴処分とするのではないだろうか。



2013年12月18日(水) 景品表示法違反で書類送検

 日経(H25.12.18)社会面で、消費者庁が出した景品表示法に基づく措置命令に従わなかったとして、警視庁は、整体院「銀座コジマ」の児島正男社長を同法違反容疑で書類送検したと報じていた。

 
 同社はホームページで「効果的な身長伸ばしを実現します」「顔幅を狭くする高度な技」などと宣伝していたが、科学的な根拠がないとして、消費者庁から、広告の適正化などを求める措置命令を受けていた。


 消費者庁の命令に背いた疑いで事業者が摘発されるのは全国で初めてとのことである。


 それだけ、この業者が悪質ということである。



2013年12月17日(火) 調査した事業所のうち半分は「ブラック企業」でなかった

 日経(H25.12.17)夕刊で、「ブラック企業」の疑いがある企業への厚生労働省の立ち入り調査で、全体の82%に当たる4189の企業・事業所で違法な時間外労働など労働基準関係法令の違反があったという記事が載っていた。


 調査対象は、無料の電話相談やハローワークなどを通じ、過重労働に関して深刻で詳細な情報が寄せられた事業所とのことである。


 その調査の結果、悪質な事業所も多かったようである。


 しかし、就業規則の変更届け出を怠っていたのが17%、賃金台帳の記載漏れが13%であった。


 これらは小さな企業ではありがちであり、法令違反ではあるが、「ブラック企業」とまではいえないのではないか。


 さらに、18%の事業所では法令違反がなかった。


 したがって、「過重労働に関して深刻で詳細な情報が寄せられた事業所」を調査した結果、約半分は「ブラック企業」とは言えなかったという結果であったことになる。


 むしろ、その点に注目したい。



2013年12月16日(月) 漫画「黒子のバスケ」を巡る脅迫事件で犯人を逮捕

 日経(H25.12.16)社会面で、漫画「黒子のバスケ」を巡る脅迫事件で、警視庁は、犯人を威力業務妨害の疑いで逮捕したと報じていた。


 同作品を巡っては、大手コンビニに「関連商品の菓子に毒を入れた」とする脅迫文書が送りつけられ、店頭から関連商品が撤去されるなど問題になっていた。


 逮捕のきっかけは、脅迫事件の関係先周辺の防犯カメラの解析であったそうである。


 防犯カメラの設置に反対する見解もあるが、その有用性はもはや否定できないであろう。


 それゆえ、町内会や自治会などでも設置を要望する声が強いように思われる。


 ただその際に、映像の保存についてほとんど議論されていないことが気にかかる。


 防犯カメラの設置に当たっては、映像を閲覧できる者を限定し、映像の保存期間、保存方法、それらをチェックする別の機関の設置などを規則で定めることが重要であろうと思う。



2013年12月13日(金) 最高裁の補足意見と反対意見は興味深い

 日経(H25.1213)社会面で、性同一性障害で女性から性別変更した男性と、妻が産んだ長男との法律上の父子関係を認めた最高裁決定について、男性は喜びをかみしめる一方、これまでを「苦しい日々だった」と振り返り、国に早急な対応を求めたと報じていた。


 この最高裁決定は主文だけを読むと、条文の文言に忠実に解釈して父子関係を認めただけのように見える。


 しかし、補足意見と反対意見を読むと相当な議論がなされていたことが窺われる。


 議論のポイントは、家族関係を血縁関係として捉えるか、愛情をもって結合する集団と捉えるかの違いのように思われる。


 家族を血縁関係と捉えると、性別変更した男性は子供を産めないから、父子関係はないということになるが、愛情をもって結合する集団と捉えるならば、父子関係を認める方向になるであろう。


 最高裁の補足意見と反対意見は、条文解釈が絡んでいるので読みづらいところもあるが、なかなか興味深い議論がなされているように思う、



2013年12月11日(水) シミュレーションはしなかったのか

 日経(H25.12.11)社会面で、猪瀬東京都都知事が医療法人徳洲会グループから5千万円を受領した問題で、都議会総務委員会で、知事に対する集中質疑を行ったと報じていた。


 質疑で猪瀬知事は、資金を保管していたという妻名義の貸金庫に関し「(受領の)前日に契約した」と答弁をしたそうである。


 これでは、事前に大金を受領することを予期していたことになる。


 しかし、以前、知事は「(5千万円を)借りた際、大金にびっくりし、自宅に置いておくわけにいかない。すぐ貸金庫にしまわなければと思った」などと答弁していたはずであり、言っていることが支離滅裂である。


 汗をダラダラと垂らし、おどおどして答弁する姿は、もはやお笑い劇場の様を呈している。


 事前に、弁護士によるシミュレーションはしなかったのだろうか。


 あるいは、あまりのでたらめさに、弁護士も「記憶どおり答弁してください。」と言って、さじを投げたのかもしれない。



2013年12月09日(月) 「2ちゃんねる」に殺害予告の書き込み

 日経(H25.12.9)夕刊で、「2ちゃんねる」に弁護士に対する殺害予告を書き込んだとして、警視庁、大分県の男子高校生を脅迫容疑で書類送検したと報じていた。


 この高校生はスマートフォンから書き込みしたようであるから、身元がばれて当然であろう。


 高校生なのだから、これに懲りてそのようなばかなことは止めてくれればいいのだが。



2013年12月06日(金) 起訴後の捜査

 日経(H25.12.6)社会面で、「東京地検立川支部は、1995年に八王子市のスーパーで女子高生ら3人が射殺された強盗殺人事件の実行犯を知る可能性があるとされ、カナダから移送された中国籍の何亮容疑者を旅券法違反罪で起訴した。警視庁は今後、八王子スーパー事件についても事情を聴く方針。」という記事か載っていた。


 しかし、旅券法違反で起訴した以上、その後の取り調べは原則として許されない。


 任意であれば事情聴取は可能であるが、容疑者は取り調べに応じる義務はない。


 捜査側の八王子スーパー事件を解決したいという熱意は分かる。


 しかし、カナダから移送したことは無理な捜査というしかなく、ほとんど事情は聴けないと思う。



2013年12月05日(木) 「公然」と言えるのか?

 日経(H25.12.5)夕刊で、モスバーガー店の常連客だった男性が、従業員に「ストーカー」と呼ばれて名誉を傷つけられたとして店側に慰謝料500万円の支払いなどを求めた事件の控訴審で、東京高裁は名誉毀損を認めて10万円の支払いを命じたという記事が載っていた。


 記事によると、男性は従業員の女性ら数人と知り合い、複数回、一緒に食事に出かけるなどしたため、従業員の間で「ストーカー」と呼ばれるようになったとのことである。


 これについて、東京高裁は、一審の請求棄却の判断を覆し、モスフードサービスの賠償責任を認めた。


 しかし、名誉棄損は「公然と事実を摘示」しないと成立しないところ、従業員間で「ストーカー」と呼んだだけで「公然」と言えるか疑問が残るように思う。(但し、他に伝播することが予想される場合には、公然性の要件は充たされるが。)



2013年12月04日(水) 非嫡出子と嫡出子の相続分を平等とする民法改正案が成立

 日経(H25.12.4)夕刊で、非嫡出子の遺産相続分を嫡出子の半分とする規定を削除する民法改正案が4日の参院本会議で与党や民主党などの賛成多数で可決、成立すると報じていた。

 
 今年9月の最高裁決定で、非嫡出子の規定は法の下の平等を定めた憲法に違反すると判断したのであるが、その判断の効力は当該訴訟等にしか及ばないとされている(個別的効力)。


 ただ、行政はその最高裁の判断を尊重した行政を行い、国会は最高裁の判断を尊重し、その内容に応じた法改正を行うとされており、それにより三権分立の微妙なバランスが取れることになる。


 ただ、最高裁の判断に従う法的義務まではないから、国会が最高裁の判断を受け入れず、法改正しないことも可能であり、その場合には、三権分立の意義について深刻な問題が生じるところであった。


 自民党は最高裁の判断に批判的という報道もされていたから、法改正できるか心配していたが、最終的には最高裁の判断を尊重した法改正を行うことができ、よかったと思う。



2013年12月03日(火) 被疑者と面会時の撮影等は違法か

 日経(H25.12.3)夕刊で、弁護人が留置場等で被疑者など面会する際、面会室に携帯電話やカメラを持ち込み、施設側とトラブルになった事例が30都道府県で95件に上るという記事が載っていた。


 電子機器持ち込みの目的は、取調官による暴行などの不当な取り調べや、体調の異変などを映像や音声で記録するためであり、日弁連は「機器の持ち込みを制限することは違法だ」と主張している。


 これに対し、法務省は「撮影などは面会とはいえず、認められない」という立場である。


 不当な取り調べを立証するために電子機器を持ち込むことは、目的としては正当であると思うが、まったくの自由というわけにはいかないかも知れない。


 すでに、撮影機器の使用を巡っては、福岡拘置所小倉拘置支所で撮影画像を施設側に消去させられたとして、弁護人が国家賠償訴訟を起すなど、いくつか国賠訴訟が起こされており、その判断が注目される。



2013年12月02日(月) 会社法改正で「監査等委員会設置会社」を設ける

 日経(H25.12.2)法務面で、会社法改正により、取締役会と監査役会のある機関形態と、委員会設置会社の機関形態とは別に、「監査等委員会設置会社」を設ける方針という記事が載っていた。


 「監査等委設置会社」は、委員会設置会社から、指名委員会と報酬委員会を除いたような制度のようである。


 しかし、これまでの機関形態以外にあえて新しい機関を作る必要性があるのだろうか。


 そもそも、適切な企業統治のための特効薬的な機関形態はない。


 実際、投資家は、「形式では判断しない。経営トップ層との対話で実態の把握に努めている」「投資家へのアピールのために形式を整えてほしくない」と述べており、新しい機関形態へのニーズは高くない。


 むしろ、いろんな機関形態を作ることは混乱を招くだけであり、望ましいことではないと思う。


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