2013年11月29日(金) |
社外取締役の設置義務化は見送り |
日経(H25.11.29)夕刊で、政府は、企業統治の強化策を盛り込んだ会社法改正案を決定したが、社外取締役の設置義務付けを見送ったという記事が載っていた。
社外取締役が不必要とは思わない。社外取締役には第三者的立場から会社を監督することが期待できるという重要な意義があり、積極的に活用することが望ましいと思う。
しかし、社外取締役でも取締役会で報告を聞くだけで、あまり存在意義がないケースもあるのではないだろうか。
それよりも、会社のことを一番知っているのは社内取締役であり、それで十分という考え方もあり得ると思う。
要するに、社外取締役の設置は会社の自治に委ねるべきであり、義務化までするのは行き過ぎではないだろうか。
ただ、付則で、法施行から2年後に再検討すると明記することになるそうであるから、義務化への流れは止まらないようである。
2013年11月28日(木) |
参議院選挙に違憲無効の判断 |
日経(H25.11.28)社会面で、「1票の格差」が最大4.77倍だった7月の参院選について、広島高裁岡山支部(片野悟好裁判長)は、選挙区の定数配分は「違憲」と判断し、同選挙区の選挙結果を無効とした。
ちなみに、前回の衆議院選挙でも、広島地裁岡山支部は違憲無効と判断しており、裁判長は同じである。
この裁判長は、一票の格差の基準を厳格に考えているのだろう。
この裁判長に対し、「この裁判官は、団塊の安保世代だから左翼的である」という批判がある。
しかし、現在の高裁の裁判長はほとんどが同世代だから、その世代が左翼的であるなら、高裁レベルでは違憲無効が相次がないとおかしいはずであるが、実際はそうはなっていない。
むしろ、高裁の裁判長は保守的な人が多い気がする。
その点はともかく、岡山選挙区と鳥取選挙区との格差は3.27倍だったから、最高裁の基準からすれば違憲無効とは言い難い。
それため、最高裁では破棄されることになるであろう。
2013年11月27日(水) |
猪瀬知事の公表した借用書の疑問点 |
日経でなくネットニュース(H25.11.27)で、東京都の猪瀬直樹知事が大手医療法人「徳洲会」から5,000万円を受け取っていた問題で、猪瀬知事が借用書を公表したことを報じていた。
ところが、その借用書があまりに簡易であり、かえって疑惑を増しているようである。
指摘されているのは、貸主の署名がない、普通は2通作成するはず、印紙が貼られていない、猪瀬知事の印鑑(実印)がない、5,000万円が無利子、無担保というのは不自然などである。
しかし、これらの問題があっても契約が無効になるわけではない。
しかも、実際に、貸主の署名がなく、1通しか作成しない借用書はよくある(銀行との金銭消費貸借契約は通常そうなっている。)。
また、印紙が貼られていなかったり、印鑑が実印でない契約書は普通に見られる。
他方、日本では、署名だけで印鑑がない契約書というのはあまり見ないし、貸金額が5000万円で無利子、無担保というのも異例である。
これらの点は不自然といえる。
ただ、それ以上に不自然なのは返済期限が記載されていないことである。
もちろん、返済期限を記載していなくても、「期限の定めのない債務」として有効である。
しかし、金額が5000万円という大金である。
そうすると、貸した側としては、いつ返してもらえるかは重大な関心事であるのが普通であり、返済期限がないのは極めて不自然というしかない。
2013年11月26日(火) |
大阪地裁が遺族補償年金の規定は違憲と判断 |
日経(H25.11.26 )社会面で、地方公務員災害補償法に基づく遺族補償年金をめぐり、受給資格について、男性にだけ年齢制限の規定があるのは法の下の平等を定めた憲法に違反するとして、公立中学教諭の妻(当時51)を亡くした男性が年金不支給処分の取り消しを求めた訴訟で、大阪地裁は、規定は「違憲」として同基金の決定を取り消したと報じていた。
規定では、支給対象は、夫を亡くした妻か、妻の死亡時に55歳以上の夫となっており、これが法の下の平等に反するというものである。
大阪地裁の判断は一見説得的であるが、別の考え方もあり得るのではないかと思う。
というのは、遺族補償年金の趣旨が「残された配偶者の生活補償」であるとするならば、55歳になると給料は横ばいどころか下降することが通常であるから、残された配偶者が55歳以上の場合に限って受給資格があるというのは不合理とはいえないからである。
問題は、残された配偶者が女性の場合には受給資格に年齢制限がないことである。
しかし、大阪地裁も認定しているように、今日では共働きが通常の家庭となっている。
そうだとすれば、残された配偶者が女性の場合にも、55歳以上であることを要件とすることによって差別を解消すべきであり、男性も、女性の場合と同様に無条件に受給資格を得させることによって差別を解消する必要はないということになる。
このように考えると、今回の大阪地裁の判断が間違いとは言わないが、「当たり前の判断」とまでは言えないように思う。
2013年11月25日(月) |
検察は放置しないのではないか |
日経(H25.11.25)社説で、猪瀬東京都知事が医療法人徳洲会グループから5千万円を受け取っていた問題について書いていた。
社説の趣旨は、猪瀬知事は「個人的な借り入れだった」と釈明しているが、本当にそうだったのか説明責任を果たせというものであった。
テレビのニュースを見ても、猪瀬知事はマスコミの追及にしどろもどろの対応であった。
正直にしゃべろうとは思うものの、5千万円が選挙のためだったとは口が裂けてもいけないため、そのような対応になるのだろう。
根は善人と言うことだと思う。
ただ、5千万円の現金の存在という、はっきりした証拠がある以上、検察は放置しないのではないか。
いずれ検察からの事情聴取もあると思われるが、そのときは「根が善人」だけに、隠し事はできず、すべて正直に話すことになると思う。
2013年11月22日(金) |
バランスの取れた制度設計 |
日経(H25.11.9)社会面で、政府は「ビッグデータ」と呼ばれる膨大な個人情報の利活用に関する法整備に着手すると報じていた。
匿名化した個人情報なら本人の同意がなくても第三者に提供できるよう法律で定め、ビジネスなどでの活用を促すとともに、運用が適正か監視する第三者機関も設け、消費者のプライバシー保護への不安を和らげるとのことである。
ビックデータの利用に過度な制限をかけず、他方、運用を監視する第三者機関を設置するというバランスのとれた制度設計だと思う。
それをみると、秘密保護法案の制度設計はかなり見劣りがする。
現在の国家公務員法の守秘義務違反では懲役1年以下とあまりにも軽く、国家の重大な秘密漏えいについて、刑の上限を懲役10年以下とする方向は間違いでないだろう。
しかし、運用を監視する第三者機関がなく(「第三者的」ではだめであろう)、適正な運用を保障する制度になっていないというところが問題なのだろうと思う。
2013年11月21日(木) |
「一票の格差」訴訟 最高裁は「違憲」とまでは判断せず |
日経(H25.11.21)1面で、「1票の格差」が最大2.43倍だった昨年12月の衆院選は違憲だとして、選挙無効を求めた事件で、最高裁大法廷は、定数の「0増5減」などを評価して「違憲」とまではせず、「違憲状態だった」との判断を示したと報じていた。
この判決について、細田自民党家事長代行は、「憲法違反ではないが、一票の格差が2倍を超えないように注意しろということだ」と判決文を解説したそうである。
しかし、それは判決の読み方を誤っている。
判決は、国会と司法の関係を述べたうえで、「違憲状態になっている旨の司法の判断がされれば、国会はそれを是正する責務を負う」と明言しているからである。
高裁レベルでは違憲無効判決もなされたのに対し、最高裁の判断は何となく「大人のバランス感覚」的な感じがする。
ただ、国会と司法の関係、及びそこにおける国会の義務について明らかにしたという点では評価できると思う。
2013年11月19日(火) |
暴力団排除条項の行き過ぎ |
日経でなく、朝日新聞(H25.11.19)社会面で、大手損保会社の間で、自動車保険の約款に暴力団排除条項を盛り込む動きが広がっているという記事が載っていた。
暴力団組員と分かれば、その時点で契約を解除することになるようである。
しかしそうなると、組員が事故を起こした場合、被害者は報われないことになる。
自賠責保険は支払われるが、それでは被害者補償としてまったく不十分だからである。
最近の契約書では暴力団排除条項がほとんど入っているが、行き過ぎを懸念していた。それが現実化したというところである。
損保会社は、保険金詐欺を警戒しているのかもしれないが、それは別に対処すべきことであろう。
2013年11月18日(月) |
被害者や遺族の相談を受け付ける弁護士のネットワークが発足 |
日経(H25.11.18)社会面で、弁護士が被害者や遺族の相談を受け付ける全国初のネットワーク『学校事件・事故被害者全国弁護団』が発足し、弁護士約60人が加入という記事が載っていた。
いじめや体罰の問題は、法律を適用してすぐに解決というわけにはいかない。
それだけに弁護士にとっても対応は難しいが、このようなネットワークをつくって情報を共有することはとてもいいことだと思う。
2013年11月15日(金) |
土葬は法律上は禁じられていないが |
日経(H25.11.15)1面で、宮内庁は、天皇、皇后両陛下について江戸時代前期から続いてきた土葬を火葬に変更すると発表したと報じていた。
このニュースを聞いて、天皇陛下の場合は別にして、一般的には土葬は禁じられているのではないかと思う人も多いかも知れない。
しかし、法律上は土葬を禁じていない。
ただ、条例で土葬禁止地区を設けている自治体はある。
また、条例で土葬を禁じていなくても、法律で「死体は墓地に埋葬しなければならない」とされており、墓地側は通常は土葬を許可しないであろうから、実際上は土葬できないことがほとんどということになる。
ただ、北関東で、土葬の墓地で境界争いが起き、裁判になったことがあると聞いたことがあるから、土葬の風習が残っているところもあるようである。
2013年11月14日(木) |
弁護士人生の最後が刑務所というのは情けない |
日経(H25.11.14)社会面で、国有地の架空取引事件で、警視庁捜査2課は、本田洋司弁護士(80)ら3人を詐欺容疑で再逮捕したという記事が載っていた。
本田容疑者は「詐欺の片棒を担いでしまった」と供述して、犯行を認めているとのことである。
80歳の高齢だから、弁護士の増加とはあまり関係ないと思う。
経歴も「第二東京弁護士会副会長 日弁連常務理事 関弁連副理事長」とあるから、そのころはまじめにやっていたのだろう。
おそらく刑務所の中で人生の最期を迎えることになるのだろうが、なぜ「詐欺の片棒を担ぐ」ようなことをしたのだろうかと思う。
2013年11月13日(水) |
諫早湾開門差止め 矛盾する判断をさせた原因は国? |
日経(H25.11.13)社会面で、諫早湾干拓事業を巡り、長崎地裁は、潮受け堤防排水門の開門調査の差し止めを命じる仮処分決定をしたという記事が載っていた。
この仮処分決定とは別に、福岡高裁は、今年12月20日までの開門を命じ、その判決は確定しているため、相反する司法判断が下されたことになる。 そのため、「事態の混迷が深まることは必至となった。」と報じている。
しかし、その原因は国にあるように思われる。
決定文では次のように認定している。
「福岡高裁の確定判決は、潮受け堤防の閉め切りを違法としたが、その枢要な根拠は『各排水門を開放しないことで漁業被害を受けている』との事実であった。しかし、今回の仮処分の中では国がこの事実を主張しなかった。従って今回の決定ではこの事実を認めることができない。」
つまり、国が開門に有利な証拠を提出しなかったため、開門差し止めの主張が認められたということのようである。
そうであれば、司法が矛盾する判断をした原因を作り出したのは国ということになるだろう。
2013年11月11日(月) |
マスコミ対応の重要性 |
日経でなくネットニュース(H25.11.11)で、タレント板東英二氏が、7年間で約7500万円の申告漏れを指摘された件で、謝罪会見を開いたと報じていた。
この記者会見には弁護士が同席し、「報道されているような架空外注や架空貸し付けにあたることは一切なかった」ときちんと説明している。
そうすると、脱税と言っても、経費として認められなかっただけであり、悪質さはなかったようにと思われる。
それゆえ、記者会見での想定問答集を作るなどして準備していれば、結果は違ったものになったはずである。
ところが、板東氏は、会見で「20年間にわたり植毛しており、申告漏れした金額の一部は植毛にあてていた」と説明するだけで、その金額も、それ以外の申告漏れの内容も説明しなかったようである。
そのため、失笑を買っただけで、何のために記者会見を開いたのか分からないような結果になった。
会社の不祥事やタレントの場合は、マスコミ対応にはとくに注意すべきであり、弁護士もそれをサポートできることが必要であろうと思う。
2013年11月08日(金) |
「法律以前の問題」とは? |
日経でなくネットニュース(H25.11.8)で、止まらない食材の虚偽表示問題で、森雅子消費者担当大臣が「法律以前の問題だ」と述べたと報じていた。
しかし、「法律以前の問題」とは何だろう。
「違法ではあるが、それ以前に道徳的に問題である」ということではないだろう。
違法ならば、行政はそれに対し指導や是正をさせる必要があるからである。
それゆえ、「法律以前の問題」とは、「違法ではないが道徳的でない」ということになる。
しかし、道徳に反するに過ぎないものまで行政が具体的指導することはできないはずである。
しかも、虚偽表示問題では、景品表示法に反するケースもあるように思われるから、単に道徳的でないということでは済まないだろう。
要するに、「法律以前の問題」とは非常にあいまいな表現ということである。
問題は、そのようなあいまい発言により、行政の責任をあいまいにしたまま、事実上関係団体を指導するというやり方である。
むしろ、法整備すべきところはきちんとして、この問題の解決に努めることが大事ではないかと思う。
2013年11月07日(木) |
正当な調査と違法な調査 |
日経(H25.11.7)社会面で、ガス会社の契約者情報の不正入手事件で、不正競争防止法違反容疑で逮捕された調査会社の男らが、探偵業者の依頼を受け、昨年11月に逗子市で起きたストーカー殺人事件の被害女性の住所を逗子市役所から入手したとみられることが分かったと報じていた。
このような事件が起きても、いまでもネットには、調査会社が「携帯電話番号から名前・住所を調べます」などと普通に広告している。
おそらく、このような業者のほとんどが、違法に収集した情報を提供している思われる(調査会社が違法性を認識しているかどうかは分からないが)。
他方、弁護士には、弁護士会を通じた照会が法律上認められている。
もちろん、この場合には、照会の理由を記載して、それを弁護士会が認める必要があり、むやみに照会できるわけではない。
しかし、最近は個人情報保護を理由に照会に応じない会社が多くなってきており、問題になっている。
例えば、ソフトバンクは、携帯番号から、登録住所を照会しても一切応じていない。
このように、個人情報を過度に強調して正当な照会にまで応じないとなると、ますます違法な調査が跋扈することになりかねないと思う。
それゆえ、正当な理由のある照会に対しては、照会に応じる義務をもう少し明確化すなどの法整備した方がよいのではないだろうか。
2013年11月06日(水) |
成形肉の焼いたものをを「ステーキ」と表示してはいけない? |
日経(H25.11.5)3面で、食材の虚偽表示が全国の著名なホテルや百貨店に拡大しており、一部は景品表示法が禁じる「優良誤認」に当たる可能性もあり、消費者庁などが調べていると報じていた。
その記事の中に、「景品表示法に抵触する可能性が高いのは牛脂を注入した加工肉を『ステーキ』と称して提供するケースであり、消費者庁はホームページ上で、加工肉をステーキと表示してはならないと説明している」と書いていた。
「え、そうなの?」と思って調べたら、確かに書いていた。
すなわち、消費者庁のホームページでは、「『ステーキ』と表示した場合、この表示に接した一般消費者は、『生鮮食品』の『肉類』に該当する『一枚の牛肉の切り身』を焼いた料理と認識します。」「しかし、牛の成形肉は『生鮮食品』の『肉類』に該当する牛の生肉の切り身ではありませんから、牛の成形肉を焼いた料理を「ステーキ」と表示することは、優良誤認表示に該当します。」としていた。
しかし、「ステーキ」の表示を見て、一般消費者が、『生鮮食品』の『肉類』に該当する『一枚の牛肉の切り身』を焼いた料理」と認識することはないのではないか。
単に「肉を焼いたもの」という認識程度あろう。
それゆえ、成形肉の焼いたものを「ステーキ」と表示しても、優良誤認表示には当たらないと思う。
そもそも、優良誤認表示かどうかは、表示内容全体から一般消費者が受ける印象・認識を基準にすべきであるとされている。
ところが、消費者庁は、行政上の区分に過ぎない、牛脂注入加工肉は「加工食品」としての「食肉製品」であり、「生鮮食品」の「肉類」には該当しないという基準を、優良誤認表示の判断基準に持ち込んでいるところに誤りがある。
もちろんここで言いたいのは、牛の成形肉を焼いた料理を「ステーキ」と表示しても、景品表示法が禁止する優良誤認表示に該当しないであろうということだけであり、道義的に牛の成形肉を使っていることを表示した方が望ましいかどうかは別問題である。
2013年11月05日(火) |
自動車運転死傷行為処罰法案を衆議院で全会一致で可決 |
日経(H25.11.5)夕刊で、衆院本会議で、飲酒などの影響で交通事故を起こした場合に15年以下の懲役に罰則を引き上げる自動車運転死傷行為処罰法案を全会一致で可決したと報じていた。
現行の危険運転致死傷罪の最高刑は懲役20年だが、「正常な運転が困難な状態」という要件があり、立証のハードルは高い。
そのため、飲酒運転などによって重大な結果を引き起こしても、通常の自動車運転過失致死傷罪(懲役7年以下)を適用するしかないケースがあった。
今回の改正はその量刑の差を埋めるものである。
自動車事故では一挙に何人もの方が犠牲になることがあり得るし、飲酒や薬物使用は事前に回避することが可能なのであるから、単なる過失犯とは言えず、厳罰化はやむを得ないと思う。
日経(H25.11.1)社会面で、秋の園遊会で、招待された山本太郎参院議員が天皇陛下に手紙を手渡したという記事が載っていた。
これについて、天皇の政治利用であると批判の声が上がっている。
私も政治利用に当たると思うが、それはさておき、そもそも天皇の政治利用を禁止する明文規定はない。
手元の憲法の基本書を読んでも、「天皇の政治利用禁止」については書いていなかった。
ただ、憲法は「天皇は国政に関する権能を有しない」(4条1項)と規定している。
そして、国会議員や公務員は憲法尊重義務がある(憲法99条)。
そうすると、国会議員や公務員などが、天皇に対し、国政に影響を及ぼすような行為をするように促すことは禁止されているとみるべきなのであろう。
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