今日の日経を題材に法律問題をコメント

2013年08月30日(金) 裁判では証拠が重要

 日経(H25.8.30)ネットニュースで、セブンイレブンのフランチャイズ加盟店が、公正取引委員会が是正を求めたにもかかわらず、弁当の値下げ販売を制限をしたのは不当だとして損害賠償を求めた事件で、東京高裁は、同社に1140万円の支払いを命じたと報じていた。


 同じような訴訟は福岡でも起こされており、福岡では一審は加盟店の言い分が認められたが、二審では逆転敗訴となっている。


 この種の訴訟では、値下げしないように本部が指導しただけなのか、それとも強制したのかという事実認定が主な争点になっている。


 しかし、値下げをしないように指導したのか、それとも強制したのかの違いは微妙である。


 ただ、強制されたという立証責任は加盟店側にある。


 それゆえ、加盟店側はハンデをつけられているわけであり、本部とのやり取りを録音でもしていない限り、勝訴するのは困難な面がある。


 冒頭の記事で、加盟店側が勝訴したのは、公正取引委員会の是正命令という、証拠の後押しがあったからであろう。


 要するに、裁判では。裁判官の良識に期待すべきでなく、せっせと証拠を収集することこそが重要である。


 その証拠の提出により、裁判官の良心は呼び出されるのである。



2013年08月29日(木) 弁護士が9億円以上を着服

 日経(H25.8.29)社会面で 交通事故の賠償金など9億円以上を着服したとして、業務上横領罪などに問われた元弁護士福川律美被告に対し、岡山地裁は、懲役14年(求刑懲役15年)を言い渡したと報じていた。


 一時的に流用して後に返済したとしても横領罪は成立するから、9億円全額を使ったわけではないかもしれない。


 それでも巨額である。


 しかも、その使途がよくわからない。


 裁判では、「依頼者らから生活費や、後に支払われる賠償金の立て替えを求められ、安易に支払いを続けるうちに着服するようになった」と述べたようであるが、なぜ生活費や、賠償金の先払いする必要があったのかが不明である。


 横領され、その動機さえも分からないのでは、被害者はたまったものでない。


 弁護士会や警察はもう少し早く動けなかったのだろうか。



2013年08月28日(水) 自動走行車の時代の賠償責任

 日経(H25.8.28)夕刊で、日産自動車が、ドライバーが運転操作をしなくても走る「自動走行車」を2020年までに発売すると発表したという記事が載っていた。


 自動走行車とはいえ、交通事故はあり得るだろう。


 しかし、ドライバーが運転しないのだから、交通事故の被害者はだれに損害賠償請求するのかが問題になってくる。


 現行法に照らせば、まず自動車の保有者は責任を負う。


 また、自動走行車でも、運転席はあり、手動の機能もついているだろうから、運転者の過失ということは観念できる。


 そのため、当該事故ごとに運転者の過失の認定をすることになるであろう。


 現在でも、運転者については、前方注視義務違反などの過失の認定をしているから、過失の有無の認定が必要という点では、自動走行車になっても変わらないであろう。(但し、運転者が過失責任を問われるケースは少ないだろうが。)


 また、自動走行車の構造に問題があった場合には、メーカーの責任が問題になる。

 ただ、交通事故の被害者が、自動走行車の構造に瑕疵があったことを立証することは負担であるから、メーカーを訴えるケースは少ないのではないだろうか。(運転者側がメーカーを訴えることはあり得る。)


 このように考えると、自動走行車の時代になっても、事故の責任追及の構造は大きくは変わらないように思われる。



2013年08月27日(火) 手続の適正が重要

 日経(H25.8.27)社会面で、松江市教育委員会が市立小中学校に漫画「はだしのゲン」の閲覧制限を求めた問題で、市教委は、制限の要請には「手続きに不備がある」として撤回することを決めたと報じていた。


 この漫画を小中学生の自由な閲覧に委ねていいのかについては議論があるようである。しかし、市教委がその議論に踏み込まずに、「手続が適正でなかった」としたのは、裁判所の思考方法に似ていると思った。


 会社の内紛で、株主総会決議や取締役会決議の有効性が問題になることがしばしばある。


 その場合、当事者は、自分の言い分がいかに正しいか、相手がいかに悪いかを訴えるのであるが、裁判所はそこには着目しない。


 裁判所は、会社法、定款等に照らして、招集手続等をきちんと履践したかどうかを判断するのである。


 「はだしのゲン」の問題で、市教委が、閲覧制限が適切か否かに踏み込まずに、手続の問題としたのはそれに似ているが、この場合はいわば大人の知恵ということになるのだろう。



2013年08月26日(月) 因果関係が問題になる

 日経(H25.8.26)法務面で、カネボウ化粧品の「美白化粧品」問題で、製造物責任法に基づく提訴や株主代表訴訟などが起きる可能性があり、会社の責任だけでなく、兆候となる情報を認識していながら、適切な対応をしていなかった取締役の善管注意義務違反も問われるかもしれないとしていた。


 それはその通りだが、その前提として、「美白化粧品」と白斑症状との因果関係が十分解明されていない点が気になる。


 カネボウは、「症状が確認できれば、治療費や医療機関への交通費、慰謝料を負担する」としているので、現時点では因果関係はあまり問題視されていないようである。


 しかし、仮に高額の損害賠償請求がなされれば、会社も争うであろうし、その場合には因果関係は重要な争点となるであろう。



2013年08月23日(金) 被害者の特定を避けるために、被告の氏名を伏せる

 日経(H25.8.23)社会面で、教え子にみだらな行為をしたとして、児童福祉法違反に問われた元中学教諭の男性の初公判で、宇都宮地裁は、被害者の特定を防ぐため、被告の名前や住所を伏せて審理していたという記事が載っていた。


 被告の名前が分かると、被害者まで特定されてしまうということらしい。


 ただ、憲法82条は裁判の公開を規定しているので、被告の名前等を伏せると裁判の公開原則に反するのではないかということが一応問題になる。


 この点、裁判の公開の趣旨は、裁判の公正な運用の実現と、国民の監督の保障である。


 しかし、被告の名前を伏せるといっても、起訴状等には名前は記載されており、人定質問もきちんとなされているようである。


 そうすると、口頭で被告の名前を伏せたとしても、それだけで裁判の公正を欠いたり、国民の監督を阻害するとまではいえないであろう。


 それゆえ、名前を伏せる必要性がある場合に、被告の住所と名前を伏せて審理したとしても、とくに問題はない。


 ただ、裁判の公開は憲法上の要請であることを考慮すると、被告の名前を伏せる必要性は厳格に審査すべきであろうと思う。



2013年08月22日(木) 最高裁判事の政治的発言

 日経(H25.8.22)4面で、菅義偉官房長官が、前内閣法制局長官の山本最高裁判事が「憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認は難しい」「実現には憲法改正が適切」と発言したことについて、「違和感を感じる」と批判したという記事が載っていた。


 本人は、法理論を述べただけのつもりと思うが、現在の状況下では政治的影響のある発言と思う。


 最高裁判事が政治的発言をしたとしても違法ではないが、これまで最高裁判事はそのような発言は差し控えていた。


 三権分立の理念からして、望ましくないからであろう。


 その意味では、最高裁判事が政治的発言をすることには違和感を感じた。(管官房長官は、「集団的自衛権の行使容認は難しい」と述べたことに違和感を感じたのかもしれないが。)



2013年08月21日(水) スマホ決済の普及と問題点

 日経(H25.8.21)社説で、スマホにカードの読み取り装置をつけるだけでクレジット決済ができる「スマホ決済」について、論じていた。


 社説の論旨は、「安全性の問題が心配であるが、マイナス点ばかり心配し、新技術を使わなければ、販売革新は起こらないのであり、スマホ決済を上手に安全に使う工夫と対策が求められている。」ということであった。


 スマホ決済では、スマホ決済会社が包括代理店となってクレジットカード会社と契約し、個々の加盟店は決済会社と加盟店契約することになる。


 これにより、これまで加盟店になれなかった個人事業主でもカード決済できるようになるから、屋台でクレジットカードが使えるようになるかもしれない。


 また、スマホ決済の手数料は、加盟店がクレジットカード会社に支払う手数料よりもかなり安い。


 このように、加盟店にもカード利用者にもメリットがあり、今後スマホ決済が普及することは間違いないであろう。


 その場合の問題として、社説では、スマホ決済のセキュリティを問題にしていた。


 それはその通りだが、それ以上に、悪質な加盟店による消費者被害が増える危険があるように思う。


 クレジットカードを利用した悪質商法に対しては、これまではクレジットカード会社の加盟店審査により、ある程度チェックできていた。(それでも、加盟店審査がずさんであると批判されているが。)


 スマホ決済では、そのチェック機能が弱くなるであろうから、悪質商法が広がる可能性は高い。


 その危険性をいかに排除するかが今後の課題であろうが、当面は、各自が自衛するしかないのかもしれない。



2013年08月20日(火) 分限免職処分を取り消し

 日経(H25.8.20) 社会面で、旧社会保険庁の廃止に伴い職員525人が分限免職となった問題で、人事院は、不服申し立てをしていた10人の免職処分を取り消したという記事が載っていた。


 分限免職は、民間では解雇に相当するから、非常に重い処分である。


 分限免職の対象者のほとんどは、過去に懲戒処分を受けた経歴のある者であり、年金記録の覗き見が多かったようである。


 しかし、過去に懲戒処分を受けたといっても、その内容はいろいろであろうし、評価できる面を持っている人もいたはずである。


 それを、過去に懲戒処分を受けたというだけで一律に分限免職とすることは少々乱暴のように思う。


 会社側から、「従業員を懲戒解雇したい」という相談を受けた場合、処分として解雇は適切か、証拠はあるのかなど非常に慎重に検討する。


 それに比べて、社保庁の分限免職処分は慎重さに欠けたように思う。



2013年08月19日(月) 法律事務所のセキュリティ

 日経(H25.8.19)ネットニュースで、名古屋市の法律事務所の壁に穴が開けられ、現金約400万円と、貴金属類(約100万円相当)の窃盗被害にあったと報じていた。


 通常、法律事務所には現金は置いていない。


 そのためか、法律事務所はセキュリティが甘いところが多いと思う。


 この事務所には、たまたま400万円と100万円相当の貴金属があったようであり、不運というしかない。



2013年08月16日(金) 法廷通訳

 日経(H25.8.16)夕刊で、刑事裁判の「法廷通訳人」にアンケートを実施したところ、「裁判員裁判制度導入後に負担が増えた」という回答が多かったという記事が載っていた。


 確かにそうだろうと思う。


 裁判員裁判では集中審理を行うが、その場合の法廷通訳人の負担は大きい。


 例えば、証人尋問では、検察官の質問を通訳し、被告や証人の回答も通訳する。


 検察官の質問が終わると今度は弁護人の質問になり、それについても質問と回答を通訳する。


 要するに、ずっと通訳しているわけである。


 しかも、被告人質問や証人尋問だけでなく、起訴状、冒頭陳述、論告求刑、弁論なども訳さなければならない。


 それを考えると、もっと報酬を増やしていいと思う。


 実は、かなり以前は、「それは多すぎでしょ」と思うくらい通訳人の報酬は高かった。


 ところが、ある時期に切り下げがあり、通訳人からは不満が出たが、私としては適正ではないかという感覚であった。


 ただ、裁判員裁判は別であり、その負担を考えると、切り下げた通訳人の報酬基準では安く、もっと報酬を増やすべきであると思う。


 その反面、通訳能力のばらつきがかなりあり、それは正すべきである。


 その場合、すでに議論されている資格認定制度を設けることもいいが、ただ、資格認定試験の際に、刑事事件の法的知識だけでなく、発音を重視すべきであろうと思う。


 以前、日本人の大学教授が法廷通訳人だったときに、後で被告人から「通訳人が何を言っているのかさっぱり分からなかった」と文句を言われたことがあった。


 その被告人は日本語ができたので、実害はなかったが・・。



2013年08月15日(木) また成年後見人の弁護士が横領

 日経(H25.8.15)社会面で、 静岡地検は、成年後見人として管理する金を着服した中川真弁護士を業務上横領罪で在宅起訴したと報じていた。


 情けないことに、弁護士によるこの種の不祥事が絶えない。


 静岡県弁護士会は中川被告を業務停止1年10カ月の懲戒処分としており、これは横領した金額の全額を弁済したことが考慮されたのかも知れない。


 しかし、弁護士の横領行為は、成年後見制度への信頼を失わせるものであり、もっと厳しい処分をすべきではなかったかと思う。



2013年08月13日(火) 会社側から従業員に対する損害賠償請求

 日経(H25.8.13)社会面で、ステーキレストラン店で冷凍庫内に入った姿の写真をネットに掲載した問題で、写真を掲載した元店員2人に対し、会社側が、損害賠償請求を検討しているという記事が載っていた。


 従業員の落ち度で会社が損害を被ったときに、「その従業員に対して損害賠償請求できないか」という相談を受けることがある。


 しかし、単なる失敗でいちいち損害賠償が認められれば、従業員は安心して労働できない。


 それゆえ、裁判例では、故意や重大な過失があるときに限って従業員の責任を認めたり、損害賠償責任が認められる場合でも、過失相殺などにより賠償額を大幅に減額するなどして、責任の軽減を図っている。


 しかし、冷凍庫内に入った姿を写真に撮ってネットに掲載することは、故意であるから、損害賠償請求自体は認められるだろう。


 もっとも、このステーキ店はその後閉店したようであるが、ネットに写真を掲載したことと閉店の間に因果関係を認めるのは難しい。


 そのため、たとえ裁判をしたとしても、認められる賠償金額はそれほど多額にはならないのではないだろうか。



2013年08月09日(金) 集団的自衛権と刑法の正当防衛との類似性

 日経(H25.8.9)3面で、内閣法制局長官に外務省出身の小松一郎氏が就任したと報じていた。


 小松氏は集団的自衛権の肯定論者であり、著書で、自国と密接な関係にある同盟国への攻撃に反撃する集団的自衛権を「刑法でいえば他者のための正当防衛にあたる」と位置づけ、「法制度としては常識的なもの」としているようである。


 確かに、刑法は、他人の権利に対して急迫不正の侵害があった場合に、直接侵害を受けていない者による正当防衛を認めている。


 そして、集団的自衛権とは、他の国家が武力攻撃を受けた場合に、直接攻撃を受けていない第三国が共同で防衛を行う権利である。


 そうであれば、一般的法理論としては、正当防衛と同じ要件の下で集団的自衛権を肯定することは可能であると思う。


 ただ、集団的自衛権は、刑法より上位法規である憲法の解釈問題であるから、刑法で認めているというだけでは理由づけとして弱いであろう。
(もちろん、その点は著者も承知しているだろうが。)



2013年08月08日(木) カネボウの責任以外の問題

 日経(H25.8.8)社会面で、カネボウの美白化粧品の「白斑」症状問題で、消費者庁長官が「(昨年10月に医師の指摘を受けていながら対策を取らなかったことについて)社内の情報共有体制に懸念を抱いている」と指摘したと報じていた。


 この長官の指摘のように、現時点では、もっぱらカネボウの初期対応の遅れが問題になっている。


 確かに、昨年10月には医師の指摘を受けていながら、それを軽視したというのは問題であり、非難を受けて当然である。


 ただ今後は、疫学的な因果関係の解明や、医薬部外品としての承認した国の責任が問題になってくると思われる。


 それだけでなく、「美白効果」を謳った他の化粧品まで見直しがなされるかも知れない。



2013年08月07日(水) 「品川ナンバー」に保護されるべき法的利益はない

 日経(H25.8.7)社会面で、自動車の「世田谷ナンバー」導入を巡り、世田谷区民が、国に承認の差し止めを求めた訴訟について、原告側が訴えを取り下げたという記事が載っていた。


 世田谷ナンバーに反対する理由は、「品川ナンバーに価値を見いだし、愛着を感じている。」「世田谷ナンバーの自動車を走らせる事に不安を感じている」ということらしい。


 しかし、世田谷区の人口は80万人以上いるのだから、世田谷ナンバーを付けただけでどこに住んでいるか分かるはずもなく、「不安を感じる」ということは理解できない。


 結局は、「品川ナンバー」というブランド価値を失いたくないということではないだろうか。


 しかし、「品川ナンバー」というブランド価値は、保護されるべき法的利益とは言えないだろう。


 もちろん、「品川ナンバー」を失いたくないという人たちが「世田谷ナンバー」導入の反対運動をすること自体まで否定するつもりはない。


 ただ、それは行政、議会を通じて行うべきものであろう。


 保護されるべき法的利益がなく、それは明らかであると思われるにもかかわらず、裁判にまで訴えることはいかがなものかと思う。


 訴えを取り下げた理由しては、「国の承認により訴えの利益がなくなった」ということであるが、実際は、裁判に批判的意見が多かったためかもしれない。



2013年08月06日(火) マンションの管理費の滞納

 日経(H25.8.6)夕刊の「法ほーそうですか」というコラムで、分譲マンションの管理費滞納問題を取り上げていた。


 そこでは「滞納が続くようなら裁判所を利用しましょう。」としていた。


 もちろん、訴訟を提起されるとあわてて支払う人もいるから、訴訟することが間違ではない。


 ただ、管理費さえ支払えない経済状態であるから、訴訟をしても支払えない人の方が多いだろう。


 それゆえ、訴訟に大きな期待を抱くのは禁物である。


 管理費さえも支払えないマンション所有者は、いずれは所有権を手放さざるを得ない。


 その場合、新所有者は滞納管理費の支払い義務を引き継ぐから、新所有者から回収できることが多い。


 新所有者は滞納管理費があることは承知しており、売買代金からその分を減額して購入するから、滞納管理費を支払うことに抵抗はない。


 結局、訴訟をするよりも、新所有者から回収できる可能性の方が高いというのが現実である。


 ただ、管理費は5年の時効があるから、時効にならないように訴訟することには意味がある。勝訴判決を得れば時効は10年になるからである。


 管理組合の理事としては、管理費の滞納者に訴訟するにしても、訴訟の目的(第一義的には滞納管理費の回収であるが、回収できなくても時効期間を延長するという意義があること。)を明確にし、それを他の組合員によく理解してもらうことが重要であろう。



2013年08月05日(月) 通信傍受できる犯罪の拡大を検討

 日経(H25.8.5)1面で、法務省が、犯罪捜査に必要な盗聴を認める通信傍受法の適用範囲を拡大する検討を始めたと報じていた。


 現行法は、通信傍受を認める犯罪を薬物、銃器、集団密航、組織的殺人の4分野に限定している。


 これを、振り込め詐欺や大規模窃盗団などの捜査にも使えるようにしようというものである。


 犯罪者がIT技術を屈指し、常に最新の技術を取り入れているのに対し、捜査側は後追いの状態である。


 その彼我の差をカバーするために、これからも通信傍受を認める範囲は拡大していくと思われる。


 当然、そこではプライバシーとの深刻な対立が予想される。


 その場合、プライバシーをある程度放棄してでも犯罪を抑止するのか否かが鋭く迫られるようになると思われる。



2013年08月02日(金) 給費制廃止は違憲無効として、訴訟提起

 日経(H25.8.2)夕刊で、元司法修習生らが、司法修習生の給与を国が支払う給費制を廃止し、貸与制にしたのは違憲で無効であるとして、1人当たり1万円の国家賠償を求めて東京地裁などに提訴したという記事が載っていた。


 国は財政事情などを理由に、11年11月に給費制を廃止し、修習終了5年後から10年かけて分割返済する貸与制に移行した。


 そうすると、親からの援助がない場合には約300万円の借金を背負うことになる。


 おまけに、法科大学院時代にも奨学金を受けていた人は、これへの返済も残っている。


 やっと弁護士になったとしても、弁護士人口の増加によって収入がそれほど期待できないとなると、返済もままならないかもしれない。


 それゆえ、給費制の復活を求める気持ちはわかる。


 ただ、世間の理解は得られないだろうと思う。


 いずれにせよ、修習生側が訴訟で勝つことは100%ないだろうし、裁判官も内心では同情しつつも、比較的短期間で原告敗訴の判決を下すのではないだろうか。



2013年08月01日(木) 不安を覚える裁判員候補者の辞退を認める

 日経(H25.8.2)夕刊で、東京地裁が、裁判員裁判において遺体写真などを証拠として使う場合は、裁判員候補者に事前に説明し、不安を訴える候補者には辞退を認める運用を始めたと報じていていた。


 裁判員候補者側としては、希望したわけでもないのに裁判員に選任され、遺体の写真まで見せられたのでは堪らないという気持ちであろう。


 しかも、裁判員が遺体を見ることができないとなると、判断権者が証拠を見ないということになるから、その点でも非常に問題である。


 したがって、不安を訴える裁判員候補者に辞退を認めることはやむを得ないだろうと思う。


 ただ、そのような運用は、国民としての義務を希薄化するものであり、裁判員制度の存続を危うくさせる危険をはらんでいると思う。


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