今日の日経を題材に法律問題をコメント

2013年02月28日(木) 非嫡出子の相続分規定について、最高裁は審理を大法廷に

 日経(H25.2.28)社会面で、結婚していない男女間の子(非嫡出子)の相続分を、法律上の夫婦の子(嫡出子)の2分の1とする民法の規定の合憲性が争われた事件で、最高裁は、審理を大法廷に回付したという記事が載っていた。


 最高裁大法廷は1995年に非嫡出子の相続分が嫡出子の2分の1とする規定を「合憲」としているが、大法廷に回付されたことで、合憲の判断が見直される可能性が高い。


 最高裁は、合憲と判断してから18年経過し、社会情勢や家族のあり方が変わったと考えたのだろう。


 社会情勢や家族のあり方が大きく変わったかどうかは疑問であるが、時代に合わせて判断を見直すことはいいことであると思う。



2013年02月26日(火) 衆議院の定数不均衡訴訟 3月中にすべての高裁で判決

 日経(H25.2.26)3面で、昨年12月の衆院選は違憲として、2つの弁護士グループが全国14の高裁・支部に選挙のやり直しを求めた訴訟で、各地の判決は3月中にすべての高裁で出そろうという記事が載っていた。


 本来、司法は独立しているから、他の裁判所がいつ判決を出そうが、それに合わせる必要はないはずである。


 ところが、今回の訴訟では、東京高裁は3月5日と一番早く判決が出す。


 そうすると、他の裁判所もそれに合わせようとするところがある。


 地方の裁判所は常に東京の裁判所を意識しているが、これもその表れといえる。
(但し、大阪の裁判所だけは「東京何するものぞ」という意識があるように思われる。)



2013年02月22日(金) 遺言書にID、パスワードの記載を

 日経(H25.2.22)2面で、SNS、ブログ、メールなどプライベートな情報も含まれているネットサービスが自分の死後どうなるかについて書いていた。


 現在では、プロバイダーはケースバイケースで柔軟に対応しているようであり、あまり問題にはなってないようである。


 ただ、アメリカでは、米フェイスブックがアカウント情報の入手を遺族関係者から訴えられたが、連邦司法裁判所はこの訴えを退けたそうである。


 民法896条では、相続人は、被相続人の一切の権利義務を承継する、ただし、一身に専属するものは相続しないと規定している。


 プロバイダー等との契約上の地位も相続により承継するから、相続人が、被相続人のID、パスワードの開示を求めれば、それに応じなければならないようにも思える。


 ところが、メールなどは通信の秘密に該当し、保護されているから、一身に専属すると解される余地がある。


 その場合には、メールは相続しないから、相続人が開示を求めても、プロバイダーはそれに応じる義務まではないことになる。


 この点の法律解釈はなかなか難しい。(おそらく、開示しても違法ではないが、開示する義務まではないと解されると思うが)


 それゆえ、プロバイダーとしては、約款で開示の手続きを明らかにして対応しておくべきであろう。


 そうすれば、その開示手続きを契約者が承認しているということになるから、開示したとしてもプロバイダーの責任は問われないだろう。


 他方、契約者側は、死後のことを考えて、ID、パスワードを遺言書に書いて残しておくことが望ましい。


 これはネット証券やネットバンキングをしている場合にも同様である。


 今後は、遺言書の書式例でID、パスワードを遺言することが必須の項目になるかもしれない。



2013年02月20日(水) 明石市花火事件で強制起訴された元副署長に免訴

 日経(H25.2.20)夕刊で、2001年に明石市の花火大会で11人が死亡するなどした歩道橋事故で、業務上過失致死傷罪で強制起訴された元県警明石署副署長の判決が神戸地裁であり、裁判所は、公訴時効が成立しているとして「免訴」の判決を言い渡したと報じていた。


 免訴であるが、裁判所は、被告に過失はないと認定しているから、実質的には無罪である。


 これでまた強制起訴での無罪の事例が積み重ねられたことになる。


 亡くなった方の遺族の悔しい気持ちは当然であると思う。

 
 しかし、起訴される側の負担を考えると、「市民感覚」だけで起訴することはやはり問題ではないかと思う。



2013年02月19日(火) 和牛商法問題で、海江田民主党代表を提訴

 日経(H25.2.19)社会面で、経営破綻した安愚楽牧場について、出資者30人が、民主党の海江田万里代表が経済評論家時代に書いた同牧場に関する記事の影響を受けて出資し、損害を被ったとして、計約6億1千万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしたという記事が載っていた。


 海江田氏は、「高利回りの利殖商品」「むろん元本は保証付き」「リスクゼロ」などと書いていたようであり、極めて問題である。


 しかし、執筆は20年以上前であり、訴訟では時効の壁がある。


 しかも、原告は「その記事を読んで出資した」ことを立証しないといけないが、それはなかなか難しい。


 そうすると、海江田氏に道義的責任はあるだろうが、原告が勝訴する可能性はかなり低いだろうと思う。



2013年02月18日(月) 法定金利5%は高い

 日経(H25.2.18)1面トップで、民法改正試案で、遅延損害金の法定利率を現行の年5%から3%に引き下げ、かつ、年1回、0.5%の刻みで変動させる制度を導入すると報じていた。


 年5%が低いと思われた時代もあったが、今の感覚からすると非常に高い金利である。


 しかも、会社の取引の場合には年6%にもなっている。


 そのため、訴訟で和解で解決するよりも(和解の場合は遅延損害金は放棄するのが通常である)判決を得て年5%の遅延損害金を得た方がいいということになる。


 やはり年5%というのは、いまの金利水準を考えるとかなり高い金利であり、引き下げは当然かもしれない。



2013年02月15日(金) 死刑判決のハードルが徐々に下がっている

 日経(H25.2.1)社会面で、同僚を殺害したとして、強盗殺人や強盗強姦、死体損壊・遺棄などの罪に問われた裁判員裁判で、岡山地裁は、求刑通り死刑を言い渡したと報じていた。


 被害者は一人、被告は前科がなかった事案である。


 このようなケースでの死刑は初めてらしい。


 犯行態様からして死刑はやむを得なかったのかもしれない。

 
 ただ、死刑廃止が世界の趨勢の中で、死刑判決のハードルが徐々に下がっているような気がする。



2013年02月14日(木) 医師の当直は時間外労働

 日経(H25.2.14)社会面で、奈良県立奈良病院の産科医2人が当直勤務の時間外割増賃金などの支払いを求めた訴訟で、最高裁は、県の上告を退ける決定をしたという記事が載っていた。


 これにより、当直を時間外労働と認め、県に計約1500万円の支払いを命じた一、二審判決が確定する。


 当直の間は病院の指揮下にある以上、これまでの裁判所の考えからすれば当然の結論といえる。


 ただ、時間外労働として支払ったとしても、それによって勤務医の激務の問題は解決しない。


 根本的には勤務医を増やすしかないが、開業した方が楽なため、そちらに流れる傾向があるようである。


 この点を解決しない限り、問題は残るのだろう。



2013年02月12日(火) 警察の捜査力はすごい

 日経(H25.2.12)夕刊で、パソコンの遠隔操作事件で逮捕された片山容疑者の続報が載っていた。


 この事件では、「ネットの世界の捜査では犯人逮捕に至らず、犯人が映った防犯カメラという現実世界の捜査でようやく逮捕につながった」という言われ方をしている。


 つまり、ネット世界についての捜査の脆弱性が指摘されている。


 その点は今後の課題とはいえる。


 ただ、思ったのは、やはり警察の捜査力はすごいということである。


 この事件では防犯カメラの映像で犯人をていねいに追っていき、犯人逮捕につながったが、それは大変な作業であろうと思う。


 刑事裁判の刑事記録を読むと、警察がどれだけ地道に捜査をしているかがよく分かる。


 それゆえ、悪いことをすると必ず捕まると思った方がよいだろう。



2013年02月08日(金) オウム真理教元幹部高橋被告の公判前整理手続きが始まる

 日経(H25.2.8)社会面で、オウム真理教元幹部、高橋克也被告の公判前整理手続きが始まったという記事が載っていた。


 高橋被告が防犯ビデオで撮影され、逃亡の末マンガ喫茶で逮捕されたのは平成24年6月だから、それから8か月くらい経っている。


 証拠は膨大であろうから、ある程度時間がかかるのは仕方ない。


 そうはいっても、裁判が始まるまで時間がかかりすぎのように思う。



2013年02月07日(木) 違法収集証拠の証拠能力

 日経(H25.2.7)社会面で、覚せい剤取締法違反などに問われた事件で、東京地裁は、「重大な違法捜査があった」として覚醒剤の使用について無罪としたという記事が載っていた。


 東京都内の男性の知人宅を家宅捜索したところ、中にいた男性が立ち会いを拒んだ。すると、警察官3人が腰や腕をつかむなどして退室を阻んだ。


 室内からは覚醒剤などが見つかり、男性の尿からは覚醒剤成分が検出されて逮捕されたという事案である。
 

 これについて、裁判所は「男性への逮捕状がないのに、実質的に逮捕・監禁した」と捜査の違法性を認定。尿検査の結果は「違法に収集されたもので証拠能力はない」とした。


 これは違法収集証拠排除法則の問題であり、よく議論される。


 この男性が覚せい剤を使用していたことは事実であるから、そのまま退室させていれば、覚せい剤を使用していながら、その罪を問うことができなかった。


 この点をどう考えるかである。


 判例の傾向は、捜査手続きに違法があったとしても、違法の程度が重大でないとか、得られた証拠は捜査の違法とは別に収集されたものであるとして、証拠能力を肯定することが多いように思う。


 現に覚せい剤を使用しているのに、それを容認するわけにはいかないという心理が働くのであろう。



2013年02月06日(水) いつまで「意見交換」しているのか

 日経(H25.2.6)4面で、新経済連盟が、選挙運動でのインターネット利用の解禁を求める会合を国会内で開き、与野党からネット選挙問題の担当者が参加して意見交換したという記事が載っていた。


 いつまで「意見交換」しているのだろうと思う。


 選挙でのネット利用の解禁について、反対意見はもはやないだろうが、「悪用されるおそれ」という慎重意見によって、これまで法改正が先延ばしされてきた。


 しかし、「悪用対策」というのはこじつけであり、本音は、議員によってネット利用力に差がでるのが怖いだけではないだろうか。


 そうは言っても、そのような議員も一票の権利はあるのだから、その意見を無視できない。


 それゆえ、メール利用の可否など議論のある論点は後回しにして、まずは問題のない範囲で法改正して、選挙でネット利用できる実績をつくることが大事であろうと思う。



2013年02月05日(火) 高齢者被害防止のスピード感が欠如している

 日経(H25.2.5)夕刊で、森消費者担当相は、自宅を訪れた業者が貴金属などを不当に安く買い取る「押し買い」を規制する改正特定商取引法を21日から施行すると発表したという記事が載っていた。


 改正法では、業者が訪問先で物品を買い取る際、契約書面を交付することを義務付け、契約日から8日間のクーリングオフ期間中は原則として、無条件で解約に応じなければならないとしている。


 「押し買い」は、一人暮らしの高齢者が狙われ、高齢者が持っている貴金属を安値で無理やり買い取る商法である。


 平成21年ころから問題になっていた。


 しかし、法改正は平成24年8月、施行は平成25年2月21日である。


 高齢者被害防止のスピード感が欠如しているように思う。



2013年02月04日(月) 出版社に著作隣接権?

 日経(H25.2.4)法務面で、出版業界が書籍に関する著作隣接権を求める動きを強めているという記事が載っていた。


 作家が持つ著作権と同じような権利で、出版社側はインターネット上の海賊版対策に自らが権利者となって動けるなどの利点を強調している。


 すでに著作権法では、放送局、レコード会社、有線放送会社、実演家(俳優・歌手など)の4者に著作隣接権が与えられている。


 それゆえ、出版社にも与えて欲しいということである。


 しかし、新しい権利を創出するとなると、様々な利害関係者がからむので、なかなか意見はまとまらないようである。


 私見では、大きな方向としては、著作権やその周辺の権利を強めない方向の方が、文化の発展に寄与するのではないかと思う。


 著作権等の権利を強化しすぎると競争原理が働きにくくなるからである。


 ただ、これも人によっていろいろな価値判断があるので、難しいし、現状はむしろ著作権保護の方向に動いているようであるから、少数意見かも知れない。



2013年02月01日(金) 内柴被告に求刑通りの判決

 日経(H25.2.4)夕刊で、教え子の大学女子柔道部員に暴行したとして、準強姦罪に問われた金メダリスト内柴正人被告に東京地裁は、求刑通り懲役5年を言い渡したと報じていた。


 報道される証拠から判断する限り、この事件で無罪が難しいことは明らかである。


 そのうえ、裁判所は強姦があったと認定するのだから、それを前提にすると、被告人が「合意があった」と述べることは、嘘を言っていることになる。


 そうすると、被告人は反省していないと捉えられ、求刑通りの判決、悪くすると求刑を超える判決となる可能性は極めて高い。


 実際、裁判長は、「不合理な弁解に終始し、反省の態度も認められない」と述べている。


 このようなことは、少し経験のある弁護士であれば誰でも予想できることである。


 それゆえ、弁護人としては、被告人に、「証拠からして、裁判所は有罪を言い渡すだろう。しかも、重い刑になる可能性が高い。」という見通しは示しておく必要がある。


 それでも、被告人が一貫して無罪を主張している以上、弁護人としては、それに沿った弁護活動をする必要があるし、それが弁護人の義務である。


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