日経(H25.1.31)社会面で、女子柔道の15選手が園田隆二代表監督らの暴力行為などを日本オリンピック委員会(JOC)に告発した問題を報じていた。
マスコミに大きく報道されたため、記事ではJOCの対応は変わってきている。
しかし、当初JOCは、全日本柔道連盟に対応を委ね、全日本柔道連盟は、代表監督に戒告処分をしてお茶を濁そうとしていた。
比ゆ的に言えば、従業員が、会社の不正を親会社に内部告発したが、親会社は、子会社に対応を任せて知らん顔をしているようなものである。
内部告発のすべてが正しいわけではない。
ただ、告発を受けた側は、その適否を見極め、告発された側に問題があればすぐに処理することが大切である。
それゆえ、全柔連にすべて委ねてしまったJOCの対応は極めて問題があると言わざるを得ない。
2013年01月29日(火) |
韓国で大統領側近らに恩赦 |
日経(H25.1.29)社会面で、韓国の李明博大統領が、大統領側近らを含む政治家、経済人ら55人の特別赦免や減刑、復権を決めたと報じていた。
外国の事情はよく知らないが、日本では恩赦はあまり積極的には行われていない。
サンフランシスコ講和条約を締結したときには恩赦が行われているが、昭和天皇崩御時には恩赦はなかった。
昭和天皇崩御のときは、恩赦を当てにして、控訴や上告を取り下げて刑を確定させた被告人もいたが、期待外れに終わっている。
恩赦は時の権力者によって濫用される恐れがあるし、刑の公平という点からも問題をはらんでいる。
それゆえ、あまり積極的に行うべきではないだろう。
その意味で、日本での恩赦の運用は比較的適正に行われているのではないだろうか。
2013年01月28日(月) |
正社員はいつでも辞められる |
日経(H25.1.28)法務面の「リーガル3分間ゼミ」で、社員が辞職を申し出ても、「業務に支障を来す。辞めると損害賠償を請求する」と言われたがどうすればいいかというについて書いていた。
このような相談はときどき受ける。しかも、小さな企業だけでなく、上場企業の社員から相談を受けたこともある。
しかし、法律上は、正社員であればいつでも辞めることができる。
契約期間に定めのある社員は一定の制限があるが、一方的に辞めたとしても実際に損害賠償義務を負うことはほとんどないだろう。
通常は他の社員でも代替が可能であり、会社に損害が生じることはないからである。
このように強引に引きとめることはできないのであるから、会社側としては、「引き継ぎをきちんとするように」と指示するしかない。
2013年01月25日(金) |
成年後見人の弁護士が着服 あまりに大胆な手口 |
日経(H25.1.25)社会面で、東京地検特捜部は、成年後見人として管理していた預金約1200万円を着服したとして、弁護士関康郎容疑者を業務上横領の疑いで逮捕したという記事が載っていた。
関容疑者は、成年後見人として管理していた預金口座から自分名義の口座に合計約1200万円を送金したそうである。
後見人の口座から弁護士の口座に送金するのは、後見人報酬の支払のときくらいである。
それ以外に弁護士口座に送金していると、裁判所から不審に思われるのは明らかである。
気がつかれないと思ったのだろうか。あまりに大胆な手口にびっくりした。
2013年01月24日(木) |
被害者の実名報道の必要性はないのではないか |
日経(H25.1.24)社会面で、アルジェリア人質事件で、報道機関が、日揮や首相官邸に対し、被害者氏名などの情報を開示するよう申し入れたという記事が載っていた。
犯罪者でさえ、実名報道の必要性があるのかという議論があるくらいである。
ましてやテロの被害者の実名を報じる必要性はないだろう。
とくに、遺族が氏名の開示を望んでいない場合には、その意思を尊重すべきであると思う。
2013年01月23日(水) |
契約では、トラブルをイメージすることが重要 |
日経(H25.1.23)29面「経済教室」で、海外M&A成功の条件として、契約書の文言が重要であると書いていた。
当たり前と言えば当たり前である。
しかし、第一三共がインド製薬大手を買収したケースでは、買収直後に医薬品認可申請書類のデータをねつ造していたことが発覚して株価が急落し、第一三共は約3500億円の特別損失を計上したが、このとき、第一三共が買収した創業家一族からの補償条項がなかったことを問題視していた。
購入する側はデータのねつ造など想像できなかったのかもしれない。
契約において大事なことは、どれだけトラブルをイメージできるかである。
それゆえ、弁護士は、その会社のこと、業界のことを十分知悉しておく必要がある。
先のケースではそれが不十分だったということになるのだろう。
2013年01月21日(月) |
センター試験問題を持ち出し |
日経(H25.1.21)社会面で、センター試験で、試験時間中に受験した生徒が問題冊子を会場外に持ち出し、予備校関係者に渡していたという記事が載っていた。
センター試験の問題冊子は試験終了後持ちかえることができるにしても、試験終了前であれば窃盗罪に該当する余地はある。
また、業務妨害罪も考えられる。
しかし、試験終了後には持って帰れるのであるから、違法性は低いのは間違いない。
それゆえ、刑事事件となるほどのことではないし、マスコミが大きく報道するほどのことではないと思うのだが。
2013年01月17日(木) |
人身事故での刑罰を新設 |
日経(H25.1.17)社会面で、法務省が、飲酒や薬物摂取、病気の影響で人身事故を起こした場合の罰則を新設するとの記事が載っていた。
「アルコールまたは薬物の影響で正常な運転が困難な場合」に適用する危険運転致死傷罪は、立証のハードルが高いため、「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」での事故を従来より重く処罰することとしたものである。
危険運転致死傷罪に該当しない悲惨な自動車事故がしばしばあることから、改正自体はやむを得ないと思う。
しかし、「正常な運転が困難な場合」と「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」との境目は微妙であり、捜査機関に過度に負担をかけるのではないだろうか。
むしろ危険運転致死傷罪の要件を、「アルコールや薬物の影響で正常な運転が困難な場合」から、「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」と緩和し、あとは量刑で考慮するとした方が良いのではないか思う。
2013年01月16日(水) |
警視庁の発表がアレフの名誉を棄損 |
日経(H25.1.16)社会面トップで、警視庁が公表した警察庁長官銃撃事件の捜査結果を巡り、東京地裁は、オウム真理教から改称した「アレフ」の名誉を傷つけたとして、東京都に100万円の支払いと謝罪文の交付を命じる判決を言い渡したと報じていた。
警視庁は「オウム真理教の信者グループが松本智津夫教祖の意思の下に、組織的・計画的に敢行したテロだった」と断定的に発表し、これに対しアレフが名誉棄損であるとして訴えていた。
争点は、警視庁の発表がアレフの名誉を傷つけるものかどうかであった。
問題は、公表内容が真実だったか、真実と信じた相当の理由があったかについて、都側は訴訟で主張を放棄していることである。
しかし、真実と信じた相当の理由があることを立証できないのであれば、最初から「オウム真理教の犯行である」と発表することに問題があったというしかない。
2013年01月15日(火) |
体罰と、許される教育的指導との限界は? |
日経(H25.1.15)夕刊に、大阪市立桜宮高校の男子生徒がバスケットボール部顧問の男性教諭から体罰を受けた後に自殺した問題で、大阪府警が学校関係者から参考人として事情聴取を始めたという記事が載っていた。
顧問教師の行為が体罰であることは明らかである。
ただ、体罰についてはこれを容認する風潮もある。
しかし、判例は、従来から体罰について厳しい見方をしている。
もともと、学校教育法は体罰を絶対的に禁止しているからである。
もちろん、判例も、有形力行使の全てが体罰にあたるわけではなく、教師が生徒に対して行うことが許される教育的指導の範囲を逸脱するもののみが「体罰」として禁止されるとしている。
ただ、「教育的指導の範囲」といえるのは、例えば、朝礼でいつまでも騒いでいる生徒に、握りこぶしで頭を軽くたたく程度である。
これを超えて、平手で頬を強く叩いた場合には通常は体罰となるだろう。
教育現場では、どこまでが体罰として許されないのかの事例研究をもっとした方がよいのではないだろうか。
2013年01月11日(金) |
匿名性を緩和すべきではないだろうか |
日経(H25.1.11)社会面で、インターネット上で他人の名誉を損ねたり中傷したりする書き込みが過去最多となるペースで増えているという記事が載っていた。
これについて専門家は、ネットを使う際のモラル教育が重要であると指摘しているようである。
しかし、教育だけでは十分な抑止にはならない。
それも大事であるが、それよりも、インターネット上の匿名性をもう少し緩和すべきではないだろうか。
プロバイダ責任制限法では、「権利侵害が明らかであるとき」には発信者情報を開示できるとしている。
ところが、「明らかであるかどうか」をプロバイダが判断し難いため、開示を求める側は裁判手続きまで要することが多い。
そのため、情報開示まで非常に手間がかかっているのが実情である。
もう少し情報開示の要件を緩和すれば、匿名性が緩和され、名誉棄損などの書き込みも減るのではないかと思うのだが。
2013年01月10日(木) |
刑法犯の認知件数が10年で半分に |
日経(H25.1.10)社会面で、2012年の全国の刑法犯の認知件数が前年より6.7%少ない138万2154件となり、10年連続で減少したという記事が載っていた。
過去最悪だった2002年の約285万件の半分以下だから、圧倒的に犯罪が減っていることになる。
個別の犯罪を見ても、ほとんどで減少傾向を見せている。
性犯罪は昨年より増加しているが、長期的にみれば減少傾向と言える。
したがって、統計を見る限り、「安全神話の崩壊」ということはなく、むしろ以前より安全になっていることになるのだろう。
2013年01月08日(火) |
警察官の採用試験にポリグラフ検査 |
日経でなく朝日(H25.187)1面トップで、警察庁が、警察官の採用試験の際にポリグラフ(うそ発見器)検査を導入することを検討していると報じていた。
盗撮やわいせつ行為などをした人が警察官になり、同じ過ちを繰り返す例が目立ち、それへの対策だそうである。
確かに、ポリグラフ検査は捜査で使われることがあり、裁判でも一応証拠能力は認められている。
しかし、裁判所はポリグラフ検査はあまり信用しておらず、捜査でも積極的には活用されていないと思う。(その証拠に証拠能力が認められることと、その証拠の証明力が高いこととは別問題である。)
それゆえ、採用試験にポリグラフ検査を使って、適正な結果が得られるか疑問である。
また、その人の性癖を検査するのであるから、プライバシーの問題もある。
ポリグラフ検査に同意を条件とすれば問題ないということかもしれないが、同意しないと採用されないだろうから、実質的には強制に近い。
新聞の論調は、ポリグラフ検査を積極的に採用すべきということであったが、このような検査を採用試験で使用することは問題であると思う。
2013年01月07日(月) |
法務担当者が副社長くらいにはなる必要がある |
日経(H25.1.7)法務面で、知財戦争に関して、「韓国企業は経営トップが訴訟の陣頭指揮を執っているが、日本企業は法務部長が弁護士と打ち合わせをする」という弁護士のコメントが載っていた。
そのとおりだと思う。
社長としては、「打ち合わせに出席しても分からないから」ということなのだろう。
しかし、「分からない」のであれば知財戦略は立てられない。それは社長として失格ということである。
逆に、創業者のワンマン会社で、創業者が自己の成功体験を基にいろいろと口を出す場合もある。
ところが、知財は専門性が非常に高いので、誤った方針になりがちである。
やはり、法務担当者が少なくとも副社長になるくらいでないと、知財戦争は生き残れないと思う。
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