2012年11月30日(金) |
選挙期間中のツイッター |
日経(H24.11.30)夕刊で、 日本維新の会代表代行の橋下徹大阪市長が、衆院選公示日以降もツイッターでの発信を続ける考えと報じていた。
総務省選挙課は「選挙運動はツイッターを含め、インターネットでは認められていない」としている。
しかし、公職選挙法にはインターネットに関する直接の規定はない。「インターネットでの選挙運動は認められていない」というのは総務省の見解に過ぎないのである。
それゆえ、選挙中もどんどんツイッターをしてほしいと思う。
2012年11月29日(木) |
衆議院選の差し止め請求 控訴棄却 |
日経(H24.11.29)社会面で、最高裁に「違憲状態」と判断された区割りのまま行われる衆院選の差し止めなどを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は、「訴えは不適法で認められない」として控訴を棄却したという記事が載っていた。
差し止めを認める法律上の根拠規定がないためである。
原告側は最高裁に上告したが、最高裁でも結論は変わらないと思う。
もちろん、それは訴える側も承知しているはずである。
それにもかかわらず訴えているのは、違憲状態にもかかわらず選挙を強行したことへの、非難のメッセージということなのであろう。
手弁当でこのような活動をしていることに敬意を表したい。
日経(H24.11.28)社会面で、協調融資で主幹事を務めた十六銀行から融資先の粉飾決算情報を伝えられず融資を回収できなくなったとして、参加した3金融機関が十六銀行に損害賠償を求めた事件で、最高裁は、約5億円の支払いを命じた二審判決を支持し、十六銀行の上告を棄却したという記事が載っていた。
この事件は、協調融資における主幹事の情報提供義務の有無や程度、守秘義務との関連が問題になっておりに注目されていた。
この点の最高裁の判断がなされたわけで、重大に意義を有するのであるが、注目したいのは、十六銀行側が過失相殺の主張をしていなかったことである。
最高裁の補足意見では、本件では協調融資に参加した金融機関の過失も問題になるが、十六銀行側はその主張を二審までにしていないと言われてしまっている。
十六銀行側が過失相殺を主張しなかった詳しい事情は分からないが、弁護士過誤の可能性はあると思う。
2012年11月27日(火) |
手形はいずれなくなる? |
日経(H24.11.27)1面トップで、企業間の決済でペーパーレスの電子債権の利用が急拡大しているという記事が載っていた。
電子債権の増加しているのは、手形は、発行、管理費用がかかる、紛失等のリスクがある、印紙税がかかる、債権を分割できないなどのデメリットがあるからである。
仕事でも、手形が絡むトラブルは最近はお目にかからない。
司法試験でも、かつては論文試験で必ず出題されていたが、いまは重要度は低くなっているらしい。
手形はいずれは無くなるのではないだろうか。
2012年11月26日(月) |
法律上は同じでも当事者の気持ちは尊重すべき |
日経でなくネットニュース(H24.11.26)面で、俳優の高嶋政伸とモデルの美元が離婚することで合意したと報じていた。
家庭裁判所は高嶋側の離婚請求を認めたが、控訴期限の直前になって協議離婚することとし、訴えを取り下げたようである。
高嶋側は訴訟で勝っているから、自分から協議離婚を言い出す必要はない。
それゆえ美元側からの提案なのであろう。
法律的には、協議離婚も裁判離婚も離婚するということでは変わらないから、わざわざ協議離婚する必要はないようにも思える。
ただ、法律的には同じであっても、依頼者は法律以外のことにこだわることはよくある。
そういった当事者の気持ちはできるだけ尊重されるべきであり、双方が協議離婚に合意するのであれば、それを否定する理由はないだろう。
2012年11月22日(木) |
NHK受信料の時効は5年 |
日経(H24.11.21)社会面で、NHKの受信料の時効期間が争われた訴訟で、東京高裁は、「時効は5年」とした一審・二審判決を支持し、NHK側の上告を棄却したという記事が載っていた。
NHKは、受信料債権の消滅時効は一般債権と同じ10年と主張した。
これに対し、受信者側は時効2年と主張することが多い(本件では不明であるが)。
裁判所はいずれの主張も排斥して5年と判断した。
このように争いになる原因の一つは、民法では時効期間が多様に定められていることにあると思う。
一般債権の10年も現在の感覚とは合わないのではないだろうか。
現在、民法の改正作業が進められているが、原則、一般債権の時効は5年、商事債権は3年、不法行為の損害賠償は3年と一律に決めてはどうかと思う。
2012年11月20日(火) |
憲法14条違反や31条違反は上告理由の定番である |
日経(H24.11.20)政治面と社会面で、政治資金規正法違反で強制起訴された元民主党代表の小沢一郎被告の無罪が確定したと報じていた。
適法な上告理由がなく、検察官役の指定弁護士が上訴権を放棄したためである。
わが国の裁判制度は三審制をとっているが、刑事事件の上告理由は、高裁判決が憲法違反である場合などに限定されている。(民事事件でも制限されている)
小沢被告の事件のように、検察官は、適法な上告理由がないと判断すれば上告は断念するが、被告人の場合には、判決確定を先延ばしにしたいなどの理由から上告することも少なくない。
そのような場合には、憲法違反等の適法な上告理由はないのであるが、それでも、憲法違反等を主張しなればならない。
そのため、憲法14条(平等原則違反)や31条(適正手続き違反)は上告理由の定番として使われる。
2012年11月19日(月) |
司法修習は放棄すべきでない |
日経(H24.11.19)法務面で、司法試験合格者の就職状況について書いていた。
その記事によれば、三井物産では、司法試験合格者に内定を出し、内定者は司法修習に行かず入社したそうである。
しかし、司法修習せずに就職することは感心できない。
司法修習は、司法の現場を内部から見ることができる貴重な機会である。
それは単に内部を見れるということだけでなく、裁判官、検察官、弁護士の考え方、あり方を身近に知ることができ、それが大きな財産となっていくのである。
例えば、事案にぶつかったとき、あの弁護士だったらどうするだろう、あの裁判官だったらどのように判断するだろうと、具体的にイメージすることができるようになる。
そのような貴重な経験の機会を放棄するのはもったいないと思う。
企業としても、修習経験のない司法試験合格者を採用するくらないなら、社内の人材を活用した方がよいのではないだろうか。
日経(H24.11.12)夕刊で、2011年の1年間に、交通事故などをのぞく一般刑法犯の再犯率が過去最悪の43.8%だったという記事が載っていた。
一般刑法犯の再犯率は1997年以降、15年連続で悪化している。
生産年齢人口(15歳から64歳までの人口)は1997年をピークに一貫して減少しており、再犯率の増加はそれと完全に軌を一にしている。
すなわち、経済活動の停滞が再犯率を挙げているように思われる。
再犯の防止には就労の機会を提供することが一番大事なのだが、それがなかなか難しい時代であり、今後も再犯率の増加は続くかもしれない。
2012年11月15日(木) |
最高裁は選挙無効判決を出すべき |
日経(H24.11.15)1面トップで、野田佳彦首相が16日に衆院解散に踏み切る考えを表明したと報じていた。
衆院議員の定数削減も謳っているが、今度の選挙には間に合わないから、一票の格差が2倍以上のまま衆議院選挙を行うことになる。
最高裁はなめられているというしかない。
やはり最高裁は選挙無効の判決を出すべきであろうと思う。
選挙を無効にしても、すべての選挙区ではなく、原告の選挙区だけが無効になるだけであり、しかも当選した議員が行った行為は無効とせずに、将来に向けて無効であるとするならば、国政が大混乱するおそれはないだろう。
2012年11月13日(火) |
被害者でなく、犯罪事実を告げるのが法が定めたルール |
日経(H24.11.13)1面「春秋」欄で、逗子市の女性を殺して、犯人が自殺した事件の警察の対応を批判していた。
この事件では、犯人が昨年、女性に脅迫メールを送りつけた疑いで逮捕されており、その際、結婚し引っ越していた女性の新しい姓や逗子に住んでいることが警察から犯人に伝わったと言われている。
この点について「春秋」欄では、「人を逮捕するとき、被害者が誰かをきちんと容疑者に伝えるのは法が定めたルールだ。ただし、命にかかわる次の事件への想像力が警察には欠けていた。」と批判していた。
しかし、「被害者を容疑者に伝えるのは法が定めたルール」というのは不正確というか、誤りである。
容疑者を逮捕するとき告げなればならないのは犯罪事実であって、被害者が誰かではない。
ただ、このときは脅迫罪であったため、犯罪を特定するために、いつ、どこで、誰をどのような文言で脅したかが犯罪事実として記載されていたのだろう。
しかし、犯罪事実はその要旨を告げればよいとされている。したがって、新しい姓まで伝えたのはやはり警察の落ち度だろう。
日経(H24.11.12)夕刊で、政治資金規正法違反で強制起訴された元民主党代表の小沢一郎被告に対し、東京高裁は、無罪を言い渡した一審・東京地裁判決を支持し、控訴を棄却したと報じていた。
無罪は予想されていたが、ここに至って問われるべきは強制起訴制度の功罪についてであろう。
これまでに強制起訴が議決されたのは8件、そのうち起訴は7件。
この中で判決が出された事件は、今回の小沢被告の分を含めて2件で、いずれも無罪となっている。
また、もう1件は公訴棄却となっている。
無罪になったとはいえ、起訴された被告人にとっては大変な重圧であったはずである。
判決が出ていない事件も、裁判は長期化しており、被告人の負担は大変なものであると思う。
このような被告人の負担を考えると、「市民感覚」というあいまいな概念に基づき強制起訴制度を取り入れて本当によかったのかと疑問に思う。
2012年11月09日(金) |
高嶋政伸の離婚事件で、裁判所は離婚を認める |
日経でなく朝日ネットニュース(H24.11.9)で、俳優の高嶋政伸の離婚事件について、東京家庭裁判所は離婚を認める判決を出したと報じていた。
この離婚事件はマスコミを賑わし、判決前に弁護士もコメントを出していたが、弁護士の多くは「離婚は認めないだろう」というものだった。
証拠が不明な中でコメントさせられる弁護士も大変であり、予想が外れたことを揶揄しようとは思わない。
コメントした弁護士がなぜ「離婚は認められないだろう」と述べたかと言うと、裁判にまでなると裁判官は離婚をなかなか認めないし、とくに男性からの離婚請求は認めない傾向にあるからであろう。
そのような傾向にある中で、今回、裁判官が離婚を認めたのは、裁判官の考え方が変わってきたせいなのかも知れない。
2012年11月08日(木) |
今どきFAXによる付きまとい行為はあまり考えられない |
日経(H24.11.8)社会面で、逗子市で、男が2階の出窓の柵にひもを掛けて首をつって死んでいるのが見つかり、1階の居間では、この部屋に住む女性が刃物で刺されて死んでいたという記事が載っていた。
2人は以前交際していたが、自殺した男性は、別れてから女性に嫌がらせメールを送るようになり、今年4月、女性が「千件を超えるメールが来る」と同署に相談していた。
ところが、警察からは、メールの送信自体はストーカー規制法に該当しないと言われたそうである。
確かに、メールの内容次第では、ストーカー規制法や脅迫罪に該当する場合があり得るが、メールを送信する行為自体を規制する規定はない。
ただ、ストーカー規制法の制定時から、メールについても規制の必要性が言われていた。
他方、現行法では、「連続してFAXする行為」は規制の対象となっているが、今どきFAXを送ってのつきまとい行為はあまり考えられない。(規制の対象から外す必要まではないが。)
要するに、情報伝達手段は急速に変化しており、それに法律が対応できていないのである。
それゆえ、時代の変化に柔軟に対応できるよう、現行法の「電話をかけ若しくはファクシミリ装置を用いて送信すること」と限定するのではなく、「電話その他の電気通信の手段を用いること」ともう少し広く規制すべきであろうと思う。
2012年11月07日(水) |
遺産分割調停のの使い勝手が悪い |
日経(H24.11.7)21面で、遺産分割調停の記事が載っていた。
記事の内容は、遺産分割調停の手続きの説明と、遺言が重要であるというものであり、遺言がない場合には紛争が長期化することが多い。
その原因はいろいろあるが、一つには遺産分割調停の使い勝手が悪いことがある。
遺産が預貯金である場合には、各相続人の同意がなければ調停の対象とならないとされている。
これは、最高裁が預金債権は当然に分割されるので、遺産分割の必要性がないという理由に基づいている。
また、遺産の範囲に争いがある場合には、通常訴訟で先ず決着をつけなればならない。
ところが、通常訴訟は地方裁判所で審理されるため、先にそこで決着をつけてから、改めて家庭裁判所で遺産分割手続きをしなければならない。
それゆえ、法改正をして、遺産分割については、相続人の同意がなくても預貯金について調停ができるようにしたり、調停と審判ですべて解決できるようにして使い勝手を良くするべきであろうと思う。
2012年11月06日(火) |
田中文部科学相が3大学の開設を不認可 |
日経(H24.11.6)3面で、田中真紀子文部科学相が3大学の開設を不認可としたことに対し、大学側が撤回を求め法的手段も辞さない構えを見せているという記事が載っていた。
これは、3大学の開設について、大学設置・学校法人審議会が審査し、認可の答申をしたにもかかわらず、大臣がストップをかけたため問題になったもである。
審議会といっても、判断の基となる資料は文科省が用意するのだから、文科省の意に沿った結論になるのは当然である。
田中文科相は、そのような審議会のあり方に一石を投じたということはいえる。
ただ、このケースでは不認可の合理的理由がないように思われる。したがって、法的措置をとれば、大学の言い分が認められる可能性は高いだろう。
2012年11月02日(金) |
福島第一原発の元作業員が、労基署に是正措置の申し立て |
日経(H24.11.2)社会面で、福島第1原発事故後の昨年3月24日の収束作業において、高い放射線量の中で作業をさせたのは違法であるとして、元作業員の男性が、元請け業者の関電工と東京電力に是正措置を取るよう労働基準監督署に申し立てたという記事が載っていた。
男性は3号機タービン建屋内で関電工の社員らとともに電源ケーブルの敷設作業にあたったが、建屋の地下にたまり水があり、警報付き線量計が作動した。
関電工の社員ら3人はそのまま地下に入って作業したが。男性は地下に入ることを拒否した。
その結果、男性の被曝線量は11ミリシーベルト。地下に入った3人の中には被曝線量が200ミリシーベルトを超えた人もいた。
放射線業務の被曝線量の上限は年50ミリシーベルトであり、関電工の対応が労働安全衛生法に違反するとし、労基署に処罰するよう告発。東電も労災防止の対応をしなかったとして、是正措置を求めていたものである。
このような申立は個人ではなかなかできず、結局、現場の作業員に過重な負担を負わせている問題がうやむやになりかねない。
この男性には弁護団がついており、だからこそ是正措置も申し立てが可能になったのであろう。
このような問題で弁護士の役割は重要であると思う。
2012年11月01日(木) |
解雇するためには手順を踏むことが重要 |
日経(H24.11.1)1面広告欄の判例雑誌の広告で、無断欠勤を理由に諭旨退職の懲戒処分をしたところ、最高裁は処分を無効としたという判例を掲載していた。
この判例の事案は、会社の社員が、精神的な不調により、盗撮や盗聴で日常生活を監視されており、勤務を続ければ自分の情報が外部に漏えいされると考えて、約40日間にわたり欠勤したというものである。
そのため、会社は、正当な理由のない無断欠勤であるとして諭旨退職の処分とした。
これについて、最高裁は、会社は、精神科医による健康診断を実施し、必要な場合は治療を勧めた上で休職等の処分を検討すべきであり、いきなり諭旨退職の懲戒処分することは,使用者の対応として適切であるとして、諭旨退職処分を無効とした。
このような判例を紹介すると、経営者の方はたいてい憤る。
ただ、裁判所の考え方は、精神的な問題があったとしても、いきなり解雇するのでなく、まずは治療等の方法を試みなさいということであり、最終的な判断権は裁判所にあるのだから、その論理に従うしかない。
すなわち、解雇するためには、手順を踏むことが大切であるということである。
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