今日の日経を題材に法律問題をコメント

2012年10月31日(水) 「自己責任」がますます強調されるようになる

 日経(H24.10.31)社会面で、スマホの電話帳に登録された個人情報を抜き取るアプリがインターネットで配信された事件で、IT関連会社の元経営者ら5人を不正指令電磁的記録供用容疑で逮捕したという記事が載っていた。


 抜き取られた電話番号やメールアドレスなどの個人情報は約1180万件に上るようである。


 このスマホの基本ソフトはアンドロイドであったが、アンドロイドの仕様として、個人情報を抜き取る場合には必ず警告がなされる。


 スマホを操作とした人が、それにOKを与えたため、個人情報が送信されたのである。


 したがって、自己責任と一応は言える。


 しかし、高齢者などだれでもスマホを持つようになったから、それを自己責任として単純に切り捨てることはできないだろう。


 そのため、従来であれば、監督官庁が関与して「警告をもっと目立つようにしろ」とかの指導がなされたかもしれない。(盗撮を防止するために、携帯電話のカメラ機能にシャッター音を付けさせたように)


 ところが、アンドロイドはグーグルが中心となった規格団体が提供しているから、日本の官庁の監督の目は届かない。


 結局、個人情報が抜き取られないように自分で注意するしかない。


 あらゆることが「世界標準」の時代となってきている今日、そのように日本の官庁の監督の目が届かず、自己の責任で自分を守るしかないことが今後ますます増えていくのではないだろうか。



2012年10月30日(火) 住民票取得に本人通知制度

 日経(H24.10.30)夕刊で、住民票や戸籍謄本などを第三者が取得した場合に、自治体が本人に連絡する「本人通知制度」が広がっているとの記事が載っていた。


 目的は不正取得を防止するためであり、その目的自体は正しいと思う。


 ただ、弁護士などが、相続人調査や離婚などのために職務上請求する場合がある。


 そのような場合まで本人に通知されるのと困ったことになる。


 不正目的でない場合にも本人に通知すると、余計なトラブルを誘発させることが予想されるからである。


 もちろん、だまって住民票や戸籍謄本を取られる側は嫌かもしれない。


 しかし、職務上請求書には通し番号が付いているから、誰が請求したかが分かる。それにより、不正目的の防止ははかられるだろう。


 本人通知制度が、各自治体によって運用が異なっているのも課題である。


 それゆえ、問題点を整理して、全国統一の運用にしたほうがよいと思う。



2012年10月29日(月) 「KANSAYAKU」?

 日経(H24.10.29)法務面で、「『Auditor』や『KANSAYAKU』では、監査役の職責が海外の投資家に十分伝わらない」として、日本監査役協会は、「監査役」の新たな英文呼称として、「Audit&Supervisory Board Member」を公表したという囲み記事が載っていた。


 監査役は大陸法系の制度であるから、英米法体系の国では監査役制度の意義がうまく理解されないのかもしれない。


 ましてや「KANSAYAKU」という「訳語」では、大陸法系の人々でさえ、何のことか分からないだろう。


 そんな「訳語」を平気で使っていたのだから、日本がいかに内向きであったかということであろう。



2012年10月26日(金) 死刑制度の問題点

 日経(H24.10.26)社会面で、福岡県飯塚市で7歳の女児2人が殺害された「飯塚事件」の再審請求審で、弁護団は、被害者から採取した犯人とされるDNA型を撮影したネガフィルムを分析した結果、「久間元死刑囚とは一致しない、第三者のDNA型がみつかった」と発表したという記事が載っていた。


 それが再審請求にどの程度影響する証拠なのかはよく分からないし、他に真犯人がいるかどうかも不明である。


 ただ、犯人とされた久間元死刑囚はすでに死刑が執行されている。


 そのため、万が一他に真犯人がいるとすれば、国は取り返しのつかないことをしたことになる。


 死刑制度の最大の問題点はここにある。


 アンケートでは圧倒的多数が死刑制度存続を望んでおり、世間の処罰感情は無視できないものがある。


 しかし、上記のような問題があることをアンケートに盛り込んだ場合には、アンケート結果は変わるのではないだろうか。



2012年10月25日(木) 県市町村の役所のセキュリティ体制は甘いのではないか

 日経(H24.10.25)夕刊で、千葉県船橋市の住民情報漏洩事件で、市非常勤職員の容疑者が、自ら住民情報の提供を探偵に持ちかけたという記事が載っていた。


 自ら住民情報の提供を申し出るぐらいであるから、情報を提供すれば金になることは職員に広汎に知られているのだろう。


 実際に情報提供している職員も相当数いるのではないか。


 民間違って県市町村のセキュリティは相当甘い。それだけに、根本的にセキュリティ体制を立て直さないと、この種の事件は減らないと思う。



2012年10月24日(水) 弁護士に懲役1年6月の実刑

 日経ネットニュース(H24.10.23)で、裁判で「真犯人がいる」との虚偽書面を提出したり、自白しないよう別事件の容疑者を脅したりしたとして証拠隠滅罪などに問われた弁護士に対する上告審で、最高裁は、弁護士側の上告を棄却する決定をしたという記事が載っていた。


 これにより、懲役1年6月の実刑とした一、二審判決が確定する。


 記事だけ読むと、とんでもない弁護士のように読めるが、実際は検察のストーリに沿ってつくられた事件だと思う。


 もちろん、弁護士側にも落ち度はあり、「砂上の楼閣」といえるほどの冤罪事件ではないかも知れない。


 それでも、この事件は弁護士にとって怖い。


 事件の一つは、警察署の接見室で、弁護士が仕切り板を叩いて容疑者を脅したというものである。


 裁判では、容疑者の「脅かされた」という証言がそのまま採用されている。


 接見室は密室であり、第三者はいない。その中で、容疑者が「弁護士から脅かされた」と言われたときに、どうやって否定すればいいというのだろうか。



2012年10月23日(火) 家賃を数か月滞納した場合

 日経(H24.10.23)夕刊に、「アパートを貸していますが入居者の中に家賃を数か月支払わない人がいます。どうすればよいですか。」という質問のコーナーがあった。


 回答は、「大家が滞納者と直接交渉する。大家側の弁護士から内容証明郵便で請求する。交渉で解決しない場合は簡易裁判所の調停手続きや、少額訴訟する。さらには解除して明け渡し請求する。」というものであった。


 間違いではないが、家賃を数か月も滞納した場合には、さっさと解除して明け渡し訴訟をした方がよいと思っている。


 数か月も滞納する借主は、その後も滞納を繰り返すことがほとんどだからである。


 滞納の都度交渉するのは、大家にとって大変な気苦労である。


 少々費用はかかっても、明渡し訴訟と、明渡しの強制執行をして、早く次の借主に入居してもらうのが、結局は大家側の得になると思う。



2012年10月22日(月) 民主党が「離党する可能性がある」として除名

 日経(H24.10.22)社会面で、新党「国民の生活が第一」の活動に参加するなど反党行為があったとして民主党を除名された川口元岩手県議が、除名処分を不服として同党を提訴する意向という記事が載っていた


 川口氏は除名されなければ、和嶋未希氏の衆院議員辞職に伴い、繰り上げ当選するはずだった。

 
 しかし、民主党は川口氏が小沢一郎氏に近く、当選しても民主党を離党する可能性があるとみて除名処分にしたとのことである。


 民主党の規約には、党員が倫理規範に反する行為を行った場合には除籍(除名)できるという定めがある。


 ただ、除名処分は最も厳しい処分であるから、それなりの要件が必要であり、「離党する可能性がある」というだけでは除名処分にできないだろう。


 他方、解雇と異なり、政党の自律的判断も尊重されるべきである。


 すなわち、処分の厳しさと、政党の自律的判断のいずれを重視するかという点で、仮に訴えを提起すれば興味深い訴訟になると思う。



2012年10月19日(金) 週刊朝日の記事で謝罪

 日経(H24.10.19)社会面で、朝日新聞出版は、「週刊朝日」に掲載した、橋下徹大阪市長の出自を巡る記事について、「不適切な表現が複数あった」としておわびのコメントを発表したという記事が載っていた。

 
 記事は、タイトルを「ハシシタ 奴の本性」として、橋下氏の父親の出身地や交友関係を記していた。


 しかし、橋下氏の父親の出身地や交友関係などは、橋本氏の政治家としての評価とまったく関係がない。


 個々の表現は違法にならないように注意しているようであるが、全体としては、「出自に問題あるから政治家としての資質がない」と言っているように読める。


 当然、それはプライバシー侵害ないしは名誉毀損に該当すると思われるから、雑誌社が謝罪するのは当然であろう。



2012年10月18日(木) いずれ最高裁は、選挙が違憲無効と判断する

 日経(H24.10.18)1面で、「1票の格差」が最大5.00倍だった2010年7月の参院選選挙区の定数配分が違憲かどうかが争われた訴訟で、最高裁大法廷は「違憲状態」との判断を示したと報じていた。


 参院選では、都道府県単位で選挙区を定めると不均衡がどうしても是正されないため、最高裁は、「単に一部の選挙区定数の増減にとどまらず、都道府県単位の選挙区を改めることが必要」とまで踏み込んだ。


 投票価値の平等だけを純粋に追及すると、衆議院議員選挙と参議院議員選挙が同じになってしまい、憲法が二院制を設けた趣旨が損なわれるというのが多くの意見である。


 そのため、投票価値の平等以外に、参議院の独自性をどこまで認めるかが判断のポイントとなる。


 かつて最高裁は、「現行の都道府県単位の参議院選挙区選挙は地域代表的要素を有する」としていたから、参議院の独自性を強く認める方向にあったといえる。


 それを今回の最高裁判決では「都道府県単位の選挙区を改める必要がある」としたのである。



 都道府県を合区してしまえば、全国区に近づき、地域代表的要素は薄まるだろう。


 つまり、最高裁は、参議院の独自性という価値判断から、投票価値の平等という価値判断に大きく針を動かしたといえる。


 しかも、これまでは、選挙が違憲無効になった場合にどうなるのかの議論はあまりされていなかったが、補足意見では、選挙が違憲無効となっても、それまでの立法は有効であり、また、選挙が無効になるのはその選挙区だけであるから、大きな支障はないと明言した裁判官もいる。


 この流れからすると、いずれは最高裁が選挙が違憲無効とする可能性はあるのではないだろうか。



2012年10月17日(水) 年金基金を未公開株に投資するとは

 日経(H24.10.17)3面で、長野県建設業厚生年金基金が未公開株運用で損失を出した問題で、金融庁は、運用を受託していた信託銀行など3社に、1〜3カ月の一部業務の停止命令を出したという記事が載っていた。


 業務停止命令を受けた3社は、長野県建設業厚年基金の指示で、投資会社RBICOなどが作った未公開株ファンドに資金を振り向けたが、投資の失敗でファンド資産は当初の3分の1以下の22億円まで減った。


 警察は、長野県建設業厚年基金の資産をだまし取った詐欺の疑いでRBICOの家宅捜索している。また、元事務長は20億円もの年金資金を横領し、海外逃亡したとして捜査当局が追及している。


 悪いのは厚生年金基金の事務長と、RBICOなのであろうが、運用を受託していた信託銀行など3社も、投資のプロとしての監視義務を怠り、厚年年金基金の暴走に歯止めをかけられなかった責任があり、業務停止の処分となったものである。


 それにしても、年金という安全性が重視される基金を、未公開株というハイリスクなものに投資するとは。


 年金基金の管理には相当問題があるのではないだろうか。



2012年10月16日(火) 乱暴な労務管理は裁判を惹起させるだけ

 日経(H24.10.16)社会面で、「成績不良」を理由に突然解雇したのは不当だとして、日本IBMの元社員3人が、地位確認と賃金、賞与の支払いを求め、東京地裁に提訴したという記事が載っていた。


 会社から、成績不良者を何とかできないかという相談はときどき受ける。


 入社する際に、一定の営業成績を挙げることが条件となっている場合など、様々なケースがあるので、一概には言えないが、一般的には、成績不良だけでいきなり解雇は難しいだろう。


 記事では、会社は、解雇を通告した上で、数日後までに自主退職を申し出れば、解雇を撤回して割増金を支払うと提案し、多くは自主退職を余儀なくされているとのことである。


 これでは自主退職自体が無効になる余地がある。


 こんな乱暴な労務管理は、裁判を惹起させるだけであるから、止めた方がよいと思うが。



2012年10月12日(金) 刑の免除規定は合理性があるのか

 日経(H24.10.12)社会面で、養子男性の成年後見人が、管理していた財産を横領した業務上横領事件において、「親族間では刑を免除する」との刑法の特例が適用されるかが争われたが、最高裁は「親族関係があっても刑は免除されない」と判断したという記事が載っていた。


 成年後見人の公的立場を考えると、当然の判断である。


 そもそも、「親族間では刑を免除する」という規定に合理性はあるのだろうか。


 せめて「刑を免除することができる」程度に法改正すべきではないだろうか。



2012年10月11日(木) 東電女性社員殺害事件 検察側は無罪を求める?

 日経(H24.10.11)社会面で、東電女性社員殺害事件の再審を前に、検察側が追加鑑定した被害女性の爪から、第三者の男のDNA型が検出されたという記事が載っていた。

  
 この男のDNA型は、女性の体内に残っていた体液からも検出されているから、この鑑定結果は、犯行がマイナリ被告ではなく、その第三者であることが示唆される。


 それゆえ、検察側にとって決定的に不利な証拠である。


 それにもかかわらず、検察側はそれを東京高裁に証拠申請したのであるから、検察側は無罪を求めるつもりかも知れない。


 この事件は、検察側の証拠開示の不十分さが当初から指摘されていたが、その問題を厳しく検証されるべきであると思う。



2012年10月10日(水) 大王製紙前会長に懲役4年の実刑

 日経(H24.10.10)夕刊で、大王製紙前会長が、子会社7社から約55億3千万円を無担保で借り入れ損害を与えた事件で、東京地裁は懲役4年の実刑を言い渡したと報じていた。


 55億円以上の損害を与えたと考えると、懲役4年はかなり軽い。


 ただ、全額会社に弁済しているから、会社に実質的な損害はない。


 それを考えると、懲役4年の実刑は妥当な判決だろうなと思う。


 前会長は即日控訴したそうであるが、結論は変わらないのではないだろうか。



2012年10月09日(火)

 日経(H24.10.9)社会面で、大阪市のホームページに無差別殺人予告の書き込みをしたとして起訴された吹田市の男性が、事件に無関係だった可能性が浮上し、釈放された事件の続報が載っていた。


 この男性は当初から書き込みを否認していたようである。


 しかし、男性のパソコンから書き込みがされた証拠があり、感染したウイルスも遠隔操作で消去されていた以上、男性が書き込んだと疑われても仕方ない。


 警察に落ち度はないだろう。


 この男性は、下手すると有罪になっていたかもしれないわけで、怪しいソフトをダウンロードしないことで防衛するしかない。



2012年10月05日(金) 最高検の公判部長が列車の運行を遅らせる

 日経(H24.10.5)社会面で、最高検の公判部長が、乗車していた東急田園都市線の列車ドアの開閉を繰り返し妨げ、運行を遅らせたという記事が載っていた。


 記事からは往来危険罪には該当しないように思われるが、運行を遅らせたのであるから、業務妨害罪の疑いはあるだろう。


 最高検の公判部長といえばかなりの立場であるのに、酔った勢いということなのだろうか。


 いずれにせよ、かつてであれば握りつぶされていた事件であろう。



2012年10月04日(木) 暴力団組長への訴訟

 日経(H24.10.1)社会面、2006年に元ビル管理会社役員が山口組系組員の男らに刺殺された事件について、男性の遺族らが山口組の組長ら4人に約1億8000万円の損害賠償を求めた訴訟で、和解が成立したという記事が載っていた、


 和解金額は1億1000万円だったようである。


 平成16年に山口組下部団体の構成員による殺人事件で、山口組組長の責任を認める最高裁判例が出された。


 また、暴対法は、対立抗争などで組員が生命、身体等に損害を与えた場合には、組長が損害賠償責任を負う旨を定めている。


 このような判例の確立や法改正などの環境整備により、暴力団組員によって死傷させられた場合に、泣き寝入りしなくてもよい状況が整えられてきているとはいえる。


 それでも、暴力団組長相手に損害賠償請求をするということはとても勇気がいることである。


 報道では和解金額ばかりが報じられがちであるが、被害者側は大変な思いで訴訟しているといったことにも思いを致すべきである。




2012年10月03日(水) 告訴状が期限内に受理されず  裁判所は救済

 日経(H24.10.3)社会面で、警察官が手続きを忘れ、告訴期限内に告訴状が受理されなかった器物損壊事件の判決が東京簡裁であり、裁判官は告訴を有効と認定した上で「処理は著しく適正を欠いていた」と警察の対応を批判したという記事が載っていた。


 告訴については、記事のように、捜査機関のうっかりミスで告訴状が取れてないことがときどきある。しかし、この裁判では「口頭での告訴が認められる」として救済したようである。


 私が担当した控訴審事件でも、一審で、強姦致傷罪で起訴されたが、判決では強姦罪と傷害罪と認定した事件で、告訴状がなかったことがあった。


 控訴理由でその点を指摘したが、東京高裁は「供述調書に告訴意思が認められる」として救済した。


 しかし、そのように救済するくらいであれば、告訴制度を廃止してはどうかと思う。


 すでに、政府の有識者会議「女性に対する暴力に関する専門調査会」は、被害者の告訴がなくても強姦罪で起訴できるようにする刑法改正を提言している。


 そうであれば、すべての親告罪について、その規定を削除し、告訴制度を廃止した方がよいのではないだろうか。



2012年10月02日(火) 後見制度支援信託の問題

 日経(H24.10.2)夕刊で、後見制度支援信託についてQ&A方式で解説していた。


 後見制度支援信託とは、被後見人の財産のうち、日常生活に必要な資金は、親族後見人が管理し、大口資金は信託銀行が管理する仕組みである。


 後見人による不正使用が問題になっており、それを防止するための仕組みである。


 この制度に対しては日弁連は、被後見人の自己決定の尊重や本人のための柔軟な財産管理や身上監護にもとる疑義があるとしている。


 そのような理念上の問題だけでなく、信託銀行の信託報酬が高い点も問題である。


 みずほ信託銀行の場合、1億円の資産があれば、報酬は信託設定時100万円、年4万4100円となっている。


 これは高い。


 もう少し信託報酬を安くしないと、この制度に対して不満が出てくるのは間違いないだろう。



2012年10月01日(月) 事故調が発足

 日経(H24.10.1)社会面で、身の回りで起きる製品事故や食品被害などの原因を究明する消費者安全調査委員会が発足するという記事が載っていた。

 
 関係省庁に再発防止策を示す役割もあり、また被害者らの期待も大きいようである。


 しかし、事故調査の目的を十分詰め切っているのだろうか。また、警察の捜査との調整はできているのだろうか。


 消費者事故調は刑事責任の追及を目的とするわけではない。


 しかし、調査資料が刑事責任の際の資料にもなるとすると、関係者は安心して事情聴取に応じられない。


 再発防止を優先するのであれば、刑事免責をした上で事情聴取するという考えもあり得るが、それでは被害者保護には反するだろう。


 つまり、調査目的として、再発防止を優先するのか、被害者保護を優先するのかが問題になることもあり得る。


 ところが、報道を読む限り、その点があいまいなように見える。


 もっとも、最初から批判だけしても仕方ないが、ただ、そのような問題点を意識しつつ、運用の中で改善していく必要があるだろうと思う。


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