今日の日経を題材に法律問題をコメント

2012年09月28日(金) 情報の不正取得はなくならない

 日経(H24.9.28)社会面で、偽造書類を使って戸籍謄本などを不正に取得したとして、元行政書士ら8人を戸籍法違反や偽造有印私文書行使などの疑いで逮捕したと報じていた。


 彼らは「情報屋」と呼ばれ、全国の探偵業者からの依頼に応じて個人情報の取得を仲介していたそうである。


 個人情報保護が重視されるにようになってから、「情報」の価値はますます上がっている。


 そのため、この種の犯罪は絶対になくならないと思う。



2012年09月26日(水) 小沢被告 控訴審でも無罪か

 日経(H24.9.26)夕刊で、政治資金規正法違反で強制起訴され、一審で無罪判決を受けた元民主党代表小沢一郎被告の控訴審初公判が東京高裁であったと報じていた。


 裁判所は検察側が新たに申請した証拠を全て採用せず、即日結審した。


  控訴審では、初公判で即日結審ということはよくある。


 ただ、裁判所が有罪を認定しようと思っているならば、少しでも有罪に資する証拠があれば採用したはずである。


 それをすべて不採用としたのであるから、控訴審でもやはり無罪になるだろうと思われる。



2012年09月25日(火) にせ医師防止策

 日経(H24.9.26)社会面で、板橋区の病院の健康診断で、医師免許を持っていない男が実在する医師になりすましていた事件の続報が載っていた。


 にせ医師は、患者への危険性はもちろんであるが、雇った病院側も大変な損害を被る。


 それだけに、にせ医師の防止は大切である。


 厚労省は、にせ医師防止のために医師免許証の原本を確認せよと指導しているが、医師免許証が免状の大きさのため、あまり現実的ではない。


 顔写真付きの医師免許証の発行は一つの考え方だが、費用の問題がある。


 現在の厚労省の検索画面では、医師の氏名を入力すると、その医師がいるかどうかは分かるが、それでは不十分である。


 生年月日も公開し、病院側が、運転免許証等で本人確認できるようにしておけば、にせ医師はほぼ防止できるのではないだろうか。



2012年09月24日(月) 試験制度の改革は、たいてい失敗する

 日経(H24.9.24)社会面で、法科大学院を修了していない「予備試験組」の司法試験合格率が68%という高い結果を出したという記事が載っていた。


 予備試験は、経済的事情などで法科大学院に通えない人を救済するというのが本来の理念である。


 しかし、法科大学院に行かない分、若くして法曹界に入れるから、優秀な人たちを中心に、予備試験を目指す動きが広がっている。


 要するに、本来の理念が崩れ、予備試験が、法科大学院をバイパスするための制度になりつつある。


 ただ、このような事態は当初から予測されていた。


 試験制度というのは、どんなに理念が素晴らしくても、受験者からすると、いかに合格するかということが優先される。


 そのため、崇高な理念に基づき制度を改革しても、たいていは失敗する。


 司法試験も、いろいろ手直しする前の、司法試験の一発勝負の方がよかったのではないかと思う。



2012年09月21日(金) 海賊版と知りながらダウンロードした場合に刑事罰

 日経(H24.9.21)社会面で、インターネット上の音楽や動画を「海賊版」と知りながらダウンロードする行為に刑事罰を科す改正著作権法が10月に施行されるという記事が載っていた。


 記事では、罰則導入に対し、日弁連などから「ファイルが違法なものかどうかを一般の利用者が明確に判断するのは簡単ではなく、便利なネット社会が過度に萎縮する可能性がある」という懸念が出ているとしていた。


 しかし、ファイルの内容や表記の仕方から、それが海賊盤かどうかは分かるのではないか。


 ネット社会の保護と、著作権の保護とが対立することはしばしばあるが、「罰則導入によりネット社会が過度に萎縮する」というのは言い過ぎではないかと思う。



2012年09月20日(木) 最高裁のサイトにサイバー攻撃

 日経(H24.9.20)社会面で、政府が尖閣諸島を国有化した11日ごろから、日本の政府機関や大学、企業などの少なくとも19サイトがサイバー攻撃を受けたと報じていた。


 最高裁のサイトでは、14日夜「釣魚島は中国のもの。日本は出て行け」と英語や中国語、日本語で表示されるように改ざんされ、現在も閲覧できない状態が続いている。


 閉鎖が続いているのは、セキュリティ対策をしているためだと思うが、それにしても閉鎖が長すぎる。


 最高裁の幹部は裁判官だから、サイバー攻撃にどう対処してよいのか分からないのかもしれない。


 最高裁のサイトの『最新判例』は、判例のアップが早く、重宝しているのだが。



2012年09月19日(水) 罰刑刑が確定した事件で、最高裁は略式命令を破棄

 日経(H24.9.19)社会面で、事件処理の権限がない大分地検の検察事務官が道交法違反事件などを略式起訴したとして、最高裁は、罰金刑が確定した20人について大分簡裁の略式命令を破棄、公訴棄却の判決を言い渡したという記事が載っていた。


 これは非常上告という手続きであり、判決確定後に、それが法令違反であったことが分かった場合になされる手続きである。


 記事の事件では、当該検察事務官に略式起訴する権限がなかったことが明らかになったため行われたものである。


 略式命令が破棄されたのであるから、罰金刑は返還されるはずである。


 しかし、公訴棄却の場合には再起訴が可能である。


 そうすると、検察官は再度略式起訴するのだろうか。


 その場合には、被疑者としては罰金を支払い事件は終わったと思っているのに、罰金を返還されて、再度略式命令を受けるのだから迷惑この上ない話である。



2012年09月18日(火) 訴訟提起した方が解決は早い

 日経(H24.9.18)夕刊の法律相談のようなコラムで、「有料老人ホームを退去したが、入居一時金が返還されない。どうすればいいか。」という質問をしていた。


 それに対する回答として、「規定上の金額が返還されない場合、まず都道府県の老人福祉担当部局や消費生活センターに相談し、それでも支払わない場合は訴訟の提起の検討が必要でしょう。」としていた。


 私もこのようなケースではさっさと訴訟提起したほうがよいと思う。


 「訴訟」というと、一般の人は「そこまでしなくても」と思うかもしれない。


 しかし、本来返還すべき場合に、相手方はそれを返還しないのだから、交渉を重ねてもらちが明かないことが多い。


 交渉を早々に見切りをつけ、訴訟提起した方が、結局は解決が早かったということはよくあることである。



2012年09月14日(金) 震災を理由に裁判員の呼出から外すことができるか

 日経(H24.9.14)夕刊で、 東日本大震災で被害が大きかった沿岸部の住民を裁判員候補者の呼び出し対象から外した仙台地裁の措置について、仙台高裁は「天災など例外的な事情があるときは、明文の規定がなくて呼出し対象から外すことは許される」との判断を示したと報じていた。


 震災の直後であれば、もっともだと思うが、この裁判は昨年の11月のことであるから、震災から8か月が経っている。


 もちろん、8か月経っていても、震災の被害に遭った人たちは裁判員どころでないと思うが、裁判員候補者数を多くし、震災を理由とした辞退を広く認めるような運営はできなかったのだろうか。

 
 明文の規定がないだけに、運営の仕方に疑問は残る。



2012年09月13日(木) 接見中の写真撮影は許されるか

 日経(H24.9.13)夕刊で、小倉拘置支所で接見中に撮影した被告の画像の消去を職員が強要したのは違法だとして、弁護士が国に330万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論があったという記事が載っていた。


 写真撮影したのは、被告から「刑務官にけがをさせられた」と連絡を受け、その証拠として残すためであった。


 それゆえ、写真撮影する必要性は高かったといえる。


 ただ、面会室への撮影機器の持ち込みは禁止されているし、そのことは大きく掲示されている。


 それゆえ、まずは職員に撮影の許可を求めるべきであったと思う。


 だからと言って、職員らが、無断撮影した写真の消去まで強要することはいきすぎではないだろうか。


 日弁連は、接見するうえで写真撮影は有用な手段であるとして、撮影を禁止しないように求めている。


 それだけに、この訴訟の帰趨は気になるところである。



2012年09月12日(水) 企業からすれば、弁護士経験3年くらいがよい

 日経(H24.9.12)社会面で、司法試験合格者の記事が載っていた。

 その記事の中で、増加する弁護士の就職先として企業や行政機関などで働く「組織内弁護士」の普及が期待されたが、「司法修習を終えたばかりの弁護士を避ける傾向が強い」と書いていた。


 修習終了直後の弁護士を避けるのは仕方ないと思う。


 弁護士の強みは、裁判になった場合に、どのような主張をすればよいのか、どのような証拠を揃えばよいのか、裁判官はそれに対しどのような考え方をするのかを、理屈だけでなく、感覚で分かっていることにある。


 それゆえ、最低3年くらいの実務経験は必要であろう。


 逆に言えば、企業側からすると、弁護士経験10年になると報酬は高くなるだろうが、3年くらいの弁護士であれば、それほど報酬を支払わなくても効果的に雇用することができるのではないだろうか。



2012年09月11日(火) 裁判官が盗撮で略式起訴

 日経(H24.9.11)社会面で、電車内で女性のスカートの中を盗撮したとして、大阪区検は大阪地裁の裁判官を略式起訴したと報じていた。


 今後は罷免ということになるだろう。


 裁判官なのだから、盗撮が見つかれば自分の地位がどうなるかは分かっているはずである。


 先日は、IBMの元社長が、盗撮でメガバンクの社外取締役などの要職もフイにしているし、以前には、ミラーマンと呼ばれた大学教授もいた。


 バレると自己の地位を一瞬にして失うことを分かっていながら盗撮するのだから、それは「一種の病気」ではなく、「病気」そのものなのだと思う。


 それゆえ本来であれば治療が必要な人たちなのだろう。



2012年09月10日(月) 新聞社による名誉棄損訴訟

 日経(H24.9.10)ネットニュースで、日経新聞社と同社社長は、事実無根の見出し・記事により名誉を著しく傷つけられたとして、週刊文春を発行する文芸春秋などに対し、謝罪広告の掲載と計1億5400万円の損害賠償の支払いを求める訴訟を東京地裁に提起したと報じていた。


 裁判を受ける権利は国民の権利である。

 また、雑誌に「社長と女性デスクが不適切な関係にあり、そのために情実人事が行われる」などと書かれて、それが真実でない場合には、当然憤るだろう。

 「あの雑誌記者は許せん。」と思って当然である。


 それでも、新聞社が名誉棄損訴訟を提起するのはどうも違和感を感じる。

 
 報道機関に対する委縮効果が否定できないからである。


 それに対しては、名誉棄損の報道など保護に値しないという反論があり得る。


 しかし、保護に値する報道と、保護に値しない報道とは誰がどこで区別するのだろうか。

 それは、その報道を思想の自由市場に流して、国民が判断すべきことではないのだろうか。


 もちろん、「思想の自由市場」というのは建前であり、そのような「市場」はない。


 しかし、訴えているのは報道機関たる新聞社なのである。


 新聞社による名誉棄損訴訟の提起は、「思想の自由市場」を否定し、すべてを司法に委ねるという点において、報道機関として無責任な気がするのだが。



2012年09月07日(金) 喫煙、飲酒の制限年齢 「現行のままでよい」が約75%

 日経(H24.9.6)社会面で、内閣府が実施した、喫煙と飲酒の年齢制限に関する世論調査で、20歳未満に禁じている喫煙と飲酒を、現行のままでよいとする回答が喫煙で76%、飲酒で77%に達し、制限年齢の引き下げの意見は喫煙、飲酒ともに1割前後にとどまったと報じていた。


 喫煙、飲酒の制限年齢を引き下げるべきでないというのは正論とは思う。


 しかし、世間では、18歳以上になると煙草、飲酒は黙認されているのが実情である。


 青少年の非行対策全般という視点から考えると、18歳以上の煙草、飲酒は非行の対象外とした方が、他の非行対策に注力できてよいのではないだろうか。


 記事の世論調査は、18歳以上に投票権を認める憲法改正の手続きを定めた国民投票法の施行に備え、成人年齢の18歳への引き下げを検討しており、その判断資料とするものである。


 個人的意見としては、18歳以上に選挙権を付与するとともに、少年法の適用年齢も、喫煙・飲酒の制限年齢もすべて18歳未満にした方がよいと思うのだが。



2012年09月05日(水) 天井・照明の耐震化はまだ3割

 日経(H24.9.5)社会面で、全国の公立小中学校のうち、校舎や体育館の照明器具や窓ガラス、天井材などの「非構造部材」の耐震対策を終えているのは約3割にとどまると報じていた。


 東日本大震災では天井材の落下で死傷者が出ていることは周知のとおりであり、体育館で天井材が落下すれば大変な被害が予想される。


 その場合には、公の営造物の瑕疵として、国または公共団体は国家賠償法による責任を負うことになるであろうし、私学であれば、民法717条の土地工作物責任を負うと思われる。


 すなわち、耐震対策を取っていない以上、その建物は「瑕疵」であることを自覚すべきであり、それだけに早急に対策を取る必要があると思う。



2012年09月04日(火) グルーポンへの賠償請求を認めず

 日経(H24.9.4)夕刊で、虚偽説明によって過大な枚数を販売させられ損害が出たとして、東大阪市の美容室経営会社がクーポン共同購入サイト運営会社「グルーポン・ジャパン」に約1700万円の損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は、請求を棄却したと報じていた。


 美容室経営会社側は、「クーポン販売の翌月に販売額の半分が入金されるほか、2割は来店しないと嘘の説明を受けたが、値引きの客が殺到し赤字が出た」と主張していた。


 しかし、裁判所は「説明義務違反はない」と判断した。


 過大な説明によって損害を被ったとして訴える構図は、フランチャイズ契約の訴訟に似ている。


 ただ、この種の訴訟は訴える側はなかなか勝てないようである。


 会社同士の争いなので、消費者契約法の適用はないし、消費者保護という価値判断も働かない。

 しかも、口頭での説明なので、それが虚偽かどうかの証拠が残っていないことが普通だからである。


 交渉する際には録音でもしておいたほうがよいかもしれない。



2012年09月03日(月) 1級建築士なりすましの防止策

 日経(H24.9.3)社会面トップで、全国各地で発覚した1級建築士のなりすまし問題が波紋を広げており、国は免許証の原本提示など再発防止策を打ち出したが、膨大な確認作業を担うことになる自治体や検査機関からは反発の声も上がっていると報じていた。


 記事によれば、国は、自治体や民間検査機関には、設計書類の法定検査等に記載された氏名と登録番号を1件ずつ照会し、免許証はコピーではなく原本の提示を求めるよう推奨しているとのことである。


 しかし、そのような手間をかけずとも、氏名と登録番号をネットで誰でも閲覧できるようにすれば再発防止策として十分ではないだろうか。


 現在は、一級建築士の確認は、窓口申請か、電話での問い合わせに限られている。


 しかし、建築士法6条2項は、国土交通大臣は、一級建築士名簿を一般の閲覧に供しなければならないと定めているのであるから、その趣旨からすると、ネットによって、いつでもどこでも閲覧できるようにすべきであろう。


  そうすれば、誰でもチェックできるし、そのようなシステムがあること自体が1級建築士なりすましの有効な抑止力になると思われるのだが。


 < 過去  INDEX  未来 >


ご意見等はこちらに
土居総合法律事務所のホームページ


My追加
-->