2011年11月30日(水) |
福井女子中学生の殺人事件で再審開始決定 |
日経(H23.11.30)夕刊で、1986年に福井市で女子中学生が殺害された事件の再審請求審で、名古屋高裁金沢支部は、殺人罪で懲役7年の実刑判決が確定し、満期出所した前川さんの再審を開始する決定を出したと報じていた。
この事件の一審では、無罪判決が出ている。
先日のテレビで、無罪を出した一審の裁判長が、確信を持って「有罪とする証拠がなく、無罪である」と言っていたことが印象深かった。
逆にいえば、確信がない場合には有罪にしてしまうのではないかと思ったからである。
揚げ足取りかもしれない。ただ、裁判官は「有罪推定」であると揶揄されているのも事実である。
2011年11月29日(火) |
捨て印は押してもよい? |
日経(H23.10.6)広告欄で、雑誌プレジデントの「捨印 簡単に押すと目が飛び出す損害も」という記事が載っていた。
捨印を求められて、「いいのかなあ」と悩むことはときどきあると思う。
そもそも、捨印は、重要でない箇所の明らかな誤記を訂正するときに、勝手に訂正していいですよという趣旨で押すものである。
それゆえ、重要な内容の訂正は認められない。
例えば、住所の番地が違っていた場合には捨て印で訂正できるだろうが、借用書の場合に、借入金額を訂正するのは捨印の趣旨を越えており、認められない。
ただ、重要とそうでない部分の見極めは難しいかもしれない。
私は捨印を押す方であるが、知り合いの弁護士で、捨印は絶対に押さない人もいる。
結局は、捨印は自己責任でということになるのだろう。
日経(H23.11.25)社会面で、違法風俗店の広告を「日刊ゲンダイ」に掲載したとして、警視庁は日刊現代の子会社「日刊現代アド」を風営法違反(広告宣伝)容疑で書類送検したという記事が載っていた。
新聞広告で広告会社が責任を問われるというのは珍しいように思う。
かつて、通信ベンチャー企業「平成電電」による詐欺事件で、同社の広告を掲載した朝日、読売、日本経済の新聞3紙にも責任があるとして全国の投資家らが損害賠償を求めたことがあった。
この事件では、弁護士団が、3紙に平成電電の広告の掲載を止めるよう申し入れていたにもかかわらず、その後も広告を掲載した経緯があった。
しかし、裁判所は、3紙の責任を否定している。
また、以前、株式の専門紙に、「にっぱちや」による違法広告が平気で掲載されていたので、専門紙の発行会社に苦情を言ったことがあるが、「違法かどうかまで分からないので」と柳に風の受け答えだった。
今後は広告会社の責任が問題になってくるのだろうか。
2011年11月24日(木) |
オリンパス元社長が東京地検の担当者と「面会」 |
日経(H23.11.24)夕刊で、オリンパスのウッドフォード元社長が、東京地検特捜部の担当者と面会したという記事が載っていた。
検察庁から参考人として聴取されたのであれば分かるが、「面会」という表現には不思議な気がした。
捜査機関は、必要があれば呼びつけるが、関係者から会いたいと言っても、あまり会おうとしないからである。
おそらくこの「面会」で、検察庁側からは、「いずれは参考人として聞くこともありますので、そのときはことらから連絡します。」という程度の話をして終わったのだろうと思う。
2011年11月22日(火) |
大王製紙の元会長「違法性の認識がなかった」 |
日経(H23.11.22)社会面で、大王製紙の井川意高前会長による巨額借り入れ問題で、同社が、会社法違反(特別背任)容疑で井川前会長を告発したと報じていた。
これについて、前会長の代理人弁護士は「前会長は借り入れの事実を認めているが、当時は違法性の認識がなかった」と説明しているそうである。
代理人弁護士であれば承知していることであるが、「違法性の認識がなかった」というのは言い訳にならない。
刑法の教科書的には「違法性の錯誤」という問題であり、「違法とは思わなかった」というだけでは故意がなかったことにはならないからである。
それだけでない。
前会長は大会社の経営者だったのであるから、会社から巨額な借入してカジノに流用しながら「違法性の認識がない」ということは、罪が重くなる事由になっても、情状酌量の事情にはならないであろう。
2011年11月21日(月) |
オウム真理教の裁判が事実上終結 |
日経(H23.11.21)夕刊で、元オウム真理教幹部・遠藤被告の上告審判決で、最高裁は被告側上告を棄却し、死刑が確定すると報じていた。
これで、教団の強制捜査をしてから16年余を経て、一連の裁判は事実上終結することになる。
強制捜査が行われたころ、裁判になれば10年はかかるだろうと思った。
それが16年もかかるとは。
裁判の長期化は「弁護人のせいだ」という意見もある。
弁護人が意識的に引き延ばしたわけではないだろうが、「本来の刑事訴訟のあり方」という理念にこだわり過ぎたのかもしれない。
2011年11月18日(金) |
罰金「30円」は違法 |
日経(H23.11.18)社会面で、自動車運転過失傷害罪で罰金30万円を求刑された事件で、小倉簡裁の裁判官が誤って「罰金30円」の略式命令を出していたという記事が載っていた。
「30万円」とすべきところを「30円」としたわけであり、パソコンで書く時代では誰でも起こしそうなことである。
また、契約書であれば、この程度の間違いは「明らかな誤記」と解釈され、無効とはならないであろう。
ただ、判決書の主文であるからそういうわけにはいかない。
「罰金30円」とすれば、そのとおり解釈するしかないであろう。
そして刑法は罰金を1万円以上と規定しているから、その略式命令は違法になってしまう。
2011年11月17日(木) |
週刊誌の記事による名誉棄損が多過ぎる |
日経(H23.11.17)社会面で、厚生労働省の文書偽造事件に関する週刊新潮の記事で名誉を傷つけられたとして、石井一参院予算委員長が損害賠償などを求めた訴訟で、東京地裁は名誉毀損の成立を認め、550万円の支払いを命じたという記事が載っていた。
新聞や週刊誌の記事に対し政治家などが名誉棄損で訴訟することには謙抑的であるべきとは思う。
ただ、週刊誌の記事による名誉棄損は多過ぎる気がする。
とくに、新潮社(週刊新潮)と講談社(週刊現代)が圧倒的に多いという印象がある。
アメリカのように懲罰的損害賠償が認められるならば、名誉棄損を繰り返せば賠償額はだんだん多額になっていくだろう。
そうすれば、ろくな取材をせずに書きたてることは抑制されるかもしれないのだが。
2011年11月16日(水) |
永住資格を持つ外国人は生活保護の対象 |
日経(H23.11.15)社会面で、大分市が生活保護の申請を却下したのは違法として、永住資格を持つ中国籍の女性が却下決定の取り消しなどを求めた訴訟で、福岡高裁は「永住外国人は生活保護法を準用した法的保護の対象になる」として、市の却下処分を取り消したという記事が載っていた。
永住外国人について、日本人と同様に生活保護法の対象になることを認めた判決は全国で初めてのようである。
生活保護法では、生活保護の対象は日本国民に限定しているが、厚生省社会局長通知で「外国人にも生活保護法を準用する」としており、現に相当数の外国人が生活保護を受けている。
それゆえ論点は、この局長通知を根拠に生活保護の対象を外国人まで含めてよいのか、それとも通知は単なる恩恵的なものに過ぎないのかということになるのだろう。
なかなか難しい問題である。
外国人一般まで生活保護の対象に含めるのは行き過ぎであろうが、永住資格取得者については対象に含めてよいという考えもあり得る。
いずれにせよ最高裁の判断がなされることになるだろう。
2011年11月15日(火) |
東電に除染を求める請求 東京地裁が却下 |
日経(H23.11.15)社会面で、福島原発事故を巡り、福島県のゴルフ場が東電に除染などを求めた仮処分申請について、東京地裁は却下する決定をしたという記事が載っていた。
却下した理由づけは「東電に賠償を求めるなどの方法もあり緊急性がない」ということのようである。
裁判官は、この事件が最初に配点されたとき、東電に対する除染請求を認めると、次から次へと請求が起こされ、それに東電が対応できるはずがなく、大変な事態になると思ったのではないか。
その場合、仮処分申請で却下しやすい理由づけは「緊急性がない」ということである。
つまり、結論が先にあるような決定であると思うが、裁判はそんなものといえる。
2011年11月14日(月) |
法的裏付けのない主張は支持されない |
今日は休刊日。昨日の日経(H23.11.13)スポーツ面に、清武巨人球団代表が来季の1軍ヘッドコーチ選任などを巡って渡辺会長を批判する声明を発表したことに対し、渡辺会長が反論の文書を発表したという記事が載っていた。
この騒動、ワンマン会長に対するたった一人の反乱として世論の支持を集めるかと思いきや、意外と支持が少ないようである。
その原因は、清武球団代表の批判声明に法律上の裏付けがないことにあるように思う。
渡辺会長は、親会社の読売新聞グループ本社の代表取締役であるから、球団人事に口出しをしても、その是非は別にして、違法とは言えない。
その口出しがおかしいと思うのであれば、代表取締役社長と協議をするなり、取締役会を開くなりして、きちんとその口出しを排除すればよい。
球団代表とはいえ、会社の役職としては専務の立場にすぎない者が、その手続きを踏まずに、いきなり記者会見をするというのは、普通の会社では考えられないことである。
結局、たとえ正論であっても、法的な裏付けがない主張はなかなか受け入れないということだろうと思う。
記者会見には弁護士が同席していたが、事前にこの点の問題を指摘したのであろうか。
日経(H23.11.11)社会面で、今年から始まった司法試験予備試験に、116人が合格したという記事が載っていた。
この試験は、金銭的な理由で法科大学院に通えない人にも法曹の道を確保する目的で始まったものであり、理念としては素晴らしい。
しかし実際には、優秀な人が、法科大学院の2年間をバイパスする手段として使うと思われる。
実際、今回の合格者の最年少は20歳であり、この人が司法試験に合格すれば、法科大学院の2年間を経ることなく法曹資格を得ることになる。
結局、試験制度をどのように改革しても、理念と実際が異なるのが現実である。
そうであれば、試験制度をあれこれいじらず、かつてのように司法試験一本で合否を決めた方がすっきりすると思うのだが。
日経(H23.11.10)夕刊で、オリンパスが証券投資の損失を隠していた問題で、監査を担当していたあずさ監査法人から、過去のM&Aの問題点を指摘されながら対応せず、監査法人を変更していたという記事が載っていた。
記事によれば、あずさ監査法人は2009年3月期決算の監査で、ファイナンシャルアドバイザーに支払った報酬や国内3社の買収資金が高額だったことを指摘した。
これを受けて、オリンパスは弁護士らによる外部調査委員会を設けたが、十分な調査をせず、決算期の監査直後に同社の会計監査人を新日本監査法人に変更したとのことである。
証券投資の損失を隠しが発覚する前に、会社の代表者は、「アドバイザーに支払った報酬や買収価格は適正であり、弁護士からも適正意見をもらっている」と言っていから、この外部調査委員会の調査ことを指しているのだろう。
しかし、「十分な調査をせず」ということであれば、弁護士の責任も問われかねないだろう。
もちろん、会社が十分な説明をしなければ、何が問題か分からないし、調査も満足にできない。
ただ、冒頭の記事であったように、すでに監査法人が報酬や買収資金が高額であると問題点を指摘していたのであれば、「分からなかった」では済まないのではないだろうか。
日経(H23.11.9)社会面で、長野県安曇野市で車に火を付けたとして放火の疑いで逮捕されていた容疑者について、精神状態を調べるため鑑定留置が行われるという記事が載っていた。
期間は11月4日から来年1月16日までであるから、2か月以上留置される。
通常であれば逮捕・勾留期間は約23日間なのに、鑑定留置されることによって身柄拘束期間が大幅に伸びることになる。
鑑定にはそれ相応の期間が必要であると言われれば反論しにくいが、容疑者側の立場からすれば、もう少し早く判断できないのかと思ってしまう。
2011年11月08日(火) |
まさか証券投資の損失を解消するためとは |
日経(H23.11.8)夕刊で、オリンパスは、過去の企業買収で支払った多額の報酬や買収資金が、同社の証券投資の損失を解消するために使われていたと発表した報じていた。
企業買収で多額の報酬を支払ったことについて、誰もが何かあると思っていたはずである。
しかし、まさか証券投資の損失を解消するためとは思わなかった。
今後は取締役の刑事責任が問われる可能性が高いが、監査法人の責任も問題になってくるだろう。
2011年11月07日(月) |
人身傷害保険 保険会社によって補償内容が異なる |
日経(H23.11.7)広告欄で、雑誌『エコノミスト』の「生保、損保の賢い選び方」という記事が載っていた。
「保険の賢い選び方」の基準は保険によって違うだろう。
ただ、自動車保険の場合は、保険料が高いか安いかがもっぱら注目されているようである。
しかし、自動車保険のうち人身傷害保険については、保険会社によって補償の内容が相当異なっていることはあまり知られていない。 http://www.e-hocnet.info/detail.php?ct=mo&no=162
ちなみに、人身傷害保険とは、自動車の人身事故にあった場合、過失割合に関係なく保険金が支払われるものである。
ただ、損害の算定において、ある保険会社では裁判所の基準が適用されるが、別の保険会社では自社基準が適用される。
そうすると補償額が相当違ってくる場合が生じることになる。
もちろん、自由競争であるから同じ補償内容である必要性はない。
問題は、「人身傷害保険」という同じ商品名であるのに、補償額が異なってくることが消費者に充分周知されていないことであろう。
2011年11月04日(金) |
「一部執行猶予」制度を採用 |
日経(H23.11.4)夕刊で、懲役や禁錮刑の途中で仮釈放し、残る期間の刑の執行を猶予して再犯防止のための専門プログラムなどに参加させる「一部執行猶予」制度を採用という記事が載っていた。
再犯率の高い薬物使用者などに対し、医療機関の受診や社会貢献活動などへの参加を義務付けて、社会復帰を促すのが狙いとのことである。
薬物犯罪では、被告人は、法廷で「もう二度と使用しません」と誓うのであるが、再び薬物に手を出すことは多い。
二度目の裁判でも「もう二度と使用しません」と誓うのであるが、検察官から、「きみは前の裁判でも『使用しない』と誓ったのではないのか」と問い詰められ、うなだれてしまうという光景がしばしば見られる。
これは、反省が十分でなかったからというよりも、繰り返し使用してしまう精神状態の問題が大きいのだろう。
つまり、薬物犯罪者には治療こそが重要であり、その意味で医療機関の受診などを義務付けることには有意義なことであると思う。
2011年11月02日(水) |
厚労省研究班が脳脊髄液減少症の診断指針を作成 |
日経でなく朝日(H23.11.2)で、交通事故や転倒をきっかけに、激しい頭痛やめまいなどが続く「脳脊髄液減少症」について、厚生労働省の研究班が診断指針を作ったという記事が載っていた。
脳脊髄液減少症は、頭部への強い衝撃などで、脳や脊髄を覆う硬膜に穴が開き、中の髄液が漏れることで発症すると考えられており、交通事故による損害賠償請求で主張されることが増えている。
それに対する裁判所の判断は様々だが、脳脊髄液減少症自体を認めなかったり、交通事故との因果関係を否定する判例の方が多いように思われる。
今回の診断指針の作成により、裁判所としては一応の判断基準ができたわけであるから、歓迎するであろう。
しかし、その診断指針が被害者に有利に働くかどうかは分からない。
2011年11月01日(火) |
「いつまでしがみつくのか」との発言は違法か |
日経(H23.11.1)社会面で、日本航空の契約社員の客室乗務員だった女性が、契約を更新されず雇い止めになったのは不当だとして、地位確認と損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は、日航側に20万円の支払いを命じ、地位確認請求は棄却したという記事が載っていた。
判決によれば、自主退職を望まない乗務員に、上司が「いつまでしがみつくのか」「辞めていただくのが筋」などと発言したことが違法であるとされたようである。
しかし、この乗務員は契約社員であって、しかも、業務適性を欠くと判断されていた。
とすると、「いつまでしがみつくのか」「辞めていただくのが筋」と言うのは、社会通念上許される範囲であると思うのだが。
会社の行為が違法とはされたが、地位確認は認めず、賠償額も20万円と極めて低額であり、元乗務員側としても不満は残るであろう。
元乗務員と会社の両方の顔を立てたようで、両方に不満が残る判決であろう。
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