日経(H23.2.28)17面で、2000年の法改正で認められた会社分割制度を巡り、乱用とみられるケースが相次いでおり、裁判では被害にあった債権者が勝訴する例も出てきているという記事が載っていた。
会社分割制度ができたときに、債権者の利益があまりに無視されており、このような制度を作って大丈夫かなと思っていたが・・。
会社分割制度については早急に法改正する必要があると思う。
日経(H23.2.25)夕刊で、2010年に摘発したヤミ金融事件は393件で、前年より11.1%減ったと報じていた。
実際、ヤミ金の相談は激減している。
昨年6月、個人の借入総額を年収の原則3分の1以下に制限する改正貸金業法が施行された。
年収制限にたいしてはヤミ金が増加するという批判があったが、その影響はなかったようである。
2011年02月24日(木) |
西武鉄道の虚偽記載 東京高裁は賠償額を大幅に減額 |
日経(H23.2.24)社会面で、西武鉄道の有価証券報告書の虚偽記載事件により株価下落で損害を受けたとして、株主らが、西武鉄道などに損害賠償を求めた事件で、東京高裁は、計約19億万円の支払いを命じた一審判決を変更し、約5億6000万円と大幅に減額したという記事が載っていた。
裁判所は、「虚偽記載の株価に対する影響は、経済情勢の変動や西武鉄道の企業業績など多数の要因の一部にとどまる」として、損害額を1株につき虚偽記載公表直前の終値1081円の15%として算出したそうである。
株価は、虚偽記載だけでなく多数の要因で決まるというのは、東京高裁の言うとおりである。
ただ、虚偽記載の影響が15%であることの説明はなされていないと思う(判決文を読んだわけではないが、説明のしようがないであろう)。
おそらくどんぶり勘定だろう。
ただ、虚偽記載したことによる株価の影響を厳密に算定することなど無理な話であり、それも仕方ないことである。
2011年02月23日(水) |
保護司の物的被害に補償制度 |
日経(H23.2.23)社会面で、法務省が、保護司が物的被害を受けたり、家族に危害が加えられたりした場合に、補償することを検討という記事が載っていた。
現行は保護司本人の人的被害に限定されているが、保護司の自宅が保護観察中の少年に放火され全焼したことがきっかけである。
保護司は、保護観察中の人が社会で生活するのを指導、援助しながら更生に導くのであるが、実際の活動としては、保護司の自宅に呼んで現在の生活状況などを聞くことが多い。
しかし、自宅を知られることに懸念を示す保護司もいる。自宅が放火された事件があると、なおさらであろう。
保護司は国家公務員であるが、無給で実質的にはボランティアである。
それだけに過度の負担をかけるのは気の毒であるし、なり手がいなくなってしまいかねない。
補償制度の充実することはもちろん、保護観察中の人と面会は、すべて保護観察所とするなどの工夫すべきではないだろうか。
2011年02月22日(火) |
海老蔵氏暴行事件で、伊藤被告が保釈 |
日経(H23.2.22)社会面で、市川海老蔵氏への暴行事件で、傷害罪に問われた伊藤被告について、東京地裁は保釈を認めたという記事が載っていた。
保釈保証金は250万円であった。
保釈保証金は、犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる金額でなければならないとされている。
したがって、資産の多い人の場合には保釈保証金は多くなる。ちなみに、ライブドア事件の堀江被告は3億円であった。
ただ、一般の人で、前科がなく執行猶予が間違いない事案であれば、200万円以下であることが多い。
それゆえ、伊藤被告の250万円というのはやや高いが、傷害の程度が大きかったこと考慮されたのかもしれない。
日経(H23.2.21)17面「リーガル3分間ゼミ」で、感染症にかかった従業員の取り扱いについて書いていた。
会社の判断で休ませる場合は、会社の都合なので休業手当が必要となる。
これに対し、医師の指示や、法令などに基づいて休む場合には、会社には責任がないので休業手当を支払う必要はない。
すなわち、従業員の休業が会社の責任かどうかで分かれることになる。
ただ、従業員からすると両者に違いがないのに、休業手当が出る場合と出ない場合があるのは納得できないかもしれない。
2011年02月18日(金) |
放送局職員が、盗んだ放送機材をネットオークションに出品 |
日経(H23.2.18)社会面で、NHKの放送機材を盗んだ容疑で、NHK職員が逮捕されたという記事が載っていた。
この職員は、放送局の放送機材を盗み、ネットオークションに出品していたそうである。
これまでは窃盗をしても売却するルートが限られていたため、会社の備品などを盗もうという動機づけがなかった。
ところが、ネットオークションという手段ができてから、職場の備品等を盗むケースが増えたように思う。
会社の備品などがたびたび無くなるような場合には、ネットオークションをチェックした方がいいかもしれない。
日経(H23.2.17)社会面で、内々定を取り消した企業に対し、福岡高裁は、不法行為を認定して損害賠償を命じたという記事が載っていた。
企業としては、内々定の段階で取り消しても違法になるというのは納得できないかもしない。
ただ、この事件で福岡高裁が企業に命じた賠償金額は22万円である(一審は85万円)。
22万円程度しか認められないのでは、内々定を取り消された側は、裁判してまで争おうとは思わないだろう。
その意味では、この裁判は痛み分け的な判決と言える。
2011年02月16日(水) |
過払い金返還問題の懸念が後退 |
日経(H23.2.16)17面で、消費者金融の過払い金返還問題の懸念が後退したという記事が載っていた。
これは正しいのではないか。
多重債務の事件は確実に減っているからである。
広告を派手に打って顧客を集めている大手法律事務所は、すでに大都市を見限り、地方に進出している。
その地方でも事件は少なくなっているのではないだろうか。
いずれにせよ、過払い金債権の時効は10年だから、いずれこの問題がなくなることは間違いない。
2011年02月15日(火) |
講談社が相撲協会に損害の回復を求める |
日経(H23.2.15)社会面で、講談社が、相撲の八百長疑惑を報じた記事で敗訴し、記事の取り消し広告を掲載したことに対し、相撲協会に損害の回復を求める通告書を送ったと報じていた。
「誠意ある回答がない場合は、断固たる法的措置を取る」とのことである。
今回、現役力士の携帯電話から八百長の明白な証拠が出てきており、力士も八百長を認めている。
これまで相撲協会は、「八百長は一切ない」と言っていたのであるから、講談社が怒る気持ちは分かる。
しかし、記事で報じた八百長と、今回明らかになった八百長とは異なっている。
それゆえ、名誉棄損したという事実に影響はなく、相撲協会に「損害の回復」まで求めることは難しいのではないだろうか。
2011年02月14日(月) |
書面を交付しなかったことで逮捕 |
日経(H23.2.14)夕刊で、ミネラルウォーターを販売した際、書面を交付しなかったとして、特定商取引法違反で山口系暴力団員を逮捕したという記事が載っていた。
悪質商法で、書面を交付しないことはしばしばある。
その場合には、クリーンオフの期間が経過していないという解釈で、契約解除を申し立てることはある。
しかし、そのような場合に警察に相談しても「それは民事の問題だから」として相手されないのが普通である。
それが、たとえ暴力団とはいえ、書面を交付しなかったというだけで逮捕するのはいきすぎであろうし、それがまったく問題にされないのはいかがかと思う。
2011年02月10日(木) |
弁護士報酬の基準について |
日経(H23.2.10)社会面で、日弁連の臨時総会で、過払い金返還請求などをめぐる弁護士と依頼主のトラブルをなくすため、債務整理の弁護士報酬に上限を設けるなど規制強化を盛り込んだ案を賛成多数で可決したと報じていた。
かつて、弁護士会は報酬規程を作成していたが、競争を実質的に制限するものであり独占禁止法違反になる余地があるとして廃止された。
そのため、それぞれの弁護士が報酬を自由に決められることになった。
今回、債務整理に限定してはいるが、報酬に上限を定めることは、これに逆行するものであり、独占禁止法違反になる可能性があったが、規制には公益目的があるということで、独禁法の問題をクリアしたようである。
しかし、債務整理に限らず、報酬が自由であると、依頼者にとってはそれが高いのか安いのか分からないのではないだろうか。
依頼者の便宜を考えると、弁護士会が報酬の目安を作成すること程度は許されていいのではないかと思うのだが。
2011年02月09日(水) |
家族の実情に応じた相続対策を |
日経(H23.2.8)夕刊で、「高齢化社会は大相続時代でもある。相続をきっかけに親族間で争いが起こるケースが目立ってきた。親族間の相続争いを回避するために、今から準備できることは何だろうか。」という記事が載っていた。
記事では、生前に親の意思を明確に伝えておいたので相続がうまくいったというケースを書いていた。
しかし、それでうまく行く場合もあれば、親の考えを伝えた結果、兄弟の仲が悪くなることもある。
やはり、自分の家族の実情に応じた対策を講じることが大切であろうし、そのようなアドバイスができる人いればいいのだが。
2011年02月08日(火) |
殺人事件で暴力団幹部に無罪 |
日経(H23.2.8)社会面で、暴力団幹部を射殺したとして殺人罪などに問われた事件で、福岡地裁小倉支部は暴力団幹部らに無罪を言い渡したと報じていた。
この事件では、裁判員や親族に危害が加えられる恐れがあるとして、全国で初めて裁判員裁判の対象から除外されたということで注目されていたようである。
その点はともかく、判決では、「被告人の検察官調書は被害者宅の近所の人の証言など客観的な証拠と矛盾している」と指摘している。
しかし、最終的な検察官調書は起訴直前に作成するが、その際、他の証拠と整合性があるように調書を作っていくので、矛盾は生じないはずである(この点が、検察官調書が検察官の作文であると言われるゆえんである。)。
それなのに、検察官調書が他の証拠と矛盾するというのはどういうことなのだろう。
起訴後に新たな証拠が出てきたのか、それとも検察官がうっかりしていたのか。
日経(H23.2.7)夕刊面で、車いすで道路を横断していた夫婦が自動車にはねられて死亡したが、加害者が逃げた事件で、逮捕された加害者の男性は「自賠責保険に入っておらず、賠償が怖くなって逃げた」と供述、という記事が載っていた。
ひき逃げをする動機は様々であり、私が扱ったケースでも、「酒を飲んでいたから」「新規開店の準備をしていたのに、捕まるとすべてがダメになると思って」「執行猶予中で、執行猶予が取り消される」などなど、いろいろであった。
記事の事件と同様に、「保険に入っていなかった」という理由もあった。
任意保険に入っていないと、民事上の責任が大変な金額になるだけでなく、示談できる可能性が低いから、刑事上の責任も重くなりがちである。
ましてやひき逃げの動機にもなりかねないのだから、どんなことがあっても任意保険に入るべきである。(大抵の人はそうしているのだが)
2011年02月04日(金) |
鉄道各社の定期券の解約ルール |
日経(H23.2.4)社会面で、鉄道の定期券の解約ルールの記事が載っていた。
定期券を購入直後に解約する場合、関西私鉄では有効期間の開始日の3日目まで、関東では7日目までの解約であれば、日数分を差し引いて残りを返金するが、それ以降は1カ月分は返金しないことになっている。
この解約ルールに対し、消費者団体の消費者支援機構関西が、国交省にこの点の是正を鉄道各社に指導するよう申し入れたとのことである。
転勤などで定期券を解約せざるを得なくなった場合に、使っていない期間の払い戻しが受けられないというのでは、釈然としないだろう。
そこで、この鉄道各社の解約ルールは消費者の利益を害し、無効であると主張できるであろうか。
その理論構成としては、この解約ルールは実質的には損害賠償額の予定ないし違約金の定めであるとして、あるいは消費者の利益を一方的に害する条項であるとして、消費者契約法により無効を主張することが考えられる。
その場合、定期券を1か月単位で考えることの合理性が問題になるだろう。
すなわち、合理性がないとなれば無効の方向に傾くだろう。
解約時の精算の手間を考えると、かつては1か月単位で計算することに合理性があったかもしれない。
しかし、コンピューターが発達した現在では精算金は簡単に計算できるであろうから、1か月単位で計算する合理性はないのではないだろうか。 (現に、3日または7日までであれば日割り計算して返金している)
そうすると、鉄道各社の定める解約ルールは問題があるということになりそうである。
2011年02月03日(木) |
捜査情報が漏れていいのだろうか |
日経(H23.2.3)社会面で、大相撲の力士らが八百長を疑わせるメールをやり取りしていた問題の続報を載せていた。
日本相撲協会は、これまで八百長の存在を全面的に否定してきており、八百長を報じた雑誌社などに対し損害賠償請求をして多額の賠償金まで取得していた。
しかし、やはり八百長はあったわけで、まったくひどい話である。
ただ、メールのやり取りは、強制捜査で押収した携帯電話のメールを再現したものであり、もともと捜査情報である。しかも八百長は残念ながら刑事事件にならない。
どの段階でマスコミが知ったのかは分からないが、そのような情報が漏れていいのだろうかという疑問はある。
2011年02月02日(水) |
偽造の遺言書で財産を不正に取得 |
日経(H23.2.2)社会面で、85歳で死亡した身寄りのない女性の遺言書を偽造し、東京家裁に提出したとして、5人を有印私文書偽造・同行使容疑で逮捕したという記事が載っていた。
女性は約2億円の預金や自宅の土地を所有していた資産家で、容疑者らは、偽造した遺言書を家庭裁判所に提出し、偽造遺言書をもとに家裁に対し容疑者に権利があるとさせて、遺産を不正に取得したようである。
相続争いでは、遺言書が提出されると、その内容に不利な相続人から、「偽造だ」と主張することがしばしばあり、実際に裁判で偽造を認定されることもある。
ただ、対立する相続人がいない場合には、偽造を推認させる証拠が提出されないから偽造はなかなか分からないのではないか。
裁判所が気がつかないのかという疑問があるかもしれないが、裁判所は自分では証拠収集しないから、偽造かどうかは分からないこともあり得る。
その意味で裁判所の調査能力は低い。
なお、記事では「不正に相続した」とあるが、容疑者は相続人ではないと思われるので、「遺贈」の間違いであろう。
2011年02月01日(火) |
小澤元代表強制起訴 検察官役は自信なさそう? |
日経(H23.2.1)1面トップで、小澤基民主党代表を強制起訴と報じており、社会面で、検察官役の指定弁護士の記者会見での一問一答が掲載されていた。
有罪に持ち込む自信については、指定弁護士はそれぞれ次のように回答している。
「私たちの職務は有罪が確信できたからでなく、法令で決まっている」
「有罪を獲得というよりは議決に基づき、起訴した。」
「内心どう思っているか語るのは適切ではない。」
これを読む限りは、自信はあまりなさそうである。
小澤元代表が無罪となる可能性は十分あるのではないだろうか。
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