2010年01月29日(金) |
時効制度の改正案 過去の事件にも適用 |
日経(H22.1.29)社会面で、法制審議会は、殺人罪などの時効を廃止し、その他の罪は時効期間を現行の2倍に延長する法改正の「要綱骨子案」を提示したという記事が載っていた。
その中で注目されるのは、過去に発生し時効が進行中の事件にも、遡って適用するという点である。
そのため、過去に起こした殺人罪でも時効がないことになる。
これは被害者の会の強い要望に応えたのだろう。
しかし、刑事法を過去の事件に遡って適用していいのだろうかと思う。
憲法39条には、行為時に適法であった行為を、後に制定した法律によって処罰できないという趣旨の規定がある。
ただこれは実体法(刑法など)についての規定であり、訴訟法には適用されないというのが多数説である。(最高裁も明言していないが、同様の見解と思われる。)
それゆえ、時効の廃止や時効期間の延長を、すでに起こした事件にも遡って適用しても、憲法39条の遡及処罰禁止の規定に反するわけではない。
ただ、法適用の安定性、明確性という見地からは、新法制定前に遡らせず、制定後の事件から適用した方がよいのではないかと思うのだが。
2010年01月28日(木) |
明石歩道橋事故で、副署長を起訴へ |
日経(H22.1.28)社会面トップで、明石歩道橋事故で、検察審査会は、当時の明石警察副署長について、起訴相当との議決をしたと報じていた。
検察審査会の起訴相当決議は2度目であり、昨年の法改正により、起訴が義務付けられることになった。
しかし、検察審査会の1度目の起訴相当決議を受け、検察庁は、起訴できないか十分検討しているはずである。
それでも起訴しなかったのであるから、有罪とするのが難しい事件であることは間違いない。
検察官は裁判所が定める弁護士が就任するが、立証には非常な苦労が予想されるから、積極的にやりたいと思う弁護士はいないのではないだろうか。
2010年01月27日(水) |
法定利率の変動金利について |
日経(H22.1.27)19面の「大機 小機」というコラムで、低金利時代に、法定利率が高すぎると書いていた。
民法では法定利率は年5%、商事になると年6%であるから、今の感覚だとかなり高い。
そのため、こちらが勝ちそうな事件で、相手方の支払い能力に心配がないケースでは、少々事件が長引いても困らない。
貯金しているより徳だからである。
しかし、20年前のバブルのころは、「年5%では低いなあ」という感覚であった。
そのようなことを考えると、やはり法定利率も現在の経済情勢に見合っていることが望ましく、変動金利にした方がよいのだろう。
2010年01月26日(火) |
歴史上の人物の商標登録 |
日経(H22.1.26)社会面で、特許庁は「吉田松陰」などの商標を取り消したという記事が載っていた。
商標法では、他人の氏名は、その承諾なく商標登録はできないと規定している。しかし、それは生きている人の場合を意味し、歴史上の人物は含まれないとされている。
ただ、商標法では、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は登録できないとしており、特許庁は、歴史上の人物の商標登録は「公の秩序を害するおそれがある」として、登録を認めない場合があることを明らかにした。
ただ、歴史上の人物のすべてが認められないわけではなく、特許庁は次の基準で審査するようである。 (1)当該歴史上の人物の周知・著名性 (2)当該歴史上の人物名に対する国民又は地域住民の認識 (3)当該歴史上の人物名の利用状況 (4)当該歴史上の人物名の利用状況と指定商品・役務との関係 (5)出願の経緯・目的・理由 (6)当該歴史上の人物と出願人との関係
このように一応の基準を示しているが、実際に商標登録できるかどうかはやってみないと分からないところがある。
2010年01月25日(月) |
国際結婚の離婚問題で、子の争奪トラブル |
日経(H22.1.25)社会面で、日本人で国際結婚したが、離婚した後、一方的に子どもを自国に連れ帰るなど、子の争奪トラブルが目立っているという記事が載っていた。
その要因として、記事では、一方的に子どもを国外に連れ去った場合に、元の居住国にいったん帰すことを義務付けているハーグ条約に日本が未加盟であり、そのため日本に連れ帰ると相手方は適切な措置をとれなくなるためとしていた。
ハーグ条約の背景には、離婚しても子どもは両親が一緒に育てることが望ましいという価値観が背景にあるように思われる。
実際、欧米では離婚後も共同親権が認められている国は多いようである。
この点、日本では、離婚すると、親権者にならなかった親と子どもの関係も希薄になるのが通常であり、家族観は異なる。
ただ、家族観が違うからといって、一方的に子どもを自国に連れ去ることを、結果的にせよ容認することは問題があるのではないか。
したがって、たとえ家族観が違うとしても、そのこととは別に、ハーグ条約は批准すべきではないかと思う。
2010年01月22日(金) |
足利事件の取り調べ録音テープの内容 |
日経(H22.1.22)社会面で、足利事件の再審公判において、菅谷さんの取り調べた際の録音テープが再生されたという記事が載っていた。
そこでは次のようなやり取りがある。
検事「当時、上は何着てたかね」
菅家さん「上は、セーターだと思うんですけど」
検事「何色の?」
菅家さん「色は、ちょっと、わかんない……」
検事「カーディガンではなくて?」
菅家さん「カーデ、カーディガン着てたと思いますけど」
これを聞くと、菅谷さんが着ていた服について、「セーターではなくカーディガンである」と誘導していることが分かる。
おそらく、目撃者が「犯人はカーディガンを着ていました」と証言しているのだろう。
このように供述すると、供述調書での途中のやり取りは抜きで「その時私はカーディガンを着ていました」という調書になる。
そして裁判では、「供述は具体的であるから、信用性がある」と評価されるのである。
かといって、検事の取り調べに違法があるとは言えないだろう。
というか、オーソドックスでむしろまともな方ではないかと思う。
それだけに、取り調べを後に検証するために、とくに供述した経緯を確認するために、取り調べの可視化が必要だろうと思う。
2010年01月21日(木) |
最高裁が違憲と判断しつつ、高裁に差し戻す |
日経(H22.1.21)1面で、北海道砂川市が市有地を神社に無償提供していることについて、最高裁大法廷は、憲法の「政教分離原則」に反し、違憲であるとの判断を示したと報じていた。
ところが、最高裁は、原告が求めた神社の撤去以外に、無償譲渡や有償使用などの解決策を検討すべきとして、審理を札幌高裁に差し戻した。
これは変な判断である。
裁判所は現状についてそれが違憲であるかどうかを判断することが本来の役割である。
つまり、解決策を検討するのは砂川市であって、裁判所ではないであろう。
今後、差戻し審が開かれる前に砂川市が土地を無償譲渡すれば、原告には訴えの利益がなくなり、訴えは却下になるのではないか。
最高裁は、砂川市に、「さっさと土地を無償譲渡しなさい」と促しているように思えるのだが・・。
2010年01月20日(水) |
日本航空が会社更生法を申請 |
日経(H22.1.20)1面トップで、日本航空が会社更生法を申請と報じていた。
債権者間では事前に調整していたことはしばしば報道されていたが、当然、裁判所とも打ち合わせをしている。
弁護士としては、どこの法律事務所が処理するのだろうかということに関心がある。
2010年01月19日(火) |
検察による報道機関へのリーク |
日経(H22.1.19)2面で、民主党が、検察による報道機関にリークがあるかどうかの調査チームを発足させたという記事が載っていた。
しかし、検察によるリークは従前からあったのであり、いまさらそんな調査チームを作ってどうするつもりなのだろうか。
むしろ問題は、報道機関へのリークはあるものの、何の容疑で捜査しているかが十分報道されていないことである。
もちろん、当面は政治資金規正法違反なのであろうが、報道されているのは、もっぱら土地購入の原資についのようである。
確かに、政治資金規正法の虚偽記載では、故意の有無が問題になっており、その場合、後ろめたい資金であれば、故意に記載しなかったのだろうという推定が働く。
ただ、故意の立証は、土地購入資金の原資以外の捜査でも可能なのではないか。
東京地検は、ずいぶん土地の購入資金にこだわっているようであるが、なにか別の意図があるのだろうか。
2010年01月18日(月) |
ツイッターと公職選挙法の改正 |
日経(H22.1.18)9面で、ソフトバンクの孫社長が、「ツイッターで、今後30年の事業ビジョンを登録者に問いかけたら、一瞬で1140もの案が出てきた。社会会議ではこれだけの案は集まらない」と、その効用について語っていた。
民主党が政権を獲得したことにより、公職選挙法が改正され、ネットによる選挙運動が認められることが確実としばしば報道される。
その中で、ツイッターはどのように位置づけられるのだろうか。
総務省の研究会が2001年にネットによる選挙運動について検討したときにはツイッターは存在しなかった。
つまり、法改正だけでなく、改正のための検討自体が、現実のスピードについていけてないのである。
しかも、総務省のネットの選挙の研究会では、主として立候補者からの選挙運動を念頭に置いていたように思われる。
ところが、ツイッターは、「つぶやき」に対し一瞬で反応が返ってくるのであり、双方向性が極めて強い。
そもそも、選挙運動を一方通行的にイメージすることは誤りであろう。
結局、総務省の研究会がネットでの選挙運動について検討した内容は、ツイッターなどその時点で存在しなかったツールについて検討していないという意味で時代遅れであるばかりでなく、ネットでの選挙を一方的なイメージでしか捉えていないという点でも、時代についていけてないといえる。
ネットによる選挙を認める法改正にあたっては、改めて、「選挙運動」とは何か、選挙運動は単に票集めの運動だけでよいのかという観点から議論し直すべきではないかと思う。
2010年01月15日(金) |
「借りた金を返すな!」の著者を逮捕 |
日経でなく、朝日ネットニュース(H22.1.15)で、「借りたカネは返すな!」という本の著者で知られる八木容疑者が、顧客に「脱税指南」をしていたなどとして、さいたま地検は同人らを逮捕したと報じていた。
八木容疑者は首相の諮問機関「中小企業支援会議」のメンバーとなる見通しだったそうである。
しかし、「借りたカネは返すな!」という本は、見出しからも窺えるように、とんでもないことを書いている。
そのような者を首相の諮問機関「中小企業支援会議」のメンバーとする見識を疑う。
2010年01月14日(木) |
小沢幹事長の関係先を一斉捜索 |
日経(H22.1.14)1面トップで、東京地検は、小沢幹事長の関係先を一斉捜索と報じていた。
強制捜査はある程度の証拠がなければ行わないから、本件ではそれなりの証拠があるのだろう。
しかも、小沢幹事長は参考人聴取に応じていない。
このような場合、会計責任者がまず逮捕され、その供述に基づき、小沢幹事長が逮捕されるという流れが予想されるのだが。
2010年01月13日(水) |
羽曳野市で猟銃を発砲 |
日経(H22.1.13)社会面トップで、大阪府羽曳野市の居酒屋で猟銃を発砲して数人が死亡した事件を報じていた。
容疑者は、妻への家庭内暴力があり、妻側は弁護士には相談したが、警察には相談していなかったそうである。
身内による暴力の場合、警察に相談するのをためらう人もあるが、相談しておくことを勧める。
事件性がないと警察は動かないし、動けない。そのようなときは、「弁護士さんに相談したら」と言われて帰されることもしばしばある。
ただ、事前に相談しておくと、いざというときの警察の動きがスムーズになる。
とくに、本件は猟銃を所持していたから、相談していれば、警察は所持の不許可事由についての確認に動いた可能性がある。
それだけに残念である。
2010年01月12日(火) |
永住外国人に地方選挙権を付与する法案を政府が提出 |
日経でなく朝日(H22.1.12)1面で、「永住外国人に地方選挙権を付与する法案を、政府が提出」と報じていた。
この問題について最高裁は、憲法上、外国人には選挙権は保障されていないが、法律で選挙権を付与することまでは禁止していないとしている(但し、いろいろな条件を付けているが)。
学説の多数も同様である。
もちろん、たとえ地方選挙権であっても外国人に付与することは違憲であるという見解もあるが、学説上はほぼ決着がついているといえる。
ただ、学説上の決着が付いているかどうかの問題と政治上の問題とは異なるが。
2010年01月08日(金) |
日航再建問題 迅速な方針決定が必要である |
日経(H22.1.8)3面で、日航再建問題で、銀行が法的整理に強く抵抗していると報じていた。
日航の再建にあたり、法的整理がよいのか私的整理がよいのかは、経営内容の詳細が分からない第三者には判断のしようがない。
ただ、通常の会社再建手続きとはずいぶん様子が違うように思う。
通常であれば、現経営陣は、法的整理にならないようスポンサーを探しなどに奔走する。
それがうまくいけばよいが、往々にして現経営陣の保身のための安易な再建策であることが多く、金融機関などの同意を得られず、法的整理に移行するということも多い。
ところが、日航の場合には、経営陣は法的整理に反対をしているものの、その意向はまったく無視され、政府と金融機関の利害だけで決められようとしている。
しかも、金融機関は、債権放棄額が同じであれば、債権者平等が原則である法的整理を希望することが多いのであるが、この問題では法的整理に強硬に反対している。
要するに、経営陣が主導権を発揮できていないため、それぞれの利害がからみあい、手続きが迷走しているのである。
しかし、いずれの手続きによるにせよ、再建手続きは迅速に方針を決定することが重要である。
そうしないと、日航に不安を覚えた顧客が、全日空に乗り換える動きがいつまでも続くだろう。
マイレージ制度があるため、一度乗り換えた顧客を取り戻すのは容易ではなく、それが今後の日航の再建を難しくするかもしれない。
2010年01月07日(木) |
裁判員選任手続きに欠席しても科料なし |
日経(H22.1.7)社会面で、裁判員選任手続きに呼び出された人のうち、欠席者は11%であったが、科料に科された人はいなかったという記事が載っていた。
理由なく選任手続きを欠席すると、10万円以下の過料が科されることになっている。
しかし、欠席しても裁判員の選任の障害にならなかったので、裁判所は科料を科すまでもないと判断したのだろう。
ただ、沖縄の裁判では30%が欠席したそうであり、今後、欠席が増えるようになれば選任に支障が出る可能性もある。
例えば50%の人が理由もなく欠席すると、選任に支障が出たといえるだろう。
その場合、欠席したすべての人に科料を科すことになるのだろうが、それは現実的なこととは思えない。
結局、過料を科されることは今後もないのではないだろうか。
日経(H22.1.6)社会面で、兵庫のケアマネージャーが、認知症と寝たきりの高齢者姉妹から5200万円を横領か、という記事が載っていた。
ケアマネージャーが横領するというのは、業務を悪用した極めて悪質な事件であり、厳罰に処されるべきであろう。
それにしても、高齢者の消費者被害などを扱ったり、成年後見人になったりしたりすると、高齢者が何千万円も持っていることはよくある。
世代間には格差があるなあとつくづく思う。
日経(H22.1.5)1面で、「公開会社法を立法化」と報じていた。
現在の会社法は、公開会社、非公開会社にかかわりなく適用される体裁になっている(適用される条文が違うことはあるが)。
しかし、公開会社と非公開会社とではコーポレートガバナンスは異なるはずである。
それを同じ法律で規定するのは無理があり、条文が分かりづらい原因にもなっている。
今回の立法化の目的は、情報開示や会計監査の強化のためのようである。
ただ、それ以上に、公開会社と非公開会社という、同じ株式会社とはいえ性格の違う会社を同じ法律で規律しようとしたことを改め、整理するということを意識して欲しいと思う。
日経(H22.1.4)夕刊で、「押尾学被告を保護責任者遺棄致死罪で再逮捕」という記事が載っていた。
遺棄罪ではなく遺棄致死罪で逮捕したことが注目される。
遺棄罪と遺棄致死罪との違いは、遺棄等によって人を死亡させたかどうかである。
本件でいえば、救急車を直ちに要請していても死亡していたのであれば、遺棄致死罪は成立しない。
これに対し、直ちに救急車を呼べば助かることが確実だったのであれば、遺棄致死罪が成立する。
そのため、医学的な見解が重要な証拠になる。
ただ、同様な事案で、最高裁は遺棄致死罪を認めたことがあり、捜査機関はその事件を参考に証拠を収集しているはずである。
そのうえで再逮捕したのであるから、遺棄致死罪を問えるだけの証拠(とくに医学的根拠)があるということなのだろう。
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