今日の日経を題材に法律問題をコメント

2009年12月29日(火) 1月3日までお休みします

12月29日から1月3日までお休みします。



2009年12月28日(月) 正統派の憲法学者?

 日経(H21.12.28)社会面のメディアと事件に関するインタビュー記事で、長谷部東大教授が「人権法案で表現内容を規制するのは、正統派の憲法学者なら『慎重に考えてくれ』と言わざるを得ない」と述べていた。


 「正統派の憲法学者」と断っているのがおかしい。


 人権法案というのは、国家が、何が守られるべき人権かを判断して、場合によっては表現行為を制約するものであるから、大抵の憲法学者であれば積極的には賛成しないと思っていたからである。


 最近は「正統でない」憲法学者が増えたということなのだろう。



2009年12月25日(金) 東京高裁が、返還請求権放棄の議決は無効と判断

 日経(H21.12.25)社会面で、栃木県さくら市の浄水場建設用地購入を巡る住民訴訟で、東京高裁は、元町長に約1億2000万円の返還請求をするよう同市に命じた一審判決を支持し、さくら市側の控訴を棄却したと報じていた。


 さくら市議会は、一審判決後に、元町長への返還請求権を放棄する議決をしていたが、これについて東京高裁は「一審の判断を阻止するための決議であり、三権分立の趣旨に反する」として、議決は無効と判断した。


 これまでは、地方議会が、首長に対する返還請求権を放棄する議決をした場合、裁判所は、住民の代表たる議会が判断したことだから尊重すべきであるとして、住民側の請求を棄却する判決が続いていた。


 しかし、少し前に、大阪高裁が「返還請求権を放棄する議決は住民訴訟制度を根底から否定するもの」として無効と判断しており、今回の東京高裁はそれに続くものである。


 価値判断として、「住民の代表である議会が判断したことだから、それを尊重すべきである」という考えはあり得る。

 
 ただ、常識的には、支出が違法であるのに、その支出の返還請求を放棄するというのはおかしいと考えるべきであり、今回の東京高裁の判断は支持されるべきであると思う。



2009年12月24日(木) 2009年に活躍した弁護士ランキング

 日経(H21.12.24)13面で、「2009年に活躍した弁護士ランキング」を発表していた。


 マスコミでよく聞く弁護士もいれば、知らなかった弁護士もいる。


 ときどき雑誌などで「名医100人」といった企画をしているが、知り合いの医師に言わせれば「あてにならない」そうである。


 しかし、弁護士については「あてになる」と思う。


 優秀であるし、大きな事件になるとチームプレーなので、思わぬ失敗はないからである。


 もっとも、コストパフォーマンスについては分からない。



2009年12月22日(火) 株主代表訴訟は会社の違法行為を防止する重要な手段となっている

 日経(H21.12.22)社会面で、談合事件の課徴金で会社に損害を与えたとして、株主らが日立造船の経営陣を訴えていた株主代表訴訟で、経営陣4人が2億円の解決金を支払うことで和解したという記事が小さく載っていた。


 日立造船であるから経営陣はサラリーマン役員であろう。


 それが1人5000万円も返還することは大変なことと思う。


 株主代表訴訟については批判もあるが、会社の違法行為を防止する重要な手段になっていることは間違いない。


 それゆえ、5000万円もの支払いを余儀なくされた経営陣には同情はするが、やむを得ないことである。



2009年12月21日(月) 検事への上申書

 日経(H21.12.21)社会面で、鳩山首相の偽装献金問題で、元公設秘書を週内に在宅起訴すると報じていた。


 他方、鳩山首相については、すでに資金提供した首相の実母と首相本人から上申書が提出されており、それを受けて地検特捜部は、不起訴処分にするそうである。


 こういうときの上申書は、検事から「このような内容で書いてくれ」と言われる。


 検事としてはすでに結論を決めているわけであり、不起訴処分しやすい内容の上申書の作成を促すのである。


 何だか出来レースのようであるが、よくあることではある。



2009年12月18日(金) 裁判員裁判の初の控訴審判決で1審の量刑を支持

 日経(H21.12.18)社会面で、裁判員裁判の初の控訴審判決で、東京高裁は1審の量刑を支持して、控訴を棄却したという記事が載っていた。


 裁判官の研究報告では、「裁判員裁判の結果はできるだけ尊重すべきであり、量刑が不合理な場合とは『極めて重要な量刑事情を見落としている』などであるとしている。


 しかし、「極めて重要な量刑事情を見落としている」ことになど普通は考えられない。


 結局、量刑については1審でほぼ決まってしまうことになるだろう。



2009年12月17日(木) 狭山事件で、検察に証拠開示を勧告

 日経(H21.12.17)社会面で、狭山事件の再審請求審で、東京高裁は、検察側に対し、殺害現場の近隣住民の供述調書や、犯人とされた石川氏の取り調べの手控えメモなどを開示するよう勧告したと報じていた。


 また、殺害現場の被害者の血液反応の検査報告書については検察側が一貫して「存在しない」としてきたが、東京高裁は「存在しないというのはおかしい」と検察側に合理的説明を求めたとのことである。


 この事件は、当初から別件逮捕や取り調べの違法性が問題になっており、また決定的な証拠がなく、最高裁まで争われている。


 それだけに、できるだけ検察官手持ちの証拠を開示させて真実発見に迫るのは当然であろう。


 むしろ、なぜ1、2審でこのような証拠開示の勧告がなされなかったが問われるべきである。



2009年12月16日(水) 昨日の訂正

 日経(H21.12.15)社会面で、天皇陛下の特例会見問題に関する宮内庁長官の発言と小沢幹事長の批判について、「本質外れた政治論議」であるとしていた。


 その中で「憲法の国事行為の中に、外国要人との会見は含まれていない」とあった。


 確かに、外国の要人との会見は、憲法6条7条で定める国事行為に列挙されていない。


 小沢幹事長が「天皇の国事行為は内閣の助言と承認によって行われる。宮内庁の役人がつくったルールが絶対ということはない。」と述べたことについて、昨日は「憲法論としてはまったく正しい」と書いたが、これは訂正しなければならない。


 ただ、天皇の公人としての行為についても、国事行為と同様、内閣の助言と承認が必要であるとする立場はある(基本法コンメンタール「憲法」)。


 また、宮内庁法1条で定める「皇室関係の国家事務」を根拠に、天皇の公人としての行為については、内閣が直接または宮内庁を通じて輔佐し、宮内庁そして内閣が行政責任を負うという有力な見解(佐藤幸治)もある。


 小沢幹事長が述べたことは「憲法論として正しい」というわけではないが、天皇の公人としての行為についても、最終的には内閣が決定するということが学説の多数のようである。(ただし、公人としての行為をそもそも認めない学説はある。)



2009年12月15日(火) 憲法論としては正しいが

 日経(H21.12.15)1面で、小沢幹事長が天皇陛下の特例会見について、宮内庁長官を批判、と報じていた。


 小沢幹事長は「憲法には天皇の国事行為は内閣の助言と承認によって行われる。それが日本国憲法の理念である。(外国の要人との会見は1か月前に申請するというルールを)宮内庁の役人がつくったからといって金科玉条で絶対ということはない。」と述べたそうである。


 憲法論としてはまったく正しいと思う。


 政治利用という批判があるが、天皇の国事行為が内閣の助言と承認によって行われる以上、もともと『政治的』といえるだろうから、憲法論としては、その批判は的外れである。


 ただ、問題になっているのは憲法の解釈ではないのであるが・・。


(注)「憲法論としては正しい」という点は、2009年12月16日付で訂正しています。



2009年12月14日(月) 『弁護士大観』

 今日は休刊日なので昨日の日経(H21.12.13)1面下の広告で、『弁護士大観』が載っていた。


 この本には弁護士の顔写真、経歴などが載っており、1冊6万円もする。


 各弁護士には、顔写真送付と経歴等の原稿の案内が来る(以前は来ていた)。


 弁護士になりたての頃、わざわざ写真屋で顔写真を撮って送ったことがあるが、いまは送っていない。


 経歴なども推して知るべしであり、嘘は書いていないが、新しい情報は少ないのではないだろうか。少なくとも私についてはそうである。


 それでも何年かに一度発刊されているから、法務部などでのニーズはあるのかもしれない。



2009年12月11日(金) 裁判員裁判の量刑は、求刑の79%

 日経(H21.12.11)社会面で、裁判員制度が始まってからの判決の量刑が、検察官の求刑の79%であったという記事が載っていた。


 これまで、判決の相場は、検察官の求刑の8掛けが相場と言われていた。


 量刑が79%ということは、一つ一つの裁判は多少の重い、軽いがあったとしても、全体でみるとこれまでと変わらないということになる。


 裁判員裁判になると量刑が重くなるのではないかといわれていた。


 しかし、裁判員裁判が始まることによって量刑が大きく変わると、被告人からすれば不公平な裁判を受けることになり、問題であろう。


 その意味で、量刑が、求刑の79%というのはなかなかいい数字ではないかと思う。



2009年12月09日(水) 接見できていない場合の弁護人の認否

 日経(H21.12.9)社会面で、被告人が公判で「名前を忘れた」と述べ、弁護士も困惑しているという記事が載っていた。


 その被告人は「弁護士は不要」と述べて接見にも応じないため、弁護人として、認否の主張もできないとのことである。


 ただ、被告人は起訴内容を認めているようである。


 そうであれば、弁護人としては、「被告人と同様です」と述べることで公訴事実に対する認否することは可能である。


 もっとも、その弁護人は、被告人と打ち合わせができていないのに、「被告人と同様」という意見を述べることをためらったのだろう。


 私だったら、被告人が公訴事実を認めた直後に若干休廷してもらい、そのときに被告人に「弁護人としても公訴事実を認めるという意見を言うがいいか」と確認するかなあ。



2009年12月08日(火) 押尾容疑者を逮捕

 日経(H21.12.8)社会面で、押尾容疑者をMDMA譲渡の容疑で逮捕したと報じていた。


 別の用件で湾岸警察署に行ったところ、マスコミが大勢いて「押尾容疑者の関係ですか」と声を掛けられてしまった。


 ところで、押尾容疑者はMDMAを使用した罪で有罪判決を受けているが、「使用」と「譲渡」は別の罪であるから、譲渡を理由とした逮捕が違法というわけではない。


 ただ、譲渡といっても、実際には2人で使用したのであって、「譲渡」という実態があるかは疑問である。


 しかも、譲り受けたとされる方は亡くなっている。


 そのため、押尾容疑者が否認すれば、「譲渡」の事実について起訴できない可能性はあると思う。



2009年12月07日(月) 「国民に分かる民法を」

 昨日の日経(H21.12.6)9面で、「国民に分かる民法を」という見出しで、現在改正作業が進められている民法について、一般の国民が読んで分かるものにすべきと論じていた。


 それはそのとおりである。


 ただ、現行民法は、ある程度勉強した者からすると、難解というほどではない。


 むしろ難解に感じるのは最近作られている法律である。


 例えば会社法は非常に精緻であるが、やたらと準用が多いため、一読して理解できない条文が多い。


 そのため、専門家でも解説書を読まないと条文の意味が分からないことがある。


 改正にあたっては、準用を減らすなどして、一読して分かる条文にして欲しいと思う。



2009年12月04日(金) 武富士が融資を停止

 日経でなく朝日(H21.12.4)1面で、消費者金融大手の武富士が融資をほぼ停止していると報じていた。


 手元資金の確保を優先するためとのことである。


 しかし、貸金業は貸して利益を得るわけであり、それを停止するとなると、スーパーで物を売らないのと一緒ではないだろうか。


 最近、過払い金返還交渉でも、武富士はまったく回答がなく、訴訟提起しても出頭もしない。


 とにかく無反応なのである。


 いよいよ危ないのかと思ってしまう。



2009年12月03日(木) 通信販売での返品

 日経(H21.12.3)11面で、改正割賦販売法と改正特定商取引法が12月から施行されるという記事が載っていた。


 この改正で注目されるのは、通信販売で、返品の可否や条件を明示していない場合には返品できるようになることである。


 訪問販売では、必要のないものを買わされることがあるということで、クーリングオフが認められている。


 これに対し、通信販売は、広告やパソコンなど前で、自分でじっくり検討し購入するわけだから、押し付け販売ということはない。


 そのため、これまで通信販売にクーリングオフは認められていなかった。


 今回、返品の可否などを明示していないと返品できるようになったことから、一歩消費者保護に近づいたといえる。


 ただ、「返品不可」などと明示していれば返品できないから、「通信販売にクーリングオフ制度を採用した」というわけではない。



2009年12月02日(水) 鳩山システム?

 日経でなく朝日(H21.12.2)夕刊で、鳩山首相の偽装献金問題で、検察庁は首相を嫌疑不十分で不起訴処分とする方針と報じていた。


 しかし、憲法75条は「国務大臣は、内閣総理大臣の同意がなければ訴追されない」と規定しており、仮に嫌疑があったとしても首相に対する起訴はできない。


 もっとも、憲法75条の『国務大臣』に内閣総理大臣を含むのかについては学説上争いがある。


 『国務大臣』には内閣総理大臣を含むという見解によれば、内閣総理大臣は、自らの訴追について同意するか否かを決めることになる。


 他方、『国務大臣』には内閣総理大臣を含まれないという見解は、内閣総理大臣の在任中は一切訴追できないと解している。


 鳩山首相が自己の訴追に同意することは考えられないから、結局、いずれの見解に立つにしても訴追はできないという結論になる。


 このように訴追される恐れがないのに、鳩山首相は「司法の判断に委ねる」と弁明し、国民に対する説明を怠っているとして、一部ではこれを『鳩山システム』と呼んで批判している。


 確かに、内閣総理大臣は訴追されないにしても、国民に対する説明責任は負っているから、説明から逃げることは問題であろう。


 『鳩山システム』というネーミングは別にして、うまい指摘であると思う。
(なお、内閣総理大臣を退任すると訴追されるし、退任するまで時効は停止すると解釈されている。)



2009年12月01日(火) 竹修三・元弁護士が詐欺容疑で逮捕

 日経(H21.12.1)社会面で、佐竹修三・元弁護士が詐欺容疑で逮捕されたという記事が載っていた。


 『元弁護士』になっているのは、何回か懲戒処分を受け、除名処分になったからである。


 この人の処分はすべて金がらみのようである。


 しかも、記事の詐欺事件では4人が逮捕されているから、金もうけを企んでいるグループの一員だったのだろう。


 弁護士は、自分も金もうけしようと思って、金もうけを企んでいるグループの一員になってはいけない。


 そういった連中は、弁護士の資格を利用しようとするからである。


 そうはいっても、懲戒処分された弁護士をみていると、一度そういったグループに入ってしまうと、抜け出すのはなかなか難しいようである。


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