今日の日経を題材に法律問題をコメント

2009年02月27日(金) 爆弾は簡単に製造できる

 日経(H21.2.27)社会面に、爆弾を作ろうとした高校一年生が逮捕されたという記事が載っていた。


 ある刑事事件で爆弾について調べたことがあるが、爆弾というのは思っている以上に簡単に製造できる。


 裁判員制度が始まると、それが爆弾事件だった場合、公判廷で爆弾をどのように製造したかを裁判員に示すこともあり得る。

 しかし、検察官は、あまりに簡単に製造できるので、公判廷では示したくないと言っていた。


 爆弾事件は今後ますます増加すると思う。



2009年02月25日(水) 新聞の1面を使ってまで書くべきことだろうか

 日経(H21.2.25)1面で大きく、日経新聞社の株主資格訴訟において、東京地裁が、高杉良氏への譲渡は無効と判断したと報じていた。


 日経新聞社では言論・報道の自由を守るという趣旨から、株式の譲渡の相手を「事業関係者」に限っているところ、社友(会社のOB)が、高杉氏へ株式を譲渡したことについて、日経新聞社が譲渡無効と主張していたものである。


 東京地裁は、高杉良氏は「事業関係者」ではないので、その譲渡は無効と判断したが、それ自体は妥当な判決であろう。


 また、日経新聞社としても、株式がまったくの第三者に譲渡されると報道の自由が脅かされるおそれがあるから、自社の主張が認められたことを1面に掲載してアピールすることもおかしくはない。


 ところで、この事件では、同時に、譲渡した社友に対し、日経の信用を傷つけたとして、日経新聞社が社友資格を取り消したのであるが、東京地裁は、社友資格を取り消したことは無効であると判断した。


 この判決に対し、日経新聞社は「新聞社の独立を脅かす許しがたい行為であるにもかかわらず、裁判所の理解を得られず遺憾である」と書いていた。


 しかし、新聞社の独立を確保するためには株式譲渡を無効とすればそれで目的は達するはずである。


 日経新聞社にとっては、社友の行為は「許しがたい」のかもしれないが、それは自社の関係者が不始末をしたことに対して「許せない」と言っているに過ぎない。


 それはそれで争えばいいのだろうが、新聞の1面を使ってまで「遺憾である」と書くべきことではないだろう。


 そのような、いわば新聞を私物化するような行為は、かえって報道の自由を危うくするのではないだろうか。



2009年02月24日(火) SFCG(旧商工ファンド)破たんの原因

 日経(H21.2.24)4面に、SFCG(旧商工ファンド)が民事再生法を申請したことにからみ、「ノンバンクに淘汰の波」という記事が載っていた。


 SFCGが破綻した直接の原因は資金繰りの悪化である。


 しかし、その本当の原因はこの会社に体質にあると思う。


 弁護士が介入するとすぐさま給料を差し押さえる

 過払金返還請求すると、弁護士がついていない保証人の財産を差し押さえる

 分割払いを提案すると、利息制限法を超えた利息での分割にしか応じない

など、この会社の対応はひどすぎる。


 そのためトラブルが相次ぎ、国内大手銀行はSFCGに貸し出ししなくなっていた。


 利益を追求するのが会社であるから、借主側弁護士の言い分をすべて聞く必要まではない。


 ただ、誠実な対応はすべきであろう。


 SFCGやその他の金融業者に限らず、不誠実な会社経営をしているところは、いずれは破綻すると思う。



2009年02月23日(月) 未払い残業代の請求は、過払い金請求に似ている

 日経(H21.2.23)社会面に、NTT西日本の子会社が2億7000万円の残業代の不払いがあることが分かり、全額支給したという記事が載っていた。


 いまごろ「分かる」はずがなく、労働基準監督署が指摘したか、元従業員誰か誰かが残業代を請求したことで残業代の未払いがあることが発覚したのだろう。


 NTT西日本の子会社だから2億7000万円の支払は可能だろうが、中小企業だと会社が傾きかねない金額である。


 残業代の未払い問題は、消費者金融の過払い金請求の問題に似ているように思う。


 誰もがサービス残業であることを知りつつ行っている点は、利息制限法を越えていることを知りながら利息を取っていることと同じである。


 また、辞めた後に残業代の支払いを求めるのは、弁護士に相談するなどして取引をやめた後、過払い金請求をすることと似ている。


 その結果、消費者金融では、大手でも経営が苦しくなってきている。


 しかしそれは過払い金請求が悪いのではなく、利息制限法を超えていることを知りながら、何の対策もとらずに利息を徴収していた消費者金融に問題があったと思う。


 同様に、いつまでもサービス残業に甘えていると、過払い金請求を受けて会社経営が苦しくなっている消費者金融のようになりかねない。


 現に、未払い残業代を求める労働事件は増えているように思う。



2009年02月20日(金) ジェイコム株誤発注事件で判決を延期

 日経(H21.2.20)社会面で、ジェイコム株の誤発注で巨額の損失を被ったみずほ証券が、原因は証券取引所のシステム不備にあるとして損害賠償を求めた事件で、東京地裁は判決を延期すると発表したと報じていた。


 判決を延期することはしばしばあるが、その理由として一番多いのは、裁判官がどちらかを勝たす結論で判決を書き始めたところ、当該証拠からその結論に導きだせないときである。


 そのため、争点になっていなかった事実を勝手に認定し、同じ結論を導くこともあれば、結論を変えてしまうこともある。


 だいたいそのような場合の判決はどこか無理があり、控訴審で再び激しく争われることになる。


 この事件は、金額も巨額であり、いずれの結論になるにせよ、控訴審で再び争われる可能性は高い。



2009年02月18日(水) 日経の株式譲渡訴訟で日経が勝訴

 日経(H21.2.18)1面で、日経新聞社の社員株主制度を巡る訴訟で、日経側の勝訴が確定したと報じていた。


 日経新聞社の株は日経共栄会を通じて1株100円という固定価格で売買をしてきたが、そのようなルールがあったといえるか、そのルールは有効性かなどが争点となった。


 これらの点について最高裁はいずれも有効と認めた。


 非公開会社の中には、長年のうちに株式が散逸し、買い戻そうとしても1株の算定価格が高くなってしまい買い戻せないということがあり。


 そのような場合に備えて、予め売買価格を固定しておくということが有効な対策になるかもしれない。


 ただ、最高裁は、売買価格を固定していたとしても、日経新聞社が配当を実施していたので株主の投下資本の回収は図られていることも有効の理由として挙げている。


 それゆえ、売買価格を固定した場合には、利益があれば配当を実施しておくことが必要であり、小さな企業ではこの点がなかなか難しいかもしれない。



2009年02月17日(火) 新銀行東京が旧経営陣に対し100億円もの損害賠償請求

 日経ネットニュース(H21.2.17)で、新銀行東京が、不適切な業務運営で業績悪化を招いたとして、旧経営陣2人に損害賠償を請求する方針を固めたと報じていた。

 請求額は最大で100億円規模になるようである。


 個人に対し100億円も請求をしても回収可能性はゼロだから、経営責任を明らかにすることが目的なのだろう。


 しかし、提訴すると、旧経営陣の不法行為の立証が必要となり、それに対して旧経営陣からは反証もなされるだろう。


 新銀行東京はかえって返り血を浴びるのではないか。



2009年02月16日(月) 法務省が債権の時効期間の統一を検討

 昨日の日経(H21.2.17)1面で、法務省が、債権の時効期間の統一を検討していると報じていた。


 現在は、消滅時効の期間は、債権は10年、商事債権は5年、不法行為の損害賠償請求権は3年であるが、それ以外に多くの短期消滅時効がある。


 そのような例外があることに対し、記事では「法律の専門家から『例外の設け方に合理性がない』と疑問が出ている」と書いていた。


 しかし、弁護士の立場からすると、「合理性」の問題よりも、時効期間がある程度統一されていないと、時効期間をうっかり途過させてしまうことが心配である。


 時効期間の途過はまったく言い訳ができず、明らかな弁護過誤となるだけに怖いものがある。


 その観点からも、時効期間の統一は強く望まれる。



2009年02月13日(金) 法廷で証人を恫喝

 日経(H21.2.13)社会面で、傷害事件の法廷で、被害者が証人として証言しているときに、被告人が「また出てきてやってやる。お前の顔は覚えている」と言って脅したとして、その被告人を逮捕したという記事が載っていた。
 

 証人はショックで証言を続けられなくなったそうである。


 「お前の顔は覚えている」と言われた被害者の恐怖心はいかばかりかと思う。


 ひどい事件であり、こんなことがあると証人は怖くて証言することができなくなってしまう。


 司法制度に対する悪質な妨害行為として厳罰に処する必要があると思う。



2009年02月12日(木) 憲法を引き合いに出す人事院総裁の主張について

 日経(H21.2.13)夕刊で、公務員改革について、行政改革大臣と人事院総裁のそれぞれ言い分が載っていた。


 その中で人事院総裁が「人事院の権能は憲法に由来する」と述べていた。


 それは間違いではないが、言い過ぎのように思う。


 人事院の機能としては、内閣から一定程度独立することにより、公務員人事の中立・公平性を確保するということと、公務員が労働基本権を制約されていることの代償として、公務員の利益を保護するということにある。


 しかし、公務員人事の中立・公平の確保と、公務員の利益の確保のために、人事院制度だけが唯一の制度ではない。


 それぞれの要請が満たされる限り、他の制度でもよいはずである。


 インタビュー記事では、人事院総裁は「人事院の機能は憲法に由来すると言っているのであって、(機能の一部を移管することが)憲法に違反するとは言っていない」と述べている。


 しかし、国家の政治制度はすべて憲法に由来しているのだから、「人事院の機能が憲法に由来する」と言っても、それだけでは反対の理由にはなり得ないだろう。


 何でも憲法と結び付けて反対する人事院総裁の主張は、「自己の組織防衛のため」と批判されても仕方ないと思う。



2009年02月10日(火) 法人破産が昨年1万件を突破

 日経(H21.2.10)社会面に、法人の自己破産が昨年は1万件を突破して、1985年以降の最高になったという記事が載っていた。


 ここ数年、破産事件は減少傾向にあったのだが・・。


 東京地裁破産部の裁判官が「今年はさらに破産事件は増えると思っている」と言っていたし、破産事件の相談がまた増えている気がする。



2009年02月09日(月) 福岡高裁宮崎支部判事が逮捕

 日経(H21.2.10)夕刊に、高速バスで乗客の女性の体を触ったとして、福岡高裁宮崎支部判事が準強制わいせつの疑いで現行犯逮捕されたと報じていた。


 判事は容疑を否認しているようであり、事実関係はよく分からない。


 ただ、最近、判事がハレンチ罪で逮捕されることが多い気がする。


 しかし、急に判事の犯罪が増えるというのも不自然であろう。


 かつては捜査機関が事件を揉み消していたのだろうか。



2009年02月06日(金) 誰が裁判員かを公にしてはならない

 日経(H21.2.6)社会面に、民放連が、裁判員制度での裁判員選任手続きや法廷での審理などの撮影・録音を可能な限り認めるよう最高裁に申し入れたという記事が載っていた。


 裁判員法では、何人も、誰が裁判員かなどといった情報を公にしてはならないと定めている。


 したがって、裁判員選任手続きや法廷での審理などの撮影が認められても、裁判員の顔は写せない。


 もっとも、判決がなされ裁判員の任務が終了した後は、本人の同意があれば、誰が裁判員であったかなどの情報を公にすることができる。


 そのため、裁判員だった人が判決後に記者会見に応じることはできそうである。



2009年02月05日(木) 週刊新潮の記事で、東京地裁が社長の賠償責任を認定

 日経(H21.2.5)社会面に、大相撲の貴乃花夫妻が、週刊新潮の記事で名誉を傷つけられたとして訴えた事件で、東京地裁は新潮社側に計375万円の支払いと謝罪広告掲載を命じると同時に「名誉棄損を防ぐ社内体制を作らなかった」として社長の賠償責任も認定したと報じていた。


 法律上は、取締役が第三者に対し責任を負うことはあり得る。


 週刊新潮の場合は、名誉棄損事件を頻発させており、社長がそれを放置していたとして、その責任を問われたのであろう。


 ただ、出版において編集は、経営陣からもある程度独立していることが望ましい。(映画などで、経営陣の干渉をはねつけて記事を書くという話がよく出てくる)


 その意味で、名誉棄損の記事を書くことを社長が放置していたとまで評価できるのであろうか。


 むしろ、このような判決がなされることによって経営陣が委縮し、過度に編集に関与をするようになることが怖い。



2009年02月04日(水) 村上被告に対し、東京高裁が執行猶予判決

 日経(H21.2.4)1面で、ニッポン放送株のインサイダー取引事件で、証券取引法違反罪に問われた元村上ファンド代表の村上被告に対し、東京高裁は、懲役2年の実刑とした一審を破棄し、懲役2年、執行猶予3年の有罪を言い渡したと報じていた。


 この事件で、一審東京地裁は、インサイダー情報となる重要事実の基準を「実現可能性が全くない場合は除かれるが、可能性があれば高低は問題にならない」と指摘していた。


 一審の裁判官は3人だったはずであるが、「実現可能性があれば、その高低は問題にならない」とまで踏み込んだ表現は裁判長でなければ書けないだろう。


 この裁判長は、それほど村上被告のことが嫌いなのかと思ってしまうほど、言い方はひどく、基準としても雑である。


 これに対し、東京高裁は、「投資判断に影響を及ぼす程度の相応の実現可能性が必要」としたが、穏当な判断であるであると思う。



2009年02月03日(火) 大麻所持で逮捕された若麒麟に解雇処分

 日経(H21.2.3)スポーツ面で、日本相撲協会が、大麻所持で逮捕された若麒麟に対し、解雇処分とすることを決めたと報じていた。


 「除名」であれば退職金が出ないが、武蔵川理事長によれば、「第二の人生を考えるとかわいそうということで、解雇処分とした」とのことである。


 「かわいそう」と言うが、実質的な理由としては昨年の処分との整合性があるのかもしれない。


 すなわち、昨年の大麻問題で、若ノ鵬らに対し解雇処分としたことに対し、「処分が厳しすぎる」として裁判で争われている。

 除名処分にすると昨年の解雇処分との整合性を欠き、裁判で争われることは必至であり、それを懸念したのではないだろうか。


 しかし、今回の事件は、昨年の大麻問題で相撲界が大揺れに揺れて、再発防止に取り組んでいる最中の出来事であり、悪質性は高い。


 それゆえ、除名処分としたとしても、昨年の解雇処分と整合性を欠くとはいえないだろう。


 しかも、仮に若麒麟から他の違法薬物が検出されたとしても、すでに解雇をし相撲協会の力士でなくなっている者に対し、除名することはできない。


 早々に解雇処分とした相撲協会の判断は、拙速だったのではないだろうか。



2009年02月02日(月) 裁判官は東京地裁の扱いを知りたがる

 日経(H21.2.2)社会面に、離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子と推定する民法の「300日規定」によって無戸籍となった男児と母親が、前夫の関与なしで現夫の子とするための認知の調停を東京家裁八王子支部に申し立てたところ、裁判官から取り下げを迫られたという記事が載っていた。


 ところが、その記事の続きによれば、横浜家裁相模原支部では、前夫の関与なしで現夫の子と認められ、「300日規定をめぐり、家裁の対応がばらついている」と報じていた。


 しかし、裁判官は独立しているから、判断にばらつきはあることはやむを得ない。


 もっとも、代理人が「他の裁判所の扱いはこうであった」と言うと、「参考にしたいので、他の裁判所の判断を示す書類を提出してくれ」といわれることがある。


 そのようなとき、地方裁判所の一支部の例を提出してもあまり喜ばれず、東京地裁や東京家裁の取扱いを知りたがる傾向があるのはおもしろい。


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